グリム童話
グリム童話は、ヤーコプとヴィルヘルム・グリムによって編纂された、時代を超えた民話のコレクションです。これらの物語は、勇気、魔法、道徳をテーマにした話が世代を超えて共鳴し続ける、民俗の宝庫です。「シンデレラ」や「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」などの古典から、「漁師とその妻」や「ルンペルシュティルツキン」といったあまり知られていない珠玉の話まで、それぞれの物語がヨーロッパの口承伝承の豊かな織物を垣間見せてくれます。 グリム童話は、その鮮やかなキャラクター、道徳的教訓、そしてしばしば暗いトーンが特徴で、歴史的文脈の厳しい現実と幻想的な要素を反映しています。その永続的な魅力は、楽しませ、教え、驚きをもたらす能力にあり、これが子ども文学の礎となり、民俗学や物語の研究者たちにとっての魅力的な源となっています。
Episodes
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
「あんた、どこへ行くの?」「ワルペへ」「私はワルペへ、あんたはワルペへ、では、では、一緒に行きましょう。」「亭主はいるのかい?なんて名前?」「チャム」「私の亭主はチャム、あんたの亭主はチャム、私はワルペへ、あんたはワルペへ、では、では、一緒に行きましょう。」「子どもはいるのかい?なんて名前?」「ワイルド(荒々しい)」「私の子はワイルド、あんたの子はワイルド、私の亭主はチャム、あんたの亭主はチャム、私はワルペへ、あんたはワルペへ、では、では、一緒に行きましょう。」「ゆりかごはあるのかい?ゆりかごをなんて呼んでる?」「ヒッポダドル」「私のゆりかごはヒッポダドル、私の子どもはワイルド、あんたの子はワイルド、私の亭主はチャム、あんたの亭主はチャム、私はワルペへ、あんたはワルペへ、では、では、一緒に行きましょう。」「下男もいるのかい?あんたの下男の名前は?」「"仕事漬け"」「私の下男は"仕事漬け"、私の子どもはワイルド、あんたの子はワイルド、私の亭主はチャム、あんたの亭主はチャム、私はワルペへ、あんたはワルペへ、では、では、一緒に行きましょう。」このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、ブラーケルの娘がヒンネンベルクのふもとにある聖アンネ礼拝堂に行きました。夫をもちたいと思っていて、礼拝堂には他に誰もいないと思ったので、娘は歌いました。
「ああ、聖なるアンネ様! すぐに夫をもてるようお手伝いください。あなたはその人をよくご存知です。ズットマー門のそばに住んでいて、髪は金髪、あなたはその人をよくご存知です。」
しかし、牧師が祭壇のかげに立っていて、これを聞きました。それで牧師はとてもしわがれた声で「お前はその人を夫にできない、お前はその人を夫にできない!」と叫びました。娘は、聖母アンネのそばに立っている子供のマリアがそう叫んだと思い、怒って、「ふん、ばーか!いい気なやつ、お黙り、お前のお母さんに話させなさい!」と叫びました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
ヴェレルとゾイストの間にクノイストという名の男が住んでいて、息子が三人いました。1人は目が見えなくて、もう1人は足が不自由で、三人目は素っ裸でした。あるとき、三人は野原に行き、ウサギを見ました。目の見えないのが撃って、足の不自由なのが捕まえて、裸の男がポケットに入れました。それから、とても大きな湖に行きました。その湖には3艘の船があり、1艘は進み、もう1艘は沈み、3艘目は底がありませんでした。3人とも底がない船に乗りました。その後、とても大きい木があるとても大きい森に来ました。その木の中にとても大きい礼拝堂があり、その礼拝堂にブナの木でできた寺男とツゲの牧師がいて、牧師はこん棒で聖水をかけていました。本当にどんなに幸せでしょう、聖水から逃れられる人は。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
東インドが敵に包囲され、敵は600ドル受け取るまで囲みを解こうとしませんでした。それで町の人々は、そのお金を調達できるだれでも市長にする、と太鼓を打ってお触れを出しました。さて息子と海で漁をしていた貧しい猟師がいましたが、敵がきて、息子をとりこにし、代わりに父親に600ドルくれました。それで父親は行って町のお偉方にお金を渡し、敵は出ていき、猟師は市長になりました。すると、「市長様」と言わない人はだれでも縛り首の死刑にする、というお触れが出されました。
息子は敵から逃げて、高い山の大きな森に来ました。山が開いて、息子は大きな魔法の城に入りました。そこでは椅子、テーブル、ベンチがみんな黒い布をかけられていました。するとすっかり黒ずくめで顔だけが少し白い3人の若い王女がやってきました。王女たちは息子に、怖がらなくていいのよ、あなたを傷つけたりしないわ、あなたは私たちを救うことができるの、と言いました。息子は、どうしたらよいかわかりさえしたら、喜んでそうしますよ、と言いました。すると王女たちは、まる一年自分たちに話してはいけないし、見てもいけない、欲しいものはただそう言えばよい、もし自分たちがあなたに答える気があればそうするから、と言いました。
しばらくそこにいたあと、息子は父親のところに行きたいと言いました。すると王女たちは、行ってもよい、お金の入っているこの財布を持っていくがよい、このコートを着なさい、一週間でまたここにもどらなくてはいけませんよ、と言いました。それから息子は持ち上げられ、あっという間に東インドにいました。息子は猟師の小屋にもう父親を見つけられなかったので、貧しい猟師はいったいどこだろう?と人々に尋ねました。すると人々は、そう言ってはいけない、さもないと縛り首になるよ、と息子に言いました。それから、父親のところへ行き、「猟師、どうやってここにいるんだ?」と言いました。すると父親は「そう言ってはいけない。もし町のお偉方がそれを知ったら、お前は縛り首になるよ。」と言いました。
しかし、息子はやめようとしなかったので、首つり台へ連れていかれました。そこにいるとき、息子は、「皆様方、どうか古い猟師の小屋へ行く許可をください。」と言いました。それから自分の古い仕事着を着るとお偉方のところに戻り、「今度はわかりませんか?私は貧しい猟師の息子じゃないですか?この服を着て、父母のためにパンを稼ぎませんでしたでしょうか?」と言いました。これで父親は息子をわかり、息子に謝り、家へ連れて帰りました。それから息子は自分におこったあらゆることを、高い山の森へ入っていき、山が開いて、魔法の城へ入り、そこではすべてが黒く、顔が少し白い他は黒い三人の若い王女がじぶんのところにきて、自分にこわがらないようにと言い、自分が王女たちを救える、と言ったことを語りました。
すると母親が、それをするのはいいことじゃなさそうだね、聖いろうそくを持っていって、王女たちの顔に沸騰したロウを落としてみるといいよ、といいました。息子はまた戻りました。そしてとても怖かったので、王女たちが眠っていたとき顔にロウを垂らしました。すると顔はみんな半分白くなりました。それから三人の王女は三人ともぱっと起きあがり、「このいまいましい犬め、私たちの血がお前に仕返しを叫ぶぞ。もうこの世にうまれている誰もいない。私たちを救うことができる誰もこれからも生まれないだろう、まだ私たちには7本の鎖につながれている三人の兄弟がいる。兄弟にお前をずたずたにひきさかせてやるぞ。」と言いました。それから城中に大きな悲鳴が聞こえ、息子は窓からとび出て脚を折りました。そして城はまた地中に沈み、山がまた閉じて、城がどこにあったのかだれもわかりませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、一人の王様がいました。王様は、宮殿の近くには大きな森をもっていて、あらゆる種類の動物がいっぱいいました。ある日王様はノロジカを撃たせるため一人の猟師を送り出しましたが、猟師は戻ってきませんでした。「たぶん何か事故が起こったんだろう」と王様は言い、次の日、その猟師を探しにさらに二人の猟師を送り出しましたが、その二人も帰ってきませんでした。それで3日目には王様は猟師全員に、「森をくまなく探せ、3人全員を見つけるまであきらめるな。」と言って送り出しました。しかし、これらの猟師たちの誰もまた帰って来ませんでした。また一緒に連れて行った犬の群れも一匹も見られませんでした。そのときから、もう誰も森へ入ろうとはせず、森は暗く静かでひっそりしており、何も見られず、ただ時々ワシやタカがその上を飛んでいるだけでした。
こういう状態が何年も続いたあるとき、見知らぬ猟師が職を求めて王様に取り次ぎを願い、危険な森へ入ろうと申し出ました。ところが王様は承知しないで、「あそこは安全でないのだ。お前も他の者たちと同じ目にあうのではないか。二度と出てこれなくなるだろう。」と言いました。猟師は、「陛下、危険は承知の上です。怖くはありません。」と答えました。それで、猟師は犬を連れて森へ入りました。まもなく犬が道の獲物をかぎつけて追いかけようとしましたが、二足ほど走るとすぐ深い池の前に出て、それ以上進めなくなりました。そしてむき出しの腕が水から伸びてきて、犬をつかまえ、水の中へ引き込みました。猟師はそれを見て、戻り、男を3人バケツを持ってこさせて水をかき出しました。
底まで見ることができると、そこには体が錆びた鉄のような茶色で、毛が顔から膝まで垂れている山男がいました。男たちは山男を縄で縛り、城へ連れていきました。山男を見て城ではみんな驚きましたが、王様は山男を鉄の檻に入れて宮廷の中庭におき、戸を開けた者を死刑とする、と言って禁じて、お后自身が鍵を保管することになりました。そのときからまた安心して誰でも森へ入れるようになりました。
王様には8歳の息子がいました。あるとき息子が中庭で遊んでいるうちに、金のボールが檻に入ってしまいました。男の子はそちらへかけて行き、「ボールをとって」と言いました。「戸を開けてくれるまではだめだ。」と男は答えました。「だめだよ、戸を開けないよ。王様が禁じてるんだもの。」と男の子は言って駆け去りました。次の日、男の子はまた行ってボールを返してもらおうとしました。山男は「戸を開けろ」と言いましたが、男の子は開けようとしませんでした。3日目に王様は狩りにでかけてしまい、男の子はもう一度行って、「戸を開けたくてもできないんだよ。だって鍵がないんだもの。」と言いました。すると山男は「鍵はお前のお母さんの枕の下にあるんだ。そこからとってこれるさ。」と言いました。男の子は、ボールを取り戻したかったので、心配な気持ちを捨てて、鍵をもってきました。戸はなかなか開かなくて、男の子は指をはさんでしまいました。戸が開くと山男は出てきて、男の子に金のボールを渡し、急いで立ち去りました。男の子はこわくなって、山男を呼び、「山男、行かないで、そうしないと僕はぶたれるよ。」と叫びました。山男は戻ってきて、男の子を持ち上げ、肩に担いで、急ぎ足で森へ入って行きました。
王様は帰ってきて空っぽの檻を見て、お后にどうしたのかと尋ねました。お后はそのことについて何も知らなくて鍵を探しましたが、鍵はありませんでした。男の子を呼びましたが、返事はありませんでした。王様は人々を野原に送り、息子を捜させましたが、見つけられませんでした。それで王様には何が起こったか簡単に想像がつき、宮廷は大きな悲しみに包まれました。山男は暗い森に着くと、肩から男の子を下ろし、「お前はもう二度とお父さんやお母さんと会えないだろうが、おれがお前を養ってやろう。お前はおれを自由にしてくれたのだし、可哀そうだからな。おれがいうことを全部やれば、うまくやってゆけるよ。おれは財宝や黄金をいっぱいもってるんだ。世界中の誰よりも多く持ってるさ。」と言いました。山男は苔で男の子のベッドを作ってやり、男の子はそこで眠りました。
次の朝、山男は男の子を泉に連れて行き、「見ろ、金の泉は水晶のように明るく澄んでいる。お前はそのそばに座って何もその中に落ちないように注意しろ。そうしないと泉は汚れてしまうからな。お前が命令に従ったかどうか毎晩見に来るぞ。」と言いました。男の子は泉の淵に腰をおろして、中で金の魚や金の蛇が姿を見せるのをときどき見て、何も落ちないよう注意していました。こうして座っていたとき、指がとてもずきずき痛くなってきたので、うっかりその指を水に入れてしまいました。男の子は急いで指をひきあげましたが、指がすっかり金に染まっているのがわかりました。金を洗いおとそうといろいろやってみましたが、無駄でした。夜に鉄のハンスは戻ってきて、男の子を見、「泉はどうした?」と言いました。「何もないよ。何もない。」と男の子は答え、男に見えないように背中の後ろに指を隠していました。しかし、男は「お前は水に指を突っ込んだろ。今回は許してやろう。だが二度と何も入れるなよ。」と言いました。
男の子は夜明けにはもう泉のそばに座り、見張っていました。指がまた痛くなり、頭の上に指をやると、不幸にも一本の髪の毛が泉に落ちてしまいました。急いで拾い上げましたがもうすっかり金に染まっていました。鉄のハンスが来て、何が起こったかもう知っていました。「泉に一本髪の毛を落としたな。もう一度見張りを許してやろう。だが3回目にこういうことがあったら、泉は汚れ、お前はもうおれのところにはいられないからな。」と男は言いました。
三日目に男の子は泉のそばに座り、どんなに痛んでも指を動かしませんでした。しかし、時間は長く退屈で、水の表面に映る自分の顔を見ました。そしてそうしている間にだんだんかがみこんで、映っている目を真直ぐ覗き込もうとしていたとき、長い髪が肩から落ちて水に入ってしまいました。男の子は急いで体を上げましたが、頭の髪全体がもう金に染まり、太陽のように輝きました。可哀そうな男の子がどんなに驚いたか想像できるでしょう。男の子はハンカチをとりだして、男に見えないように頭の周りに結びました。
男は帰ってくるともう全部知っていて、「ハンカチをとれ。」と言いました。それで金の髪が流れ出て、男の子がどんなに言い訳しても無駄でした。「お前は試験を通らなかった。もうここにはいられないぞ。世の中へ出て行け。そこで貧しさがどういうことか学ぶだろう。しかし、お前は悪い心をしていないので、お前によかれと思って、お前に一つのことを認めよう。もしお前に困ったことが起きたら、森へ来て、鉄のハンス、と呼べ。そうすればおれは来てお前を助けてやろう。おれの力は大きいぞ。お前が考えるより大きいのだ。それに有り余るほどの金と銀がある。」と言いました。
それで王様の息子は森を出て、道になっているところもなっていないところもどんどん歩き、とうとう大きな町に着きました。そこで仕事を探しましたが何も見つけられませんでした。身の足しになることは何も覚えていなかったのです。とうとう宮殿へ行き、雇ってくれるかどうか尋ねました。宮廷の人々はこの子をどう使ったらいいか全くわかりませんでしたが、男の子が好ましかったので、置いてやるよ、と言ってくれました。
最後にコックがこの王子をひきうけて使うことにして、「たきぎや水を運び、かまど掃除をしてもいいだろう」と言いました。あるときたまたま他に誰もいないことがあって、コックは王子に王様の食卓に食べ物を運ぶよう命じました。しかし、王子は金色の髪を見られたくないので、小さな帽子をかぶっていました。そんなものは今まで王様の目にとまったことがなかったので、王様は「王の食卓に来る時は、帽子を脱がねばならぬ。」と言いました。王子は、「ああ、陛下、脱げません。頭にひどいただれがあるのです。」と答えました。それで王様はコックを呼ばせて叱り、「どうしてあんな子を使っているのだ?」と尋ね、すぐに追い払ってしまえ、と言いました。しかし、コックは王子を可哀そうに思い、庭師の手伝い子と取り替えました。
それで今度王子は庭に植えたり水やりをし、くわを使って掘ったりして、風や悪い天気を耐えねばなりませんでした。夏のあるとき、庭で一人で働いていたとき、その日はとても暑かったので王子は風を入れて涼しくしようと小さな帽子を脱ぎました。太陽が髪に照りつけて髪がきらきら光ったので、その光が王様の娘の寝室へさしこみました。それで娘はそれがいったい何か見ようと跳ね起きました。すると王子が見えたので、「そなた、花を持ってきておくれ。」と王子に叫びました。王子は大急ぎで帽子をかぶり、野の花を摘んで花束にしました。
花を持って階段を昇って行くと、庭師に会いました。庭師は、「王様の娘にそんなありふれた花の束をどうしてもって行けるのだ?急いで別の花を摘みに行けよ。一番きれいで珍しいのを選ぶんだぞ。」と言いました。「いや、野の花の方が香りが強く、王女様のお気にいりますよ。」と王子は答えました。王子が部屋に入ると王様の娘は、「帽子をとりなさい。私の前で帽子をかぶっているのは無礼であろう。」と言いました。王子は今度も、「できないのです。頭にただれたところがあります。」といいました。ところが娘は帽子に手をのばし引きはがしました。すると金色の髪が肩に垂れさがってきて、見るも素晴らしいものでした。王子は走って外にでようとしましたが、娘は王子の腕をつかまえて、一握りのダカット金貨を与えました。この金貨を持って王子は別れましたが、金貨をなんとも思いませんでした。それを庭師のところに持って行き、「お子さんたちにどうぞ。それで遊べるでしょう。」と言いました。
次の日、王様の娘はまた王子を呼んで、野の花をもってくるように言いました。それで花を持って入って行くとすぐに、娘はさっと帽子をつかみとろうとしましたが、王子は両手でしっかり帽子を押さえていました。娘はまた一握りのダカット金貨をくれましたが、王子は持っている気がしなくて、庭師に子どもたちの遊び道具としてあげてしまいました。三日目も全く同じでした。娘は王子から帽子をとることはできなかったし、王子はお金を持っていようとしませんでした。
その後まもなく、その国は戦争に踏みにじられました。王様は家来たちを集めましたが、力が上回って強力な軍隊がある敵になにか反撃できるかどうかわかりませんでした。そこで庭師の手伝いは、「僕はもう大人だ。僕も戦いに行くつもりだ。ただ馬を一頭ください。」と言いました。他の人たちは笑って、「おれたちが行ってしまってから、自分でさがせよ。お前のために馬小屋に一頭残しておくよ。」と言いました。家来たちが出かけた後、王子は馬小屋に行き、馬を連れ出しました。その馬は足が一本悪くてぴょこたんぴょこたんと歩きました。それにもかかわらず、王子はその馬に乗って暗い森に行きました。森のはずれにくると、「鉄のハンス!」と3回大声で呼んだので、その声が木々の間にこだましました。それで山男がすぐに現れ、「何が欲しい?」と言いました。「強い馬が欲しいんだ、戦いに行くから。」「お前にそれをやろう。それにお前が求めたよりももっとやろう。」それから山男は森へ戻っていき、まもなく馬丁が森から出てきて、鼻息荒くなかなか抑えられないような馬を連れてきました。その後ろにはすっかり鉄の鎧をまとった戦士たちの大群が続き、刀が太陽にあたり光っていました。若者は3本足の馬を馬丁に渡し、別の馬にまたがると、兵士たちの先頭に立って進んでいきました。
