グリム童話

グリム童話は、ヤーコプとヴィルヘルム・グリムによって編纂された、時代を超えた民話のコレクションです。これらの物語は、勇気、魔法、道徳をテーマにした話が世代を超えて共鳴し続ける、民俗の宝庫です。「シンデレラ」や「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」などの古典から、「漁師とその妻」や「ルンペルシュティルツキン」といったあまり知られていない珠玉の話まで、それぞれの物語がヨーロッパの口承伝承の豊かな織物を垣間見せてくれます。 グリム童話は、その鮮やかなキャラクター、道徳的教訓、そしてしばしば暗いトーンが特徴で、歴史的文脈の厳しい現実と幻想的な要素を反映しています。その永続的な魅力は、楽しませ、教え、驚きをもたらす能力にあり、これが子ども文学の礎となり、民俗学や物語の研究者たちにとっての魅力的な源となっています。

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Episodes

めんどりの死んだ話

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、めんどりがおんどりと一緒にくるみの山に行きました。二人は、どちらが先にくるみの実をみつけても二人で分けようね、と決めていました。そうしてめんどりは大きい、大きいくるみをみつけたのですが、一人で食べようと思って、何も言いませんでした。ところが、実が大きすぎて飲み込めず喉につかえてしまいました。それでめんどりは息がつまって死にやしないかと心配になり、「おんどり、お願いだから、急いで走って、水を汲んで来てちょうだい。そうしないと私は息がつまって死ぬわ。」と叫びました。
おんどりは急いで泉まで走り、「泉、水をおくれ。めんどりがくるみの山でねている、大きなくるみをのんで息がつまっているんだ。」と言いました。泉は、「先に花嫁のところに走っていって、赤い絹をもらいなさい。」と言いました。おんどりは花嫁のところへ走り、「嫁さん、赤い絹をおくれ、泉に赤い絹をあげたいんだ。泉は僕に水をくれることになっている。その水をめんどりに持っていくんだ。めんどりはくるみのやまでねている。大きなくるみをのんでしまって息がつまっているんだ。」と言いました。すると花嫁は、「その前に走っていって、柳にかかっている私の花の冠を持って来て」と答えました。
そこで、おんどりは柳のところに走って行き、枝から花の冠を引いてとり、それを花嫁に持って行きました。すると花嫁はひきかえに赤い絹をくれました。それを泉に持って行くと、泉はひきかえに水をくれました。そうしておんどりはめんどりに水を持って行きました。しかし、おんどりがそこに着くと、めんどりはその間に息がつまって死んでしまい、倒れたまま動きませんでした。それでおんどりはとても悲しんで大声で泣きました。
動物がみんなやってきて、めんどりの死を悼みました。六匹のねずみが小さな車を作り、めんどりを墓に運ぶことになりました。車ができると、ねずみたちが車をひき、おんどりが御者になりました。ところが、途中で狐に会いました。狐は、「どこへ行くんだい?、おんどりくん」と言いました。「僕はめんどりをほうむりに行くんだ。」「一緒に乗ってもいいかい?」「いいよ、だけど、車の後ろに座って。前だと僕の小さな馬たちが引っ張れないからね。」
そこで狐が後ろに座りました。そのあと、狼、熊、鹿、ライオン、と森のけものたちみんなが同じようにして乗り込みました。そうして葬列が進んでいくと、小川に着きました。「どうやって渡ろうか」とおんどりが言いました。小川の岸にわらが転がっていましたが、「僕が向こう岸までねるよ、そうしたら僕の上を通れるよ。」と言いました。しかし、6匹のねずみが橋にさしかかると、わらが滑って水に落ち、6匹のねずみたちがみんな落ちて溺れてしまいました。それでみんなはまた困りました。すると炭がやってきて、「僕は十分大きいから、向こう岸まで寝ころぶよ。そうしたら僕の上を通れるよ。」と言いました。そこで炭も水の上に横になりました。しかし運悪く少し水に触れてしまい、それで炭はじゅっと言って消え死んでしまいました。
石がそれを見て、おんどりを気の毒に思い、救いの手をさしのべ、水の上に横になりました。そうしておんどりが自分で車を引きましたが、死んだめんどりと一緒に川を渡り向こう岸に着き、後ろに座っている他のけものたちもひきよせようとしたとき、あまりたくさん乗っているので、車が後戻りし、みんな川に落ちて、溺れて死んでしまいました。そうしておんどりだけが死んだめんどりと一緒に残りました。おんどりはめんどりの墓を掘り、めんどりをそこに入れ、その上に盛り土を作りました。その上におんどりは座り悲しんでいましたが、とうとうおんどりも死んでしまいました。そうしてみんな死にました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

水の精

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

あるとき、兄と妹が泉の近くで遊んでいました。そして遊んでいる間に二人とも泉に落ちてしまいました。下には水の精が住んでいて、「さあ、お前たちをつかまえたぞ。さあ、お前たちは私のために一生懸命働くのだ。」と言って、二人を連れて行きました。水の精は女の子に紡ぐための汚いもつれた亜麻を渡しました。また女の子は穴のあいた桶で水を汲まなければならず、男の子は刃がとがっていない斧で木を切り倒さなければなりませんでした。そして二人は石のように固い団子の他に食べるものがありませんでした。
それでとうとう子供たちは我慢できなくなり、水の精が教会にいく日曜まで待って、逃げました。しかし、礼拝が終わると、水の精は小鳥たちが飛んで行ってしまったとわかり、大股で追いかけていきました。子供たちは遠くから水の精が見えました。そして女の子は後ろにブラシを投げるとブラシは何千何万ものトゲがある剛毛の大きな山になりました。そのトゲを水の精はとても苦労して這い登り越えなくてはなりませんでしたが、とうとう、乗り越えました。
これを見ると、男の子は後ろに櫛を投げました。その櫛は千の千倍もの歯のある大きな山を作りました。しかし水の精はこれらの歯にも着実に上ってとうとう越えました。それから、女の子が後ろに鏡を投げると、鏡の山ができ、とてもつるつるしていたので、水の精は越えることができませんでした。それで水の精は「早く家へ帰り、斧をとってきて、鏡の山を半分に割ろう。」と考えました。しかし、戻ってガラスを割ってしまう前に、子供たちははるか遠くに逃げていました。それで、水の精は再び自分の泉にとぼとぼ戻らざるをえませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

昔、とても年とった男がいました。目はかすみ、耳は遠くなり、膝はがくがくして、食卓につくと、スプーンをきちんと握ることもできなくてスープをテーブル掛けにこぼしたり、口から垂らしたりしました。息子と息子の妻はこれにうんざりしたので、結局年老いたおじいさんはストーブの後ろのすみに座らねばなりませんでした。そして二人はおじいさんに土器のどんぶりで食べ物をあげ、それも十分ではありませんでした。それで、おじいさんは目に涙をいっぱい浮かべて、食卓の方をよく見ていました。
あるとき、また手が震えて、きちんと器を握ることができなかったので、器は地面におちて壊れました。若い妻はおじいさんを叱りましたが、おじいさんは何も言わないでため息をつくだけでした。それから、息子たちはおじいさんに2,3ペンスで木の器を買い、おじいさんはそれで食べなければなりませんでした。
あるとき、こんなふうに座っていたら、4歳のちいさな孫が地面の木をいくつか集め始めました。「お前そこで何をしてるんだい?」と父親が尋ねました。「僕、小さな木鉢を作ってるの。僕が大きくなったら、お父さんとお母さんがそれで食べるから。」と子供は答えました。
男と妻はしばらくお互いに顔を見合わせていましたが、まもなく泣き始めました。それから二人は年老いたおじいさんを食卓に連れてきて、いつも一緒に食べさせました。そしてまた同じように、なにか少しこぼしても何も言いませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

