グリム童話
グリム童話は、ヤーコプとヴィルヘルム・グリムによって編纂された、時代を超えた民話のコレクションです。これらの物語は、勇気、魔法、道徳をテーマにした話が世代を超えて共鳴し続ける、民俗の宝庫です。「シンデレラ」や「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」などの古典から、「漁師とその妻」や「ルンペルシュティルツキン」といったあまり知られていない珠玉の話まで、それぞれの物語がヨーロッパの口承伝承の豊かな織物を垣間見せてくれます。 グリム童話は、その鮮やかなキャラクター、道徳的教訓、そしてしばしば暗いトーンが特徴で、歴史的文脈の厳しい現実と幻想的な要素を反映しています。その永続的な魅力は、楽しませ、教え、驚きをもたらす能力にあり、これが子ども文学の礎となり、民俗学や物語の研究者たちにとっての魅力的な源となっています。
Episodes
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
三人の女が野原に生える花に変身させられました。しかし、そのうちの1人は夜自分の家にいることが許されました。それであるとき、夜明けが近づいて野の仲間のところに戻りもう一度花にならなくてはいけなくなったとき、妻は「もし今日の午後来て私を摘んでくれたら、私は自由になりあなたと一緒にいられるわ。」と夫に言いました。そして夫はそうしました。
さて、問題です。夫はどのようにして妻がわかったのでしょう?というのは3つの花は全く似ていて、違いがないからです。
答―妻は夜の間家にいて野原にいなかったので、他の花には露が降りていたのに妻には降りていませんでした。それで夫は妻がわかったのです。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
いい話をしてあげよう。二羽の焼けたにわとりが飛んでいるのを見たよ。速く飛んでいて、胸は天国に向けて背中は地獄に向けてたんだ。金床と石臼が美しくゆっくり静かにライン川を泳いで渡ってたよ。蛙が聖霊降臨節で氷の上に座って鋤の刃を食べていたんだ。ウサギをつかまえたい三人の男が、松葉杖や竹馬ででかけたんだ。一人は耳が聞こえなくて、二人目は目が見えなくて、三人目は口が言えなくて、四人目は歩けなかったんだ。どうやったか知りたいって?まず、目の見えない男はうさぎが野原を走っていくのを見ただろ、口の言えないやつが歩けないやつに叫んだんだ、それで歩けない男がウサギの首をつかまえたのさ。乾いた陸の上を航海したい男たちがいてね、風に帆をかけ、大きな野原を越えて行ったんだ。それから高い山を越えて航海して、そこで不幸にも溺れたよ。カニが全速力で逃げているウサギを追いかけていたよ。高い屋根の上に登っていった牛がいたよ。その国ではハエがここのヤギと同じ大きさだよ。嘘が飛んで出ていくように窓を開けてくれ。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
のらくら者の国の時代に、私は出かけていって、ローマと教皇の宮殿が細い絹糸でぶらさがっているのを見た。それから足のない男が速い馬を追い越したのも、よく切れる刀が橋を切ってしまうのもみたよ。銀の鼻をした子どものロバが二本足のうさぎを追いかけるのや、とても大きい菩提樹にホットケーキが生えているのを見た。年とってやせたヤギが100台分の荷車の脂肪と60台分の塩を運ぶのを見た。十分嘘をつかなかったかい?馬や雌牛がいないのにくわが耕しているのを見た。一歳の子どもがレーゲンスブルクからトリーアまで石臼を四つ放り投げ、それからトリーアからシュトラスブルクまで投げたのを見たよ。タカがライン川を泳いで渡っていた。当然の権利だというふうにしてね。魚たちが一緒に大騒ぎをして天国まで音が響いていたのを聞いたよ。甘い蜂蜜が深い谷から高い山のてっぺんへ水のように流れたよ。こういうのは不思議なことでしたね。二羽のカラスが牧草地を刈っていた。二匹のブヨが橋を建てているのを見た。それから二羽の鳩が狼をずたずたに引き裂き、二人の子どもが二頭の子ヤギを産んだ。二匹の蛙が一緒に麦をから竿でたたいていた。二匹のネズミが司教を任じているのを見た。二匹の猫が熊の舌をひっかき出すのを見たよ。それからかたつむりが駆けてきて二頭の猛々しいライオンを殺した。床屋が女の人のあごひげを剃り落としていた。二人の乳飲み子が母親にお黙りと言った。二頭の猟犬が水からひき臼をとりだすのを見た。年とって衰弱した馬がそのそばにいて、よろしいと言った。4頭の馬が庭にいてありったけの力を出して麦をから竿でたたいていた。二頭のヤギがストーブをたいていて、赤牛がパン焼き釜にパンを入れていた。するとめんどりがコケコッコー、お話はお終い、コケコッコーと鳴いた。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
すずめがツバメの巣で四羽の子すずめを育てていました。子すずめたちの羽毛が生えそろったころに、いたずら坊主たちが巣を引っ張り出しましたが、運よく強い風にのって全員無事に飛び立ちました。すると親すずめは、息子たちがみんな世間に出て行ってしまったので、いろいろな危険のことを注意してどう取り組んだらいいか先に教えてやれなかった、と悲しみました。秋にたくさんのすずめたちが小麦畑に集まりました。するとそこで、親すずめはまた四羽の子すずめたちに会えて大喜びし、家へ連れて帰りました。
「ああ、息子たち、わしは夏じゅうお前たちのことを心配しておったよ。いろいろ教えてやるまえに風にのって行ってしまったからね。よく聞いておくれ、お父さんのいうことをきいて、よく身を守るんだよ。小さな鳥はとてもあぶない目に合うからな。」そうして一番上の息子に、夏はどこで過ごし、どうやって暮らしをたててきたか尋ねました。「僕はあちこちの庭に行って、毛虫や小さなミミズなど探したんだ。そのうちサクランボが熟して来たよ。」「ああ、息子よ、えさは悪くない。だが大きな危険もあるぞ。だからこれからよく気をつけるんだぞ。特に、中ががらんどうで上に小さな穴があいてる長い緑の棒をもって人間が庭を歩き回っているときはな。」「うん、お父さん、だけど、小さな緑の葉っぱが穴の上にろうでくっついているならどうなの?」「お前それをどこで見たんだ?」「商人の庭で」と子すずめは言いました。