若者が戦場に近づいたとき、王様の家来たちの大半はもう倒れてしまっていて、残りもまもなく退却するところでした。それで、若者はそこへ鉄の兵士たちと一緒に駆けていき、敵の上に嵐のように討ちかかり、立ち向かう敵をすべて打ち破りました。敵は逃げ始めましたが、若者は追いかけ、追跡の手を決してやめなかったので敵はとうとう一人も残りませんでした。
しかし、若者は王様のところに戻らないで脇道を通り森へ自分の兵士たちを連れていき、鉄のハンスを呼びました。「何が欲しい?」と山男は尋ねました。「あなたの馬と兵士たちを引き取って、私の3本足の馬を返してください。」若者が望んだことが全部行われ、まもなく若者は3本足の馬に乗っていました。王様が宮殿に帰ると、娘が出迎えて、勝利のお祝いを述べました。「勝利を得たのはわしではなくて、見知らぬ騎士がたくさんの兵士をつれて応援に駆けつけてくれたのだ。」と王様は言いました。娘はその見知らぬ騎士は誰なのか聞きたがりましたが、王様は知らなくて、「その騎士は敵を追いかけていき、それから会っておらんのだ。」と言いました。
娘は庭師にあの手伝い人はどこにいるの?と聞きましたが、庭師は笑って、「3本足の馬に乗っていま帰ってきましたよ。それで他の人たちがからかって、『ほら、ぴょこたん様のお帰りだぜ』と叫んでいました。それから、みんなは『ずっとどこのやぶに横になって眠っていたんだ?』とも尋ねていたんですよ。そうしたらあの見習いが『僕は一番よく戦ったよ。僕がいなければ酷いことになっていただろうよ。』と言ったんです。だもんだから、ますますからかわれていましたよ。」と言いました。
王様は娘に、「三日間続けて大宴会を開こう。お前は金のりんごを投げるのだ。たぶんあの見知らぬ男が現れるのではないか。」と言いました。宴会のおふれがでると、若者は森に出かけ鉄のハンスを呼びました。「何が欲しい?」と鉄のハンスは尋ねました。「王様の娘の金のりんごをつかまえたいのだが」「もうつかんだも同然に簡単だ。」と鉄のハンスは言いました。「おまけにそのときに赤い鎧兜を着せてやろう。そして元気のよい栗毛の馬に乗せてやろう。」と鉄のハンスは言いました。
その日がやってくると、若者は馬を走らせその場へやってきて、騎士たちの間にいましたが、だれにもわかりませんでした。王様の娘が前に出て、騎士たちに金のりんごを投げましたが、他ならぬ若者がそれをつかみ、つかむとすぐ馬で走り去りました。
二日目には鉄のハンスは若者に白い鎧兜を着させ白い馬を与えました。今回もりんごをつかんだのはまたこの若者でした。そして一瞬もぐずぐずしないでりんごをもって走り去りました。王様は怒りだして、「これは許さん。あの者はわしの前に現れて名前を言わねばならん。」と言いました。王様は、りんごをつかんだ騎士がまた立ち去るならば追いかけよ、そしてもし自分から戻るのでなければその者を切るなり突くなりせよ、という命令を出しました。
三日目には若者は鉄のハンスから黒の鎧兜と黒い馬を受け取り、今回もりんごをつかみました。しかし、リンゴを持って走り去る時王様の従者たちが追いかけてきて、そのうちの一人が若者のすぐ近くに迫り、刀の先で若者の脚を傷つけました。それでも若者は従者たちから逃げ切りましたが、馬がとても激しく跳ねたので、若者の頭から兜が落ちて金の髪が見えてしまいました。従者たちは馬で帰りましたが、これを王様に報告しました。
次の日、王様の娘は庭師に見習いのことについて尋ねました。「あいつは庭で仕事中ですよ。変なやつでやはり宴会に出ていたんですよ。昨日の晩帰ってきたばかりです。それから、とった金のりんごを3つうちの子供たちにみせていましたよ。」
王様は若者を自分の前に呼び出させました。そして若者は今度も頭に帽子をかぶったままやってきました。しかし王様の娘は若者に近づき帽子をとりました。すると金の髪が肩に落ち、若者があまりに美しいのでみんな目をみはりました。
「お前は、いつも違う色の鎧兜で毎日宴会に来ては3つの金のりんごをつかんだ騎士なのか?」と王様は尋ねました。「はい」と若者は答え、「これがそのりんごです。」とポケットからりんごをとりだし、王様に戻しました。「もしもっと証拠がお望みなら、私を追いかけたときあなたのご家来がつけた傷をご覧になってもよろしいですよ。しかし、敵に対して勝利するお手伝いをした騎士も私です。」「そのようなことをできるのならば、お前はただの庭師見習いではあるまい。教えてくれ、お前の父は誰だ?」「父は強大な国王です。それに私は金は望むだけたくさんあります。」「なるほど。お前に礼をせねばならないが、何か望みのものはあるかね?」「はい、あります。あなたの娘を妻にもらいうけたい。」娘は笑って、「この方はあまり形式ばらないのね。だけど私は金の髪でこの方がただの庭師手伝いでないともうわかっていたのよ。」と言いました。そして若者のところに行き、キスしました。
若者の父親と母親が結婚式に来て、大喜びしていました。というのは愛する息子にまた会えるという望みをすっかり諦めていたからです。みんなが婚礼の宴の席についていたとき、音楽が突然やみ、戸が開いて、立派な王様がたくさんのお伴をつれて入ってきて、若者に近づき、だきしめ、「私が鉄のハンスだよ。魔法で山男にされていたのだ。だが、お前が魔法をといてくれたのだ。私の持っている宝すべてをお前に与えよう。」と言いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
女が飼い葉を刈りながら実の娘と継娘と一緒に野原を歩いていました。そのとき神様が貧しい男の姿で三人の方に来て、「村に行く道はどっちかね?」と尋ねました。「知りたいなら自分で探すんだね」と母親は言いました。娘が付け加えて「見つからないと心配なら、案内人を連れて歩くことね」と言いました。しかし、継娘は「かわいそうに、そこにお連れしましょう、一緒にどうぞ。」と言いました。
それで神様は母親と娘に怒って二人に背を向け、二人が夜と同じくらい黒く、罪と同じくらい醜くなるように望みました。しかし可哀そうな継娘には神様は慈愛の目を向け、継娘と一緒に行きました。村に近づくと娘を祝福して、「3つ願いを選んでごらん。叶えてあげよう。」と言いました。それで乙女が「太陽のように美しく白くなりたいわ。」と言うと、すぐに乙女は昼のように白くきれいになりました。「それから決して空っぽにならないお財布が欲しいわ。」それも神様は娘に与えましたが、「一番よいものを忘れないように」と言いました。乙女は「3番目の願いとして、死んだあと、天国に住みたいと願うわ。」と言いました。それも神様は認めて、娘に別れていきました。
継母が実の娘と家へ帰った時、自分たちが炭と同じくらい黒く醜いけれど、継娘は白く美しいとわかりました。二人の心には意地悪い気持ちがさらに一層つのって、どうやって継娘を傷つけてやろうかとばかり考えていました。ところで、継娘にはレジナーという兄がいましたが、その兄を娘は愛していて、起こったことを全て話しました。レジナーは妹に、「ね、僕はお前の肖像を描くよ。いつも目の前でお前が見れるようにね。だって僕はお前をとても愛しているからいつも見ていたいんだよ。」と言いました。すると妹は「だけどお願いよ、誰にもその絵を見せないでよ。」と答えました。
それで、兄は妹の絵を描き、その絵を自分の部屋にかけました。ところで、兄は王様の宮殿に住んでいました。というのは王様の御者だったからです。毎日行っては絵の前に立ち、そのような愛する妹がいる幸せを神様に感謝しました。さて、たまたま兄が仕えていた王様のお后が亡くなったばかりでした。このお后は他に比べる人がいないほどとても美しく、そのため王様は深い悲しみに沈みました。ところが、宮廷の従者たちは、御者が毎日美しい絵の前に立っていることに気づいて、御者を妬み、王様に告げました。それで王様は絵を持ってくるように命じ、その絵が亡くなったお后にどこからどこまでそっくりで、ただお后よりもっと美しいとわかって、死ぬほど愛するようになりました。王様は御者を連れてこさせ、誰を描いた絵なのか、と尋ねました。御者は、私の妹です、と言いました。それで王様は、この人の他は誰も后にしないぞ、と決意して、御者に馬車と馬と金の布の豪華な衣装を与え、選んだ花嫁を迎えにやりました。
レジナーがこの使いで来たとき、妹は喜びましたが、黒い乙女はその幸運を妬み、この上なく怒りました。そして母親に、「私にあんな幸運をもってこれないのに、お母さんの魔法はいったい何の役に立つのかしらね。」と言いました。「黙っておいで。」とおばあさんは言いました、「すぐにそれをお前の方に変えるからね。」そして、魔法の術で、御者の目をさえぎったので御者は半ば目が見えなくなり、白い乙女の耳をふさいだので娘は半ば耳が聞こえなくなりました。それからみんなは馬車に乗りました。最初に気高い王室の衣装を着た花嫁が、次に娘と一緒に継母が、それからレジナーが御者台に乗りました。しばらく進んでいくと、御者が、「妹よ、体に何かしっかりかけなさい。雨に濡れないように。風でほこりがかからないようにね。王様の前に出るとき白くてきれいでいなくちゃだめだから。」と叫びました。
花嫁は、「兄さんは何と言っているの?」と尋ねました。「ああ、お前の金のドレスを脱いで妹にあげな、と言ってるのさ。」とおばあさんは言いました。それで花嫁はドレスを脱いで、黒い娘に着せてやりました。黒い娘はかわりにみすぼらしい灰色のガウンを渡しました。さらに進んでいき、その後まもなく、兄はまた、「妹よ、体に何かしっかりかけなさい。雨に濡れないように。風でほこりがかからないようにね。王様の前に出るとき白くてきれいでいなくちゃだめだから。」と叫びました。
花嫁は、「兄さんは何と言っているの?」と尋ねました。「ああ、お前の金の帽子を脱いで妹にあげな、と言ってるのさ。」とおばあさんは言いました。それで花嫁は帽子を脱いで、黒い娘に着せてやり、自分の頭に何もかぶらないまま座っていました。さらに進んでいき、しばらくして、兄はまた、「妹よ、体に何かしっかりかけなさい。雨に濡れないように。風でほこりがかからないようにね。王様の前に出るとき白くてきれいでいなくちゃだめだから。」と叫びました。
花嫁は、「兄さんは何と言っているの?」と尋ねました。「ああ、お前は馬車から外を見なくちゃ、と言ってるのさ。」とおばあさんは言いました。馬車はたまたま深い川にかかっている橋の上にいました。花嫁が立ちあがって馬車の外へ身をかがめたとき、母娘は花嫁を押し出して、川の真ん中へ落としてしまいました。花嫁が沈むと同時に、雪のように白いカモが鏡のような水面から出てきて川を泳いでいきました。
兄はそれを何も見ていなくて、馬車を走らせ、とうとう宮廷につきました。それから、兄は黒い娘を妹として王様のところへ連れて行き、目がかすんでいて金の衣装が光っていたので本当に妹だと思っていました。王様は思っていた花嫁が途方もなく醜いのがわかると、とても怒って、マムシがいっぱいで蛇の巣がある穴に御者を投げ込むよう命じました。しかし、年とった魔女は魔法で王様にとりいり目を欺く方法をとてもよく知っていたので、王様は母娘をおいておきました。そしてとうとう娘の見栄えがすっかり我慢できるようになり、本当にその娘と結婚してしまいました。
ある晩、黒い花嫁が王様の膝に抱かれていたとき、白いカモが溝を泳いで台所に来て、台所番に、「ねぇ、羽を暖められるように火をもやしておくれ。」と言いました。台所番はそうしてかまどに火をつけました。するとカモはやってきてそのそばに座り、体を振って、くちばしで羽づくろいをしました。こうして座って楽しくしている時、カモは「兄のレジナーはどうしてる?」と尋ねました。食器洗い係は「マムシや蛇のいる穴に閉じ込められているよ。」と答えました。それでカモは「家で黒い魔女はどうしてる?」と尋ねました。食器洗い係は「王様に愛されて幸せだよ。」と答えました。「王様に神の御慈悲があらんことを」とカモは言って、溝を泳いでいきました。
次の日の夜、カモはまたやってきて、同じことをききました。3日目の夜もそうでした。それで台所番はもうがまんできなくなって、王様のところへ行き、洗いざらい話しました。ところが王様は自分でそれを見ようと思い、次の夜、そこへ行きました。カモが溝から頭を入れると、王様は剣をとって首を切りました。すると突然カモはとても美しい乙女に変わりました。乙女は兄が描いた絵と全く同じでした。王様は大喜びし、娘がそこにびしょぬれで立っているので、豪華な衣装を持って来させ、娘に着させました。
それから娘は、悪だくみと嘘に欺かれ、とうとう川に投げ入れられたことを話しました。そしてまず兄を蛇の穴からだして欲しいと頼みました。王様はこの頼みを果たしたとき、年とった魔女がいる部屋に入り、これこれしかじかのことをする人を罰する方法を知ってるか、と尋ね、ことの次第を語りました。すると魔女はものが見えなくなっていて何も知らず、「裸にされて、釘のついた樽に入れるといいです。その樽に馬をつないで世界中を走らすんですよ。」と言いました。それが全て母親と娘に行われました。しかし、王様は白く美しい花嫁と結婚し、忠実な兄に報い、金持ちで高い地位につけました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、魔法使いの年とった女王が住んでいました。女王の娘は日のもとで最も美しい乙女でした。ところがばあさんは人間をおびき出して破滅させようとしか考えていなくて、求婚者が現れると、娘を妻にしたければまず務めを果たすか、できなければ死ぬしかないよ、と言いました。たくさんの男が娘の美しさに目がくらみ、実際にこれに命をかけました。しかし、ばあさんが命じたことを成し遂げることができなくて、情け容赦なく、膝まずかせられ、首が切り落とされました。
ある王様の息子もまたその美しい乙女のことを聞き及び、父親に「そこに行かせてください。結婚の申し込みをしたいのです。」と言いました。「だめだ」と王様は答えました。「それは死にに行くことだぞ。」これをきいて息子は臥せって死ぬほど重い病になり、七年間ねていましたが治せる医者がいませんでした。父親はもう治せる望みがないとわかると、気が重いながら息子に言いました。「そこへ行って運を試すがよい。わしはお前を治す方法が他にわからないからな。」息子はそれを聞くと、ベッドから起きあがりまた元気になって、喜んで出かけて行きました。
荒れ野を馬で進んでいると大きな干草の山のようなものが地面に置いてあるのが遠くから見えました。もっと近づいて見ると、それは人間のお腹でした。その男はそこにねそべっていたのですが大きなお腹が小さな山のようにみえたのでした。太った男は旅人をみると、立ち上がって、「人が要るなら、私を雇ってください。」と言いました。王子は、「そんな不細工な男をどうすればいいんだ?」と答えました。「ああ」とでっぷりした男は言いました。「こんなのは何でもないんだ。本当にふくれたら、この三千倍太くなるよ。」「そういうことなら」と王子は言いました。「お前を使える。一緒に来たまえ。」
そこで太った男は王子についてきました。しばらくして二人は耳を芝生につけて地面にねそべっている別の男を見つけました。「そこで何をしてるんだい?」と王様の息子が尋ねました。「聴いているんだ」と男は答えました。「そんなに一生懸命何を聴いてるんだい?」「世間で起きてることを聴いてるんだ。おれの耳は何も聞き逃さないからね。草が伸びていくのだって聞こえるよ。」「じゃ、美しい娘のいる年とった女王の宮廷から何が聞こえてくるか教えてくれよ」と王子は言いました。すると男は「求婚者の頭を切り落としている刀のびゅっという音が聞こえるね。」と答えました。王様の息子は、「お前は使えるな。一緒に来てくれ。」と言いました。
三人が進んでいくと、横になっている両足と両脚の一部が見えましたが、体の他の部分は見えませんでした。ずっと歩いていくと、三人は胴体に着いて、それからとうとう頭のところに来ました。「なんとまあ」と王子は言いました。「お前はなんてのっぽなんだ。」「ああ」とのっぽの男は答えました。「こんなのはまだ全然何てことないんだ。本当に手足を伸ばせば、この三千倍は高くなって、地上で一番高い山より高いんだ。おれを雇う気があるなら、喜んで仕えるよ。」「一緒に来いよ、お前は使える。」と王子は言いました。
四人が先へ進んでいくと、両目に目隠しをしている男が道端に座っているのを見つけました。王子はその男に、「目が弱くて光を見れないのかい?」と言いました。「いや、違う」と男は答えました。「だけど目隠しを外してはいけないんだ。なんせおれの目で見るものは何でもこなごなに割れてしまうんでね。おれの目はそれほど力があるんだ。それを使えるなら、喜んで家来になるよ。」「一緒に来いよ」と王様の息子は答えました。「お前は使える。」
五人が先へ進んでいくと、暑い日なたで寝ているのに体じゅうで震えていて、そのため手足がちっともじっとしていない男を見つけました。「日がこんなに暑く照っているのにいったいなんで震えてるんだい?」と王様の息子は言いました。「ああ」と男は答えました。「おれはまるで違う体質なんだ。暑くなればなるほどおれは寒くなって、寒さが骨身にしみるのさ。それで寒くなればなるほど、おれは熱くなるんだ。氷の真ん中で熱くてたまらないし、火の真ん中で寒くてたまらないんだ。」「お前はへんなやつだな」と王子は言いました。「だけどおれの家来になる気があるなら、ついてこいよ。」
六人が先へすすんでいくと、男が立っているのが見えました。この男は首を長く伸ばして、周りを見回したり、あらゆる山の向こうを見たりしていました。「そんなに熱心に何を見てるんだい?」と王様の息子は言いました。男は、「おれは目がとてもいいから、世界中の森や野原や山や谷の中まで見えるのさ。」と言いました。王子は、「よかったら一緒に来いよ。まだそういうやつが要り用だからな。」と言いました。
そうして王様の息子と六人の家来は年とった女王が住んでいる町にやってきました。王子は自分が誰か言わないで「美しい娘さんをくださるなら、あなたが言いつけるどんな仕事もやります。」と言いました。魔法使いはこんなハンサムな若者が巣にひっかかったのを喜んで、「お前に三つの仕事をさせるよ。もしもその三つを全部やりとげられれば、お前を娘の夫で主人にさせてあげるよ。」と言いました。「最初の仕事は何でしょう?」「紅海に落とした私の指輪をとってきてもらいたい」