知恵者のグレーテル

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、グレーテルという名前の料理人がいました。グレーテルはかかとの赤い靴を履いていて、それででかけるときはいつもあっちこっちとまわってみて、(私ってなんてきれいなの)と思いました。家に帰るととても嬉しいのでワインを一口飲み、そうすると食欲が出てくるので、自分が料理したものの一番いいものを味わい、お腹がいっぱいになって、「料理人って食べ物の味を知らなくちゃいけないのよ」と言っていました。
ある日、主人がグレーテルに言いました。「グレーテル、今晩お客が来るから、ニワトリを二羽おいしく料理しておいてくれ」「はい、わかりました、ご主人さま」とグレーテルは答えました。ニワトリを殺し、湯通しして羽根をむしり、串にさして、夕方になってきたので、丸焼きにするため火にかけました。ニワトリは茶色になり始めほぼできあがりましたが、お客はまだ着いていませんでした。
グレーテルは主人に呼びかけました。「お客さんがこないんなら、ニワトリを火からおろさなくちゃいけないんだけど。すぐ食べないともったいないわ、今ちょうど汁気があって一番おいしいところなのよ」主人は「そうだな、おれが走ってお客をつれてこよう」と答えました。
主人が背を向けるとすぐ、グレーテルはトリの串をわきにおろして、(火のそばにこうして立っていたら、汗が出て喉が渇いたわ。主人たちはいつ戻るかわからないのよ。その間に地下室にひとっ走りして一杯飲もうっと。)と思いました。そこでグレーテルは駆け下りて、ジョッキを口に持ち上げ、「グレーテル、あなたを祝して」と言って、ぐいっと飲みました。(ワインはつながって喉を流れなくっちゃ、途切れたらだめよね)と考え、またグィグィとたっぷり飲みました。
そうして出て行ってニワトリをまた火にかけ、バターを塗り、ご機嫌で串を回しました。ところが、焼けた肉がとてもよい匂いだったので、グレーテルは(しくじっているかもしれないわ。味見してみなくちゃ!)と思いました。肉を指で触って、「まあ、とてもよくできてるわ。本当にすぐ食べなくっちゃもったいないこと。」と言いました。窓に走っていき、主人がお客と一緒にこないかと見ましたが、誰も見えませんでした。トリのところに戻って、(手羽の片方がこげてる!そこはとって私が食べた方がいいわ。)と考えました。そこでグレーテルは手羽のところを切りとって食べ、おいしく味わいました。
食べ終わると、(もう一つの手羽も食べなくちゃ。そうしないとだんなが何か足りないと気づくもの。)と思いました。二つの手羽を食べてしまうと出て行って主人を探しましたが、見えませんでした。するとふいに(ひょっとして、二人はまるきり来ないのかもしれない。どこかよそへ行ったのかも?)という気がしてきました。
そこでグレーテルは「やあ、グレーテル、楽しくやれよ、一羽のトリはもう包丁を入れ傷つけた、もう一杯飲んで、そいつをまるまる食べちまえ、食べたら気が休まるだろ。神様の素晴らしい贈り物をなんでむだにする?」と言いました。そこでグレーテルはまた地下室に駆け込んで、ゴクゴクとすごい飲みっぷりで一杯飲み、大喜びしながらトリを一羽平らげました。一羽食べてしまっても主人はまだ帰ってきませんでした。グレーテルはもう一羽の方を見て、「一羽がいるところにもう一羽もいなくちゃね。二羽で一組だもの。一方に正しいことはもう一方にも正しいものよ。もう一杯飲んでも悪くないわね」そこでたっぷりもう一杯やって二つめのトリを一つめのトリに仲間入りさせました。
グレーテルがちょうどおいしく食べているとき、主人が帰ってきて、「グレーテル、急いでくれ、お客がおれのすぐあとに来るんだ!」と叫びました。「はい、すぐお出しします。」とグレーテルは答えました。その間に主人は食卓の支度がきちんと準備されているか見に行き、トリを切るのに使う大きな包丁をとって階段で研ぎ始めました。
まもなくお客が来て、礼儀正しく丁寧に玄関の戸をたたきました。グレーテルは走って誰が来たか見に行き、お客を見ると、指を唇にあて、「しーっ!しーっ!速く逃げて。主人が見つけたら、大変よ。主人はあなたを夕食に招いたけれど、本当はあなたの両耳をそぎとるつもりなのよ。ほら、その包丁を研ぐ音が聞こえるでしょ?」お客は研ぐ音が聞こえたので、大急ぎで階段を下りて逃げていきました。
グレーテルはのほほんとしていませんでした。喚きながら主人のところへ駆けて行き、「ご立派なお客様を招いたこと!」とどなりました。「はぁ、グレーテル、どういうことだね?」「ええ!」とグレーテルは言いました。「出そうとしていたトリを皿から二羽ともとって、持ち逃げしたんですよ!」「そりゃうまいことをやったな!」と主人は言って、みごとなトリを惜しみました。「ああ、おれに一羽だけでも残しておいてくれたら、おれも食べることができたのに。」
主人はお客を、待ってくれ、と呼びましたが、お客は聞こえないふりをしました。それで主人はまだ包丁を手に持ったまま、追いかけて、「一つだけ、一つだけ」と叫びました。二羽とも持っていかないで一羽は残しておいてくれ、という意味です。ところが、お客は、耳を一つだけ、と言っているものとしか思いませんでした。それでお客は、両耳ともしっかり家に持ち帰ろうとして、尻に火がついているかのように駆けていきました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

なでしこ

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、神様が子供を与えないお后がいました。毎朝、お后は庭に行き、息子か娘を授けてくださるようにと天国の神様にお祈りしました。すると、天国から天使がやってきて、「あんしんしてください。願掛けの力をもった息子が授かりますよ。そのためその子がこの世で望んだことはなんでもかなうでしょう。」と言いました。それでお后は王様のところに行き、うれしい便りを知らせ、時が来ると、息子を産みました。それで王様は喜びでいっぱいでした。
毎朝、お后は動物が飼われている庭に子供と一緒に行き、そこのきれいな流れで水浴しました。あるとき子供が少し大きくなったとき、お后は子供を腕に抱いたまま、眠ってしまいました。すると、としとったコックがやってきて、子供が願掛けの力を持っていると知っていたので、さらっていきました。そしてニワトリをとって切り刻むとその血をお后のエプロンとドレスに落としました。それから、子供を秘密の場所に運んで、乳母に乳を飲ませるようにさせ、王様のところに走っていくと、お后は動物に子供をとられてしまったとお后を非難しました。王様はエプロンの血を見るとこれを信じ、とても怒って、中からは太陽も月も見えないような高い塔を作らせ、妻をそこにいれさせ、閉じ込めてしまいました。お后はここで7年間食べ物も飲み物も無く暮らすか飢え死にすることになりました。>しかし、神様は2人の天使を天から白い鳩の姿で送り、日に2回飛んできて、7年が過ぎるまで食べ物を運びました。
ところが、コックは、もし子供が願掛けの力をもっていて、おれがここにいるなら、とても簡単に自分を面倒に巻き込むかもしれない、と考えました。それで宮殿を去り、男の子のところに行き、もう口を言えるくらい大きくなっていたので、「自分のために庭やいろいろ付いた美しい宮殿を願え」と言いました。男の子の口から言葉が出た途端、願ったあらゆるものがそこにありました。しばらくしてコックは「お前がそんなに一人でいるのは良くないよ。友達としてかわいい女の子を願え。」と言いました。それで王様の息子はそれを願い、すぐに女の子が目の前に立っていて、どんな絵描きが描くよりもきれいでした。
二人は一緒に遊び、心からお互いを好きでした。年とったコックは貴族のように猟にでかけました。しかし、王様の息子はいつか父親に会いたがるかもしれない、そして自分はかなり危険になるかもしれない、という思いが起こりました。それで出て行って、娘をわきに連れてきて、「今夜、男の子が眠ったら、ベッドに行き、ナイフを心臓に突き刺せ。そして心臓と舌をおれに持ってこい。もしやらなければお前の命はないぞ。」と言いました。 それからコックは行ってしまいました。次の日戻った時、娘はやっていなくて、「どうして誰も傷つけなかった罪のない男の子の血を流さなければいけないの?」と言いました。コックはもう一度「やらなければ、お前の命はないぞ。」と言いました。
コックが行ってしまうと、娘は小さな雌鹿を連れて来てもらい、殺すように命じて、心臓と舌をとり、さらにのせました。コックがやってくるのを見たとき、男の子に、「ベッドにねて、布団をかぶせていて」と言いました。それから悪党が入って来て、「男の子の心臓と舌はどこだ?」と言いました。娘は皿をのべましたが、王様の息子はキルトをはぎ取って、「この罪人め、なぜ僕を殺そうとした?今判決を言い渡す、お前は黒いプードルになり首に金の首輪をし、喉から炎がとび出てくるまで燃えている炭を食べるのだ」と言いました。これらの言葉を言うとすぐ、コックはプードルに変えられ、首に金の首輪をしていました。そして、他のコックたちは燃えている炭を持ってくるように命令され、その炭を犬は食べ、とうとう喉から炎が噴き出しました。
王様の息子はそこにもう少しそこにとどまりましたが、母親のことが思い起こされ、まだ生きているのかなと思いました。とうとう王子は娘に「私は自分の国に帰ります。一緒に来る気があるなら、君を養うよ。」と言いました。「ああ、道のりはとても長いし、私のことを知らないよその土地で私はどうしましょう。」と娘は答えました。娘はあまり気がすすまないようだし、二人はお互い別れられないので、王子は願をかけて娘を美しいなでしこに変え、身につけて持ちました。それから自分の国にでかけ、プードルはあとを追いかけさせました。
王子は母親が閉じ込められている塔に行き、とても高いので、てっぺんまで届く梯子を願掛けしました。それから上へ登って中を覗き、「愛するお母様、お后さま、まだ生きていらっしゃいますか、それとも亡くなってるんですか?」と叫びました。お后は「今食べたばかりでまだおなかがいっぱいよ。」と答えました。というのは、天使たちがそこにいるのだと思ったからです。「私はあなたの愛する息子です。けものがあなたの腕から引き裂いたと言われていますが、まだ生きてますよ。そしてすぐにあなたを自由にします。」と王子は言いました。
それからまた降りて、父親のところにいき、他人の猟師として取り次がせ、王様にお仕えできないかと尋ねました。王様は「いいだろう、お前が腕がたち、私に獲物を捕ってこれるなら、使ってやろう。だがどの地方でも国中で鹿は一度も住んだことはなかったぞ。」と言いました。それで猟師は王様の食卓で使えるだけたくさんの獲物をもってこようと約束しました。それで、王子は猟師たちを呼び集め、森へ一緒に出かけるよう命じました。そして王子は猟師たちと一緒に行き、猟師たちを大きな輪にさせ、自分がいる方を開けさせ、願をかけ始めました。
二百頭以上の鹿がすぐに輪の中へ走って来て、猟師たちは撃ち、鹿は全部六十台の荷車に積まれ、王様のもとへ運ばれました。そして何年も獲物が何もなかったあとで一度王子は王様の食卓を獲物で飾ることができました。
さあ王様はこれにとてもよろこび、次の日に宮廷のみんなが一緒に食べるようにと命じ、大宴会を開きました。みんなが集まると王様は猟師に「お前はとても賢いから、私の隣にすわるがよい」と言いました。王子は「王様、陛下は私にお許しを願います。私は貧しい猟師です。」と答えましたが、王様は承知しなくて「隣に座るがよい」となんども言うので、とうとう座りました。そこに座っている間に愛する母親のことを考えて願掛けをし、王様の偉い家来の一人がお后のことを話し始め、塔の中でお后はいかがかおすごしか、まだ生きていらっしゃるかそれとも亡くなられたかと尋ねますように、と心の中でいいました。
願掛けをするとすぐに長官が始めて、「陛下、私たちはここで楽しく暮らしていますが、塔にいるお后さまはいかがでしょうか?まだ生きていらっしゃるのですか?それともお亡くなりに?」と言いました。しかし王様は、「妃は愛する息子をけものに引き裂かせたのだ、妃の話は聞きたくない。」と答えました。それで、猟師は立ちあがって、「お父様、お妃さまはまだ生きています、そして私はお后の息子です。私はけものにではなくあの悪党の年寄りのコックにさらわれたのです。コックはお后が眠っている時腕から私をさらい、ニワトリの血をエプロンにつけておいたのです。」と言いました。 そこで王子は金の首輪をしている犬を連れて来て、「これがその悪党です。」と言って、燃えている炭をもってこさせ、みんなが見ている前でその炭を食べさせ、ついに炎がのどから噴き出ました。こうして猟師は王様に犬の本当の姿を見たいか尋ね、元のコックの姿に戻す願をかけました。それで、すぐにコックが白いエプロンをかけわきに包丁をさげて立っていました。王様をコックを見ると、とても怒って、一番深い地下牢へ入れろと命令しました。
それから猟師はさらに、「お父様、私をとてもやさしく育て、あとで私を殺さねばならなくなって、自分の命がかかっていたのにそうしなかった娘にあいませんか」と言いました。王様は「ああ、会いたいものだ」と答えました。息子は、「娘を美しい花の姿で見せましょう。」と言って、ポケットに手をいれ、なでしこを出し、王様のテーブルに置きました。それはとても美しく、王様がこれまでに見たこともないくらいきれいななでしこでした。それから息子は「さあ、本当の姿をお見せしましょう。」と言って、娘になるようにと願をかけました。すると、娘はどんな絵描きもこれ以上描けないように美しくそこに立っていました。
そして王様は二人の侍女と二人の家来を塔に送り、お后を王様のテーブルに連れてくるよう命じました。ところが、お后は連れてこられても何も食べず、「塔の中で私を養ってくださった恵み深い神様がもうすぐ私を自由にしてくださいます。」と言いました。お后はそれから三日生きたあと、安らかに亡くなり、埋められたとき、塔に食べ物を運んだ、天国の天使の、二羽の白い鳩が、あとについてきて、お墓の上にとまりました。
年とった王様はコックを4つに切り裂くように命じましたが、悲しみのため心が憔悴してまもなく王様は亡くなりました。息子はポケットに花にして連れてきた娘と結婚しました。二人がまだ生きているかどうかは神様がご存知です。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