「なるほど。商人は頭がいい人たちだ。」と父親は言いました。お前がこの世をよく知っている人たちの中にいたのなら、世知にたけたずる賢さは十分覚えただろう。ただそれをうまく使うように気をつけるんだよ、自信をもちすぎてはだめだな。」それから父親は二番目の子に「お前はどこで過ごしたかね?」と尋ねました。「宮廷で」と息子は答えました。「すずめや小さな鳥はあそこでは役に立たない。あそこには、金やビロウドや絹や甲冑や馬具がたくさんあるし、ハイタカやフクロウやラナーハヤブサもたくさんいる。馬小屋から離れないでいるんだ。そこではカラス麦を箕にかけたり、から竿でたたくからな。そうしたら運よく危険な目にあわないで毎日穀物の粒にありつけるかもしれない。」「うん、お父さん」と息子は言いました。「だけど、馬番が罠を作ってわらの中に輪を入れておくと、たくさんつかまっているよ。」
「それをどこで見たんだい?」と親鳥は言いました。「宮廷でだよ。馬番たちのところで。」「ああ、そうか。宮廷の馬番は悪い連中だ。お前がずっと宮廷や殿方たちの中にいて、そこで羽根一枚もとられなかったのなら、お前はかなり学んで、どうやって世渡りするかよく知っているだろう。だが周りや上をよく見るんだ。狼は一番賢い犬でも食うとよく言うからな。」
父親は三番目の子も試してみました。「お前はどこで運だめしをしたんだい?」「僕は荷車の通る道や街道にたらいと綱をおいておきました。それでときどき小麦や大麦の粒にありつけました。」「うん、そりゃご馳走だ。」と父親は言いました。「だが、やっていることに気をつけろ、周りをよく見るんだ。特に、誰かかがんで石を拾おうとしていたらね。その時はさっさと逃げるんだよ。」「そうだね」と息子は言いました。「だけど、先に胸やポケットに岩や鉱石をもっていたらどうなの?」「どこでそれを見たんだい?」
「鉱夫たちのところだよ、お父さん。坑道から出るときたいてい鉱石をいくつか持って来てるよ。」「鉱山の人たちは働く人たちで賢いんだよ。お前が鉱山の若者と一緒だったんなら、大したものを見て学んだろう。だけどそこへ行くときは注意しろよ、コバルトを投げる鉱夫に殺されたすずめもいっぱいいるんだからな。」
とうとう父親は末の息子のところに来ました。「かわいいチッチ坊や、お前はいつも一番たわいなくてひ弱だったね。わしと一緒にいなさい。世の中には乱暴で意地悪な鳥がたくさんいるんだ。くちばしが曲がって長い爪があってね。あわれな小さい鳥を待ち伏せて食べてしまうんだ。同じ仲間の鳥と一緒にいて、木や家から小さいクモや毛虫をつかまえるんだ。そうすれば無事に長生きできるよ。」
「お父さん、他の人たちに悪いことをしないで食べていくんなら、よくいくんだよ。自分の身や自分のまっとうな食べ物を、朝も晩も神様にお任せしてれば、その人に悪いことをするハイタカやワシやトビはいないよ。神様は森や村の鳥全部をお創りになり守っていらっしゃるし、幼いカラスの叫び声やお祈りを聞いていらっしゃるんだ。神様のお考えでなければすずめやみそさざいは地面に落ちないからね。」「お前、どこでこれを覚えたんだ?」
息子は答えました。「急に吹いた強い風でお父さんから引き離されたとき、僕は教会に着いたんだ。夏じゅうそこで窓からハエやくもをとっていたんだよ。それでこの説教がされるのを聞いたんだ。すずめ全部のお父さんが夏じゅう僕を養って、災難や恐ろしい鳥から僕を守ってくれたんだよ。」
「そうだな。お前が教会で保護を受け、クモやぶんぶんうるさいハエを取り除く手伝いをして、幼いカラスのように神様にチュンチュンお話し、永遠の創造主に身を任せれば、何でもうまくいくよ。たとえ世界中に乱暴で意地の悪い鳥がいっぱいいてもね。神様に道をゆだねる人、黙って苦しみ、待ち、祈り、信仰を守り、良心を清らかにする人、そういう人をきっと神様は守ってくださるのだよ。」このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、きれいだが怠け者でだらしない娘がいました。糸を紡がなければならないときはとても短気だったので、亜麻に小さな結び目があると、すぐにひと山まるまる引き抜いてそれをそばの地面にまき散らしました。
さて、この娘によく働く女中がいて、投げ捨てられた亜麻を拾い集め、きれいに洗って、上手に紡ぎ、その糸で自分が着る美しいドレスを作ってもらいました。
若い男が怠け者の娘に求婚し、結婚式が行われることになりました。式の前の晩に働き者の娘は可愛いドレスを着て、楽しそうに踊っていました。それで花嫁は「ま、私の亜麻くずを着て、あの子はなんとまあよく跳ねまわること!」と言いました。花婿はそれを聞き、花嫁にどういう意味か尋ねました。すると花嫁は、あの娘は私が捨てた亜麻から作ったドレスを着ているの、と話しました。花婿はそれを聞くと、花嫁がどんなに怠け者か、また貧しい娘がどんなに働き者かわかり、その花嫁を捨て、もう一人の娘のところへ行き、妻としてその娘を選びました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、とても結婚したがっている若い羊飼いがいました。そして、3人の姉妹と知り合いましたが、3人とも同じくらいきれいなので、選ぶのが難しく、どの子を結婚相手とするのか決められませんでした。それで、母親に相談すると、母親は、「3人をみんな招待して、前にチーズを置いて、食べる様子を見てごらん。」と言いました。若者がその通りにやると、一番目の人は皮をつけたままチーズを飲み込み、2番目の人は急いでチーズから皮を切り取りましたが、とても速く切ったのでその皮にたくさんよいチーズが残ってそれも捨ててしまい、3番目の人は注意深く皮をむき、多すぎも少なすぎもしないで切りました。羊飼いがこれをみんな母親に話すと、母親は3番目の人を嫁さんにしなさい、と言いました。羊飼いはこの通りして、その娘と満足して幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
ある日、父親は妻と子供たちと一緒に食事をしていて、訪ねてきていた仲のよい友達も一緒に食べていました。こんな風に座っていて、12時をうっていたとき、お客はドアが開くのが見え、とても顔色が悪く雪のように白い服を着た子供が入ってきました。その子はまわりを見回しもせず、口も言わないで、まっすぐ隣の部屋に入って行き、すぐあとになって、戻って来て、同じ静かな様子で出ていきました。2日目も3日目も全く同じふうに来ました。とうとうお客は父親に、毎日正午に隣の部屋に入っていくあのきれいな子はどこの子かね?と尋ねました。「そんな子見たことがないね。」と父親は言い、誰の子かもわかりようがない、と言いました。