そこで王様の息子は家来のところへ帰ってきて、「最初の仕事は簡単じゃないよ。指輪を紅海から取り出すんだ。さあ、どうしたらいいか考えてくれ。」と言いました。すると目がいい男が「おれがどこにあるか見よう。」と言って、水の中を覗きこみ、「ああ、尖った岩にぶら下がっているよ」と言いました。
のっぽがそこへみんなを運び、「指輪が見えれば、おれがすぐ取り出すんだがな」と言いました。「何だ、それだけのことか」と太っちょが叫び、腹ばいになり水に口をつけました。すると渦巻きのように波が口に入って行き、男は草地のように乾くまで海の水をみんな飲み干しました。のっぽは少しかがんで、手で指輪を取り出しました。
王様の息子は指輪を手に入れて喜び、年とった女王のところに持って行きました。女王は驚いて言いました。「うん、確かに私の指輪だ。お前は無事に一番目の仕事を片付けたね。だが、今度は二番目の仕事になるよ。私の宮殿の前にある草原がお見えかい?あそこで300頭の太った雄牛が草を食べているんだ。これらをお前は皮も毛も角もみんな食べなければならない、そうして下の地下室に300樽のワインがある。これらもみんな飲み干さなくてはならない。牛の毛一本、ワインの一滴も残ったら、お前の命をもらうよ」「この食事にお客を誰も招いてはいけないのですか?」と王子は尋ねました。「一緒に食べる人がいなくてはご馳走もまずくなるというもの。」ばあさんは意地悪く笑って、「一緒に食べる相手に一人だけ呼んでもいいが、それ以上はだめだよ。」と言いました。
王様の息子は家来たちのところへ行き、太っちょに、「お前を今日私のお客にしてたっぷり食わしてやろう」と言いました。こうして、太っちょはふくらんで、一本の毛も残さずに300頭の雄牛を平らげて、おれは朝食しか食べられないのかと尋ねました。それから、グラスは要らないと思い樽からじかにワインを飲んで下に沈んでいるかすまで飲み干しました。
食事が終わると王子はばあさんのところへ行き、二番目の仕事もやり遂げました、と言いました。ばあさんはこれに驚き、「前にはここまでやった人はだれもいなかったよ。だが、まだあと一つ仕事が残っているよ」と言い、(お前を逃すもんか、お前の頭を肩にくっつけておかないよ)と密かに思っていました。
「今晩」とばあさんは言いました。「娘をお前さんの部屋に連れていくから、お前は腕をまわして娘をだいているんだ。だがそうして一緒にすわっているとき、眠りこまないように気をつけておくれ。12時になったら私が行くから、もしそのときに娘がお前の腕の中にいなければ、お前はおしまいだよ。」
王子は、(この仕事は簡単だぞ、僕は絶対目を開けているもの。)と思いました。それでも家来たちを呼び、ばあさんが言ったことを話して、「このかげにどんな悪だくみがひそんでいるかわからない。用心に越したことはない。見張って娘が僕の部屋から出て行かないように気をつけてくれ」と言いました。夜になるとばあさんは娘と一緒にやってきて、王子の腕の中に預けました。そうしてのっぽは二人の周りをぐるりと巻いて、太っちょは戸口で見張り、誰も入れないようにしました。そうして二人は座っていました。娘は一言も話しませんでしたが、月明かりが窓から娘の顔を照らしたので、王子は娘の素晴らしい美しさを見ることができました。王子はただ娘を眺めているだけでした。そして、いとしさと嬉しさでいっぱいになり、まぶたが重くなることはありませんでした。こうして11時まで過ぎましたが、ばあさんがみんなに眠る魔法をかけたので、その瞬間に娘は連れ去られました。
そうしてみんなはぐっすり眠り、魔法の力がなくなる12時15分前になってやっと目覚めました。「ああ、大失敗だ」と王子は叫びました。「これで僕は終わりだ」忠実な家来たちも嘆き始めました。しかし、聴き男が、「静かに!おれは聴こうとしてるんだ」と言いました。そうして少し聴いていましたが、「娘は岩のところだ。ここから300リーグ(1440km)離れている。自分の運命を嘆いているぞ。おい、のっぽ、お前だけが救えるぞ。お前はしっかり伸びて立てば二、三歩でそこに着くだろ。」
「よし、やろう」とのっぽは答えました。「だが、岩を砕くために眼力のやつも一緒にきてくれ。」そこでのっぽは目隠しをした男を背負って、目をパチクリする間にたちまち二人は魔法にかけられた岩に着きました。のっぽの男はすぐにもう一人の男から目隠しをはずしました。そうして眼力男が見回しただけで岩は震え出しこなごなになりました。そのあとのっぽは娘を腕にだいて一瞬で連れ戻し、それから同じ速さで仲間の男を連れ戻しました。そうして12時前に、みんなは前にいたところにすっかり陽気で嬉しそうに座っていました。12時になると年とった魔法使いは、「さあ今度こそ仕留めた」というような意地悪い顔をしてそっと入ってきました。というのは娘は300リーグ離れた岩にいると思いこんでいたからです。しかし娘が王子の腕の中にいるのを見るとびっくりして言いました。「こいつは私の上手をいくんだ」ばあさんは異議をとなえるわけにはいかず娘を王子に渡すしかありませんでした。しかし、娘の耳に、「身分の低い人たちに従わなくてはいけないし、自分の好きなように夫を選べないのはお前の恥だね」と囁きました。
これを聞いて娘の高慢な心は怒りでいっぱいになり、仕返しを考えました。次の朝、娘は300束のたきぎを集めさせ、あなたは三つの仕事を成し遂げたけど、だれかたきぎの中に入り火に耐えなければ、私はあなたの妻になりません、と王子に言いました。(家来の誰もこの人のために焼け死のうとは思わないわ、すると私を恋しているからこの人は自分で火に入るでしょう、そうして私は自由になるわ)と思ったのです。しかし、家来たちは「おれたちみんななにかをやったぜ。寒がりやだけは別だ。あいつが仕事にとりかからねばならん。」と言って、たきぎの山の真ん中に寒がりやを入れて、たきぎに火をつけました。
すると火は燃え始め、三日間燃えてやっとたきぎが燃え尽き、炎が消えてしまうと寒がりやは灰の真ん中に立っていて、やまならしの葉のように震えていました。そして、「生まれてからこんなに寒かったことはないよ。もっと続いたら、凍えてしまうところだった。」と言いました。他に言い訳が見つからなかったので美しい乙女はもうこの見知らぬ若者を夫として受け入れるしかありませんでした。しかし二人が馬車で教会へ出かけていくと、ばあさんは「わたしゃ恥ずかしくてがまんできないよ」と言って、自分の兵士たちを送り、逆らう者はみんな切り伏せて、娘を取り戻しておくれ、と命じました。しかし、聴き男が耳をすましていて、ばあさんの密かな話を聞きつけました。「どうしようか?」と聴き男は太っちょに言いました。太っちょはどうしたらよいかわかり、前に飲んでいた海の水を馬車のうしろに一、二回吐き出しました。すると大きな湖ができあがって、兵士たちはそこにはまって溺れ死にました。
魔法使いはそれがわかると、甲冑をつけた騎士たちを送りこみました。しかし聴き男は鎧のがちゃがちゃいう音を聞きつけ、眼力男の片目から目隠しをとりました。眼力男は敵の軍隊にしばらく目をあてていると、みんなガラスのように飛び散りました。そうして若者と娘は邪魔されずに道を進んでいきました。二人が教会で祝福されたあと、六人の家来たちは別れを告げて、主人に言いました。「あなたの望みはもう叶えられています。もうおれたちは必要ないでしょう。おれたちは自分の道を行って運だめしをしてみます。」と言いました。
王子の父親の宮殿から半リーグ(2.4km)のところに村があり、その近くで豚飼いが群れの番をしていました。二人がそこにきたとき王子は妻に、「僕が本当はだれか知ってるかい?僕は王子なんかじゃなくて豚飼いなのさ。そこの群れと一緒にいる男が僕の父だ。僕たち二人も仕事に取り掛かって父を手伝わなくてはいけないんだ。」と言いました。
そうして王子は妻と一緒に宿屋に泊り、夜のうちに妻の王家の服を持ち去るように、と宿の主人にこっそり話しました。そこで朝に妻が目覚めると着る物が何もなくて、宿屋のおかみさんが古い長スカートと毛糸の靴下をくれましたが、そのときにすごい贈り物をしているとみせかけて、「あんたのだんなのためでなかったら、何もあげなかったけどね。」と言いました。そこで王女は、夫は本当は豚飼いなんだわ、と信じて、夫と一緒に群れの世話をしました。そして、(私は高慢で人を見下していたんだから、こうなってもしかたないわ)と思いました。
こうして一週間経ち、妻はもう我慢できなくなりました。というのは両足がひりひり痛むところだらけだったからです。するとニ、三人の人々がきて、あなたのだんなさんは誰か知っていますか?とききました。「ええ」と妻は答えました。「夫は豚飼いです。今紐や綱を持ってちょっと商いをしようとでかけたばかりです。」しかし、その人たちは「一緒にいらっしゃいな、だんなさんのところへ連れていきましょう」と言って、宮殿へ連れて行きました。そうして妻が広間に入ると、夫が王様らしい服を着てそこに立っていました。しかし、妻ははじめ夫だとわかりませんでした。やがて夫は妻を腕に抱いてキスし、「僕は君のためにとても苦しんだ、それで君にも僕のために苦しんでもらいたかった。」と言いました。そうして結婚式が挙げられました。これを語ってくれた人は、自分もその式に出席したかったなあ、と言ってますよ。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、どの娘も他の娘におとらないくらい美しい12人の娘がいる王様がいました。娘たちはみなベッドが並んでいる一つの部屋で一緒に眠っていました。そして娘たちがベッドに入ると王様は戸に鍵をかけかんぬきをしました。しかし、朝に戸の鍵をはずすと、王様は娘たちの靴が踊りですりきれているのがわかり、だれもどうしてそうなるのか発見できませんでした。それで、王様は、娘たちが夜どこで踊っているのか発見した者には娘の一人を妻に選ばせ、自分の死後王にする、但し、申し出て3日3晩のうちに発見できなかったものは命を差し出さねばならない、というお触れを出しました。
まもなく一人の王子が出て、この企てを引き受けると申し出ました。王子は暖かく迎えられ、夜には王女たちの寝室の隣の部屋に案内されました。王子のベッドはそこにおかれ、娘たちがどこへ行っておどるのか見ることになっていました。そしてこっそりと何かしたり他の場所に行かないように娘たちの部屋の戸は開けておかれました。しかし、王子のまぶたは鉛のように重くなり、眠ってしまいました。そして朝目覚めてみると、12人の娘はみな踊りに行ってきていました。というのは靴の底に穴があいていたからです。2日目と3日目の夜も違いがなく、それで王子の頭は情け容赦なくうちおとされました。
このあと他にもたくさんの人が来て、その企てを引き受けましたが、全員が命を落としました。さて、怪我をしてもう務めることができなくなった貧しい兵士が王様の住んでいる町の道を歩いていると、一人のおばあさんに出会いました。おばあさんが「どこへ行くんだい?」ときいたので、「自分でもはっきりしないんだ。」と答え、冗談に「王女様たちがどこで靴に穴があくまで踊るのか見つけて王様になる、っていう気も半分あったんだが。」と付け加えました。「それは大して難しくないよ。」とおばあさんは言いました。「夜に持ってこられる葡萄酒を飲まないで、ぐっすり眠っているふりをしてなくちゃいけないんだよ。」そう言いながら小さなマントを渡し、「これを着るとお前さんの姿がみえなくなるよ。そうしたら12人の姫君たちのあとをこっそりつけられるよ。」と言いました。
兵士はこういう良いことを聞いて、本気になりだし、元気づいて、王様のところに行き、求婚者として取り次ぎをお願いしました。兵士は他のみんなと同じく暖かく迎えられ、王家の服を着せられました。その晩寝る時間になると控えの間に通され、もう寝ようとしたところ、一番上の王女様が一杯の葡萄酒を運んできました。しかし、兵士はあごの下にスポンジを結わえておいて一滴も飲まず葡萄酒をスポンジに吸い込ませました。それから横になり、しばらく寝ていたあと、深く眠り込んだかのようにいびきをかき始めました。12人の王女たちはそれを聞いて、笑い、一番上の王女が、「あの人も命を大事にしておけばよかったのにね。」と言いました。そうして起きあがり、衣装ダンスやいろいろな棚を開けて、可愛いドレスを取り出し、鏡の前で着て、跳びはね、踊りに行く期待で喜んでいました。ただ一番下の王女だけは「どうしてだかわからないけど、お姉さまたちはみんなうれしそうだけど、私はとても変な気分なの。きっと何か嫌なことがおこるんだわ。」と言いました。「おばかだねぇ。いつだってびくびくして。」と一番上の姉が言いました。「もうどれだけ沢山の王子たちがここに来て、無駄骨を折ったか忘れたの?あの兵隊さんに眠り薬をだす必要なんてほとんどなかったわ。どっちにしてもあの間抜けは目が覚めなかったわよ。」
すっかり準備ができると、王女たちは注意深く兵士を見ましたが、兵士は目を閉じて微かにすら動きませんでした。それで娘たちは十分安全だと思いました。それから一番上の王女が自分のベッドにいき、軽くたたきました。するとベッドはすぐ地中に沈んでいき、その開いた穴を通って、一番上の娘を先頭に、次々と降りて行きました。兵士はすっかりこれを見ていましたが、もう愚図愚図しないで小さなマントを着ると、末の王女のあとから降りて行きました。階段を降りる途中で、末の王女のドレスをちょっと踏みつけてしまい、王女はびっくりして「キャッ!誰なの?私のドレスを引っ張っているのは誰?」と叫びました。「馬鹿言わないでよ。釘にひっかけたのよ。」と一番上の娘が言いました。それで降り切ってしまい底に着くと、すばらしくきれいな並木道にでました。木の葉っぱが全部銀でできていて、輝き、キラキラしていました。兵士は、「証拠の印を持って帰らなくちゃ。」と思って、一本の木から枝を折りとりました。それで、木がボキッと大きな音をたてました。また末の王女が「どこかおかしいわ。ボキッという音が聞こえなかった?」と叫びました。しかし一番上の王女が「喜びで撃たれた大砲でしょ、私たちがとても速く王子から抜け出したから。」と言いました。
そのあと、葉っぱが全部金でできている並木道にきて、最後にきらびやかなダイヤでできている3番目の並木道にきて、兵士はそれぞれから枝を折りとり、そのたびに大きな音がしたので、末の王女はこわくてビクッと飛び上がりましたが、一番上の王女はやはり祝砲だと言い張っていました。さらに進んで12艘の小さなボートがある大きな湖に着きました。そしてどのボートにもハンサムな王子が座って、12人の王女を待っていて、一人ずつ連れて行きましたが、兵士は末の王女のそばに座りました。すると王子が「どうして今日はいつもよりずっと重いのかな?渡るのに全力でこがなくちゃいけないな。」と言いました。「どうしてかしら?暑い気候のせい?」と末の王女が言いました。「僕もとても暑いよ。」湖の向こう側に豪華な光が明るくついたお城が立っていて、そこからトランペットやティンパニの楽しげな音楽が聞こえてきました。みんなはそこに漕いでいき、入って、それぞれの王子は自分の好きな娘と踊りましたが、兵士は見られずに一緒に踊りました。王女様の一人がワインを手に持っていたとき兵士はそれを飲み干してしまい、王女が口にもっていったときカップは空っぽでした。末の王女はこれに驚きましたが、一番上の王女がいつも黙らせました。王女様たちは午前3じまでそこで踊り、とうとう靴に穴が開きました。それでしかたなくお別れをして、王子たちが湖を渡ってまた漕ぎ戻り、今度は兵士は一番上の王女のそばにすわりました。 岸に着くと王女たちは王子たちにお別れを言い、次の夜戻ると約束しました。階段に着くと兵士は走って前に行き、ベッドに寝て、12人の王女たちがゆっくり疲れて上ってきたときは、もう大いびきをかいていたので、みんなその音が聞こえました。それで王女たちは「この人に関しては、私たちは無事ね。」と言いました。娘たちは美しいドレスを脱ぎ、片づけて、ベッドの下にすりきれた靴を入れて、横になりました。
次の朝、兵士は話さないで素晴らしい成り行きを見ようと決心し、2晩目も3晩目も王女たちと一緒にでかけました。そしてすべては最初の時と全く同じで、毎回王女たちは靴がすりきれてぼろぼろになるまで踊りました。しかし、3回目は兵士は証拠の印としてカップを持ち去りました。兵士は答えを言う時間が来ると、3本の枝とカップを持って王様のところへ行きました。王様が、「私の12人の娘は夜靴がすりきれるまでどこで踊っていたのかね?」と質問をすると、「12人のの王子たちと一緒に地下のお城に行ってました。」と兵士は答え、起こったことを語り、証拠の印を取り出しました。それで王様は娘たちを呼び寄せ、兵士は本当のことを言ったのかと尋ねました。娘たちは、秘密がもれてしまい嘘をつくことは役にたたないとわかって、すべて白状せざるをえませんでした。それで、王様が「どの娘を妻にしたいかね?」と尋ねると、「私はもう若くありません。だから一番上の王女さまをください。」と兵士は答えました。それで同じ日に結婚式が行われ、王様が死んだあとの王国が約束されました。しかし、王子たちは12人の王女たちと踊った夜と同じ日数のあいだ魔法にかけられたままでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
農夫に、年をとってもう働けなくなった忠実な馬がありました。それで主人は馬にもう食べ物をあげる気がしないで、「確かにもうお前を使えなくなったんだが、お前に悪いようにしたくないんだ。もしお前がここにライオンを連れてくるくらい強いと証明してみせてくれれば、お前を置いておくよ。だけど、今はうちの馬小屋から出て行ってくれ。」と言いました。そしてそう言いながら、野外へ追い出しました。
馬は悲しくて天候から少し身を守ろうとして森へ行きました。すると狐が馬に会って、「どうしてそんなに頭を下げて全く一人でいるんだい?」と言いました。「ああ、欲張りと真心は一つの家に一緒に住めない。主人は私が長年仕えてきたことを忘れてしまい、もう上手に耕せないもんだから、もう食べ物をくれる気がなくて私を追い出したんだ。」と馬は答えました。「チャンスもくれなかったのか?」と狐は尋ねました。「チャンスはひどいものさ。もし主人のところにライオンを連れていけるほど強ければ私をおいてくれるんだ。だけどそんなことはできないって主人はよく知ってるのさ。」と馬は言いました。「助けてやるよ。寝転がって死んだみたいに長く伸びてて。そして動かないでよ。」と狐は言いました。馬は狐が望んだようにしました。