狼と猫

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

猫が森でたまたま狐に会いました。「狐は賢くて経験豊かだから、世間でとても尊重されているんだ」と思い、愛想良く話しかけました。「こんにちは、狐さん、ごきげんいかがですか。景気はどうですか。この大変な時期にどうやりくりなさっておいでですか?」
狐は、傲慢さいっぱいに、猫を頭からつま先まで見て、長い間返事をしたものかどうかわかりませんでした。とうとう「おや、惨めなひげ掃除屋か、まだらの馬鹿で、腹をすかしたネズミ捕り、お前は何を考えることができるんだ?ずうずうしくもおれがどうやっているかと尋ねるのか?何を学んだ?いくつ技術をわかってる?」と言いました。
「1つしかわかりません。」と猫は慎ましく答えました。「それは何の技術だね?」「犬が私を追いかけているとき、木に跳び上がって助かることができます。」
「それだけかい?おれは100の技術の名人だよ。おまけに一袋分の賢さもあるぞ。お前を哀れだと思うよ。一緒に来いよ。人がどうやって犬から逃げるか教えてやるよ。」
ちょうどそのとき、狩人が4匹の犬と一緒にやってきました。猫は素早く木に跳び上がりました。「袋を開けて、狐さん、袋を開けて。」と猫は狐に叫びました。しかし、犬は狐をつかまえ、しっかり押さえていました。「ああ、狐さん、あなたの100の技術では困っていても見殺しです。私のように上ることができれば、命を失くさなくてすんだのに。」と猫は言いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

狼が子どもを産んで狐を名付け親に頼みました。「何と言っても、近い親戚なのよ。」と狼は言いました。「頭がいいし、才能も豊かだわ。うちの息子を教えて世間に出ていく助けをしてくれるわ。」狐もすっかり真面目くさった様子で、「奥様、私にお授けくださった名誉に感謝いたします。この名誉に報いるよう努めさせていただきます。」と言いました。
狐はお祝いの席でご馳走を食べ、陽気にして、そのあとで、「奥様、子どもの世話をするのは私たちの義務です。強い体にするには良い食べ物を食べさせなくてはいけません。すばらしい御馳走をとれる羊小屋を知っていますよ。」と言いました。狼はその考えが気に入って、狐と一緒に農家の庭に出かけて行きました。狐は遠くから小屋を指差し、「あそこから見られないで忍びこめます。その間私はニワトリをとれるか向こう側を見てきます。」と言いました。ところが狐はそこに行かないで森の入口に座り脚を伸ばして休んでいました。
狼は羊小屋に忍び込みました。そこに犬がいてさんざん吠えたのでお百姓が走って出てきて、狼をつかまえ、衣類などを洗うために用意してあった強力な揮発油を狼の毛皮にふりかけ、火をつけました。狼はほうほうのていで逃げて足を引きずりながら外にでました。そこに狐がいて、文句たらたらのふりをして言いました。「ああ、奥様、なんともひどい目にあいました。お百姓たちが私に襲いかかって、手足がみんな折れてしまいました。ここにいて死んで欲しくないと思ってくださるなら、背負ってくれませんか」狼は自分でもゆっくりしか歩けませんでしたが、狐のことが心配だったので、狐を背負い、のろのろ運びました。狐はすっかり無事で家に着きました。すると狐は狼に叫びました。「ははは、さよなら、奥様、味わった焼き物が奥様の身になりますように。」心の底から笑いながら跳ねていってしまいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

狼と狐

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

狼は狐を従えていました。狼が望んだことは何でも狐はやらされました。というのは狐の方が弱かったからで、できれば主人と喜んでおさらばしていたでしょう。あるとき二人が森を通っていたとき、狼が、「赤狐、何か食べ物をとってこい、でないとお前自身を食っちまうぞ」と言いました。狐は「2匹の子羊がいる農家の庭を知っています。もしよろしければ1匹とりましょう。」と答えました。狼はそれがいいと思い、二人でそこへ行きました。そして狐は子羊を盗み、狼のところへ持っていき、行ってしまいました。狼はがつがつ子羊を食いましたが、一匹では満足しませんでした。それでもう1匹も欲しくなり、それを手に入れるためでかけました。
しかし狼はやるのがとても下手くそだったので、子羊の母が聞きつけ、激しく叫びたてメエメエなくので、農夫たちがそこへ走ってきました。そして狼を見つけ、とても情け容赦なくぶったので、狼は足を引きずり、うめきながら、狐のところへ行きました。「お前はおれをうまくだましやがったな。もう1匹の子羊も欲しかったのに、農夫たちが急にやってきて、おれをめちゃくちゃにぶちやがった。」と狼は言いました。狐は「どうしてあなたはそんな食いしん坊なんですか?」と言いました。
次の日、二人はまた田舎に行きました。食い意地のはってる狼は、もう一度「赤狐、何か食べ物をとってこい、でないとお前自身を食っちまうぞ」と言いました。すると狐は「奥さんが今夜パンケーキを焼いている農家を知っています。私たちのためにいくらか手に入れましょう。」と狐は答えました。二人はそこへ行き、狐は家の周りをそろりそろり回り、覗いて、かぎ回って、とうとう料理がどこにあるか発見しました。それで、6個のパンケーキをつかむと狼のところへもっていきました。「あなたの食べ物ですよ。」と言って立ち去りました。狼はあっと言う間にパンケーキをのみ込んで「もっと欲しくなったな。」と言いました。そしてそこへ行き、皿ごと下に引っ張ったのでこなごなに壊れてしまいました。それで大きな音がしたので、その奥さんが出てきて、狼を見るとうちの人たちを呼びました。その人たちはそこに急いで来て、棒がバラバラになるまで狼を打ちました。
とうとう狼は2本の足をひきずり、大声でうめきながら、森の狐のところへ戻りました。「よくもこっぴどくおれをだましたな。農夫たちがおれをつかまえ、皮がむけるほどぶったぞ。」と狼が言うと、狐は「どうしてそんなに食いしん坊なんですか。」と答えました。
3日目二人は一緒に出かけ、狼は痛そうにただ足をひきずってきていましたが、また「赤狐、何か食べ物をとってこい、でないとお前自身を食っちまうぞ」と言いました。「ずっと殺しをしていた男を知っています。地下室の樽に塩漬けの肉があります。それをもらいましょう。」と狐は答えました。「お前がやるときおれが行く。だからおれが逃げられなければお前が手伝え。」と狼は言い、「喜んで」と狐は答えました。そしてわき道や道を教えて、とうとう地下室に着きました。
肉はたくさんあり、狼はすぐ食べ始めましたが、「出て行かなければいけないときまで、たっぷり時間があるぞ」と思いました。狐も肉が好きでしたが、あちこち見回し、ときには自分たちが入ってきた穴まで走っていき、体がその穴にもぐりこめるくらいまだ細いか確かめました。狼は「狐よ、お前どうしてそんなにあちこち走り回ったり、跳んで出たり入ったりしてるんだ?」と言いました。「だれもこないのをたしかめなくちゃいけないんだ。食べ過ぎないで。」と悪賢いやつは答えました。すると狼は「おれは樽がからになるまで出て行かないよ。」と言いました。
その間に農夫は狐が跳びはねている音を聞いて地下室にやってきました。狐は農夫をみると、一ッ跳びで穴の外にでました。狼は狐の後に続こうとしましたが、食べてとても太くなっていたので、もう通り抜けられなくて、しっかり挟まってしまいました。それで農夫はこん棒を持ってやってきて、狼を打ち殺しました。しかし狐は森へ逃げ込み、古馴染みの食いしん坊とおさらばできて喜びました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