次の日、その子がまた来た時、お客は父親にその子を指差しましたが、父親には見えませんでした、また母親や子供たちみんなにも何もみえませんでした。これにお客は立ちあがって部屋の戸のところに行き、少し開けて中を覗き込みました。すると、こどもが下に座り、床の板の間を忙しそうに掘ってさがしているのが見えました。しかし、お客を見ると、消えてしまいました。それで今度は、お客は見たことを話し、子供の様子を正確に説明しました。すると母親がわかって、「ああ、それは1カ月前に死んだ私の子ですよ。」と言いました。みんなが板を持ち上げると、貧しい人にあげるようにと、子供が母親から昔受け取った2ファージングを見つけました。ところが、その子は、そのお金でビスケットが買えると思って、そのファージングをとっておき、板の間の隙間に隠しておいたのでした。それで、お墓の中でも心が安らがないで、これらのファージングをさがしに毎日お昼に来ていたのでした。両親はすぐにそのお金を貧しい人に与えました。その後子供は二度と見られませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、父も母も亡くなった小さな女の子がいました。とても貧しかったのでもう住む部屋も、眠るベッドもなくなり、とうとう着ている服と、手に持っている情け深い人がくれた少しのパンだけになりました。それでも、この子は善良で信心深い子でした。世間全般からこのように見捨てられたので、神様を信じて野に出ていきました。すると、貧しい男に出会い、その人が「ああ、何か食べるものをください。とてもおなかがすいてるのです。」というので、パンを全部手渡し、「神様があなたを祝福してくださいますように。」と言って先へ進みました。すると、子供が来て、呻いて、「頭がとても冷たいのです。何か頭をおおうものをください。」と言いました。それで女の子は頭巾を脱いでその子にあげました。さらに少し進むと、上着を着ていなくて寒さで凍えている別の子供に出会いました。それで、女の子は自分の上着をあげました。また少し行くと、ドレスを欲しがる人がいて、女の子はそれもあげました。とうとう森に入り、もう暗くなってしまっていました。そしてまた別の子供がきて、シャツを欲しがりました。それで善良な小さい女の子は心の中で、「暗い夜で、誰にも見えないわ。シャツをあげても大丈夫よ。」と考えて、脱ぎ、それもあげました。そうして、何一つ残らず、立っていると、突然天から星が落ちてきました。その星は固い滑らかな硬貨だったのです。そしてシャツをあげたばかりだったのに、とても上等なリネンでできている新しいシャツを着ていました。それで女の子はそのシャツにお金を入れました。そして生涯お金持ちでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、どの問いにも賢く答えるため、広く名をとどろかせていた羊飼いの男の子がいました。国の王様もこのことを聞き及びましたが信じないで、その子を呼びにやりました。それで、王様は羊飼いに、「もしお前がわしの問う3つの質問に答えを出せれば、お前をわが子とみなし、わしの王宮に一緒に住まわせてやろう。」と言いました。羊飼いは、「その3つの質問とは何でございましょう。」と言いました。王様は、「最初の質問は、海にはいくつの滴があるか?」と言いました。羊飼いは「陛下、私が数え終わるまで、一滴も海に流れ込まないように地上の川を全部せきとめてくだされば、海にいくつ滴があるか教えましょう。」と言いました。
王様は言いました。「次の質問は、空にはいくつの星があるか、じゃ。」羊飼いは、「私に一枚の大きな白い紙をください。」と言いました。それからペンでその紙の上にたくさんの細かい点をつけたのでほとんど見えないくらいになりました。ましてや数えるのは不可能でした。その点を見たら誰でも目が見えなくなったでしょう。そうして羊飼いは、「紙の上の点と同じくらい多くの星が空にあります。数えてみてください。」と言いました。しかしだれもそれをできませんでした。
王様は言いました。「三番目の質問は、永遠には何秒あるのか?」すると羊飼いは、「ロワーポメラニアにはダイヤモンドの山があります。それは幅が2マイル半、深さが2マイル半あります。百年ごとに小さな鳥が来て、それでくちばしをとがらせます。これで山全部がこすれてなくなるとき、永遠のうちの一秒が終わります。」と言いました。王様は言いました。「お前は賢い男のように3つの質問に答えた。これからわしの王宮に住まわせよう。そして、わしはお前をわが子とみなそう。」このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
ある王様に、三人の息子がいました。王様はみんな同じように可愛がっていて、自分が死んだあと、どの息子にあとを継がせたらよいかわかりませんでした。死ぬ時が近づいてきたとき、王様は三人の息子をベッドのそばに呼び、「わしがずっと考えてきたことをお前たちに話そう。お前たちのうちで最もものぐさな者に国を譲ろうと思うぞ。」と言いました。
すると、一番上の王子が、「父上、国は私のものです。というのは私はとても怠け者なので、休もうと寝転がり、滴が目の中に落ちても、眠るために目を開けませんから。」と言いました。
二番目の王子は、「父上、国は私のものです。なぜなら、私はとても面倒くさがりなので、火のそばで温まって座っているとき、脚を引っこめるよりむしろかかとをやけどさせておきますから。」と言いました。
三番目の王子は、「父上、国は私のものです。というのは私はとてもものぐさなので、首を吊られようと縄がもう掛かっていて、だれかが縄を切るための鋭い小刀を私の手によこしても、縄に手を挙げるより首を吊られた方がましですから。」と言いました。父親がこれを聞いたとき、「お前が一番ものぐさだ。お前を王にする。」と言いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