すると、狐は近くに巣のあるライオンのところへ行き、「死んだ馬があそこにあるんだ。一緒に来て。ご馳走が食べれるよ。」と言いました。ライオンは狐と一緒に行きました。二人が馬のそばにたっていたとき、狐は「あなたにとって、結局ここはあまり都合がいいわけじゃありませんね。そうだ、しっぽで馬をあなたにつないであげましょう。そうしたらあなたは自分の洞穴に引きずっていき、楽に食べられますよ。」と言いました。ライオンはこの助言を気に入り、寝転がって、狐が馬をしっかりつなげるように、じっと静かにしていました。しかし、狐は馬の尻尾でライオンの足を縛っていて、とても上手に強く捻じって閉めたのでどんな力も解くことはできませんでした。仕事を終えると、狐は馬の肩をたたき、「引っ張って、白い馬さん、引っ張って。」と言いました。すると馬はすぐにパッと立ち上がり、ライオンを引いていきました。ライオンは咆え始めたので、森の小鳥たちはみな恐がって飛び立ちました。しかし馬はライオンを咆えさせておき、草地を越え、主人の玄関まで引きずって行きました。主人はライオンを見ると、馬を見直して、「ここに居させてうまいものを食べさせてやるよ。」と言いました。そして死ぬまで、たくさん食べ物をあげました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
「こんにちは、ホレンテ父さん。」「どうもありがとう、ピフパフポルトリー。」「あなたの娘さんをもらいたいんだけど許してくれますか?」「ああ、いいとも。もしマルコ・ミルチカウ(乳搾り)母さんと、ハイアンドマイティ(高く力強い)兄さんと、ケーゼトラウト姉さんと、きれいなカトリネルエが乗り気なら、嫁にもらっていいよ。」「じゃあ、マルコ母さんはどこ?」「牛小屋だよ。乳搾りをしている。」
「こんにちは、マルコ母さん。」「どうもありがとう、ピフパフポルトリー。」「あなたの娘さんをもらいたいんだけど許してくれますか?」「ああ、いいよ。もしホレンテ父さんと、ハイアンドマイティ兄さんと、ケーゼトラウト姉さんと、きれいなカトリネルエが乗り気なら、嫁にもらっていいよ。」「じゃあ、ハイアンドマイティ兄さんはどこ?」「部屋でたき木を割っているよ。」
「こんにちは、ハイアンドマイティ兄さん。」「どうもありがとう、ピフパフポルトリー。」「あなたの娘さんをもらいたいんだけど許してくれますか?」「ああ、いいよ。もしホレンテ父さんと、マルコ母さんと、ケーゼトラウト姉さんと、きれいなカトリネルエが乗り気なら、嫁にもらっていいよ。」「じゃあ、ケーゼトラウト姉さんはどこ?」「庭でキャベツを切ってるよ。」
「こんにちは、ケーゼトラウト姉さん。」「どうもありがとう、ピフパフポルトリー。」「あなたの娘さんをもらいたいんだけど許してくれますか?」「ああ、いいわよ。もしホレンテ父さんと、マルコ母さんと、ハイアンドマイティ兄さんと、きれいなカトリネルエが乗り気なら、いいわよ。」「じゃあ、きれいなカトリネルエはどこ?」「部屋でファージング硬貨を数えているわ。」
「こんにちは、きれいなカトリネルエ。」「どうもありがとう、ピフパフポルトリー。」「僕の嫁さんになってくれる?」「ああ、いいわよ。もしホレンテ父さんと、マルコ母さんと、ハイアンドマイティ兄さんと、ケーゼトラウト姉さんが乗り気なら、いつでもいいわ。」
「きれいなカトリネルエ、持参金はどのくらい持ってる?」「現金で14ファージング、借金が3グロッシェン半、干しりんごが半ポンド、一握りのビスケット、一握りの苗、それに他にたくさんあるわ。持参金は大丈夫じゃない?」
「ピフパフポルトリー、何の仕事をしてるの?仕立て屋なの?」「もっといいものだよ。」「靴屋?」「もっといいものだよ。」「お百姓?」「もっといいものだよ。」「建具屋?」「もっといいものだよ。」「鍛冶屋?」「もっといいものだよ。」「粉屋?」「もっといいものだよ。」「たぶんほうき作り?」「そうだよ。それが僕の仕事さ。それっていい商売じゃない?」このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、三人の娘がいる女がいました。一番上の娘は、額にたった一つの目があったので、一つ目という名で、二番目の娘は、他の人たちのように二つの目があったので、二つ目という名で、一番下の娘は、目が三つあったので、三つ目という名でした。三つ目の三番目の目も額の真中にありました。ところが二つ目は他の人間たちと全く同じに見たので、姉妹と母親は二つ目が我慢できなくて、「お前は目玉が二つで、普通の人たちと同じだよ。お前は私たちの仲間じゃないよ。」と二つ目に言いました。みんなは二つ目を押しのけたり、古い服を投げつけ、残り物しか食べるものをあげず、二つ目を惨めにするためにできる何でもやりました。
二つ目は野原へでかけてヤギの世話をしなければなりませんでしたが、姉妹がほんの少ししか食べ物をくれなかったので、まだかなりお腹がすいていました。それであぜに座り、泣きだしました。とてもひどく泣いたので目から二つの川が流れました。そしてあるとき悲しみながら目をあげると、女の人が自分のそばに立っていて、言いました。「どうして泣いているんだね?二つ目」「泣かないでいられないの。他の人たちみたいに二つ目なので私の姉妹と母は私が嫌いで、あちらこちらへ押して、古い服を投げてよこすし、残り物しか食べ物をくれないの。今日は少ししかくれなかったからまだとてもお腹がすいてるの。」と二つ目は答えました。すると賢い女の人は、「涙を拭いて、二つ目、もうお腹がすくことがなくなるいいことを教えてあげようね。ヤギに『メエメエ、ヤギさん、メエと鳴いて、お膳に食べ物をおくれ』と言ってごらん。するときれいなカバーのかかった小さなテーブルがとてもおいしい食べ物を載せてお前の前にでてくるからね。それを好きなだけ食べるといいよ。それでお腹がいっぱいになって、もう小さなテーブルがいらなくなったら、『メエメエ、ヤギさん、どうぞお膳を片づけて』と言えばいい。するとテーブルは消えて見えなくなるよ。」そう言って賢い女の人は別れていきました。
二つ目は、「すぐにやってみて、あの人が言ったことが本当かどうか確かめなくちゃ。だって私はとてもお腹がすいてるんだもの。」と考えて、言いました。「メエメエ、ヤギさん、メエと鳴いて、お膳に食べ物をおくれ」その言葉を言うとすぐに、白い布のかかった小さなテーブルがそこに立っていて、その上にナイフとフォークと銀のスプーンがついた皿があり、そこに台所からもってきたばかりのように暖かく湯気があがっているおいしい食べ物もありました。それで二つ目は知っている中で一番短いお祈りの「主よ、いつまでもわたしたちのお客でいてください、アーメン」を言って、食べ物をとりおいしく食べました。お腹がいっぱいになると、賢い女の人が教えてくれたように、「メエメエ、ヤギさん、どうぞお膳を片づけて」と言いました。途端に小さなテーブルとその上の何もかも消えてしまいました。(こんな家事は楽しいな。)と二つ目は思い、とても嬉しく楽しくなりました。
夕方にヤギを連れて家に帰ると、姉妹が用意した食べ物が小さな土器の皿にのっていましたが、二つ目はそれに触れませんでした。次の日、またヤギと出かけ、渡されたかけらのパンを手を触れないでおいてきました。こうした1回目と2回目は姉妹たちは全然きづきませんでしたが、毎回そうだったので気づくことになり、「二つ目はどこか変よ。いつも食べ物を食べてないわよ。前はあげた物を何でも全部食べていたじゃない。きっとよそで食べ物をもらって食べているのよ。」と言いました。本当はどうなのか知るために、二つ目がヤギを牧草地に連れて行くとき、一つ目を二つ目と一緒に行かせ、二つ目がそこにいるとき何をするか、だれかが食べ物と飲み物をもってくるか、を見ることになりました。
それで、次に二つ目がでかけるとき、一つ目は二つ目のところに行き、「牧草地に一緒に行って、ヤギがよく世話されて食べ物があるところに行ってるか見るわ。」と言いました。しかし、二つ目は一つ目が何を考えているか知っていて、ヤギを背の高い草に追い込むと、「さあ、一つ目、座りましょう、あなたに何か歌ってあげるわ。」と言いました。一つ目は座り、慣れてない道を歩いたのと暑い太陽のためにくたびれていました。二つ目がずっと「一つ目、起きてるの?一つ目、眠ってるの?」と歌っていたので、とうとう一つ目は一つの目を閉じ、眠ってしまいました。二つ目は一つ目がぐっすり眠っていて、何もわからないと見てとるとすぐ、「メエメエ、ヤギさん、メエと鳴いて、お膳に食べ物をおくれ」と言いました。そしてテーブルに座り、満足するまで食べて飲みました。それからまた、「メエメエ、ヤギさん、どうぞお膳を片づけて」と叫びました。途端に全部消えてしまいました。二つ目はそれで一つ目を起こし、「一つ目、あなたはヤギの世話をしたいのに、そうしてる間に眠ってるわ。その間にヤギは世界中を走れるでしょうね。さあ、家へ帰りましょう。」と言いました。
それで二人は家に帰り、二つ目はまた自分の皿に手をつけませんでした。一つ目は母親になぜ二つ目が食べようとしないのか言えなくて、言い訳がましく、「外にいたとき眠ってしまったの。」と言いました。次の日、母親は三つ目に、「今度はお前が行って、二つ目が外にいるとき何か食べるか、だれか食べ物と飲み物をもってくるか見ておいで。だってこっそり食べて飲んでるにちがいないんだからね。」と言いました。それで三つ目は二つ目のところに行き、「私も一緒に行って、ヤギがちゃんと世話されて、食べ物があるところに追われているか見るわ。」と言いました。しかし、二つ目は三つ目が何を考えているか知っていて、ヤギを背の高い草に追い込むと、「さあ、三つ目、座りましょう、あなたに何か歌ってあげるわ。」と言いました。三つ目は座り、歩いたのと暑い太陽のためにくたびれていました。そして二つ目は前と同じ歌を歌って、「三つ目、起きてるの?」と歌いました。しかし、その次に「三つ目、眠ってるの?」と歌うはずなのに、その代わりに、うっかり「二つ目、眠ってるの?」と歌いました。そしてずっと「三つ目、起きてるの?二つ目、眠ってるの?」と歌いました。
それで三つ目にある目のうち二つの目が閉じ眠りましたが、三番目の目は歌で言われなかったので眠りませんでした。確かに目は三つ閉じましたが、三つ目が抜け目なくその目も眠っているような振りをしただけで、瞬きして何でもとてもよく見ることができました。二つ目は三つ目がぐっすり眠っていると思って、「メエメエ、ヤギさん、メエと鳴いて、お膳に食べ物をおくれ」といつもの呪文を言いました。そして心ゆくまで食べて飲みました。それからテーブルがなくなるよう命じて、「メエメエ、ヤギさん、どうぞお膳を片づけて」と言いました。三つ目は何もかも見てしまいました。それから二つ目は三つ目のところに来て、起こし、「眠っていたの?三つ目。とてもよく見張りをしているのね。さあ、帰りましょう。」と言いました。家に着くと二つ目はまた食べませんでした。そして三つ目は母親に、「今度は、そこの偉そうにしてる子がどうして食べないかわかったわ。外にいるとき、ヤギに『メエメエ、ヤギさん、メエと鳴いて、お膳に食べ物をおくれ』と言うと、二つ目の前に小さなテーブルがご馳走と一緒に出てくるの。私たちが食べてるのよりずっといいものよ。それで食べたいだけ食べると、『メエメエ、ヤギさん、どうぞお膳を片づけて』と言うと全部消えるの。私は全部そばでよく見てたわ。二つ目は呪文で私の二つの目を眠らせたけど、運よく額の目が起きてたんだから。」と言いました。
すると羨ましく思った母親が、「お前は私たちより良い生活をしたいのかい?そんな願いを止めてやるさ。」と言って肉切り包丁をとってきて、ヤギの心臓を突き刺し、ヤギは死んで倒れました。二つ目はそれを見ると、とても悲しく外へ出て行き、野原の端にある草のあぜに座り、しくしく泣きました。突然、賢い女の人がまたそばに立っていて、「二つ目、どうして泣いてるの?」と言いました。「泣かないでいられないわ。あなたの呪文をいうと毎日私に食事を出してくれたヤギが、お母さんに殺されてしまったの。それでまたお腹がすいて苦しまなければならないわ。」と言いました。賢い女の人は、「二つ目、いいことを教えてあげるわ。殺されたヤギのはらわたをくれるよう姉妹に頼みなさい。それでそのはらわたを家の前の土に埋めるのよ。そうしたら運が開けるわ。」と言って、それから消えました。二つ目は家に帰り、姉妹に、「ねえ、ヤギが少し欲しいの。いいところが欲しいんじゃなくてはらわたでいいから。」と言いました。すると二人は笑って、「それだけなら、いいわよ。」と言いました。それで二つ目は、夕方に静かに、はらわたを持って行き、賢い女の人が勧めてくれたように家の入口の前に埋めました。
次の朝、みんなが目覚めて家の入口に行くと、不思議な素晴らしい木が立っていました。その木には銀の葉がついていて、金の実が葉の間に下がっていて、この広い世界でこれ以上に美しく貴重なものはありませんでした。みんなは夜のうちにどうしてその木がそこに出てきたのかわかりませんでしたが、二つ目はそれがヤギのはらわたから生えてきたのがわかりました。というのは自分がはらわたを埋めたちょうどその場所にその木が立っていたからです。すると母親は一つ目に「登ってごらん。私たちに木の実をいくつか取っておいで。」と言いました。一つ目は登りましたが、金のりんごの一つをつかもうとすると枝が手から逃げて、何回やってもそうなるので、どうやってみてもりんごを一つも取ることができませんでした。すると母親は、「三つ目、お前が登ってごらん。お前は目が三つあるから一つ目より周りをよく見れるだろう。」と言いました。一つ目は降りて、三つ目が登りました。三つ目も同じでどんなにやっても金のりんごはいつも三つ目から逃げました。
とうとう母親はじれったくなり、自分で登りましたが、一つ目や三つ目と同じく実をつかむことができませんでした。というのはいつも空っぽの空をつかむばかりでしたから。それで二つ目が、「私に登らせて。多分私がもっとうまくやれるかも。」と言いました。姉妹は、「本当にね、お前の二つの目で何ができるっていうの?」と叫びました。しかし、二つ目は登り、金のリンゴは二つ目を避けないで、自分から二つ目の手に入ってきました。それで二つ目は次々とりんごをとることができて、エプロンにいっぱいいれて降りてきました。母親はそのりんごを二つ目からとりあげてしまい、みんなはこのごほうびに可哀そうな二つ目をもっと可愛いがるわけではなく、二つ目だけが実をとることができたので、さらに一層辛くあたりました。
あるとき、みんなが木のそばに一緒に立っていたとき、一人の若い騎士がやって来ました。「二つ目、急いで」と二人の姉妹は叫びました。「この下に入って。私たちに恥をかかせないでよ。」そして、木のそば近くにあった空っぽの樽を可哀そうな二つ目に大急ぎでかぶせました。そして二つ目がとっていた金のりんごもその下にサッと入れました。騎士はもっと近くに来てみると、ハンサムな人で、馬を止めてすばらしい金銀の木を感心して眺め、二人の姉妹に、「この素晴らしい木は誰のものかね?一枝くれたらお返しに望みの物をとらすが。」と言いました。すると一つ目と三つ目は、その木は私たちのものです、一枝さしあげますわ、と答えました。二人ともとても骨折りましたが、枝をとることができませんでした。というのは枝と実の両方とも毎回二人から離れていってしまうからでした。それで騎士は、「その木があなた方のものなのに、少しも折り取ることができないというのはとても変ですね。」と言いました。二人はまた、木が自分たちのものだと言い張りました。
二人がそう言っている間に、二つ目は金のりんごを二、三個樽の下から騎士の足元に転がしました。というのは二つ目は、一つ目と三つ目が本当のことを話さないので、腹をたてたからでした。騎士はりんごを見たときびっくりし、どこから来たのか、と尋ねました。一つ目と三つ目は、もう一人の姉妹がいますが、普通の人のように目が二つしかないので、姿を見せるわけにはいかないのです、と答えました。しかし、騎士は娘に会いたがり、「二つ目、出ておいで。」と叫びました。それで二つ目は、すっかり安心して、樽の下から出てきました。騎士は娘がとても美しいのに驚いて、「二つ目、お前はきっとその木から枝を折り取って来れるだろう。」と言いました。 「はい、きっとできますとも。その木はわたしのものですから。」と二つ目は答えました。そして木に登り、いとも簡単に美しい銀の葉と金の実がついた枝を折って、それを騎士に渡しました。それで騎士は、「二つ目、お礼は何がいいか?」と言いました。「ああ、私は朝早くから夜遅くまで、お腹がすき、喉が渇き、悲しく苦しい思いをしているのです。私を一緒にお連れして救ってくだされば、嬉しく思います。」と二つ目は答えました。それで騎士は二つ目を抱き上げて馬にのせ、父親の城へ娘を連れて行き、そこで娘に美しい服を着せ、心ゆくまで肉と飲み物を食べさせました。そして騎士は二つ目をとても愛していたので、結婚し、結婚式が大喜びで行われました。
二つ目がこうしてハンサムな騎士に連れていかれて、二人の姉妹は二つ目の幸運を本当に妬ましくおもいました。「でも、私たちにはまだ不思議な木が残っているわ。それで木から実を取れなくても、やはり誰でも立ち止まって木を見て、私たちのところに来て、感心するわ。どんないいことが起こるかもしれないじゃないの。」と二人は思いました。しかし次の朝、木は消えてしまい、二人の望みはなくなってしまいました。一方、二つ目は自分の部屋の窓から外を見ると、木は部屋の前に立っていたのでとても喜びました。木は二つ目についてきたのでした。
二つ目は長い間幸せに暮らしました。あるとき二人の貧しい女が城の二つ目のところにやってきて、施しを求めました。二つ目が二人の顔を覗き込んで、自分の姉妹の一つ目と三つ目だとわかりました。二人はとても貧しくなって、あちこちさ迷い、家から家へ物乞いしなければなりませんでした。しかし、二つ目は二人を歓迎し、やさしくして、世話をしました。それで二人とも、若いころに二つ目にした意地悪を心から悔いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、四人の息子がいる貧しい男がいました。息子たちが大人になると、男は兄弟に、「子供たちよ、お前たちはもう世の中に出ていかなくてはいけないな。というのもおれはお前たちにやるものが何もないんだ。だから、出発して、よそへ行き、手仕事を身につけ、自分の道を進めるかやってみろよ。」と言いました。それで四人の兄弟は杖を持ち、父親に別れを告げ、一緒に町の門を通って出ていきました。しばらく歩いた後で、4つの違った方向に分かれている交差路に来ました。すると、長男が、「ここでわれわれは別れなくてはならない。だが4年後の今日、またここで会うことにしよう。その間に運を試すんだ。」と言いました。