狼と人間

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、狐が狼に人間の強さについて、どんな動物も抵抗できないとか人間から身を守るためにみんな知恵を絞らないといけないとか、話していました。すると、狼は「それでも、もし人間に一度でも会うチャンスさえあれば、おれは襲いかかってやるんだが。」と答えました。「それならお手伝いできるよ。明日の朝早く、うちにおいでよ。そうすれば人間をみせてやるよ。」と狐はいいました。狼は朝早く現れました。そして狐は猟師が毎日行く道に狼を連れ出しました。最初に年とった除隊兵が来ました。「あれが人間か?」と狼は訊きました。「いや、あれは昔人間だった。」と狐は答えました。そのあと、学校に行く小さな男の子が来ました。「あれが人間か?」「いや、あれはこれから人間になる。」
とうとう二連銃を背にかけ、脇に刀の吊り手をぶら下げた猟師がやって来ました。狐は狼に言いました。「ほら、人間が来るよ。きみは襲わなくちゃ。だけど僕は巣穴に行ってるから。」それから狼は人間に突撃しました。猟師は狼を見ると、「弾を込めてなくて残念だ。」と言って、ねらいをつけ、狼の顔に小銃を撃ちました。狼はとてもしかめた顔をしましたが、恐れずに二度目の攻撃をしました。それに対し、猟師は2個目の弾を撃ちました。狼は痛みをこらえて、猟師に突撃しました。しかし猟師は光った刀を引き抜き、右に左に2,3の切り傷を与えました。
それで、狼はあちこち出血してうなりながら狐のところに走って戻りました。「さて、狼兄い、人間をどうやっつけたかい?」と狐は言いました。「ああ、人間の強さをあんなふうだと想像してなかったよ。初めに人間は肩から棒をとってそれを吹いたんだ。そうしたら何か顔に飛んできて、ひどくむずむずしたんだ。それからもう一回棒を吹くと、稲妻やひょうのように鼻に飛んできた。うんと近くなったら、人間は体から白いあばら骨を抜いて、それで打ったから、もう少しで死んでおだぶつになるところだったよ。」と狼は答えました。「ほらね、自分がどんなにほら吹きかわかっただろ。あまり遠く手斧を投げると、二度ととりもどせないよ。」と狐は言いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

昔、いろいろなわざを心得ている男がいました。この男は戦争で勇敢によく働きましたが、戦争が終わるとくびになり、道中の費用に三ファージング受け取りました。「おいおい」と男は言いました。「これっぽちで納得しないぞ。おれがちゃんとした手下に出会ったら、王様に国の宝をみんな出させてやる」そうしてすっかり怒って、森へ入って行くと、男がいて、まるで麦の茎のように六本の木を抜いているのが見えました。それでその男に「おれの手下になって一緒に行かないか」と言いました。「いいよ。」と男は答えました。「だが、先にこの小さな枝の束をうちのおふくろに持って行くよ」そうして六本の木から一本とって他の五本に巻き、束を肩にのせて運んでいきました。それから戻ってくると頭目と一緒に出かけました。頭目は、「おれたち二人でかなりうまく世間を渡り歩けるぞ」と言いました。少し歩いたあと、二人は猟師に会いました。その猟師は膝をついて、銃を肩にかけ、今撃とうというところでした。
頭目は猟師に、「猟師、何を撃とうとしてるんだい?」と言いました。猟師は「ここから二マイルのところでハエが樫の木の枝にとまっているんだ。おれはそいつの左目を撃ち抜こうとしてるのさ。」と答えました。「すごい!おれと一緒に来いよ」と頭目は言いました。「おれたち三人が一緒なら、きっと世界中でうまくできるぜ。」猟師は承知して、一緒に出かけました。三人は七基の風車があるところに来ました。風車の帆はすごい速さでぐるぐる回っていましたが、右にも左にも風は吹いていないし、木の葉もまるで揺れていませんでした。それで頭目は、「なんで風車が回っているのかわからないな。風がそよとも吹いていないのによ。」と言いました。
そうして手下と一緒に進んでいき、二マイル歩くと、木の上に男が座っているのが見え、男は片方の鼻穴をふさいでもう片方から鼻息を吹きだしていました。「なんてこった!その上で何をしてるんだい?」男は「ここから二マイルのところに風車が七基あるんだ。見てみろよ、風車を鼻息で回しているのさ。」「すごいねぇ、おれと一緒に来いよ」と頭目は言いました。「おれたち四人がそろえば、世界中をものにできるぜ」
すると鼻吹き男は降りてきて、一緒にでかけました。しばらくして一行は一本足で立って、もう一本の脚ははずして横においていた男を見ました。そこで頭目は、「やあ、とても気持ちよさそうに休んでるね、うまいやり方じゃないか」と言いました。「おれは走り人だよ。」と男は答えました。「あまり速く走りすぎないために片足をはずしておいたんだ。両脚で走ると鳥が飛ぶより速いもんでね」「すごい、一緒に来いよ。おれたち五人がそろえば、世界中をものにできるぜ。」そこで走り人は一緒にでかけました。
まもなく一行は帽子をかぶっていて片耳をすっかりおおっている男に出会いました。そこで頭目は男に、「かっこよく、かっこよく。帽子を片耳にかぶせるなよ、大バカみたいに見えるぜ。」と言いました。「こうするしかないんだ」と男は言いました。「帽子をまっすぐにすると、ひどい霜が出てきて、空中の鳥はみんな凍って死んで地に落ちてしまうからな。」「すごい、おれと一緒に来いよ」と頭目は言いました。「おれたち六人がそろえば、世界中をものにできるぜ。」
さて六人はある町にやってきましたが、そこの王様は自分の娘と競走して勝った者は娘の夫とする、但し負けた者は首をはねる、とお触れを出していました。そこで頭目は名乗りをあげ、「おれがやろう、だが、家来を代わりに走らせてくれ」と言いました。王様は「ならば、その者の命も賭けねばならん。その者の首とお前の首の両方を勝負に賭けることになる。」と答えました。それがしっかり決められると頭目は走り人にもう一方の脚をはめ、「さあ、速く走って勝ってくれよ」と言いました。
はるか遠くの泉から先に水を汲んできた方が勝ち、と決められました。走り人はつぼを受け取り、王様の娘も受け取りました。二人は同時に走り出しました。しかし、あっという間に、王様の娘はほんの少し進んだだけでしたが、もう走り人の姿は見物人に見えなくなりました。まるで風がピューと吹き抜けたかのようでした。まもなく走り人は泉に着き、つぼに水を入れ、引き返しました。ところが半分戻ったところで疲れ果て、つぼを下におくと寝転がり、眠ってしまいました。
ところが、走り人は寝心地が悪くすぐ目が覚めるようにと、地面に転がっていた馬の頭蓋骨を枕にしました。その間に、普通の人間としてはかなり速く走れる王様の娘が泉に着いてしまい、水を入れたつぼを持ち急いで引き返してきました。王女は走り人がそこで眠って横になっているのを見ると、喜び、「敵は私の手の内だわ。」と言って、走り人のつぼから水をあけ、走っていきました。そうして、運よく城のてっぺんに猟師が立って、鋭い目でこの有様を見ていなかったら、すっかり負けてしまっていたでしょう。
そうして猟師は、「王様の娘にまだ勝たせないぞ」と言うと、銃に弾を込め、うまく狙いをつけ、走り人に怪我をさせないでその頭の下から馬の頭蓋骨を撃ってとばしました。すると走り人は目を覚まし,飛びあがって、つぼが空っぽで、王様の娘がもうずっと前にいるのがわかりました。しかし、走り人は気を落とさず、つぼを持って泉に戻り、また水を汲んで、王様の娘より十分早くゴールしました。「どうだい!」と走り人は言いました。「今まで本気に走ったことはなかった。前に走ったのは走ったうちに入らないな。」
しかし、王女がそのような身分の卑しい兵隊あがりに連れ去られるのは、王様にとって不快なことで王女本人にはなおさらでした。それで二人はこの兵隊あがりと仲間をどうしたら厄介払いできるか相談しました。すると王様は娘に、「手を考えたよ。心配するな。あの者たちに二度と戻って来させない。」と言いました。そうして一行に、「さあ、みんなで飲んで食べて陽気にやってくれ。」と言い、床が鉄で、戸も鉄でできており、窓は鉄格子のはまっている部屋に案内しました。
部屋にはおいしいご馳走が並んだテーブルがあり、王様は一行に、「さあさ、入って大いにやってくれ。」と言いました。そうして一行が中に入ると、戸を閉めかんぬきをかけさせました。それから料理人を呼びよせて、鉄が真っ赤になるまで部屋の下で火を燃やすようにと命じました。料理人はそうしました。食卓にいる六人はとても熱く感じ始めましたが、食べ物のせいだと思っていました。ところがどんどん熱くなっていくので、外に出ようとして、戸や窓にみんな鍵がかけられているのがわかりました。それで、王様が謀り自分たちの息の根を止めようとしているんだと気がつきました。
「だが、そうはさせないぞ」と帽子をかぶっている男が言いました。「おれが寒気を出してやろう、火だって恥ずかしくなってこそこそ逃げ出すぜ。」そうして帽子をまっすぐかぶりました。途端にすごい寒気がやってきて熱がすっかり消え、皿の食べ物は凍り出しました。一、二時間経つと、王様は、あの者たちは熱で死んでしまっただろう、と思い、戸を開けさせ、自分で見てみました。しかし、戸が開けられると六人全員が生きてぴんぴんしてそこに立っていました。そうして、おれたちは暖まるために出たいんだ、食べ物は寒さでがちがちに皿に凍りついてしまったからね、と言いました。それで、かんかんに怒り、王様は料理人のところに降りて行くと、どなりつけて、なぜ命令に従わなかったのだ?と尋ねました。ところが料理人は「十分かんかんに燃やしています。ご自身でご覧下さい。」と答えました。それで王様は鉄の部屋の下で恐ろしいほど火が燃やされているのを見て、このやり方ではあの六人をやっつけることができないと知りました。
王様はまたしてもこの不快なお客を厄介払いする方法を考えて、頭目を呼んでこさせ、「お前が金貨を受け取り娘をあきらめるなら、好きなだけやるがどうだ?」と言いました。「いいですとも、王様」と頭目は答えました。「私の家来が運べるだけください、そうすれば、王女様をいただきたいと申しません。」
これを聞いて王様は満足しました。頭目は続けて、「14日したら、受け取りに戻ってまいります。」と言いました。そのあと、頭目は国じゅうの仕立て屋をみんな呼び寄せ、14日かかって袋を一つ縫わせました。袋ができると、木を引き抜いた力持ちの男にその袋を背負わせ、一緒に王様のところへ行きました。
すると王様は、「すごい力のある男だ、家ほども大きい麻袋を担いでくるぞ」と言って、「どれだけたくさん金貨を持っていけるだろう」と心配でした。そうして一トンの金貨を運んで来させました。王様の力のある男が16人かかってその金貨を運びましたが、力持ちの手下は片手でそれをつかみ、袋に入れて、「なんでもっといっぺんにもってこないのか?これっぽちじゃ袋の底もふさがらないぞ!」と言いました。そこで、少しずつ出して結局全部の宝を、王様は持って来させることになり、、力持ちの手下が袋に入れましたが、それでも袋の半分も入っていませんでした。
「もっと持ってこい」と力持ちは叫びました。「こんなかけらばかりじゃいっぱいにならん。」そこで国じゅうから七千台の金貨を積んだ荷車が集められましたが、力持ちの手下は荷車につないである牛ごと袋に入れ、「もういちいち調べないよ」と言いました。「袋がいっぱいになりゃくるものは何だって入れちまおう」全部中に入れてしまってもまだたくさん空きがありました。そこで力持ちは「これで終わりにしよう。いっぱいでなくても時には袋を結わえるからな。」と言いました。そうして袋を担ぐと仲間と一緒に去っていきました。王様はたった一人の男が国の財産全部を持ち去って行くのをみると、怒り出し、騎兵たちに馬に乗って六人を追いかけるようにと言って、力持ちの手下から袋をとりあげるよう命じました。
二個連隊はあっという間に六人に追いつき、「お前たちは捕虜だ、金貨の袋を下に降ろせ、さもないと全員切り刻んでくれる!」と叫びました。「何を言ってやがる?」と鼻吹き男が叫びました。「おれたちが捕虜だと?それよりむしろ、お前たちを空中で踊らせてやるよ。」そうして一つの鼻穴をふさいで、もう一つから二個連隊を吹きました。すると騎兵たちはばらばらになって、青空の中を山々を越えてあちこちに飛ばされていきました。一人の曹長が、どうか許してくれ、と叫び、傷が九つできるほど勇敢に戦ったんだ、こんなひどい扱いをされる覚えはない、と言いました。鼻吹き男が少し止めたので、総長は怪我も無く降りてきました。それで鼻吹き男は、「さあ王様のところへ帰れ。そうして王様にもっとたくさん騎兵を送った方がいいと言うんだ。そうしたらおれはそいつらをみんな空に吹き飛ばしてくれる。」と言いました。王様はこれを聞くと、「あの者どもをほうっておけ。とてもかなわない。」と言いました。そうして六人は財宝を持ち帰り、六人で山分けして、死ぬまで満足して暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