むかし、と言っても今より前、おばあさんが物乞いをして歩くのをきっとみたことがあるでしょう。このおばあさんは同じように物乞いをしていました。そして何かもらうと、「神様があなたに報いてくださいますように」といいました。この物乞いのおばあさんが戸口にくると、愛想の良いいたずらっ子が火のそばに立って体を暖めていました。ドアのそばで震えて立っているので、若者は可哀そうなおばあさんにやさしく言いました。「さあ、ばあさん、暖まりなよ。」おばあさんは入ってきましたが、火のあまり近くに立っていたので、古いぼろ着が燃え始め、おばあさんはそれに気づきませんでした。若者は立ってそれを見ました。が、火を消すべきだったでしょう。火を消すべきだったのは本当じゃないの?それでもし水が無いなら、若者は泣いて体の水を全部目から出すべきだった。そうすれば火をけせる二つのかわいい流れになったでしょう。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
あるとき、一人の魔法使いが大勢の人の真ん中で不思議な術をやって見せていました。おんどりを連れてこさせると、そのおんどりは重い梁をもちあげ、羽根のように軽々と運んだのです。ところが四つ葉のクローバーを見つけたばかりでとても賢くなっていたので、このめくらましがきかなかった娘がいました。娘には梁が一本のわらにしか見えませんでした。それで娘は、「みなさん、おんどりが運んでいるのはわらだってわからないの?梁じゃないわ。」と叫びました。途端に魔力が消えうせ、人々に本当のものが見え、魔法使いに恥をかかせて追い払いました。
ところが、魔法使いは、これを根にもって、「じきに仕返しをしてやる。」と言いました。しばらくしてその娘が結婚する日になりました。娘は着飾り、大勢の人の行列を作って畑を越えて教会がある場所へ行きました。突然、娘は水かさがふくれあがった小川にやってきましたが、渡る橋が何もありませんでした。そこで花嫁は服をたくし上げて、歩いて川を渡ろうとしました。こうして水の中に立っていたら、一人の男が娘のすぐそばで嘲って叫びました。「ははは、お前の目はどこにあるんだ?これを川だと思ってるなんてさ。」それはあの魔法使いでした。それで娘の目は開かれ、自分が亜麻の花で青くなっている畑の真ん中で服をたくし上げて立っているのだとわかりました。そうしてみんなにも同じように見えたので、娘をやいやいからかって笑い、追いはらいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
神様は全ての動物を創り、狼を自分の犬に選びましたが、山羊を忘れてしまいました。それで悪魔も準備し創り始め、立派な長い尻尾のある山羊を創りました。さて、山羊が草を食べに行くと、たいてい尻尾が生け垣にひっかかったままになるので、悪魔はでかけていって、とても骨をおって、尻尾をほどかなければなりませんでした。とうとう悪魔は怒って、行ってどの山羊の尻尾も噛み切ってしまいました。それが今日までぶつっとした切り株になってみられるものです。
それから悪魔は山羊だけで草を食べに行かせました。しかし、山羊があるときは実のなる木を噛み、またあるときは立派なブドウを駄目にしたり、他の弱い植物を枯れさせたりしたのを神様が気づくことになりました。神様は、これに心を痛めて、やさしさと情けから狼たちを呼びました。それで狼はすぐにそこに行った山羊をバラバラに引き裂きました。
悪魔はこれを見たとき、神様の前に行き、「あなたの生き物が私の生き物を殺しました。」と言いました。神様は「どうしてお前は害をなすものを創ったのですか。」と答えました。悪魔は「私の考えが悪い方に走るんですから、そうするよりしかたがなかったんです。私が創るものは他の性質を持ちません。あなたは酷い損害を私に支払わなくてはいけません。」と言いました。「カシの葉が落ちたらすぐ支払うよ。そのとき来なさい。お前の金はそのとききっちり用意しておくよ。」
カシの葉が落ちてしまったので、悪魔はやって来て、自分に当然支払うべきものを要求しました。しかし、神様は「コンスタンチノープルの教会にはまだ葉が全部ついている高いカシの木が立っている。」と言いました。怒って悪態をつきながら、悪魔は別れていき、カシの木を探しにでかけました。荒れ野を6ヶ月さまよい、その木を見つけました。そして、戻ったとき、その間にカシの木は全部緑の葉っぱで再びおおわれていました。それで、悪魔は損害賠償を失くしてしまいました。それで、怒り狂って、残っている山羊全部の目をとりだして代わりに自分の目を入れました。こういうわけで、全部の山羊は悪魔の目をしていて、尻尾は噛み切られているし、悪魔は山羊の格好を装うのが好きなのです。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
神様がまだこの地上を歩いていた頃、神様と聖ペテロはある晩鍛冶屋に立ち寄り、ただで泊めてもらいました。するとたまたま、年とって体が弱りよぼよぼになった貧しい乞食がこの家に来て、鍛冶屋に施しを願いました。聖ペテロはこの乞食を気の毒に思い、「主よ、お気に召すなら、この男が自分のパンを稼げるように苦しみを解いてあげてください。」と言いました。神様はやさしく、「鍛冶屋さん、私に炉を貸してくれませんか、それから石炭をくべてほしい。そうすればこの苦しんでいる老人をまた若くするから。」と言いました。鍛冶屋は喜んでそうして、聖ペテロはふいごを吹き、石炭の火が大きく高く燃え上がりました。それで神様は小さな老人を連れて行き、炉の赤く熱い火の真ん中に老人を押して入れました。それで老人はバラの木のように光り、大きな声で神を讃えました。そのあと、神様は冷やし桶に行き、光っている小さな男を水にどっぷり浸かるようにしてその桶に入れました。男をよく冷やした後、神様は男に祝福を与えました。すると小さな男はパッと跳び出してきました。若々しく背筋が伸び健康で、まるでほんの20歳くらいに見えました。
鍛冶屋は、この有様をよく注意してみていましたが、みんなを夕食に招きました。ところで鍛冶屋には年とって半ば目が見えない背の曲がった姑がいて、若者のところに行き、とても大真面目に火でやけどをしなかったか尋ねました。若者は、あれ以上に気持ちよいことはありませんでしたよ、ひんやりした露の中にいるみたいに赤い熱の中に座っていました、と答えました。若者の言葉はおばあさんの耳に夜通しこだましていました。そして次の朝、神様が鍛冶屋に心からお礼を言い、また出かけてしまってから、鍛冶屋は、全部とても注意して見ていたのだから、自分も同じように年とった姑を若くできないものか、自分の商売のうちなんだしな、と考えました。