それから、それぞれが自分の道を進み、長男は一人の男に会いました。男は、どこに行くのか、何をするつもりか、と尋ねました。「仕事を身につけたいのです。」と長男は答えました。すると男は、「おれと一緒に来て、泥棒になれよ。」と言いました。「いや、それはりっぱな仕事とは見られないですよ。しまいには、首つり台で揺れなくてはなりません。」と長男は答えました。「なんだ、首つり台を怖がらなくていいさ。おれは、ほかの人がだれも手にできなくて、だれもおまえをかぎつけないようなものを手に入れることを教えるだけだよ。」と男は言いました。それで長男は説得されて、男と一緒にいる間に、優れた泥棒になり、とても器用だったので、いったん目をつけたら、若者から無事でいられるものはなくなりました。
次男は男に会い、「世の中で何を習いたいのかね?」と兄と同じ質問をうけました。「まだわかりません。」と次男は答えました。「では私と一緒にきて、星占い師にならないか。こんないいものは他にないぞ。何も君から隠せないんだから。」次男はその考えが気に入り、とても腕のいい星占い師になったので、修業を終えてまた旅を続けようとしたとき、親方は遠めがねをくれて、「その遠めがねは地上だろうと天上だろうと起こることは何でもみることができる。何もおまえから隠しおおせないのさ。」と言いました。
三男は、猟師のところで修業することになりました。猟師は、若者に猟に関係する何でもとても上手に教えたので、三男は熟練した猟師になりました。別れるときに親方は銃をくれて、「その銃には撃ちそこないがない。狙うものは必ずあたるんだ。」と言いました。
一番下の弟も、何になるつもりかと尋ねてきた男に会いました。「仕立て屋になりたくないかね?」と男は言いました。「ありませんよ。」と若者はいいました。「だって仕立て屋って、朝から晩まで体を折り曲げて座り、針を前と後ろにくぐらせるんですよね?そんなのはぼくの好みじゃありません。」「そうか、だけどお前はわかってないんだ。」と男は答えました。「おれんとこでは、全く違った仕立て屋のわざを習うんだよ。りっぱでちゃんとしてるし、たいていはとても名誉になるわざだよ。」それで若者は納得し、男と一緒に行き、そのわざを本当の最初から学びました。別れるとき男は若者に針を与え、「この針では、卵のように柔らかいものでも鋼鉄のように固いものでも、何だって縫い合わせることができ、縫ったものは全部一つのものになって縫い目が見えなくなるんだ。」と言いました。
決めておいた四年が終わると、四人の兄弟は交差路に同時に着き、抱き合い、キスし合って、父親のところに戻りました。「そうかあ」と父親はとても喜んで言いました。「お前たちがおれのところに舞い戻ってきたかあ。」兄弟は、どういうことがあったかを全部話し、そしてめいめいが自分の仕事を習い覚えたことを父親に話してきかせました。
さてみんなはちょうど家の前にある大きな木の下に座っていました。父親は、「お前たちみんなを試して、腕前を見てみよう。」と言いました。それから見上げて、二番目の息子に、「この木のてっぺんにある二本の枝の間にズアオアトリの巣がある。その中にいくつ卵があるか言ってみろ。」と言いました。星占い師は遠めがねをとり、見上げて、「5つあるよ。」と言いました。それから父親は長男に向かって、「卵を抱いて座っている鳥に気づかれないで卵を全部とってこい。」と言いました。腕のよい泥棒は登っていき、鳥の下から卵を5個とると、降りて父親のところに持っていました。鳥は長男がしていることに全く気づかないで、相変わらず静かに座っていました。
父親は5個の卵を持って、テーブルの四隅に卵を一つずつ、5つ目を真ん中におき、猟師に、「一発で五個の卵を真ん中から撃ってみせてくれ。」と言いました。猟師は狙いをさだめ、卵を父親が望んだとおりに5個、しかも一発で撃ちました。猟師はきっと弾が隅を回ってこれる粉を使ったにちがいありません。「さあ、今度はお前の番だ。」と父親は4番目の息子に言いました。「お前は元通り卵を縫い合わせろ。中に入っているひなもだ。撃たれて怪我をしていないようにやらねばならないぞ。」仕立て屋は針を持って来て、父親の望み通り縫いました。これが終わると、父親に言われて、泥棒はまた木に登って巣まで卵を持って行き、鳥に気づかれないで元通り置いてきました。鳥は卵を抱き続け、二、三日後、ひなが巣からよちよち出てきましたが、仕立て屋に縫い合わされた首に赤い線がありました。
「なるほど」と父親は息子たちに言いました。「お前たちは本当にほめちぎって然るべきだな。お前たちは時間を無駄にしないで、いいことを身につけたよ。誰を一番ほめたらいいのかわからないくらいだ。じきにお前たちのわざを示す時が来さえすれば、わかってくるさ。」このあとまもなく、国で大きな騒動が持ち上がりました。というのは王様の娘が竜にさらわれたのです。王様は日夜それを苦にして、娘を取り戻した者には娘を妻に与える、というお触れを出させました。
四人の兄弟はお互いに、「これはおれたちの腕をみせるうってつけの機会だぞ。」と言い合い、一緒にでかけ、王様の娘を救う決心をしました。「王女様がどこにいるかすぐにわかるよ。」と星占い師は言って、遠めがねで見て、「もう見えたぞ。ここからずっと遠い海の岩の上だ。竜がそばで王女様を見張っている。」と言いました。
それから星占い師は王様のところに行き、自分たち兄弟に船を用意してくれるよう頼み、一緒に海を渡って、とうとうその岩に着きました。そこに王様の娘は座って、竜は娘の膝枕で眠っていました。猟師は、「おれは撃てないよ。美しい乙女も一緒に殺してしまうだからな。」と言いました。「それじゃおれのわざを試そう。」と泥棒が言って、そこへ忍び入り、竜の下から王女をさらってきましたが、音もたてずとてもうまかったので、怪物は気づかないでいびきをかき続けました。
大喜びで、王女と一緒に急いで船に乗り、外海に出ていきましたが、竜が、目が覚めて王女のいないことに気づき、追いかけてきて、怒って鼻息も荒くやってきました。竜がちょうど船の上にまわってきて、船の上に降りようとしたとき、猟師は狙いをさだめ、竜の心臓を撃ちました。怪物は死んで落ちてきましたが、とても大きく力があったので、落ちたとき船を粉みじんに壊してしまいました。しかし、幸いにも、みんな二、三枚の板切れをつかみ、広い海に浮かんでいました。
それでまたしても大きな危機になりました。しかし、仕立て屋は、ぼやっとしていないで、不思議な針をとりだし、二、三針で板切れを縫い合わせ、みんなはそれに座り、船の破片を一緒に集めました。それから仕立て屋が集めたものをとてもうまく縫い合わせたので、まもなく船はもう一度航海できるようになり、みんな無事に帰ることができました。
それで王様はもう一度娘に会え、とても喜びました。王様は四人の兄弟に、「お前たちのうちの一人に娘を妻にやろう。だが、誰にするかはお前たちで決めなければならない。」と言いました。すると、四人の間で激しい言い争いが起こりました。というのは、めいめいが自分の言い分の方を好んだからです。星占い師は言いました。「おれが王女様を見なかったら、お前たちみんなのわざは役に立たなかったろうよ。だから、姫はおれのものだ。」泥棒は言いました。「お前が見たのが何の役に立っただろうな、もしおれが竜から姫をとってこなかったらな。だから、姫はおれのものだ。」猟師は言いました。「お前たちと王女様、みんなは、おれの弾が竜にあたらなかったら、竜に八つ裂きにされていたぜ。だから、姫はおれのものだよ。」仕立て屋は言いました。「それでもしおれが、おれのわざで、船を元通り縫い合わせなかったら、お前たちはみんな、みじめに溺れ死ぬところだったんだ。だから、姫はおれのものだ。」
それで、王様が意見を言いました。「お前たちはそれぞれ同じ権利を持っているし、お前たちみんなが娘を妻にできるわけではないのだから、誰にもやらないことにして、ほうびとしては、国の半分をお前たちにやろう。」兄弟はこの決定に喜び、「おれたちが仲違いするよりこっちの方がいいよ。」と言いました。それから、兄弟は国の半分を受け取り、神様に召されるまで父親と一緒にとても幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔ある村に亭主とおかみさんが住んでいました。おかみさんはとても怠け者で何につけても働く気がありませんでした。亭主が紡ぐために何を渡しても終わらせることはなく、実際に紡いでも紡いだものを巻かないで、からまって山にしてほうっておくのでした。亭主が小言を言うと、おかみさんはいつもすぐ言い返しました。「だって、どうやって巻くの?巻き枠がないのにさ?森へ行って枠を作ってよ。」「そういうことなら」と亭主は言いました。「森へ行って巻き枠をつくる木をとってくるよ。」するとおかみさんは(亭主が木を持ってきて巻き枠を作れば、自分は糸を巻かなくてはならないし、それからまた糸を紡がなくてはならない)と心配になりました。おかみさんはちょっと考えていましたが、うまい考えが浮かびました。それでこっそりと亭主のあとをつけて森へ行きました。亭主が木を選んで切ろうと木に登ったとき、おかみさんは、亭主に見えない下のしげみにはいり、叫びました。
亭主は耳をすまし、少しの間斧をおろし、一体どういう意味だろうかと考え始めました。しばらくしてとうとう「いったい何だっていうんだ?耳鳴りがしていたにちがいない。何でもないのにこわがったりしないぞ。」と言って、また斧をつかみ、切り始めました。するとまた下から叫び声が聞こえました。
亭主はピタッと止まり、こわくなって、事態を考えてみました。しかし、しばらくしてまた気を取り戻し、三回目に斧に手を伸ばし切り始めました。しかし、だれかが三度目に大声で叫びました。
もうたくさんでした。亭主はすっかりやる気をなくしてしまい、急いで木から降りると、家に帰り始めました。おかみさんは亭主より先に家に着くために脇道を通って一生懸命走りました。それで亭主が居間に入って来たとき、何もなかったように何食わぬ顔をして、「あら、巻き枠のいい木をとってきたの?」と言いました。「いや」と亭主は言いました。「巻くのはよくないとわかったよ。」それで森であったことをおかみさんに話し、それからはおかみさんは糸巻きのことでうるさく言われず安心でした。
ところが、しばらくすると、亭主は家の中が散らかっているとまた文句を言いだしました。「お前な」と亭主は言いました。「紡ぎ糸がからまったままそこにあるのは本当にみっともないぞ!」「そうね」とおかみさんは言いました。「巻き枠がまだ手にはいらないんだから、あんたが屋根裏に上って行って、私は下に立っているわ。糸をあんたに投げ上げるから、あんたはそれを落としてよこしてよ。それで結局は一かせの束になるわよ。」「よし、それでいいだろう」と亭主は言いました。そういうわけで二人はそうして、それが終わると、亭主は、「糸が束になったぞ。今度は煮なくてはいけないな。」と言いました。おかみさんはまた気が重くなりました。きっぱりと「ええ、明日の朝早く煮ましょう」と言いましたが、密かに別の計略を練っていました。
朝早くおかみさんは起きて、火をもやし、釜をかけ、ただ糸の代わりに麻屑のかたまりを入れ、煮ました。そのあとベッドにまだねていた亭主のところに行き、「ちょっと出かけなくちゃいけないの。あんた、起きて、火にかけてある釜の中の糸を見てちょうだい。だけどすぐにやらなくちゃいけないわ。気をつけてよ。おんどりが時をつくるときにあんたが糸のところに立っていないようなら、糸は麻屑になるからね。」亭主は承知してぐずぐずしないように用心し、大急ぎで起きて台所に行きました。しかし、釜のところに着いて中を覗くと、恐ろしいことに、麻屑のかたまりしか見えませんでした。それで、かわいそうに亭主は、自分が失敗した、自分のせいだ、と考えて、ねずみのように静かになってしまい、それからはもう糸や糸紡ぎのことは言わなくなりました。
まあだけど、あなただって、これは鼻もちならない女だって認めるにちがいありませんよ。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
願い事がまだ人の役に立っていた頃に、王様の息子が年とった魔女に魔法をかけられ、森の鉄のストーブに閉じ込められました。誰も王子を救うことができないままそこで王子は何年も過ごしました。すると王様の娘が森に入り、道に迷い、父親の国に帰ることができませんでした。娘は9日間あちこちさ迷い、しまいには鉄のストーブのところにやってきました。
するとストーブから声が出て、「あなたはどこから来たんですか?どこへ行くんですか」と娘に尋ねました。娘は「父の国がわからなくなって、家に帰れないのです。」と答えました。すると鉄のストーブの中の声が言いました。「家へ帰るお手伝いをしましょう。しかも本当に速く。もしあなたが私の望むことをしてくれると約束すればね。私はあなたの父親よりはるかに大きな国の王様の息子なのです。そしてあなたと結婚するつもりです。」
それで王女はこわくなり、「まあ、鉄のストーブなんてどうしたらいいの?」と思いましたが、父親のところへとても帰りたかったので、望み通りにすると約束しました。しかし、王子は言いました。「ここに戻り、ナイフを持って来てください。それで鉄を削って穴を空けてください」それから王子は王女にお供をつけました。お供は王女の近くを歩きましたが、口をきかないで、二時間で王女を家へ連れて行きました。王様の娘が帰るとお城では大喜びし、年とった王様は娘の首に抱きついてキスしました。しかし娘はひどく困って、「お父様、困っているの。もし鉄のストーブに会わなかったら、私は大きな荒れた森から二度と戻ってこれなかったわ。だけど、ストーブのところに戻って自由にしてやり結婚するって約束させられたの。」と言いました。
すると年とった王様はとても驚いてもう少しで気を失うところでした。というのは王様にはこの娘一人しかいなかったからです。それで二人は王女の代わりにとても美しい粉屋の娘をやろうと決めました。二人は粉屋の娘をそこに連れていき、ナイフを渡し、鉄のストーブを削らなくてはいけないと言いました。それで娘は24時間削りましたが、少しもはがせませんでした。夜が明けると、ストーブの中から声がしました。「外は夜が明けたようだね。」それで娘は「そのようですね。お父さんの水車の音が聞こえるような気がします。」と答えました。「さてはお前は粉屋の娘だな。それじゃすぐ帰り、王様の娘をここによこしなさい。」
それで娘はすぐに立ち去り、年とった王様に、あそこの人は私ではなく王様の娘を望んでいます、と言いました。それで年とった王様は仰天し、娘は泣きました。しかし、粉屋の娘よりもっと美しい豚飼いの娘がいたので、二人はその娘に金貨を一枚渡し、王様の娘の代わりに鉄のストーブのところに行かせることにしました。それで娘はそこに連れて行かれ、この娘も24時間削ることになりました。ところがこの娘も粉屋の娘と同じでした。夜が明けると、ストーブの中の声が叫びました。「外は夜が明けたようだな。」「そのようですね。お父さんの鳴らす角笛が聞こえるようだわ。」と娘は答えました。「それではお前は豚飼いの娘だな。すぐに帰り、王様の娘に来るように言いなさい。それで約束した通りにしなくてはならないと言ってください。もし王女が来ないと国を滅ぼし石一つ立たなくしてやるとね。」
王様の娘はそれを聞くと泣き出しましたが、今となっては約束を守るしかありませんでした。それで父親に別れを告げ、ポケットにナイフをいれて森の鉄のストーブのところにでかけました。そこに着いて削り始めると、鉄がはがれ、二時間も経つともう小さい穴があきました。それで王女が中を覗くと見えたのはとてもハンサムな若者で金と宝石でとてもきらきらしていたので王女は喜びました。それで王女は削り続け、とても大きな穴をあけたので王子はストーブから出ることができました。
すると王子は言いました。「君は僕のもので、僕は君のものだ。君は僕の花嫁で、僕を魔法から解いてくれた。」王子は王女を自分の国へ連れていこうとしましたが、王女はもう一度父親のところへ行かせてくださいと頼みました。王様の息子は、そうすることを許しましたが、王女は父親に三語より多く言ってはいけない、それからもう一度戻ってくるように、と言いました。それで王女は家へ帰りましたが、三語より多く話してしまい、途端に鉄のストーブは消え、ガラスの山を越え、尖った剣を越えて、はるかかなたに連れ去られてしまいました。しかし、王様の息子は解放されていてもうその中に閉じ込められていませんでした。このあと、王女は父親に別れを告げ、あまりたくさんではありませんがいくらかお金を持ち、大きな森に戻り、鉄のストーブを探しましたがどこにも見つかりませんでした。
9日間王女はストーブを探しました。するととてもお腹がすいてきてどうしたらよいかわかりませんでした。王女は何も食べる物をもっていなかったのです。夕方になると野の獣がこわいので小さな木に座り、そこで夜を過ごそうと決めました。真夜中ごろに遠くに小さな明かりが見えた時、「ああ、あそこに行けば助かる」と思いました。王女は木から下りて、その明かりの方へ行きましたが途中祈りました。それから小さな古い家に着き、その家のまわりはたくさん草が生い茂り、家の前には木が小さな山になっていました。「あら、どこに来たのかしら?」と王女は思って、窓から覗きこみましたが、中には大なり小なりヒキガエルしか見えませんでした。他にはワインと焼き肉がのったテーブルがあり、皿やグラスは銀でできていました。それから王女は勇気をふるって戸をたたきました。すぐに太ったヒキガエルが叫びました。「小さな緑の女中、這い脚の女中、這い脚の小犬、あちこちぴょんぴょん跳ねて、外にだれがいるか速くみておいで」
そして小さなヒキガエルが歩いて来て、戸を開けてくれました。王女が入ると、みんな歓迎の言葉をいい、王女は座らされました。ヒキガエルたちは「どこから来たんですか、どこへ行くんですか」と尋ねました。それで王女は自分の身に起こったことを語り、三語以上言わないようにという命令に背いたので、ストーブが王様の息子もろとも、消えてしまったこと、今は王子を見つけるまで山や谷を越えてさがすつもりだ、と言いました。すると年とって太ったヒキガエルが言いました。「小さな緑の女中、這い脚の女中、這い脚の小犬、あちこちぴょんぴょん跳ねて、大きな箱を持っておいで」