三人のしあわせもの

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

あるとき、父親が三人の息子を自分の前に呼んで、長男におんどりを一羽、次男に草刈り鎌を一丁、三男に猫を一匹与えました。「わしはもう年だ」と父親は言いました。「死ぬ時期も近い。死ぬ前にお前たちにやっておきたいと思っていたんだ。金はない。今お前たちにやったものは大して価値がなさそうなものだ。だが、それもお前たちの使い方次第だと思うんだ。そういうものをまだ知らない国を探しだせ。そうすれば財産を作れる。」
父親が死んだあと、長男は雄鶏をかかえて出かけていきましたが、どこへ行っても雄鶏はもう知られていて、町では、尖塔の上にのって風で向きをかえているのがずっと遠くからでも見えました。村では一羽以上の雄鶏が鳴いているのが聞こえてきて、誰もこの生き物を驚いて見る人はいそうもありませんでした。それで雄鶏で財産をつくれそうもありませんでした。
ところが、とうとう、ある島に来ると、人々は雄鶏について何も知らなくて、時間の分け方すら判っていませんでした。いつが朝でいつが夕方かは確かに知っているのですが、夜に眠っている途中で目覚めると、それが何時かは誰もわからなかったのです。
「ほら、見て」と長男は言いました。「なんと誇らしい生き物だ。頭にルビーのように赤い冠をかぶって、騎士のように拍車をつけてるんだ。夜に三回、決まった時間にあなたに呼びかける。最後に呼びかけるときはまもなく日が昇る。だが、昼間に鳴いたら、注意しなくちゃ。そのときはきっと天気が変わるんだからな。」
人々はとても気に入って、一晩じゅう眠らずに、雄鶏が二時、四時、六時と大声ではっきりと時を告げるのを大喜びして聴きました。人々は、その動物は売り物かね?いくらで売ってくれるんだ?と尋ねました。「一頭のロバが運べる金貨くらいだね」と長男は答えました。みんなは口をそろえて「こんな貴重な動物には馬鹿げた安値だよ。」と叫んで、長男が求めた金額を喜んで渡しました。
長男が大金を持って家に帰ると、弟たちはびっくりしました。次男は「じゃあ、僕もでかけて、草刈り鎌を売りさばいて儲けられるかやってみよう」と言いました。しかし、思ったようにはいきそうもありませんでした。というのは、働く人にはどこでも会うし、みんな次男と同じように肩に草刈り鎌を担いでいました。
ところが、ついに、たまたまある島に行くと、人々は草刈り鎌を何も知りませんでした。そこでは麦が実ると、大砲を持ち出して畑へ行き、麦を撃ち落としていました。これでは不確かなことで、麦の上をとびこしてしまう弾も多いし、茎ではなく穂に当たって吹き飛ばしてたくさんの麦がなくなってしまうこともありました。それだけでなくものすごい音がしました。そこへ次男が仕事をやってみせて、とても静かに速く刈り取ったので人々は驚いて口あんぐりでした。人々は草刈り鎌を次男の言い値で買うことに決めて、次男は運べるだけ金貨を積んだ馬を一頭受け取りました。
今度は三男が猫をあつらえ向きの人にもっていこうとしました。三男も兄たちと同じで本土にいる間はどうしようもありませんでした。どこにも猫がたくさんいるし、あまり多すぎて生まれたばかりの子猫はたいてい池で溺れさせられていました。
しまいに島に渡ると、うまい具合にそこでは猫がこれまで見られませんでした。そうしてねずみがはばをきかせて、主人がいようといまいと、テーブルやベンチで踊りまわっていました。人々はねずみの害をひどく嘆いていましたが、宮殿にいる王様自身もねずみからどう身を守るか知らず、ねずみがどのすみにもいて鳴いているし、見つけた物は何でも歯でかんでしまうのでした。
しかし今度は猫が追い回し、まもなくニ、三の部屋にはねずみがいなくなりました。人々は王様に国のためにこの素晴らしい動物を買ってくれるようにとお願いしました。王様はすすんで求められたものを渡しました。それは金貨を積んだラバで、三男は三人のうちで一番の宝を手に入れて帰って来ました。
猫は王宮でねずみを相手に楽しく過ごし、数えきれないほどねずみを殺しました。とうとう仕事をして熱くなり喉が渇いて、たちどまると、頭を持ちあげて「ニャーニャー」と鳴きました。
この奇妙な鳴き声を聞くと、王様と宮廷の人たちはびっくりし、恐がって一斉に城から出て逃げていきました。それで王様はどうすればよいか、と会議にかけ、しまいに猫に使者を送ることに決め、使者は猫に城をでていってもらうように言って、もし出ていかなければ力づくで追い出されると思え、ということになりました。相談役たちは、「こんな怪物に命をとられるより、むしろねずみに苦しまれる方がましです。というのはねずみの災難には私たちは慣れていますから。」と言いました。そこで、地位の高い若者が、猫に、おとなしく城をあけわたすか尋ねるためつかわされました。しかし、猫は、前よりもっと喉が渇いていたので、ただ「ニャーニャー」と返事しただけでした。若者はそれを「絶対嫌だ、絶対嫌だ」と言ってるものと理解して、この返事を王様に伝えました。
「それでは」と相談役たちは言いました。「力づくで追い出すことだ」大砲が持ち出され、宮殿はじきに炎に包まれました。火が猫のいる部屋に届くと、猫は無事に窓から飛び出ました。しかし、包囲軍は宮殿がまるまる地に崩れ落ちるまで大砲を撃つのを止めませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