それで姑を呼んで、あんたも18歳の娘のように跳ねまわりたいかね?と尋ねました。姑は、「是非ともそうなりたいもんじゃのう。あの若い人はとても元気で出てきたのう。」と言いました。それで鍛冶屋は火をがんがんに燃やし、おばあさんをその中に押して入れました。するとおばあさんはあちこちと身もだえし、人殺し!と恐ろしい悲鳴をあげました。「じっとしてろよ。なんでそんなに叫んだり跳びはねてるんだよ?」と鍛冶屋は言い、話しながらまたふいごを吹きました。それでとうとうおばあさんの着ているものが全部燃えてしまいました。おばあさんはひっきりなしに叫んで、鍛冶屋は心の中で、おれは技をちゃんとやれてないな、と思い、おばあさんを取り出して、冷やし桶に投げ入れました。するとおばあさんはとても大きな悲鳴をあげたので、二階の鍛冶屋のおかみさんと息子の嫁さんにそれが聞こえ、二人とも下に走ってきました。そして、おばあさんが冷やし桶の中でどたりとねて吠えたり叫んだりして、顔はしわがより縮んですっかり変形しているのを見ました。それで二人とも、おなかに子供がいたのですが、とてもおそろしくてその夜に二人男の子が生まれました。その子供たちは人間らしくなくて、猿のようでしたが、森へ走っていき、その二人から猿の種がはじまりました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、二人の兄弟がいて、二人とも兵士として務めましたが、一人は金持ちで、もう一人は貧乏でした。すると貧しい男は、貧乏から抜け出そうと思い、兵士の服を脱ぎ捨て、お百姓になりました。男は少しばかりの土地を掘り起こし、かぶの種を播きました。種は芽を出し、一つのかぶが大きく丈夫に育って、みるみるうちにだんだん大きくなっていき、とどまる様子がありませんでした。それでかぶの王女と呼んでもよいくらいでした。というのは後にも先にもそんなに大きいかぶは見られないだろうからです。とうとうかぶは巨大になり、それだけで荷車いっぱいになったので、荷車を引くのに牛が二頭必要になりました。お百姓はかぶをどうすればよいか、そのかぶが自分にとって幸か不幸か、まるきり見当がつきませんでした。
おしまいに、(売ったら、大した金にもなるまい、自分で食べたとしても、まあ、小さなかぶだって味は同じだ、王様のところへ持って行って差し上げた方がよさそうだ)と考えました。そこで荷車にかぶを積み、二頭の牛に引かせて、王様のところへ持って行って贈り物にしました。「何とも珍しいものだ」と王様は言いました。「不思議な物はたくさん目にするが、こんなおばけかぶは初めてだ。どんな種からこのかぶはできたのかね?それともお前は幸運の申し子でたまたまそうなったのかね?」「いえいえ」とお百姓は言いました。「申し子なんかじゃございませんとも。私は貧しい兵士で、もう暮らしが立たなくなったので兵士の服を釘にかけ、畑を耕すことにしたのです。」
「私には兄が一人いて、その兄は金持ちで王さまもよくご存知ですが、私ときたら、何もないので、誰も目にとめてくれません。」それで王様は可哀そうに思い、「お前を貧乏から救いあげ、贈り物をやって金持ちの兄と同じくしてやろう」と言いました。それから王様は、たくさんの金貨と土地と牧草地と家畜をお百姓に与えてすごい金持ちにしたので、兄の財産は比べものにならなくなりました。金持ちの兄は、貧乏な弟がたった一つのかぶで手に入れたもののことを聞くと、羨ましく思い、なんとかして自分も同じような幸運を得られないものかと考えました。
ところが、兄は弟よりもっと賢いやり方でそれにとりかかり、王様はお返しに弟よりもっと大きな贈り物をくれるだろうと信じ込んで、金と馬をもって王様のところへいきました。弟は一つのかぶであんなに貰ったのだから、こういう素晴らしいもののお返しならどんなものをいただけるだろうと期待したのです。王様は贈り物をうけとり、お返しには、あの大きなかぶ以外に珍しくすばらしいものはない、と言いました。
それで金持ちの男は弟のかぶを荷車に積んで家に持って帰らせるしかありませんでした。家で、兄は誰にこの怒りをぶつけたらよいのかわかりませんでしたが、しまいに悪い考えが浮かびました。弟を殺そうと決めたのです。兄は殺し屋を雇い、待ち伏せさせておき、弟のところへ行って、「なあお前、隠された宝物のことを知ってるんだが、一緒に掘り出して山分けしよう。」と言いました。弟は承知して、疑わずについていきました。二人が歩いていると殺し屋が弟に襲いかかり、縛って木に吊るすところでした。しかし、ちょうどこうしているときに、大きな歌声と馬のひづめの音が遠くから聞こえてきました。それで殺し屋たちは仰天し、とらえた男を急いで袋に押し込んで枝に吊るし、逃げて行きました。ところで、弟は吊るされたままごそごそやって袋に頭を出せるだけの穴を開けました。
やって来た男は他ならぬ旅をしている学生でした。その若者は歌を歌いながら楽しく森で馬を乗り回していたのです。上にいる弟は下を通っている男を見て、叫びました。「やあ、君は良い時に来たね。」学生は周りを見回しましたが、声がどこから来ているのか分かりませんでした。とうとう、「僕に呼びかけているのは誰なんです?」と言いました。
すると返事が木の上からきました。「目をあげてごらん。この上で知恵の袋に入っているのさ。ちょっとの間にすごいことを覚えたんだ。これに比べたら学校で習うことなんてお笑いだよ。もうじきありとあらゆることを覚えてしまい、誰も及ばないほど賢くなって下りていくんだ。星座や風の動き、海の砂、病気の治し方、薬草の使い方、鳥や石もみんなわかってるさ。あんたも一度ここに入れば、どんな崇高なことが知恵の袋から出て来るか感じ取れるさ。」
これを聞いて学生は驚いて、「あなたに会えてよかったなあ。私もちょっと袋に入れてもらえないですか?」と言いました。木の上にいる男は気がすすまなさそうに、「ちょっとなら入れてあげよう。あんたが金を払っていい言葉をかけてくれたらね。だけど、あと一時間は待っていなくちゃだめだよ。袋を貸す前にあと一つ覚えなくちゃいけないんだ。」と言いました。学生はちょっと待っていましたがじれったくなり、すぐ入らせてくれませんか、と頼みました。早く知恵が欲しくてたまらなくなったのです。