すると小さなヒキガエルが行って箱を持ってきました。このあと、みんなは王女に食べ物と飲み物をくれ、良く整えたベッドに連れて行きました。そのベッドは絹とビロウドのような感じで、王女はそこにねてお祈りし、眠りました。朝が来て王女が起きると、年とったヒキガエルは大きな箱から三本の針を王女に渡し、これを持って行くように、高いガラスの山を越えて三つの尖った剣と大きな湖を越えて行かなければならないのだからこれらが必要になるだろうから、これを全部やるとまた恋人を取り戻せるだろう、といいました。
それでそれをとても大事にしておくように、と言って三つの品、三本の大きな針と鋤車と三個のクルミ、を渡しました。これらの品を持って王女は先に進み、とてもつるつるしているガラスの山にきたとき、先に三本の針を足の後ろに刺し、それから前に刺して、山を越えていきました。山を越えてから注意して印をつけたところに針を隠しました。このあと、三本の尖った剣のところにきて、その時は鋤車に乗って転がりながら越えました。とうとう大きな湖に着いて、そこを渡り終えると大きな美しい城に来ました。王女は出かけて働き口をお願いしました。「私は貧しい娘です。雇ってもらえないでしょうか」と王女は言いました。そうはいっても、王女は、大きな森で鉄のストーブから救った王様の息子がその城にいると知っていました。それで王女は安いお金で食器洗い場の女中に雇われました。しかし王様の息子はもう結婚しようと思っている別の娘をそばにおいていました。王子は王女がとっくに死んでしまったと思っていたからです。
夕方に洗ってしまい仕事が終わると、王女はポケットをさぐり、年とったヒキガエルがくれた三個のクルミを見つけました。一個を歯で割り、実を食べようとしました。すると何と、品のある王家の服が入っていました。しかし、花嫁はこれを聞くとやってきて、ドレスを欲しくなり買いたいと思って、「召使が着るドレスではないでしょう」と言いました。王女は、いいえ、売りません、でも一つ願いを認めてくれるなら差し上げましょう、それは花婿の部屋で一晩眠ることを許して下さることです、と言いました。花嫁はそのドレスがとてもきれいで、同じようなものは持ったことがなかったので許可しました。
夜になると花嫁は花婿に、「あの馬鹿な女中があなたの部屋で眠りたがっています。」と言いました。「君がいいなら、僕もいいよ。」と花婿は言いました。ところが、花嫁は眠り薬をいれたワインを花婿にのませました。それで花婿と女中は部屋で寝に行き、花婿はとてもぐっすり眠ったので女中は起こすことができませんでした。女中は一晩中泣いて言いました。「私は荒れた森であなたが鉄のストーブの中にいたとき、あなたを救いました。私はあなたを探し、ガラスの山や三本の鋭い剣や大きな湖を越え、あなたをみつけました。それなのにあなたは私の言うことを聞こうとしないのね。」家来たちが部屋の戸のそばにいて、こんなふうに夜通し泣いているのが聞こえ、朝にそれを主人に話しました。
次の日の夕方洗い物が終わり、王女は二個目のクルミを開いてみると、もっとずっときれいなドレスが中に入っていました。花嫁はそれをみるとまたそのドレスも買いたいと思いました。しかし女中はお金を受け取らずもう一度花婿の部屋で眠りたいと頼みました。ところが、花嫁は花婿に眠り薬を飲ませたので、花婿はぐっすり眠り、何も聞こえませんでした。しかし女中は一晩中泣いて言いました。「私は荒れた森であなたが鉄のストーブの中にいたとき、あなたを救いました。私はあなたを探し、ガラスの山や三本の鋭い剣や大きな湖を越え、あなたをみつけました。それなのにあなたは私の言うことを聞こうとしないのね。」家来たちが部屋の戸のそばにいて、女中が夜通し泣いているのが聞こえ、朝にそれを主人に話しました。
三日目の番に洗い物が終わると王女は三個目のクルミを開きました。中には純金がいっぱいのもっと美しいドレスが入っていました。花嫁はそれを見て欲しいと思いましたが、娘は花婿の部屋で3回目に眠らせてくれるなら、という条件で渡すだけでした。ところが、王様の息子は警戒して眠り薬を捨ててしまいました。女中が泣きだして、「愛するあなた、私は、あなたが恐ろしい荒れた森で鉄のストーブの中にいたとき、あなたを救いました。」とかき口説くと、王様の息子は跳び起きて、「あなたが本当の花嫁だ。あなたは私のもので、私はあなたのものだ。」と言いました。
そのあとすぐ、まだ夜のうちに、王子は王女と一緒に馬車に乗り、偽の花嫁が起きられないようにその服を持ち去りました。二人は大きな湖にくると船で渡り、三本の鋭い剣のところに着いた時は鋤車に乗り、ガラスの山に着いた時は三本の針を山に刺し、とうとう小さな古い家に着きました。しかし、二人が中に入ると、それは大きなお城になり、ヒキガエルたちは魔法が解けて王様の子供たちになり、大喜びしました。それから結婚式のお祝いがあり、王様の息子と王女はその城に残りました。それは二人の父親たちの城よりはるかに大きいものでした。しかし、年とった王様が一人残されたのを悲しんだので、二人は王様を迎えに行き、一緒に暮らすため連れてきました。それで二人は二つの国を持ち、幸せに暮らしました。ネズミが走ったわよ。お話はおしまいです。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、裕福だったときには子供がいなくて貧しい時に男の子ができた亭主とおかみさんがいました。二人は子供の名付け親を見つけられなかったので、父親が、名付け親が見つかるか他の村へ行ってみよう、と言いました。途中で貧しい男に会い、その男がどこへいくのかね?と言いました。父親は、名付け親を見つけにいくところさ、なにしろ貧乏なものだから誰も名付け親になってくれなくてね、と言いました。「そうか」と貧しい男は言いました。「あんたが貧乏で、おれも貧乏だ。おれが名付け親になろう。暮らし向きが悪いから、子供に何もやれないがね。家へ帰って産婆さんに子供と一緒に教会へくるように言っとくれ。」みんなが教会に着くと、その乞食はもうそこにいて、子供に「実意ありフェレナンド」と名前をつけました。
教会からでるときに乞食は「さあ、家へお帰り、お前に何もあげられないよ。だからお前も何もくれなくていいよ。」と言いました。しかし、乞食は産婆さんに鍵を渡し、家へ着いたらこの鍵を父親にやってくれ、子供が14歳になるまで大事にしまっておくようにと言ってな、そのときに子供が荒れ野に行くとその鍵が合う城がある、その城の中のものは子供の物だ、と言いました。
さて、子供がとても大きく7歳になったあるとき、他の子供たちと遊びに行きました。子供たちがめいめい、名付け親から自分の方が多くもらったと自慢をしていましたが、その子供は何も言うことができなくて困りました。それで家に帰ると父親に、「ねえ、僕は名付け親から何ももらわなかったのかい?」と言いました。「いや、もらったよ。」と父親は言いました。「鍵が一本あるよ。荒れ野に城が立ってれば、そこへ行って開けてみな。」そこで子供はそこへ行きましたが、城は見えなかったし誰も聞いたことがありませんでした。
それからまた7年経ち、14歳になったとき、子供はまたそこへ行きました。今度は城がありました。城の戸をあけると、中には一頭の馬、一頭の白馬しかいませんでした。そうして子供は馬が手に入ったので大喜びして、その馬に乗り、父親のところに走って戻りました。「僕には白馬があるんだから、旅に出るよ。」と子供は言いました。
そうして子供はでかけました。進んでいくとペンが道に落ちていました。はじめは拾おうと思いましたが、それからまた「まあいいや、そこにおいておこう。行く先で必要ならペンなんかいつだってみつかるさ」と思いなおしました。こうして通りすぎようとしたら、後ろから「実意ありフェレナンド、そのペンを持って行くんだよ。」と呼びかける声がしました。振り返りましたが、誰も見えませんでした。それでも声に従って戻りペンを拾いました。
さらに少し進むと、湖のそばを通りました。一匹の魚が岸にいて、息ができなくて喘いでいました。そこで実意ありフェレナンドは「待ってな、魚さん、水に入れて助けてやろう。」と言って魚の尻尾をつかみ湖に投げ入れました。すると魚は水から頭を出して「泥から助け出してくれたお礼に笛をあげます。困ったとき笛を吹いてください。そうすれば助けてあげます。それから何か水に落としたら、笛を吹いてください。そうすればとってきて水から出してあげます。」
それからまた馬を進めていくと男に出会いました。その男はどこに行くんだい?と尋ねました。「ああ、次の場所だよ」「名前は?」「実意ありフェレナンドだ」「へぇ、じゃあ、おれたちは同じような名前なんだ。おれは実意なしフェレナンドというんだ。」それで二人とも近くの町の宿屋へでかけました。
さて、具合の悪いことに、実意なしフェレナンドは、もう一人のフェレナンドが考えたりやろうとした何でも分かってしまうのでした。実意なしフェレナンドはいろいろな悪いわざを使ってそれを知るのでした。宿に誠実な娘がいて、明るい顔をし、とても愛らしく振る舞いました。この娘が、実意ありフェレナンドがハンサムな男だったので好きになり、どこへ行くんですか?と尋ねました。「ああ、ただあちこち旅して回ってるだけです。」と実意ありフェレナンドは言いました。すると、娘は、ここにいなさいよ、この国の王様が召使か乗馬従者を雇おうとしてるのよ、そこへお務めしたらいいわ、と言いました。実意ありフェレナンドは、そのような人のところへ行って申し込むのはあまりうまくやれないんだ、と答えました。すると娘は、「あら、だけど私がすぐそれをやってあげるわ。」と言いました。そこで娘はすぐに王様のところへ行き、とてもすぐれた召使のことを知っています、と言いました。王様はそれを聞いて喜び、その男を呼び出して召使にしようとしました。ところが実意ありフェレナンドは乗馬従者の方をやりたかったのです。というのは、自分の馬がいるところに自分もいたかったからです。それで王様はこの男を乗馬従者にしました。
実意なしフェレナンドはそれを知ると、娘に、「何だって?あいつは助けてやっておれにはやってくれないのか?」と言いました。「まあ」と娘は言いました。「あなたも助けてあげるわよ。」娘は、(この男と仲良くしておかなくちゃ、だって信用できないんだもの)と思ったのです。それで、王様のところへ行き、この男を召使に勧めました。王様は承知しました。
さて、王様は朝に貴族たちに会うといつも嘆いて、「ああ、愛する人と一緒ならばなあ」と言っていました。ところで実意なしフェレナンドはいつも実意ありフェレナンドに敵意を持っていました。そこであるとき、王様がこんなふうにこぼしたとき、「王様には乗馬従者がいますよ。その男をやってその方を連れてこさせたらいかがですか。それで仕損じたら首をはねるのです。」と言いました。
そこで王様は実意ありフェレナンドを呼びにやり、これこれのところに愛する娘がいる、その娘を連れて参れ、仕損じれば命は無いぞ、と言いました。実意ありフェレナンドは馬小屋の白馬のところに行き、嘆いて言いました。「ああ、おれはなんと不幸せなんだ」すると後ろの誰かが、「実意ありフェレナンド、どうして泣いてるの?」と叫びました。男は見回しましたが、誰も見えませんでした。それでまた嘆き続けました。「ああ、かわいい白馬よ、もうお前と別れなくちゃならない、もう死ななくてはいけないんだ」すると誰かがまた叫びました。「実意ありフェレナンド、どうして泣いてるの?」すると初めてそう尋ねているのは自分の白馬だと気づきました。「お前が話してるのか?白馬よ、お前は口がきけるのか?」そしてもう一度、「これこれの場所に行って花嫁を連れて来なくてはいけないのだよ。どうしたらいいかわかるかい?」と言いました。すると白馬は言いました、「王様のところに行って、必要なものを用意してくださるなら花嫁をお連れしましょうと言いなさい。王様が肉でいっぱいの船一そうとパンでいっぱいの船一そうを用意してくれれば、うまくいきますよ。湖に住んでいる巨人たちにやる肉を持っていかなければ、巨人たちはあなたを引き裂いてしまいます。それから、パンを持っていってやらなかったら、大きな鳥があなたの目をつついてとってしまいます。」そこで王様は国じゅうの肉屋に家畜を殺させ、パン屋にはみなパンを焼かせて、船をいっぱいにしました。
船がいっぱいになると、白馬は実意ありフェレナンドに言いました。「さあ、私に乗って、一緒に船にのるのです。それから巨人たちがきたら、『静かに、静かに、巨人さんたち、あなた方のことを考えてきましたよ、おみやげを持ってきました』と言うんです。それから鳥たちがきたら、同じように『静かに、静かに、鳥さんたち、あなた方のことを考えてきましたよ、おみやげを持ってきました』と言うんです。そうすればあなたに何もしませんから。そしてお城に着いたら、巨人たちが手伝ってくれます。だからお城に行くときは巨人たちを二、三人連れていきなさい。お城では王女は眠っています。だけど起こしてはいけなくて、巨人たちに持ち上げさせてベッドのまま王女を船に運ばせなさい。」
そして何もかも白馬が言った通りになりました。実意ありフェレナンドは巨人たちと鳥たちに持ってきた物をやり、それで巨人たちは喜んで、ベッドに寝たままの王女を王様のところへ運びました。さて王女は王様のところへ来ると、私は生きていけない、書いたものがなくてはいけないのです、それはお城に置きっ放しにされました、と言いました。
すると、実意なしフェレナンドがそそのかして、実意ありフェレナンドが呼ばれました。王様は、お城から書き物をとって参れ、さもないと命は無いぞ、と言いました。それで実意ありフェレナンドはまた馬小屋に行き、嘆いて言いました。「ああ、かわいい白馬よ、私はまた行かなくてはならないのだ。どうすればいいのだろう?」すると白馬は、また船にいっぱい積めばいいだけだ、と言いました。それでまた前と同じようになり、巨人たちと鳥たちは満足して、食べ物でおとなしくなりました。お城に着くと、白馬は実意ありフェレナンドに、あなたが入っていかなくてはならない、王女の寝室のテーブルに書き物はあります、と言いました。そこで実意ありフェレナンドは入っていき、書き物をとってきました。湖の上にいたとき、実意ありフェレナンドはペンを水に落としてしまいました。すると、白馬は、「今度は私は全然助けられません。」と言いました。しかし、笛のことを思い出し、吹き始めると、魚がペンを口にくわえてやってきて、フェレナンドに渡しました。そうして書き物を城に持って行きました。それから城で結婚式が行われました。
ところが、お后は、王様に鼻がなかったので、好きではなく、むしろ実意ありフェレナンドの方が好きでした。それで、宮廷の貴族たちがみんな集まったとき、お后は、私は奇術のわざができます、人の首を切り落としてまたくっつけられます、どなたか試してごらんなさい、と言いました。しかし、誰も最初にやりたい人はいませんでした。それで実意なしフェレナンドがまた王様をそそのかして、実意ありフェレナンドがそれをひきうけました。お后は首を切り落とし、またくっつけると、首はすぐにつながって、ただ喉の周りに赤い糸があるかのように見えるだけでした。すると王様はお后に、「お前、どこでそれを習ったのかね?」と言いました。「あら」とお后は言いました。「自分でこの技を心得ているのよ。あなたにもやってみましょうか?」「ああ、頼むよ」と王様は言いました。そこでお后は王様の頭を切り落としましたが、またくっつけないで、うまくのせられなくて、頭がすわらないふりをしました。それで王様は葬られましたが、お后は実意ありフェレナンドと結婚しました。
ところで、実意ありフェレナンドはいつも自分の白馬に乗りました。あるとき白馬にまたがっていると、白馬が、あなたの知っている荒れ野に行ってください、そしてその周りを三回走ってください、と言いました。そして、フェレナンドがその通りにやると、白馬は後ろ足で立ち上がり、王様の息子の姿に変わりました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
大きな戦があり、王様にはたくさんの兵士がいましたが、給料を少ししかあげなかったので、兵士たちは暮らしていけませんでした。それで三人の兵士が内緒で逃げることに決めました。一人の兵士があとの二人に、「つかまれば首つり台につるされるぞ。どうやってやるんだ?」と言いました。もう一人が、「あの大きな麦畑を見ろよ。あそきに隠れたら、誰も見つけられないさ。軍隊はそこに入ってはいけないんだし、明日出ていくんだからね。」と言いました。三人はうまく麦の間に這っていきましたが、ただ軍隊は出発しないで、そのまわりにい続けました。三人は二日二晩麦の中にとどまって、とてもお腹がすき、死ぬばかりになりました。しかし、もし出ていけば、死ななくてはいけないのが確かでした。それで三人は、「ここで惨めに死ななければならないなら、逃げて何の役に立つんだ?」と言いました。
しかし、火のような竜が空を飛んできて、三人のところに下り、どうしてそこに隠れているのかと尋ねました。三人は、「おれたちは、給料がひどすぎるから逃げてきた三人の兵士なんだ。それで今、ここにいれば飢え死にしなくてはならないだろうし、出て行けば首つり台にぶらさがらなくてはならないのさ。」と答えました。「もしわしに7年仕えてくれれば」と竜は言いました。「だれもお前たちをつかまえないように軍隊の中を連れ出してやるぞ。」「おれたちには選べないよ。受けるしかない。」と三人は答えました。
それで、竜は三人を爪でつかむと、軍隊の上の空中を運び去り、そこから離れた地面にまた下ろしました。しかし、竜は他ならぬ悪魔でした。悪魔は三人に一本の小さなムチを渡し、「そのムチをぴしゃりとうつと、ほしいだけいくらでもまわりに金がとびだし、お前たちは大だんなのような生活をし、馬をもって馬車ででかけることができる。だが、7年経ったら、お前たちはおれのものになるんだ。」と言いました。それから悪魔は三人の前に本を出し、三人とも署名させられました。「だが、先ずお前たちになぞを出そう。」と悪魔は言いました。「それでそのなぞを解けたら、お前たちは自由でわしの力から解放されるとしよう。」それから竜は飛んで三人から去って行きました。
三人はムチを持ってでかけ、金をたっぷり持ち、ぜいたくな服を注文し、世界を旅しました。どこにいようと三人は楽しくぜいたくに暮らし、馬に乗り、馬車ででかけ、飲んで食べましたが、悪いことはしませんでした。時はあっというまに過ぎ、7年が終わりに近づいてきたとき、二人の兵士はひどくくよくよして不安になりましたが、三人目の兵士は気楽に考えて、「兄弟、こわがることはないよ。おれにはまだ知恵がある。なぞを解いてみせるさ。」と言いました。三人は野原にやってきて座り、二人は悲しそうな顔をしていました。