ヨリンデとヨリンゲル

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、大きなうっそうとした森の真ん中に古い城があり、そこには魔女のばあさんがひとりっきりですんでいました。ばあさんは昼は猫やふくろうに変身しましたが、日が暮れるとまたふつうの人間の姿になりました。また、けものや鳥をおびき寄せ、殺して煮たり焼いたりしました。城から百歩内に入った人は、立ち止まったきり、ばあさんが魔法を解くまでその場から動けなくなりました。しかし、けがれのない娘がこの範囲に入ると、ばあさんはその娘を鳥に変え、柳の鳥かごに閉じ込め、城の部屋に運び込みました。城の中には珍しい鳥のかごが七千ほどありました。
さて、あるとき、ヨリンデという娘がいて、他のどの娘よりもきれいでした。ヨリンデとヨリンゲルというハンサムな若者は結婚の約束をしていました。二人はまだいいなずけの日々を過ごし、一緒にいることが一番の幸せでした。ある日、静かに語り合うために二人は森へ散歩にいきました。「気をつけて」とヨリンゲルは言いました。「城に近づきすぎないように。」美しい夕方でした。太陽が木々の幹の間から暗い森の緑に明るく射し込み、キジバトがブナの木の上でもの悲しく鳴いていました。ヨリンデは時々泣き、日なたに腰を下ろすと切なそうにしていました。ヨリンゲルも悲しく、二人は今にも死ぬかと思うくらい切なかったのです。そのとき二人は周りを見回して、すっかり途方にくれました。というのは家に帰る道がわからなかったからです。太陽はまだ半分山の上にあり、半分は山の下にありました。ヨリンゲルはしげみの間から見ると、古い城の壁がすぐ間近に迫って見えました。ヨリンゲルはぎょっとして死ぬほどの恐怖に襲われました。
ヨリンデが歌っていました。「赤い首飾りをした私の小鳥、悲しい、悲しい、悲しい、と鳴く、鳩がまもなく死ぬと鳴く、悲しいと鳴く、悲...ジャグ、ジャグ、ジャグ」ヨリンゲルがヨリンデの方を見ると、ナイチンゲールに変わっていて、ジャグ、ジャグ、ジャグと鳴きました。光り輝く目をしたふくろうがナイチンゲールの周りを三回飛びまわり、「ホーホーホー」と三回鳴きました。ヨリンゲルは動けませんでした。そこに石のようにつっ立って、泣くことも話すことも、手足を動かすこともできませんでした。太陽はもう沈んでしまいました。
ふくろうが木の茂みに飛んで入り、すぐあとでそこから腰の曲がったばあさんが出てきました。肌が黄ばみやせていて、大きな赤い目とあごに先が届く鉤鼻をしていました。ばあさんはぶつぶつ呟きながら、ナイチンゲールをつかまえ、手の中に入れて持って行きました。ヨリンゲルは話すこともその場から動くこともできませんでした。ナイチンゲールはいなくなってしまいました。しまいにばあさんは戻ってきて、しわがれた声で「今晩は、ザキエル、月の光が鳥かごにさしたら、ザキエルよ、すぐに放しておやり」と言いました。するとヨリンゲルの魔法が解かれました。ヨリンゲルはばあさんの前に膝まづいて、僕のヨリンデを返してください、と頼みましたが、ばあさんは、お前は二度と娘に会えないよ、と言うと行ってしまいました。ヨリンゲルは、叫んで、泣いて、嘆きましたが、何もかも無駄でした。「僕はどうなるんだ?」
ヨリンゲルは立ち去り、とうとう知らない村にたどりつきました。そこで長い間羊の世話をしました。ヨリンゲルはよく城の周りをぐるぐる歩き回りましたが、あまり近くには行きませんでした。とうとうある夜、夢を見て、真ん中に美しい大きな真珠がある血のように赤い花を見つけ、その花を採り、それを持って城に行きました。その花で触れると、あらゆるものの魔法が解かれました。また夢の中で、その花のおかげで愛するヨリンデも取り戻したのです。
朝になって目が覚めると、ヨリンゲルは山や谷を越えてそのような花を探し始めました。九日目まで探して、朝早く、血のように赤い花を見つけました。その花の真ん中に素晴らしい真珠ほど大きい露がありました。昼も夜もこの花を持って城に歩いていきました。
城の百歩内に入っても、体が釘づけにされず、戸口まで歩いていけたので、ヨリンゲルは嬉しくてたまりませんでした。戸は花で触れると、パッと開きました。中庭を通りぬけ入っていき、鳥たちの鳴き声を探して耳をすましました。とうとう鳴き声が聞こえました。ヨリンゲルは進んでいって、鳴き声が聞こえる部屋を見つけました。するとそこで魔女が七千の鳥かごの鳥たちにえさをやっていました。魔女はヨリンゲルを目にするとむっとしてひどく怒り、がみがみ怒鳴り毒を吐き、ヨリンゲルに歯をむきましたが、二歩手前までしか近づけませんでした。
ヨリンゲルは魔女に注意を払わずに鳥たちのかごに行って見てまわりました。しかし、何百というナイチンゲールがいて、どうしたら愛するヨリンデを見つけられるでしょうか。ちょうどそのとき、ばあさんがこっそり鳥かごをとって、戸口に向かうのが見えました。ヨリンゲルは素早くばあさんの方へとんでいき、鳥かごに花で触れ、またばあさんにも触れました。それでもうばあさんはだれも魔法にかけられなくなりました。そしてヨリンデがそこに立ち、ヨリンゲルの首を抱きしめました。ヨリンデは以前と変わらず美しいままでした。それから他の鳥たちもみんな娘に戻りました。ヨリンゲルは愛するヨリンデと一緒に家に帰り、二人は長い間いっしょに幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

ハンスは息子に商売を覚えさせたいと思い、教会に入って、何が息子に最も適しているか知るために神様にお祈りしました。すると、牧師が祭壇の後ろにいて、「盗み、盗み。」と言いました。これを聞いてハンスは息子のところに戻り、お前は盗みを覚えるべきだ、神様がそう言ったと告げました。それで、息子と一緒に盗みを良く知っている男を捜しに出かけました。二人は長い間歩いて、大きな森に入ると、おばあさんが中にいた小さな家が立っていました。ハンスは、「盗みを良く知っている男のことを知ってるかい?」と言いました。「ここでとてもよくそれを覚えることができるよ。私の息子はその名人だ。」とおばあさんは言いました。それで、ハンスはおばあさんの息子と話し、本当によく盗みを知ってるか尋ねました。泥棒の親方は、「息子さんをよく教えましょう。1年経ったら戻ってきてください。そしてそのとき息子さんを見分けたら、授業料は受け取りません。だけど、わからなかったら、200ターレル払わなければなりませんよ。」と言いました。
父親はまた家に戻り、息子は魔法と盗みをしっかり学びました。1年過ぎると、父親はどうやって息子を見分けるか知ろうと心配でいっぱいでした。こんなふうに悩んで歩いていると、小人に出会いました。小人は「ねぇ、何を悩んでるんだい?お前はずっとそう悩んでいるね。」といいました。「ああ、1年前、息子を泥棒の親方のところに置いたんだ。その親方は言ったんだ。1年過ぎたら私は戻らねばならないとね。そして、そのとき私が息子を見て息子だとわからなければ200ターレル払わなくちゃならないとさ。だけど、息子だとわかったら何も払わなくていいんだ。それで今、息子がわからないんじゃないかと心配だし、どこでお金を手にいれるかもわからないんだ。」とハンスはいいました。すると小人は、パンの皮を持って行き、煙突の下に立つんだ、とハンスに言いました。「そこの横桁にかごがのっている、そこから小鳥がのぞいているんだ。それがお前の息子さ。」
ハンスはそこへ行き、小鳥が入っているかごの前に黒パンの皮を投げました。それで小鳥が出てきて、見上げました。「やあ、息子、ここかい?」と父親は言いました。そして息子は父親を見て喜びましたが、泥棒の親方は「悪魔が教えたにちがいない。でなけりゃ息子をどうやってわかったんだ?」と言いました。「お父さん、行こう。」と若者は言いました。
それから父親と息子は家へ向かって出発しました。途中で馬車が通りかかりました。そこで息子は父親に、「僕は大きなグレイハウンド犬に変身するよ。そうしたら僕でたくさんお金が儲けられるよ。」と言いました。すると、紳士が馬車から、「君、その犬を売ってくれないかい?」と呼びました。「いいですよ。」と父親は言いました。「いくらで売るの?」「30ターレルです。」「う~ん、それは高い、しかし、とてもりっぱな犬だから、買おう。」紳士は馬車に犬をのせましたが、少し進んだとき、犬は馬車の窓からとび出て、父親のところへ戻り、もうグレイハウンドではなくなっていました。
二人は一緒に家に帰りました。次の日、隣の町で定期市がありました。それで若者は、「今度は美しい馬に変身するから、僕を売れるよ。だけど、売ったとき馬ろくをはずさなくちゃだめだよ。そうしないと元の人間になれないからね。」と父親に言いました。それから父親は馬をつれて定期市へ行きました。そして泥棒の親方が来て、100ターレルで馬を買いましたが、父親は忘れて、馬ろくを外しませんでした。それで親方は馬を連れて家へ帰り、馬小屋に入れました。
女中が戸口を横切ったとき、馬が「馬ろくを外してくれ、馬ろくを外してくれ」と言うので、女中はじっと立ち、「何、お前喋れるの?」と言って、馬のところへ行き、馬ろくを外しました。そして馬はすずめになり、ドアから飛んででました。すると泥棒の親方もすずめになり、飛んであとを追いかけました。
それから二人は一緒になり、勝敗をかけ、親方が負けました。それで、親方が雄鶏に変身したとき、若者は狐になり親方の頭を噛み切ったので、親方は死んで、今日でも死んだままになっています。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