それで、上にいる男はとうとう頼みに折れたふりをして、「知恵の家から出るから、綱を引きおろしてくれ、そうしたらあんたが入れるから。」と言いました。それで学生は袋を下ろし、結び目をほどいて弟を自由にしました。それから、「さあ、すぐに私を引き上げてください」と叫び、袋に入ろうとしました。「待てよ、それじゃだめなんだ」と弟は言い、学生の頭をつかんで袋の中でさかさまにし、しっかり縛ると、知恵の弟子を綱で木の上に引き上げました。そうして袋を揺らしながら、「どうだい?君、そら、もう知恵がやってくるのを感じるだろう。君は貴重な経験をしているぜ。もっと賢くなるまでじっとしてるんだぜ」と言いました。そうして学生の馬にまたがると行ってしまいました。しかし、一時間すると、人をやって学生を出してやりました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
或るとき、男と妻が家の戸口に座っていました。二人は焼いたニワトリを前において、今一緒に食べようとしていました。そのとき、男は自分の年老いた父親がやってくるのを見て、急いでニワトリをとると隠しました。というのは父親に食べさせる気がなかったからです。年寄りは来て、飲み物を飲んで、去っていきました。それで今、息子は焼いたニワトリをまたテーブルに出そうとしましたが、とり上げてみると、それは大きなヒキガエルになっていました。そして男の顔に跳び付くとそこに居座って二度と去りませんでした。もし誰かがヒキガエルを離そうとすると、カエルはまるでその人の顔に跳ねそうにして毒々しくにらむのでした。その結果、だれもあえてそのヒキガエルに触ろうとしませんでした。しかも恩知らずの息子は毎日カエルにえさをやらねばなりませんでした。さもないと、男の顔を食ったからです。こうして男は休みを知らず世間を歩き回りました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、王様とお后が住んでいました。二人は裕福で望む物は何でもありましたが子どもだけはいませんでした。お后はこれを日夜嘆いて、「私は何も生えない畑みたいなものだわ。」と言いました。とうとう神様がお后の願いを叶えてくださいましたが、子供が生まれてみると、人間の子供には似ても似つかない小さなロバでした。母親はそれを見ると、とても嘆き、泣き叫んで言いました。「ロバの子ならいっそ子どもがいない方がずっとよかったのに。こんな子は川に捨てて魚に食べさせればいいのよ。」しかし王様は、「いいや、神様がくださったのだ。この子はわしの息子で跡継ぎだ。わしが死んだら、玉座に座り、王冠を頂くのだ。」と言いました。
それでロバは育てられ大きくなり、耳は高くまっすぐ伸びました。朗らかな性格で、あちこち跳ねまわり遊びましたが、特に音楽が大好きでした。それで有名な音楽家のところに出かけて、「あなたのようにうまいリュートの弾き方を教えてください」と言いました。「まあ、ぼっちゃん」と音楽家は答えました。「君にはかなり難しいんじゃないかな、君の指はリュートにはあまり適していなくて、あまりにも大きすぎるから、弦がもたないと思うよ。」しかし、どんな口実も役に立ちませんでした。ロバはどうしてもリュートを弾くと言ってききませんでした。そうして辛抱強く熱心に練習したので、とうとう先生自身と同じくらいうまく弾けるようになりました。
あるとき、若い王子は考え事をしながら出歩いていて、泉に来ました。覗きこむと鏡のような水面に自分のロバの姿が見えました。それを見て王子はとても悲しくなり、広い世間に出て行き、ただ一人の忠実なお供だけ連れていきました。二人はあちこち旅をして、しまいには年とった王様が治めている国に入りました。王様にはただ一人の娘がいましたがとても美しい娘でした。ロバは、「ここにとどまることにしよう。」と言い、門をたたき、「ここに客が来てるぞ、門を開けて入れてくれたまえ」と言いました。
門を開けてくれないので、王子は座ってリュートを取り出し、二本の前足でとてもきれいに弾き始めました。すると、門番は目をみはって口をぽかんと開け、それから王様のところに走っていくと、「小さなロバが門の外にいて、名人のようにうまくリュートを弾いています。」と言いました。「それではその音楽家を中に入れよ。」と王様は言いました。しかしロバが入ってくると、みんなはそのリュート弾きを笑い出しました。
ロバは召使たちと一緒に座り食べるように言われると、嫌って、「僕は普通の家畜小屋にいるロバじゃありませんよ。僕は高貴なロバです。」と言いました。すると、みんなは「そういうことなら、兵士たちと一緒に座れ。」と言いました。「いいえ、僕は王様の隣に座ります。」王様は笑って機嫌よく、「よろしい、好きなようにするがよい、こっちへ来たまえ」と言いました。そのあと王様は、「ロバくん、娘をどう思うかね?」と尋ねました。ロバは娘の方に首を回し見て、頷き、「とてもおきれいです。お嬢さんほどきれいな方はお目にかかったことがありません。」と言いました。「そうか、じゃあ、娘の隣にも座るがよいぞ。」と王様は言いました。「それこそ望むところです。」とロバは言って、娘の隣に腰を下ろし、品よくきれいに作法を心得て、食べたり飲んだりしました。
王宮にしばらくとどまったあと、高貴な動物は(こうしていて何の役に立つというのか?やはり家に帰らないといけない)と思い、しょんぼりと頭をたれ、王様のところへ行って暇乞いを告げました。しかし王様は、ろばを好きになっていたので、「ロバくん、どうしたのかね?酢のつぼみたいに気難しい顔をしてるじゃないか、何でも望む物をやろう。金が欲しいのか?」と言いました。「いいえ」とロバは言って、首を振りました。「宝石や立派な服はどうだ?」「いいえ」「国を半分はどうだ?」「とんでもない」すると王様は言いました。「お前の気に入ることがわかればいいんだがなあ。わしのきれいな娘を妻にするのはどうだね?」「ええ、もちろん。」とロバは言いました。「是非お願いします」そして急にロバは元気に嬉しそうになりました。というのはそれこそロバが望んでいたことだったのです。
