Tuesday Aug 13, 2024

糸くり三人女

昔、怠け者で糸を紡ごうとしない娘がいました。それで娘の母親は「どうしたってお前をその気にさせることはできやしない」と嘆いていました。ついに或るとき堪忍袋の緒がきれカッとなって母親は娘をなぐりました。それで、娘は大声で泣き出しました。丁度このときお妃さまが通りがかり、泣き声を聞いたので、馬車をとめ、家に入ると、母親に、どうして泣き声が道に聞こえるほど娘をなぐっているのか、と尋ねました。母親は娘の怠け癖をさらけ出すのは恥ずかしいと思い、「娘の心を糸紡ぎから離せないんです。娘は糸紡ぎをすると何度も何度も言い張るんです。私は貧しいし、亜麻を買うお金がないんです。」と言いました。するとお妃さまは「私は、糸紡ぎほど聞きたいものはないですよ。糸車が回っているときはこの上なく楽しいわ。娘を宮殿に連れて行かせて。私には亜麻が十分あるから、好きなだけ紡がせてあげる。」と言いました。母親はこれに心から満足し、お妃さまは娘を一緒に連れていきました。宮殿に着いたあと、お妃さまは娘を上から下まで最上等の亜麻でいっぱいの3つの部屋に案内しました。「さあ、この亜麻を紡いでおくれ。終わったら、私の一番上の息子と結婚させてあげましょう、たとえお前が貧乏でもね、そんなことを気にはしていないのよ、お前のひたむきな勤勉さが十分な持参金ですからね。」とお妃さまは言いました。
娘は内心ビクビクしていました。というのは、たとえ300歳まで生きたとしても、断じて、亜麻を紡げなかっただろうからです。そして毎日朝から晩までそこで座っていました。ですから、一人ぼっちのとき泣き出して、指1本動かさないで3日間こうしていました。3日目にお妃さまがやってきて、何も紡がれていないのを見ると驚きました。しかし、娘は母親の家から離れてとても心を痛めているので始められませんでしたと言い訳しました。お妃さまはこの答に納得しましたが、出て行くときに「明日は仕事を始めなければなりませんよ」と言いました。
娘はまた一人になったときどうしたらよいかわからず、気がふさいで窓のところに行きました。すると3人の女が自分の方にくるのが見えました。一人目は広い平らな足をしていて、2人目はとても大きな下唇をしていたのであごに垂れ下がっていて、3人目は大きな親指をしていました。三人は窓の前に立ったまま見上げて、「どうしたんだい?」と娘に尋ねました。娘は自分の悩みをこぼしました。すると、手伝ってあげると言ってくれて、「もしお前が私たちを結婚式に招待してくれ、私たちを恥ずかしいと思わないで、それから私たちをおばさんと呼んでくれ、お前の食卓に座らせてくれるなら、お前に亜麻を紡いであげるよ、しかもとても速くだよ。」と言いました。「喜んで。さあ入って、すぐに仕事を始めて!」と娘は答えました。それから娘は3人の奇妙な女を入れ、最初の部屋の場所を空け、そこに3人は座って糸を紡ぎ始めました。一人は糸を引っ張り糸車を足で踏み、もう一人は糸を湿らし、3人目はその糸をより、指でテーブルをたたきました。そしてたたく回数ごとに、最も上等に紡がれた1かせの糸が地面に落ちました。
娘は3人の糸くり女をお妃さまから隠しておいて、お妃さまが来たときはいつも大量の紡いだ糸をみせました。それでお妃さまはいくら誉めても誉め足りないくらいでした。最初の部屋が空っぽになり、二番目の部屋へ、そしてとうとう3番目の部屋へとりかかり、それもすぐにかたづきました。それで3人は別れを告げ、「約束したことを忘れないでね、それでお金持ちになるから。」と娘に言いました。
娘が空っぽの部屋と大きな糸の山をみせるとお妃さまは結婚式の命令をだし、花婿はそのように賢く勤勉な妻をもらうことになるのを喜び、娘をとても讃えました。娘は「おばさんが3人いて、とてもよくしてくれたので私が幸せなとき忘れられません。結婚式に3人を招待させてください。そして私たちと一緒にテーブルにつかせてください。」と娘は言いました。お妃さまと花婿は「どうして許さないことがあろうか」と言いました。それゆえ宴が始まったとき3人は変な服装で入ってきて、花嫁は「ようこそ、おばさん方」と言いました。花婿は「ああ、どうして君はこんなみっともない友達がいるんだ?」と言い、そのあと平たい大足をしている女に近づいていき、「どうしてそんな大足をしているんだ?」と言いました。「(糸車を)足踏みしたから、足踏みしたから。」と女は答えました。それから花婿は2番目の女のところに行き、「どうして垂れた下唇をしているんだ」と言いました。「(糸を)舐めたから、舐めたから。」と女は答えました。それから花婿は3番目の女に「どうして大きな親指をしているんだ?」と聞きました。「糸をよったから、糸をよったから」と女は答えました。これを聞くと花婿は驚いて「これから先は私の美しい花嫁は糸紡ぎ車にふれてはならない」と言いました。こうして娘は大嫌いな亜麻紡ぎから解放されました。

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