十二人の狩人

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、王様の息子がいて、この王子はとても愛している娘と結婚の約束をしていました。娘のそばに座り幸せなひとときを過ごしていると、王子の父親が病気で、死ぬ前にもう一度息子に会いたがっている、という知らせがきました。それで王子は愛する人に、「今は君を残して行かなければならない、僕の記念にこの指輪をあげよう。僕が王になったら、君を迎えに戻ってくるから。」と言いました。そうして王子は馬で去っていき、父親のところに着くと、父親は病気がとても重く今にも死にそうでした。父親は、「息子よ、わしは死ぬ前にもう一度お前に会いたかった。わしが望む娘と結婚する、と約束しておくれ。」と言いました。そうして王子の妻にする予定のある王様の娘の名前をあげました。息子はとても悲しくて、自分が何をしているのかよく考えもせず、「はい、お父さん、お父さんの望み通りにします」と言いました。すると王様は目を閉じ、亡くなりました。
そこで息子が王様になったことが公表され、喪の期間が明けると、父親にした約束を守らなくてはならなくなり、使いをやって、その王様の娘に結婚の申し込みをさせ、娘と婚約しました。最初のいいなずけはこの噂を聞き、男の裏切りにとても思い悩んで死にそうになりました。それで父親は娘に、「かわいい娘よ、どうしてそんなにふさいでいるんだ?何でものぞみのものをやろう。」と言いました。娘は少し考えていましたが、やがて、「お父様、顔も姿も背丈も私と全く同じ娘が11人ほしいわ。」と言いました。父親は、「それができるなら、お前の望みを叶えてやろうではないか」と言って、自分の王国じゅうを探させました。そしてとうとう、顔と姿と背丈が娘とそっくりな11人の若い娘が見つかりました。
娘たちが王様の娘のところにくると、王女はみんな同じ12着の猟師の服を作らせ、11人の娘たちにその猟師の服を着させ、自分も12着めの服を着ました。そうして王女は父親に別れを告げて去り、娘たちと一緒に、とても愛している前のいいなずけのところへ馬で乗りつけました。それから、王様は猟師を雇いませんか、12人まとめて雇ってもらえませんか、と尋ねました。王様は王女を見ましたが、昔のいいなずけだと気づきませんでした。しかし、12人がとてもハンサムな男たちだったので、「いいよ、雇ってやるとも」と言いました。そうして娘たちは王様の12人の猟師になりました。
ところで、王様には一頭のライオンがあって、これは不思議な動物でした。というのはこのライオンは秘密にして隠してあることをみんな知っていたからです。ある夕方、ライオンは王様に、「12人の男の猟師を雇ってると思っているんですね?」と言いました。「そうだよ」と王様は言いました。「あれは12人の男の猟師だ」ライオンは続けて、「王様は間違っています。あれは12人の娘ですよ。」と言いました。王様は、「そんな筈はない!お前はどうやってそれを証明するつもりだ?」と言いました。「ああ、あなたの控えの間にエンドウ豆をまかせてごらんなさい。」とライオンは答えました。「するとすぐにわかりますよ、男たちはしっかり踏んで歩くから、豆の上を歩いても豆は動きませんが、娘たちの足取りは軽いし、足を引きずるから、豆があちこと転がるんです。」王様はこの話を聞いて気に入り、豆をまかせました。
ところが、一人の王様の家来が猟師たちに好意をもっていて、猟師たちがこういうふうに試されるのを聞くと、猟師たちのところへ行って、それをそっくり繰り返して話し、「ライオンはあんたたちが女だと王様に信じさせようとしてるんだ」と言いました。それで王女はその家来に礼を言い、娘たちに「力を入れて、豆をしっかり踏みなさい」と言いました。そうして次の朝、王様が12人の猟師を自分の前に呼び寄せ、豆が転がっている控えの間に入るとき12人は豆をしっかり踏みつけ、強いしっかりした足取りで歩いたので、豆は一個も転がったり動いたりしませんでした。そうして12人が立ち去ると、王様はライオンに、「お前はわしに嘘をついたではないか。やつらは全く男と同じ歩き方をしたぞ。」と言いました。ライオンは「娘たちは試されると知っていて、足に力があるふりをしたんですよ。いつか控えの間に12台の紡ぎ車を運ばせてください。そうすれば猟師たちは紡ぎ車に寄って行って喜ぶでしょうから。男はだれもそんなことをしませんよね。」と言いました。王様はその話を気に入り、控えの間に12台の紡ぎ車を置かせました。
しかし、猟師たちに好意をもっている例の家来は猟師たちのところへでかけてその計画をばらしました。そうして自分たちだけになると、王女は11人の娘たちに、「自分をしっかり抑えて紡ぎ車を見ないようにするんですよ。」と言いました。次の朝、王様が12人の猟師を呼び寄せたとき、12人は控えの間を通りぬけましたが、一度として紡ぎ車を見ようとしませんでした。それで王様はまたライオンに言いました。「お前はわしをだましたな。あの者たちは男だ。紡ぎ車を見なかったからな。」ライオンは、「試されると知っていて、自分を抑えたんですよ。」と言いました。しかし、王様はもうライオンを信じようとしませんでした。
12人の猟師たちはいつも王様の狩りのおともをし、王様はだんだんこの猟師たちを好ましく思うようになりました。さて、あるとき狩りにでかけていると、王様のいいなずけがこちらへやってくるところです、という知らせがきました。本当の花嫁はこれを聞いてとても傷ついて胸が張り裂けそうになり、気を失って倒れました。
王様はお気に入りの猟師に何か起こったと思い、走り寄って助けようとし、猟師の手袋を脱がせました。すると、初めの花嫁にあげた指輪が見えたので顔を覗きこむと、あああの人だ、と分かりました。そうして王様は胸がいっぱいになり、王女にキスしました。そうして王女が目を開けると、「君は僕のものだ、そして僕は君のものだ。世界の誰もそれを変えることはできないよ。」と言いました。王様はもう一人の花嫁に使者を送り、自分にはもう妻となる人がいます、古い皿を見つけたばかりの男には新しい皿が要らないのです、どうかこ自身の国にお戻りになってください、と頼みました。そうして結婚式が挙げられました。ライオンはまた王様のお気に入りになりました。だって、結局は、ライオンは本当のことを言っていたのですから。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

子ウサギのおよめさん

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、キャベツを植えているきれいな庭に住む母親と娘がいました。そして小さなウサギがそこに入り、冬にはキャベツを全部食べてしまいました。それで母親は娘に、「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言いました。
女の子は「シ、シ、ウサギ、あなたはうちのキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。女の子は行きません。
次の日、ウサギはまたやって来てキャベツを食べます。それで母親は娘に「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言います。娘は「シ、シ、ウサギ、あなたはキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。娘は断ります。
三日目、ウサギはまたやって来てキャベツを食べます。それで母親は娘に「庭に行ってウサギを追い払ってね。」と言います。娘は「シ、シ、ウサギ、あなたはキャベツをみんな食べてしまうわ。」とウサギに言います。「おいで、お嬢さん、私の小さなウサギの尻尾に座って私のおうちに一緒においで。」とウサギはいいます。
女の子が小さなウサギの尻尾に座ると、ウサギは遠く離れた自分の小さな家に連れていき、「さあ、緑のキャベツとアワ種を料理して。私は結婚式のお客を呼ぶからね。」と言います。それから結婚式のお客が集まりました。結婚式のお客は誰かって?別の人が話してくれたから教えてあげられるよ。お客はみんなウサギでした。そして花嫁と花婿を結婚させる牧師としてカラスがいました。それから助手として狐がいて、祭壇は虹の下にありました。
しかし、女の子は悲しかったのです。というのはたった1人だったから。小さなウサギが来て「ドアを開けて、ドアを開けて、結婚式のお客は陽気だ。」と言います。花嫁は何も言わず泣きます。小さなウサギは立ち去ります。小さなウサギは戻ってきて、「ふたを外して、ふたを外して、結婚式のお客は待っている。」と言います。すると花嫁は何も言わず、ウサギは立ち去ります。しかし、女の子はわら人形に自分の服を着せ、かき回すしゃもじを持たせ、アワ種の入っているなべのそばに置き、母親のところへ戻ります。小さなウサギはもう一度やって来て、「ふたを外して、ふたを外して、立ち上がって」と言い、人形の頭を叩くので、人形の帽子が落ちます。それで小さなウサギはそれが花嫁じゃないとわかり、立ち去り、悲しみます。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