そうして盛大で華麗な結婚式があげられました。花嫁と花婿が寝室に案内された夕方に、王様はロバがりっぱに振る舞うか知りたくて、召使をそこに隠れさせました。二人が中に入ると花婿は戸にかんぬきをかけ周りを見回し、二人だけだと思ったので、ふいにロバの皮を脱ぎすて、ハンサムな王家の若者の姿で立ちました。「さあ」と若者は言いました。「君は僕の本当の姿を見たね。君にふさわしくないわけじゃないだろう?」すると花嫁は喜んで若者にキスし、心から愛しました。
朝が来ると、王子は跳び起きてまた動物の皮を着ました。それで皮の下にどんな姿が隠されているか誰もわからなかったでしょう。まもなく年とった王様がやってきました。「おや」と王様は叫びました。「ロバくんはもう起きてるのか。だけどお前はきっと悲しいだろうね、夫が普通の人間じゃないからな。」と娘に言いました。「そんなことないわ!お父様。私は世界で一番ハンサムな人のようにあの方を愛してるし、死ぬまで一緒にいるわ。」
王様は驚きました。しかし、隠れていた召使がやってきて、全てを明らかにしました。王様は、「本当か?そんなはずがない!」と言いました。「それでは今夜ご自身で見張ってください、するとご自分の目で確かめられます。それで、陛下、ロバの皮をとって火に投げ込めば、ロバは本当の姿を現すしかないでしょう」「よくぞ申した。」と王様は言いました。
その夜二人が眠っている間に王様は部屋に忍び込み、ベッドのところに行くと、月明かりで気高い顔の若者がそこにねているのが見えました。皮は床に広がっていました。そこで王様は皮をとって、外に大きな火をたかせ、皮をその中に投げ込んで燃え尽きて灰になるまで自分でそばにいました。
しかし、男が皮をとられてどうするか知りたかったので、一晩じゅう起きて寝ずの番をしました。若者は十分眠って朝の最初の光がさすと起きあがり、ロバの皮を着ようとしましたが見つかりませんでした。それで若者はびっくりし、悲しく不安になって、「もう逃げなくてはいけない。」と言いました。しかし、部屋の外へ出ると、王様が立っていて言いました。「息子よ、そんなに急いでどこへ行くのだ?何を考えておる?ここにいるのだ。お前はとてもハンサムな男だ。わしから去っていくな。もうお前に国の半分をやろう、わしが死んだあと国は全部お前のものになる。」「それでは、初め良ければ終わり良しですから、ここにいることにします。」と若者は言いました。
そうして王様は若者に国を半分与えましたが、一年経って王様が亡くなると国全体が若者のものとなりました。そして自分の父親が亡くなった後はもう一つの国も若者のものになり、栄えある生涯を送りました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、息子が一人いる貧しい女がいました。息子はとても旅にでたがりましたが、母親は、「お前はどうやって旅ができるの?お前が持って行くお金がうちにはないんだよ。」と言いました。すると息子は「自分で何とかするよ。いつも、あまり無い、あまり無い、あまり無い、と言うことにする。」と言いました。
そこで息子はしばらく歩いていき、いつも「あまり無い、あまり無い、あまり無い」ととなえていました。すると、漁師たちが集まっているところを通りかかり、「ご幸運を!あまり無い、あまり無い、あまり無い」と言いました。「何だと?若造、あまり無い、だと?」そして網が引き出されるとあまり魚が入っていませんでした。そこで漁師の一人が若者を棒でなぐり、「どうだ、二度となぐられたいと思わないだろう。」と言いました。「じゃ、何て言えばいいんですか?」と若者は尋ねました。「いっぱいつかまえろ、いっぱいつかまえろ、と言うんだ」
そのあと、若者はしばらく歩き、「いっぱいつかまえろ、いっぱいつかまえろ」と言っていましたが、首つり台のところにさしかかりました。そこでは可哀そうな罪人がいて、しばり首になるところでした。それで若者は、「お早う、いっぱいつかまえろ、いっぱいつかまえろ」と言いました。「何だと、この野郎、いっぱいつかまえろ、だと?悪い奴が世の中にもっといると言いたいのか?これでたくさんじゃないのか?」そうしてまたまた背中をさんざんなぐられました。「じゃ、何て言ったらいいんですか?」と若者は言いました。「神様、あわれな魂にお慈悲を、と言うんだ」
また若者はしばらく歩いていき、「神様、あわれな魂にお慈悲を」ととなえていました。すると、みぞにさしかかり、そこでは解体人が立って馬を解体していました。若者は「お早う、神様、あわれな魂にお慈悲を」と言いました。「何だと?この意地の悪い悪党め」と言って解体人は横っ面を強くひっぱたいたので、若者は目がくらみました。「じゃ、何と言えばいいんですか?」「腐った肉はみぞに入ってろ、と言うんだ」
それで若者はまた歩いていき、いつも「腐った肉はみぞに入ってろ、腐った肉はみぞに入ってろ」ととなえていました。そうして人がいっぱいのっている馬車のところに来ました。そこで若者は「お早う、腐った肉はみぞに入ってろ」と言いました。すると馬車がみぞに落ち、御者はむちをとり若者をうちすえました。若者はしかたなくやっとこさ歩いて母親のところへ戻り、死ぬまで二度と旅に出ませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、二人の兄弟がいました。兄は金持ちで弟は貧乏でした。ところが金持ちの兄は貧しい弟に何もあげませんでした。それで弟は穀物を売ってやっと暮らしをたてていましたが、ひどい時はおかみさんや子供に食べさせることもできませんでした。あるとき、手押し車を押して森を通っていると、片側に大きな木が生えていない禿げ山が見えました。弟は前にその山を見たことがなかったので、立ち止まって呆気にとられて眺めました。
こうして立っていると、12人の大きな荒くれ男たちがやってくるのが見え、弟はその男たちが強盗に違いないと思ったので、手押し車をやぶの中に押し込め自分は木に登って、何が起こるか見ようと待っていました。ところが12人の男たちはその山に行き、「ゼムジ山、ゼムジ山、開け」と叫びました。途端に木の無い山は真ん中がぱくっと開き、12人は中に入って行き、みんなが入ってしまうとすぐ山は閉じました。
しばらくすると山は再び開き、男たちは重い袋を肩にかけて出てきて、みんながまた明るいところにでてしまうと「ゼムジ山、ゼムジ山、閉じろ」と言いました。すると山は閉じて、もうその山に入口は見えなくなり、12人は立ち去りました。男たちがすっかり見えなくなると、貧しい男は木から下りて、山に何が密かに隠されているのか知りたくてたまらなくなりました。そこで、山に近づき、「ゼムジ山、ゼムジ山、開け」と言いました。すると山は弟の言葉にもまた開きました。それで弟は中に入りました。山全体が、銀や金でいっぱいのほら穴になっていて、奥に真珠やきらきらする宝石の大きな山がいくつも麦のようにつまれてありました。