するとおばあさんが三人に近づいて来て、どうしてそんなに悲しいのか尋ねました。「そうだなあ」と三人は言いました。「それがおばあさんとどんな関係があるんだ?結局、あんたにはどうにもできないんだもの。」「そうかな?」とおばあさんは言いました。「いいから困ってることを打ち明けてごらんよ。」それで三人は、7年近く悪魔に仕えてきて、悪魔は干し草のように金をくれたんだが、悪魔に自分を売ったんだ、それで7年の終わりになぞを解けなければ悪魔のものにされてしまう、と話しました。
おばあさんは、「もし救って欲しいなら、だれか一人が森へ入って行くんだよ。そこで小さな家のように見える崩れた岩に着くから、その家に入りなさい。そうしたら助けてもらえるよ。」と言いました。二人のくよくよしている兵士は心で、「そんなんじゃやはり助けにならないよ。」と考えて、今いるところにとどまりましたが、三人目の陽気な兵士は立ち上がり、歩き続けて森へ入り、岩の家を見つけました。その小さな家にはとても年とったおばあさんがいて、悪魔の祖母でした。それで兵士に、どこからきたのか、ここに何の用があるのか、と尋ねました。兵士はおばあさんにことの次第を話しました。おばあさんは兵士を気に入ったので、可哀そうに思い、助けてやろうと言いました。おばあさんは穴倉の上にのっていた大きな石を持ち上げ、「そこに隠れているんだ。ここで話されることが全部聞こえるからね。ただじっとして、動かないんだよ。竜が帰ってきたら、私がなぞのことをきいてみるよ。あの子は私に何でも話すんだ。だから何と答えるかよくおきき。」
夜の12時に竜はそこへ飛んできて、夕食を頼みました。おばあさんは食卓の用意をし、食べ物と飲み物を出しました。それで竜は喜んで、二人は一緒に飲んで食べていました。二人で話しているうちに、おばあさんは、今日は一日どうだったか、魂はいくつとれたか、尋ねました。「今日は何もあまりよくいかなかったよ。」と竜は答えました。「だけど、三人の兵士をつかまえてあるんだ。あいつらはまちがいなくおれのものだよ。」「本当に?三人の兵士ねえ、ずる賢いよ。まだ逃がれるかもしれないよ。」悪魔は嘲りわらって、「あいつらはおれのものだよ。なぞを出すんだ。あいつらにはぜったい解けやしないさ。」と言いました。「どんななぞだい?」とおばあさんは尋ねました。「話すとね、大きな北海に死んだツノザメがいる。それを焼き肉にするんだ。クジラのあばら骨は銀のスプーンで、穴のあいた年とった馬のひづめはワイングラスにするんだ。」
悪魔が寝てしまうと、年とったおばあさんは石を上げて、兵士を出しました。「全部ちゃんと聞いたかい?」「はい」と兵士は言いました。「十分わかったので、大丈夫です。」それから、兵士は別の道を通らなくてはいけないので、窓からそっと出て、大急ぎで仲間のところへ行きました。兵士は二人に、悪魔がおばあさんに裏をかかれたこと、悪魔の言っていたことからなぞの答えがわかったことを話しました。それでみんな喜んで、元気よくなり、ムチをとってたくさん金を出したので、金はそこらじゅうにあふれました。
まるまる7年が過ぎ、悪魔は本を持ってやってきて、署名を見せて、「これからお前たちを地獄に連れて行く。そこでお前たちに食事を出す。どんな焼き肉を食べなくちゃいけないか当てることができれば、お前たちは自由で取引からも解放されるし、ムチももっていてよい。」と言いました。すると最初の兵士が初め、「大きな北海に死んだツノザメがいる。 それが間違いなく焼き肉だ。」と言いました。
悪魔は怒って、「フン、フン、フン」とつぶやき始めました。それから、二人目の兵士に、「だが、おまえたちのスプーンは何だろな?」と尋ねました。「クジラのあばら骨。それが銀のスプーンになる。」悪魔はしかめ面をして、また「フン、フン、フン」と唸りました。三人目の兵士に、「それで、何がワイングラスになるかもわかるのか?」と言いました。「年とった馬のひづめがワイングラスになる。」すると、悪魔は大きな叫び声を上げて飛んでいき、三人をもう好きなようにできなくなりました。しかし、三人の兵士はムチをとっておき、好きなだけたくさんお金を打ち出して、死ぬまで幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、息子が三人いて、自分の住んでいる家の他に何もない男がいました。息子たちはそれぞれ父親が亡くなったあと、この家を継ぎたいと思っていました。しかし、父親は息子たちがみんな同じように可愛いかったので、どうしたらよいかわかりませんでした。また、家は先祖から受け継いだので、売りたくありませんでした。そうでなければ売ったお金を息子たちで分ければよかったのです。とうとうある計画を思いつき、息子たちに言いました。「世の中に出て行って、自分を試し、仕事を覚えなさい。そしてお前たちみんなが戻ってきて、一番名人になった者にこの家をやろう。」
息子たちはこれに十分満足しました。それで、長男は鍛冶屋に、二男は床屋に、三男は剣術名人になろうと思いました。三人は、また家に戻る時を決め、めいめい自分の道を進みました。
たまたま三人とも腕の立つ親方を見つけ、技をよく教えてもらいました。鍛冶屋は王様の馬に蹄鉄を打つまでになり、「家はおれのものだ、間違いない。」と思いました。床屋は名士の顔だけ剃るようになり、この人もまた、もう家を自分のものとみなしていました。剣術名人は、たくさん痛い目にあいましたが、歯を食いしばってがんばりました。というのは、「痛手を怖がっていては、家は得られないぞ」と思っていたからです。
決められた日が来ると、3人の兄弟は父親のところに戻って来ました。しかし、技をみせる一番良い機会をどうしたらみつけられるかわからなかったので、三人で座って相談しました。こうして座っていたとき、突然ウサギが一匹畑を渡って走ってきました。「ほー!おあつらえむきだ」と床屋は言いました。それで洗面器と石鹸をとり、泡だてていて、ウサギが近づくと、全速力で走りながらウサギのひげを剃り落とし、ウサギの皮を切ることもなく、体の毛一本も傷つけませんでした。「でかした。」と父親がいいました。「他の二人がよほど頑張らない限り、家はお前のものだ。」
その後まもなく、馬車に乗った貴族が、全速力で走ってきました。「さあ、私の腕をみせましょう、おとうさん。」と鍛冶屋は言い、走り出て馬車を追いかけ、走っている間に馬の脚から4つの蹄鉄を取り外し、止めないまま4つの新しい蹄鉄を履かせました。「お前は素晴らしいやつだ。弟と同じくらい巧みだ。」と父親は言いました。「わしはどちらに家をやったらいいのかわからないよ。」
すると三番目の息子が、「お父さん、よろしければ、僕にもやらせてください。」と言って、丁度雨が降り始めたので、剣を抜いて、頭の上で前後に振り回し、とても速かったので雨が一滴もかかりませんでした。雨はまだだんだん激しく降ってきて、とうとう土砂降りになりましたが、剣術名人はただ剣をますます速く振り回すだけで、まるで家の中にいるかのように乾いたままでした。父親はこれを見ると驚嘆して、「これが名人だ。家はお前のものだ。」と言いました。
兄たちは、前に決めていたように、この決定に納得し、兄弟はお互いとても仲がよかったので3人とも一緒にこの家に住んで、自分の仕事を続けました。そして三人は技をとてもよく覚え、とても巧みだったので、たくさんお金を稼ぎました。こうして三人は年をとるまで一緒に幸せに暮らしました。そしてとうとう一人が病気になって死ぬと、他の二人がとても悲しんで、二人もまた病気になり、まもなく死にました。それで三人はとても腕がよくお互いをとても愛していたので、みんな同じ墓地にほうむられました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、可哀そうな女中が、働いているところの家族と大きな森を通って旅をしていました。それで森の真ん中にいたとき、強盗がやぶから出てきて、見つけた人々をみんな殺してしまいました。恐ろしくて馬車から飛び降り、木の陰に隠れたこの娘以外はみんな死んでしまいました。強盗たちが盗んだ品を持って行ってしまったあと、娘は出てきて、ひどい惨状を見ました。それで娘は激しく泣いて、「私のような貧しい娘はどうしたらいいの?どうやって森から出たらいいか知らないし、人間は誰も住んでいないわ。だから私はきっと飢えて死んでしまうわ。」と言いました。
娘は歩き回って道を捜しましたが、何も見つけられませんでした。夜になると、木の下に座り、身を神様にお任せして、そこに座って待ち、何が起こっても立ち去らないことにしました。しばらくそこに座っていると、くちばしに小さな金の鍵をくわえた白い鳩が飛んできました。鳩は娘の手に小さな鍵を置いて、「あそこの大きな木が見えますか?その中に小さな錠前があります。この小さな鍵で開けると、食べ物がたくさんありますよ。それでもうお腹がすくことはなくなります。」と言いました。
それで娘はその木に行き開けると、小さな皿に入ったミルクとそれに入れるパンがありました。それで娘はお腹いっぱい食べることができました。お腹がいっぱいになると、「家のめんどりがねぐらに入る時間よ。私はとても疲れたから私も寝たいわ。」と言いました。すると鳩がまた娘のところに飛んできて、くちばしに別の金の鍵をくわえて、「向こうのあの木を開けなさい。そうすればベッドが見つかります。」と言いました。娘はそれを開けて美しい白いベッドを見つけ、夜の間守ってくださるよう神様にお祈りし、横になって眠りました。
朝に、鳩が三回目に娘のところに飛んできて、小さな鍵を持ってきて、「向こうのあの木を開けなさい。そうすれば服が見つかります。」と言いました。それで娘が開けると、金と宝石で飾られ、王様の娘の服より素晴らしい服がありました。それで娘はしばらくそこで暮らし、鳩が毎日やってきては娘に必要なものを何でも整えました。それは静かなよい生活でした。
それから、ある日、鳩が来て、「私のためにしてもらいたいことがあります。」と言いました。「喜んでいたしますよ。」と娘は言いました。それで小さな鳩は言いました。「あなたを小さな家にご案内します。その家に入ると中におばあさんが暖炉のそばに座っていて、『こんにちは』と言います。でも絶対返事をしないでください。おばあさんは好きなようにさせておいて、通りすぎ右に曲がってずっといくと戸があります。それを開いて、たくさんの種類の指輪がある部屋に入ります。指輪の中には輝いている石がついた素晴らしいものもいくつかありますが、それらはそのままにしておいて、無地の指輪を選び出してください。それも中に混じってあるはずです。そしてその指輪をできるだけ早くここの私に持って来てください。」
娘は小さな家に行き、戸のところに来ました。そこにおばあさんがいて、娘を目にするとじろじろ見て、「こんにちは、娘さん」と言いました。娘は返事をしないで戸を開けました。「どこへ行くんだい?」とおばあさんは叫び、娘の上っ張りをつかみ、しっかり押さえようとして、「私の家だよ。私がゆるさなければ誰もそこに入っちゃだめだ。」と言いました。しかし娘は黙っておばあさんから離れ、真直ぐ部屋に入って行きました。
さて、机の上には途方もない数の指輪があり、娘の目の前でチカチカ、キラキラと輝いていました。娘はそれらの指輪をひっくり返して、無地の指輪を捜しましたが見つかりませんでした。娘が捜しているうちに、おばあさんが見え、こっそり出て行くところで、手に持っている鳥かごと一緒に出て行こうとしていました。それで娘はおばあさんのあとを追い、手からかごをとりました。そしてそれを持ち上げて中を覗くと、中に入っている鳥がくちばしで無地の指輪をくわえていました。
それで娘は指輪をとり、それをもってすっかり喜んで走って帰り、小さな白い鳩が来て指輪をうけとるだろうと考えていましたが、来ませんでした。それで娘は木によりかかって鳩を待つことに決めました。こうして立っていると、まるで木が柔らかくしなって、その枝を下ろしていってるように思われました。そして突然枝が娘にからみついて、二本の腕になり、娘が振り向くと木は美しい男の人になっていました。その人は娘を抱きしめ、心からキスをし、「あなたは私をばあさんの魔法から解き放ってくれました。あれは悪い魔女なのです。あの魔女が私を木に変えてしまいました。そして毎日2時間の間私は白い鳩になっていました。魔女が指輪を持っている限り、私は人間の姿に戻れませんでした。」と言いました。それから、同じように木に変えられていた家来や馬が、魔法から自由になり、男の人のそばに立ちました。そしてその人は自分の国へみんなを連れて出ていきました。というのはこの人は王様の息子だったからです。そして二人は結婚し、幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、若い猟師がいて、獲物を待ち伏せするため森へ入って行きました。猟師は元気よく明るい性格で、草笛を吹きながら、そこへ向かっていました。すると、醜く年とった老婆が近づいて来て、猟師に「こんにちは、猟師さん、あなたは実に陽気で満足そうだね。だけど私はお腹がすいて喉が渇いているんだよ。お願いだから、施しをしておくれ。」と言いました。猟師は貧しい年寄りに同情して、ポケットの中をさぐり、やれるだけのお金をあげました。
それから猟師は先へ進もうとしましたが、老婆がひきとめ、「猟師さん、私が言うことをお聞き。あんたのやさしい心のお返しに贈り物をするよ。今はずっと道を進みなさいよ。だけど少しすると一本の木につくからね。その木に9羽の鳥がとまって、かぎづめで一枚のマントを持ってそのマントをうばいあいしているんだ。鉄砲をとって鳥たちの真ん中を撃ちな。するとあんたにマントを落としてよこすけど、鳥たちの一羽が怪我して、死んで落ちるよ。マントを持って行きな。そのマントは魔法のマントだよ。肩にはおると、どこかの場所に行きたいと願いさえすれば、瞬きするうちにそこに行けるよ。死んだ鳥の心臓をとりだして、丸呑みしな。すると毎朝早く、起きると枕の下に金貨が一枚あるんだ。」
猟師は賢い女の人にお礼を言い、「約束してくれたのは素敵なものだなあ。本当になればいいなあ。」と心の中で思いました。100歩ほど歩くと、本当に、上の枝でギャーギャーキーキーという鳴き声が聞こえました。見上げると、くちばしとかぎづめで一枚の布を奪い合っている一群れの鳥がいて、まるでめいめいがその布を独り占めしたいみたいに引き合って戦っていました。「いや―」と猟師はいいました。「これは驚きだ。ほんとうにおばあさんが言った通りになってきた。」それで肩から鉄砲をはずし、ねらいをつけて鳥たちの真ん中を撃ちました。それで羽根が飛び散り、すぐに鳥たちは大きな鳴き声をあげて飛び立ちましたが、一羽が死んで落ちてきて、マントも同時に落ちてきました。それから猟師はおばあさんが教えてくれたようにやり、落ちた鳥を切り開き、心臓を探して飲み込み、マントを家へ持って帰りました。
次の朝、目覚めると、約束したことが実際に起きたのだから、他のことも本当にそうなるか確かめたいと思い、枕を持ち上げてみると、金貨が輝いて目に入りました。次の日もまた一枚あり、起きるたびに毎日続きました。金貨を山盛りに集めましたが、最後に「家にいるなら、こんな金貨が何の役に立つだろう?家を出て世間をみてみようじゃないか。」と考えました。
それで両親に別れを告げ、猟師の物入れ袋と銃をもって、世間に出て行きました。ある日、うっそうとした森を通って、そのはずれにくると平地に出て、目の前に立派なお城が立っていました。おばあさんが、素晴らしく美しい乙女と一緒に立って窓の一つから外をながめていました。ところが、おばあさんは魔女で、娘に「ほら、森から人が出てくる。あれは体の中に素晴らしいお宝をもっているんだよ。そのお宝をちょうだいしなくてはな。お宝はあの男より私らにふさわしい。あいつは体の中に鳥の心臓を持っていて、それで毎朝、枕の下に金貨が出てくるのさ。」と言いました。魔女は娘にその宝をとるためにどうしなくてはいけないか、娘がどんな役割をしなくてはいけないかを話し、ついに娘を脅して、目に怒りを露わにして、「私の言うとおりにしないと、お前をひどい目にあわすよ。」と言いました。さて、猟師は近づくと娘に気付き、「とても長い間旅をしてきた。一度休みをとってあの美しい城に入ろう。確かにお金はたくさんあるし。」とつぶやきました。それにもかかわらず、本音は美しい姿に目をとめたからでした。
猟師は家に入り、やさしく迎えられ、丁寧にもてなされました。まもなく猟師は若い魔女をとても愛するようになり、もう何も他のことは考えなくなり、娘が見るようにだけものを見て、娘が望むことをしたがりました。それでおばあさんは言いました。「さあ、鳥の心臓をとらなくちゃな。あいつはなくなってもきづかないよ。」魔女は飲み薬を調合し、用意ができると、ゴブレットに注ぎ入れ、娘に渡しました。娘はそれを猟師に出さなければならず、「さあ、あなた、私の健康を祝して乾杯して。」と言って、魔女の命令に従いました。
それで猟師がゴブレットを受け取って、飲み物を飲み込むと、鳥の心臓を吐き出しました。娘は密かにそれを持ち去り、おばあさんがそうしろと言ったので、自分で飲みこみました。それ以来、猟師の枕の下にはもう金貨が見つからなくて、代わりに娘の枕の下にありました。そこからおばあさんは毎朝その金貨をとって行きました。しかし、猟師は恋に目がくらんでだまされていたので、思いはただ娘と一緒に時を過ごすことだけでした。
そこで年とった魔女は、「鳥の心臓は手に入れた。だけど魔法のマントもとりあげなくちゃね。」と言いました。娘は「それはあの人に残しておこうよ。あの人は財産を失くしてしまったのよ。」と答えました。おばあさんは怒って、「ああいうマントは素晴らしいものなんだよ。この世でめったに見られないんだ。なんとしても手に入れてみせるからね。」と言いました。魔女は娘を数回なぐって、いうことをきかないとひどい目にあわすよ、と言いました。それで娘はおばあさんが言ったことをやり、窓のところにいて、とても悲しんでいるふりをして遠くの国を眺めました。猟師は、「どうしてそんなに悲しそうにそこに立っているんだい?」と尋ねました。「ああ、あなた」と娘は答えました。「向こうにザクロ石の山があって、そこに宝石が出るのよ。それがとてもほしくて考えるととても悲しくなるの。だって誰がそれを手に入れられるわけ?鳥たちだけだわ。飛んでそこに着けるもの。だけど人間は決してできないわ。」「君が悲しむことは他に何もない?」と猟師が言いました。「君の心からすぐにその悲しみをとってあげるよ。」そう言ってマントの下に娘を引き寄せ、ザクロ石の山に行きたいと望みました。一瞬のうちに二人は一緒にその山にいました。宝石があたり一面にキラキラ光っていて、見ても楽しい光景でした。そのうちで一番すばらしく高価な宝石を二人で集めました。