貧しい男はどうしたらよいか、これらの財宝をとっていいのかどうかわかりませんでした。とうとう男はポケットに金貨をつめましたが、真珠や宝石はそのままにしておきました。また外に出ると男も「ゼムジ山、ゼムジ山、閉じろ」と言いました。すると山はひとりでに閉じ、男は手押し車を押して家に帰りました。そうしてもう弟は心配の種がなくなり、持っている金でおかみさんや子供たちにパンや、おまけにワインまで買ってやることができました。弟はほがらかに清く暮らし、貧しい人々を助けてやり、誰にも親切にしました。ところがお金がなくなると、弟は兄のところへ行き、一ブッシェル(35.238リットル)用の升を借り、またいくらか山からもってきましたが、とても値打ちのあるものには手を触れませんでした。
三度目にとってこようとしたとき、弟はまた兄から升を借りました。しかし兄は長い間、弟の財産や豊かな暮らしぶりを羨ましく思い、どこからその富がくるのか、弟が升を何につかうのかわかりませんでした。それでずる賢い計略を思いつき、升の底にタールを塗っておきました。それで弟が升を返したとき、一枚の金貨が升にくっついていました。兄はすぐに弟のところに行き、「ブッシェル升で何を測っていたのかね?」と尋ねました。「小麦や大麦だよ。」と弟は言いました。すると兄はくっついていた金貨を見せ、本当のことを言わないと裁判所に訴えてやるぞ、と脅しました。それで可哀そうに、弟はあった出来事をすっかり兄に話しました。
そこで金持ちは馬車を用意させると、でかけていき、弟がやったよりうまくその機会を利用し、すっかり違う財宝を持って帰ろうと決めていました。山に着くと、兄は「ゼムジ山、ゼムジ山、開け」と言いました。すると山は開き、兄は中に入りました。すると目の前にものすごい宝があり、長い間どれをとったらよいかわかりませんでした。
とうとう持てるだけたくさん宝石をとりました。そうして荷物を外に運び出そうとしましたが、すっかり財宝に気をとられたせいで、山の名前を忘れてしまい、「ジメリ山、ジメリ山、開け」と叫びました。
しかし、それは本当の名前ではなかったので山はちっとも動かず閉まったままでした。それで兄は焦り、山の名前を考えれば考えるほど、ああでもないこうでもないと混乱してきました。それで財宝は何の役にも立ちませんでした。夕方になると山が開き、12人の強盗たちが入ってきました。兄を見ると強盗たちは笑って、「よう、小鳥ちゃん、とうとうお前をつかまえたぜ。お前がここに2回入っていたのをおれたちが知らなかったとでも思っているのか?そのときはお前をつかまえられなかった。この三回目はお前を二度と外に出すもんか。」と叫びました。そこで兄は叫びました。「それはおれじゃなくて弟だ。」しかし、兄がどんなに命乞いしようが何を言おうが無駄で、強盗たちは頭を切り落としてしまいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、兄と妹がいて、心からお互いを愛していました。しかしながら、二人の生みの母親は死んでしまい、継母がいましたが、やさしくなく、二人をいじめるため密かに何でもしました。あるとき、二人は家の前の草地で他の子供たちと遊んでいました。また草地の中に家の片側に近いところまできている池がありました。子供たちはそのあたりを走り、お互いをつかまえ、数え遊びをしていました。「エネケ、ベネケ、私を生かして、私はあなたに小鳥をあげる、小鳥にわらを探させる、食べるわらを牛にあげる、かわいい牛はミルクをくれる、ミルクを私はパン屋にもっていく、パン屋はケーキを焼く、ケーキを私は猫にあげる、それで猫はネズミをとる、ネズミを私は煙の中につるす、それであなたは雪を見る」子供たちはこの遊びをするとき輪になって立ち、雪の言葉がくる子は逃げなくてはならなくて、他の子供たちがその子を追いかけつかまえました。子供たちが楽しそうに走り回っていると、継母は窓から見て,怒りました。それで、継母は魔法の術をわかっていたので、二人とも魔法にかけ、兄を魚に、妹を子羊に変えました。それで、魚は池をあちこち泳ぎ、子羊は草地をあちこち歩き回りましたが、みじめで草1本も食べたり触ったりできませんでした。
こんなふうにしばらく過ぎました。それから何人かよその人がこの城へのお客としてやってきました。不実な継母は、これはいい機会だ、と考え、料理人を呼んで、「草地に行って子羊をとってきて、殺しなさい。他にお客さんたちのごちそうは何もないんだからね。」と言いました。それで料理人は行って子羊をつかまえ、台所へ連れてきて、足を縛りました。子羊はこういうことを全部我慢して耐えていました。料理人は包丁をとりだして、子羊を殺すために戸口で研いでいたとき、小さな魚が溝石の前で水の中を行ったり来たりして自分を見上げているのに気付きました。でも、これは兄でした、というのは魚は料理人が子羊を連れ去るのを見たとき、あとをつけ、家まで池を泳いできたからです。すると、子羊は下のその魚に叫びました、「ああ、とても深い池にいる兄さん、私の心はどんなに悲しいか、料理人が私を殺すため包丁を研いでるの。」すると小さな魚は「高いところの妹よ、この池にいて私の心はどんなにかなしいことだろう。」と答えました。料理人は子羊が話せて、しかも下の魚にそんな悲しいことを言うのを聞いたとき、びっくりして、これは普通の羊のはずがない、家の悪い女に魔法にかけられたにちがいない、と思いました。それで「安心しな、お前を殺さないよ」と言って、別の羊を連れてきてお客をもてなす支度をしました。そして 子羊を良い農夫の女に渡し、自分が見て聞いたことを全部説明してきかせました。ところで、その農夫はとても良い人で、妹の養い親になり、すぐにその子羊が誰か勘付いて、賢い女に連れていきました。それで、賢い女は子羊と小魚に祝福のまじないをとなえると、その力で二人はもとの人間の形に戻りました。このあと、賢い女は二人を大きな森の中の小屋に連れて行き、二人だけでそこに住みましたが、満足して幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。