ところで、おばあさんは、魔法を使って猟師のまぶたが重くなるようにしてありました。それで、猟師は娘に、「座ってしばらく休もう。僕はとても疲れてもう足が立たないよ。」と言いました。それから二人は座り、猟師は娘に膝枕をして眠ってしまいました。娘は、猟師が眠るとその肩からマントをはずし、自分を包み、ザクロ石や宝石を拾い上げて、願いを言って宝石を持ったまま家に戻りました。
猟師はたっぷり眠って目が覚めると、恋人が自分をだまし、荒れた山に置き去りにしたことを知りました。猟師は「ああ、この世には何という不実があるものだ。」と言って、悲しみと苦しみにくれて、どうしたらよいかわからずそこに座りこんでいました。しかし、その山は荒っぽく恐ろしい巨人のもので、そこに住み、そこで生活していたのです。そして座ってまもなく三人の巨人がやってくるのが見えました。それで猟師は深く眠り込んでいるようなふりをしていました。
それから巨人は近寄ってきて、最初の一人が足で猟師を蹴り、「これはどういう種類の虫けらだ?ここに寝転がって眠ってやがって?」と言いました。二番目の巨人が「ふんづけて殺せ」と言いました。しかし三番目の巨人が馬鹿にしたように、「そうしたら本当にお前らやりがいのあるこったろうよ。生かしておけよ。どうせここにはいられないんだし。山のてっぺんの方へ、もっと高く登れば、雲がこいつを持ちあげて運んで行ってしまうよ。」と言いました。そう言った後、三人は通りすぎていきました。しかし、猟師は巨人の言葉を注意してよく聞いていて、巨人が行ってしまうとすぐに立ちあがって山のてっぺんへ登っていきました。そしてしばらくそこにいると、雲が猟師の方へふわふわ漂ってきて、猟師をつかまえて運び去り、長い間空を漂っていました。それから雲は低くなっていき、周りを塀に囲まれた大きなキャベツ畑におりました。それで猟師はキャベツや野菜の土にふんわり着きました。
それから猟師は周りを見回し、「何か食べ物があればいいなあ。とても腹が減って、ここから進むのは難しいよ。ここにはリンゴも梨も、他の果物もみえない。どこもかしこもキャベツだけだ。」と言いました。しかし、しまいには「苦しいときには、葉っぱだって食べれるさ。特にうまいってことはないけど、元気がでるさね。」と思いました。それで立派なキャベツを一個もぎとり、食べました。しかし、2口、3口食べるとすぐ、なんだかとても変でとても違っているような感じがしました。
4本足が生え、大きな頭と2本の長い耳、仰天したことに自分がロバに変わったことがわかりました。それでも、ますますお腹がすいてきたので、しかもロバになっている今は汁気のある葉っぱが適していたので、とてもうまそうに食べ続けました。とうとう違う種類のキャベツがあるところに着きました。しかし、そのキャベツを飲み込むとまた変わるのを感じ、前の人間の姿に戻りました。
それから猟師は横になり、眠って疲れをとりました。次の朝目覚めると、悪いキャベツを一個、よいキャベツを一個もぎとり、「これで自分の物を取り戻し、不実を罰することができるぞ。」と考えました。それから取ったキャベツを持って、塀を乗り越え、恋人の城を探しにでかけました。二、三日さ迷った挙句、また運よく城を見つけました。自分の母親でもわからないように顔を茶色に染めていき、宿をお願いしました。「とても疲れて、もう歩けません。」と猟師は言いました。魔女は「あんたは誰?どんな仕事なの?」と尋ねました。「私は王様の使いです。日のもとでもっともおいしい野菜を探しに送られました。運よくその野菜を見つけて一緒に持ち歩いていますが、日でりがはげしいので、おいしいキャベツがしなびてしまいそうで、これ以上持ち歩いていいのかどうかわかりません。」
おばあさんはおいしいキャベツのことを聞いて、食い意地がはってるので、「あなた、ちょっとこのすばらしいキャベツを味見させてくださいな。」と言いました。「いいですとも。」と猟師は答えました。「二個持って来ていますから、一個さしあげましょう。」そして袋を開けておばあさんに悪いキャベツを渡しました。魔女はおかしなことを何も疑わないで、この新しいごちそうが食べたくて口に唾がでてきたので自分で台所へ行き、支度しました。じゅんびができると魔女はテーブルに置くのが待ちきれなくて、すぐに2,3枚葉っぱをとり口に入れました。しかし、飲み込むとすぐ、魔女は人間の姿でなくなり、ロバの姿になって中庭へ走り出て行きました。
まもなく女中が台所へ入ってきて、サラダが準備できているのを見て、運ぼうとしていましたが、途中で、いつものくせで、食べてみたくてたまらなくなり、葉っぱを2,3枚食べました。途端に魔力が現れて、この女中もロバになり、おばあさんのところに走ってでていきました。そしてサラダの皿は床に落ちました。
その間、王様の使いは美しい娘のそばに座っていました。誰もサラダを持って来なくて、娘も食べたかったので、「サラダはどうなったかわからないわ。」と言いました。猟師は(サラダはもう効き目があったにちがいない)と考え、「台所へ行ってきいてみましょう。」と言いました。行ってみると二頭のロバが中庭を走り回っているのが見えましたが、サラダは床に転がっていました。「結構。あの二人は自分の取り分をとったね。」と言って、他の葉っぱを拾い、皿に載せ、娘のところに持って行きました。「僕が自分でおいしい食べ物をもってきました。」と猟師は言いました。「あなたがもう待たなくていいようにね。」それで娘が食べて、他の二人のように、すぐに人間の形をなくし、ロバの姿になって中庭に走り出ました。
猟師は、姿を変えられた三人にわかるように、顔を洗ってから、中庭に下りていき、「これからお前たちに裏切りの報いをうけさせてやるぞ。」と言って、三頭一緒に一本の綱でつないで、追い立てて行き、粉屋にやってきました。窓をたたくと粉屋が頭を出し、何の用かと尋ねました。「三頭の手がつけられないロバがあるんだが」と猟師は答えました。「もう自分のところにおきたくないんだ。ひきとってくれないかね?それで、食べ物と家畜小屋をやり、私が言うように扱ってくれたら、あんたがほしいだけの金を払うよ。」「いいとも。だけど、どう扱えばいいんだね?」と粉屋は言いました。すると猟師は、年とったロバ、それは魔女でしたが、には毎日三回ぶって一回食事をあげ、若い方のロバ、これは女中でしたが、には一回ぶって三回の食事をあげ、そして一番若いロバ、これは娘でしたが、には何もぶたないで、三回の食事をあげるように、と言いました。というのは娘をぶたせる気になれなかったのです。そのあと猟師は城に戻り、そこの中に必要なものを全部見つけました。
二,三日して、粉屋が来て、毎日三回ぶたれて一食だけ食べていた年とったロバが死んだと報告しなければいけません、と言いました。残りの二頭は確かに死んではいないし、毎日三回食事をやっていますが、とても悲しんでもうあまり長くはもちませんな、と粉屋は続けて話しました。猟師は、かわいそうになり、怒りをおさめて、粉屋に、もう一度ロバを返してくれ、と言いました。それでロバたちが来たとき良いキャベツを食べさせたので、二人はまた人間に戻りました。美しい娘は猟師の前に膝まづいて、「ああ、あなた、私がしたひどいことを許して。母がやらせたんです。私はそんなことをしたくなかったのに。だって私はあなたをとても愛しているのですから。あなたの魔法のマントは戸棚にかかっています。鳥の心臓の方は、私が吐き薬を飲みます。」と言いました。しかし猟師は違うことを考えていて、「それをとっておきなさい。同じことだよ。僕は君を本当の妻にするから。」と言いました。それで結婚式が行われ、二人は死ぬまで一緒に幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、王様の息子がいました。この王子はもう父親の家にいるのにあきたらず、何もこわいものがないので、「広い世の中へ出て行こう。そこでは退屈することもないだろうし、いろいろ不思議なことも目にするだろう。」と考えました。それで、王子は両親に別れを告げ、でかけていきました。朝から晩までどんどん進み、道がどっちへいこうと王子にとっては同じことでした。あるとき王子は巨人の家に着き、とても疲れていたので、戸口のそばに座り休みました。あちこち見まわしてみると、庭にある遊び道具が目に入りました。これらは二、三の巨大なボールと人間と同じくらい大きい9本のピンでした。しばらくしてやってみたくなり、ピンを立て、ボールをピンに転がし、9本が倒れると大声を出して叫び、はしゃいでいました。
巨人が物音を聞きつけ、窓から頭を伸ばすと、ふつうの人より大きくも無い背丈なのに自分のボーリングで遊んでいる男が見えました。「虫けらめ」と巨人は叫びました。「なんでおれのボールで遊んでいるんだ?誰がお前にそういう力を与えたんだ?」王様の息子は見上げると巨人が見え、「ああ、頭悪いね、お前は自分だけ腕っぷしが強いと思ってるんだ。僕はやりたいことは何でもできるんだぞ。」と言いました。巨人は出てきて、おおいに感心したようにボーリングを見て、「人間の子供、お前がそういうやつなら、命の木のりんごをとりに行けよ。」と言いました。「それをどうするんだ?」と王様の息子は言いました。「おれが欲しいわけじゃないんだ。」と巨人は答えました。「だけど、それを欲しがっているいいなずけがいるのさ。世界をはるかかなたまで行ったんだが木をみつけられないんだ。」「ぼくはすぐに見つけてみせよう。」と王様の息子は言いました。「それにりんごをとる邪魔するやつなんて知るもんか。」
巨人は「本当にそんなに簡単だと思ってるんだな。木がある庭園は鉄の柵で囲まれていて、柵の前には猛獣たちが間をおかないで並んで見張っていて誰も中に入れないんだぞ。」「僕ならきっと入れてくれるさ。」と王様の息子は言いました。「ああ、だがたとえ庭に入れて、木に下がっているりんごを見ても、まだお前のものじゃないんだ。りんごの前に輪が下がっていて、りんごに手を伸ばしもぎとろうとすれば、手を入れなくてはならないんだが、まだだれもできた者はいないんだ。」「じゃあ、僕がやってみせよう。」と王様の息子は言いました。
それで王子は巨人と別れ、山や谷を越え、野原や森を通って進んで行き、とうとう不思議な庭園にやってきました。猛獣たちはその周りにいましたが頭を下げて眠っていました。それだけでなく、王子が近づいても目を覚ましませんでした。それで王子は猛獣たちをまたいで、柵に登り、無事に庭園に入りました。庭園のまさに真ん中に命の木が立っていて、枝に赤いリンゴがたくさん光っていました。王子は幹を登っててっぺんまで上がり、りんごに手を伸ばそうとしたとき、その前に下がっている輪が見えましたが、なんなく輪に手をつっこみりんごをもぎとりました。輪は締まり腕にぴったりくっつき、王子は急にものすごい力が血管にながれるのを感じました。りんごを持って木から下りてから、王子は柵を登ってこえるのではなく、大きな門をつかみ、たった一回ゆすっただけで大きなガシャンという音を立てて門はパッと開きました。それから王子が外へ出ましたが、門の前でねていたライオンが目を覚まし、王子のあとを追いかけてきました。しかし、それは、怒り狂って襲おうというのではなく、王子を主人として認め、恐れ入ってつき従ったのでした。」
王様の息子は、約束したりんごを巨人のところに持って行き、「ほらね、ぼくは難なくもってきましたよ。」と言いました。巨人は望みがそんなに早く叶えられて喜び、花嫁のところに急いで行って、欲しがっていたりんごを渡しました。花嫁は美しく賢い乙女でした。巨人の腕に輪が見えなかったので、「腕に輪がついていなければ、あなたがりんごをとってきたとは信じないわ。」と言いました。巨人は、「これからすぐ家に帰ってとってくるよ」と言いました。巨人はもし自分から輪をくれないようなら、力づくで弱い男からとるのは簡単だと思ったのです。そこで、王子に輪をよこせ、と言いましたが、王子は断りました。「りんごがあるところに輪もなければならないんだ」と巨人は言いました。「お前が自分からすすんで渡さないなら、おれと戦わなくちゃならんぞ。」
二人は長い間取っ組み合いをしましたが、巨人は王様の息子を打ち負かすことができませんでした。王子は輪の魔法の力で強くなっていたのです。そこで巨人は策をめぐらし、「戦ってあつくなったよ。お前もそうだろ。もう一回始める前に川で水浴びし、体を冷やそうじゃないか。」と言いました。王様の息子は嘘だと気づかないで、一緒に川に行き、服を脱ぐのと一緒に腕から輪もはずし、川に飛び込みました。巨人はすぐに輪をひったくって、逃げていきました。ところがライオンは盗みを見ていたので、巨人を追いかけ、手から輪をもぎとって主人のところへ持って帰りました。それから巨人は樫の木のかげに隠れ、王様の息子が服を着ている隙に不意をつき襲いかかって両目をえぐりとりました。それで、不幸な王様の息子は目が見えなくてそこに立ったままどうしたらよいかわかりませんでした。」
すると巨人が王子のところにまた戻ってきて、誰か道案内しようとしている人のふりをして、王子の手をとり、高い岩のてっぺんへ連れて行きました。巨人はそこに王子を置き去りにして、(あと二歩進んだら落ちて死ぬだろう。そうすれば輪をとればよい。)と考えていました。しかし、忠実なライオンは主人を見捨てませんでした。王子の服をしっかりくわえ、だんだん後ろへ引き戻していきました。巨人は死んだ男から輪を盗もうとやってきて、計略が失敗したことがわかりました。「じゃあ、あんな人間の弱っちい子どもをやっつける手立てはないのか?」と巨人は怒って独り言を言いました。それから王子をつかみ、別の道を通ってまた崖へ連れ戻しましたが、悪だくみをみていたライオンはここでも主人を危険から助け出しました。崖っぷちに近づいた時、巨人は目の見えない王子の手を放し、置き去りにしようとしました。しかし、ライオンが巨人をつきとばしたので、巨人は投げ出されて下におち、地面に墜落してばらばらになりました。
忠実な動物は主人を崖からまた引き戻し、そばに澄んだ小川が流れている木のところへ連れていきました。王子はそこに座りましたが、ライオンは寝そべると、前足で王子の顔に水をはねかけました。目の節穴に2,3滴かかった途端、王子はまたなにか見えるようになり、小鳥がかなり近くを飛んでいくのに気づきました。その小鳥は木の幹にぶつかったかと思うと、水に下りていって水浴びしました。そのあと上に舞い上がり、まるでよく目が見えるようになったかのように今度はぶつからないで木々の間をすいすいと飛んで行きました。そこで王様の息子は、神様の示した印を理解して、水にかがみこんで顔を洗い水に浸しました。起きあがったときは目がもう一度できて、前よりも明るく澄んでいました。
王様の息子は、恵み深い神様に感謝し、ライオンと一緒にまた世の中を旅してまわりました。すると、あるとき、魔法にかけられたお城の前に着きました。門のところに美しい姿できれいな顔の乙女が立っていましたが、真っ黒でした。娘は王子に話しかけ、「ああ、私にかけられた悪い魔法から救い出してくれさえすればいいのに。」と言いました。「何をすればいいのです?」と王様の息子は言いました。乙女は、「この魔法にかけられた城の大広間で三晩過ごさなければなりません。でも恐れてはいけません。連中はあなたを苦しめて最悪のことをします。そのとき、あなたが一言ももらさず我慢すれば私は自由になれるのです。連中はあなたの命まではとりません。」そこで王様の息子は、「僕は恐れを知りません。神様の助けを借りてやってみましょう。」と言いました。そうして王子は城に明るく入って行きました。暗くなると、王子は大広間で腰を下ろし、待ちました。
何も起こらずシーンとしていました。ところが真夜中になると、突然大騒動が始まり、どの穴やどの隅からも小さな悪魔が出てきました。悪魔たちは王子が見えないかのように振る舞い、部屋の真ん中に腰を下ろし、火をたき、ばくちを始めました。一人が負けると、「おかしいではないか。誰か仲間でないやつがここにいるんだ。おれが負けるのはそいつのせいだ。」と言いました。「待ってろよ、ストーブの後ろの奴、おれが行くぞ。」と別の悪魔が言いました。叫び声がさらに大きくなり、聞いていればだれでも怖がらずにはいられないほどでした。
王様の息子はすっかり落ち着いて座ったまま、こわがりませんでした。しかしとうとう悪魔たちは下から跳び上がって王子に襲いかかり、数があまりに多いので王子は防ぎきれませんでした。悪魔たちは王子をひきまわしたり、つねったり、刺したり、ぶったりして苦しめましたが、王子からは一言ももれませんでした。朝方になると悪魔たちは消え、王子はくたびれ果てて殆ど手足を動かせませんでした。
夜が明けると、黒い乙女が王子のところにやってきました。乙女は手に命の水が入っている小ビンをもってきて、それで王子を洗いました。すると王子は痛みがすっかりとれて、新しい力が体にみなぎりました。乙女は、「「あなたは一晩うまくもちこたえましたね。でも、あと二晩あるんです。」と言いました。そのあと乙女はいなくなりましたが、去っていく乙女の両足が白くなっていたのに王子は気づきました。
次の夜、悪魔たちがやってきて、またばくちを始めました。王様の息子に襲いかかり、前の夜よりさらにひどく王子をなぐったので、王子の体は傷だらけになりました。しかし、王子が全く静かにこらえていたので、悪魔たちは王子を放っておくしかなくなりました。夜が明けると、乙女がやってきて、命の水で傷の手当てをしました。乙女が出ていく時、もう指の先まで白くなっていたのを王子は喜ばしく眺めました。
それであと一晩残すのみとなりましたが、それはまた一番ひどいものでした。悪魔たちはまたやってきて、「お前まだいるのか?」と叫びました。「息が止まるまで苦しめてやるぞ。」王子を刺し、なぐり、あちこと放り投げ、ばらばらに引き裂こうとするように腕や脚を引っ張りました。しかし王子は全部我慢して決して叫び声をあげませんでした。
とうとう悪魔たちは消えましたが、王子を気を失ってそこに転がったまま動かず、入って来た乙女を見ようと目をあげることもできませんでした。乙女は命の水を王子にかけ、水を浴びせました。すると途端に王子は痛みからすっかり解放され、眠りから目覚めたようにすっきりした気分で元気になりました。王子が目を開けると、雪のように白く、昼のように美しい乙女がそばにたっているのが見えました。
「立って、階段の上で三回剣を振ってください。そうすればみんなが解き放たれますわ。」と乙女はいいました。王子がそうすると、城じゅうが魔法から解かれ、乙女は金持ちの王様の娘でした。召使たちが来て、大広間に食卓の準備が整いもう食事ができます、と告げました。それから、二人は一緒に座り、飲んで食べました。そして晩には二人の結婚式が行われ、みんなは大喜びで祝いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。