千匹皮

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、金色の髪の妻がいる王様がいました。お后はとても美しく、この世で同じくらい美しい人はみつかりませんでした。あるとき、お后は病気になって、もうすぐ死ぬにちがいないと感じたので、王様を呼び、「私が死んだあともう一度結婚したいなら、私と同じくらいきれいでない人、私のような金色の髪をしていない人はやめてくださいね。あなたはこのことを約束してくれないといけないわ。」と言いました。王様がそれを約束すると、お后は目を閉じ亡くなりました。
長い間、王様は心がいやされなくて、別の妻をもらうことを考えもしませんでした。ついに相談役たちが、「こうしていられないよ。私たちにお后がいるためには王様はもう一度結婚しなくてはいけない。」と言いました。そうして、亡くなったお后と同じくらい美しい花嫁を探しに、使者がはるばる遠くまで送られました。しかし、世界中どこを探しても誰も見つかりませんでした。また、たとえ見つかったとしても、あのような金色の髪をした人はだれもいなかったでしょう。それで使者たちは手ぶらで帰ってきました。
さて、王様には娘が一人いました。その娘は亡くなった母親と全く同じくらいきれいで、同じ金色の髪をしていました。娘が大きくなったとき、ある日、王様は娘を見て、なにからなにまで娘は亡くなった后に似ているとわかり、急に激しい愛を感じました。それで王様は相談役たちに「私は娘と結婚する。というのは娘は亡くなった妻の生き写しだからだ。そうでなければ妻に似ている花嫁は見つからないからな。」と言いました。相談役たちはそれを聞いてショックを受け、「父親が娘と結婚するのは神様が禁じています。そのような罪からは何も良い結果が生まれません。国も滅びてしまうでしょう。」と言いました。
娘は、父親の決意を知るとさらにいっそう大きなショックを受けましたが、父親の意図を変えたいと願いました。それで父親に「お父様の望みを叶える前に、3枚のドレスが欲しいわ。1枚は太陽のように金色で、一枚は月のように銀色で、1枚は星のようにキラキラしたドレスよ。このほかに1000種類の毛皮が一緒につながったマントが欲しいわ。それでお父様の国にいる動物全部の種類から皮を必ず1つは使わなくてはいけないわ。」と言いました。というのは娘は(それを手に入れるのはとても難しいわ。こうして私はお父様の悪い目的を変えられるでしょう。)と思ったからでした。ところが、王様はあきらめずに国の最も賢い娘たちに3枚のドレス、1枚は太陽のように金色で、一枚は月のように銀色で、1枚は星のようにキラキラしたドレス、を織らせ、猟師たちに国中の動物の全ての種類をつかまえさせ、皮1枚をとらせ、これらから1000種の違った種類の毛皮のマントが作られました。とうとう、全部の準備ができると王様はマントを持ってこさせ、娘の前で広げ、「結婚式は明日にしよう」と言いました。
それで、王様の娘は、もう父親の心を変える望みがないとわかって、逃げる決意をしました。みんなが眠っている夜に、娘は起きて、自分の宝物から3種類の違うもの、金の指輪、金の紡ぎ車と金の糸巻き、をとりました。太陽、月、星の3枚のドレスはクルミの殻にしまって、あらゆる種類の毛皮のマントを着て、顔と手をすすで真っ黒にしました。それから神様に身を委ねて出ていき、一晩じゅう歩いて大きな森に着きました。そして疲れていたので、木のうろに入り眠りました。
太陽が昇っても娘は眠り続けていました。すっかり日中になってもまだ眠っていました。すると、たまたまこの森の持ち主である王様が森で狩りをしていました。犬たちがその木にくると、くんくんにおいをかぎ、木の周りを走って吠えました。王様は猟師に、「そこにどんなけものが隠れているか見てこい」と言いました。
猟師は命令に従い、そして戻ってくると、「不思議なけものが木のうろに寝ています。あんなのはこれまで見たことがありません。その皮が1000の違う種類の毛です。だけど、眠っていますよ。」と言いました。王様は「そのけものを生きたまま捕まえられるか確かめろ。それから馬車につなげ。一緒に連れて行くのだ。」と言いました。猟師たちが娘をつかむと、娘はとても驚いて目を覚まし、猟師たちに「 私は父母に見捨てられた可哀そうな子供です。私を哀れに思って一緒に連れていってください。」と叫びました。それで猟師たちは、「千匹皮、お前は台所で役に立つだろう。一緒に来なさい。灰も掃くことができるだろう。」と言いました。それで娘を馬車に乗せ、王宮に連れて帰りました。そこでは娘に階段の下の日光がまるで入ってこない小部屋をさして、「毛深い動物よ、お前はここに住み眠るがよい。」と言いました。それから娘は台所に連れていかれ、そこでたきぎや水を運び、かまどを掃き、トリの羽をむしり、野菜を摘み、灰をかき出し、汚れ仕事をすべてやりました。
千匹皮は長い間そこでとても惨めに暮らしました。ああ、きれいな王女様、あなたはこれからどうなるのでしょう。しかし、ある日、宮殿で宴会が開かれ、娘はコックに、「ちょっと上へ行ってみてきていいですか?戸の外にいますから。」と言いました。コックは「いいよ、行けよ。だけどかまどの掃除に30分でここに戻ってこなくちゃいけないぞ。」と答えました。
それで娘はランプを持って自分の小部屋へ行き、毛皮のドレスを脱いで、顔と手からすすを洗い落としました。それで美しい姿がもう一度あまさず現れ出ました。それからクルミの殻を開け、太陽のようにかがやくドレスを取り出しました。それが終わると、娘は宴会へ上がっていきました。みんなが娘のために道をあけました、というのは誰も娘を知らなくて、とある王様の娘にちがいない、と思っていたからです。王様は娘を出迎えて、手をさしのべ、一緒に踊り、心の中で(こんなに美しい人は一度も見たことがない)と思いました。踊りが終わると、娘はお辞儀をしました。そして王様がもう一度見まわしたときは娘は消えてしまっていました。そしてだれもどこへ行ったかわかりませんでした。宮殿の外にたっていた番兵が呼ばれ、問いただされましたが、誰も娘を見ていませんでした。
しかし娘は小部屋に駆け込み、そこで素早くドレスを脱ぎ、顔と手をまた黒くし、毛皮のマントをきて、再び千匹皮になりました。そうして台所へ入り、仕事にとりかかって灰をかきあつめようとしたとき、コックが「それは朝までほっといて、おれのかわりに王様のスープを作ってくれ。おれもちょっと上に行って、見てくるよ。だけど、髪の毛を入れるなよ。さもないとこれからお前はおまんまの食い上げになるからな。」と言いました。それでコックは行ってしまい、千匹皮は王様のスープを作り、娘のできる最高のパンスープを作りました。用意ができると、小部屋から金の指輪をとってきて、スープを入れた深皿の中に入れました。踊りが終わると、王様はスープをもってこさせて飲みました。そしてそのスープがとてもおいしく、王様にはこんなにおいしいのは味わったことがないように思われました。しかし深皿の底まで飲むと、金の指輪が入っているのが見えました。そしてどうしてそれが入ったのかわかりませんでした。それで、王様はコックにくるように命じました。コックは命令を聞くとびっくりして、千匹皮に「お前はスープに髪の毛を落としたに違いない。もしそうなら、ぶんなぐってやるぞ。」と言いました。
コックが王様の前に出ると、王様は「誰がスープを作ったのだ?」と尋ねました。コックは「私が作りました。」と答えましたが、王様は「それは本当ではない。というのはいつもよりずっとうまいからな。それに作り方が違うぞ。」と言いました。コックは「白状します、私は作りませんでした。あれは千匹皮が作りました。」と答えました。王様は「千匹皮をここによこせ。」と言いました。
千匹皮が来ると、王様は「お前は誰だ?」と言いました。「私はもう父も母もいない哀れな子どもです。」王様はさらに「この宮廷でお前の仕事は何だ?」と尋ねました。娘は「私はせいぜい頭に長靴を投げられるだけで何の役にもたちません。」と答えました。王様は「スープの中にあった指輪をどこで手に入れたのだ?」と続けてききましたが、娘は「指輪のことは何も知りません。」と答えました。それで王様は何も知ることができなくて、娘を戻すしかありませんでした。
しばらくして、また宴会がありました。それで、前と同じように、千匹皮はコックに、見に行かせてくれるように頼みました。コックは「いいよ、だけどまた30分で戻ってきて、王様にパンスープを作れ。とてもお気に召してるからな。」と答えました。それで自分の小部屋に走りこみ、素早く体を洗い、小箱から月と同じ銀色の服を出し、着ました。そうして娘は上がって行くと、王女様のように見えました。そして王様は娘を出迎えるため歩いてきて、娘にまた会えて喜びました。踊りがちょうど始まっていたので、二人は一緒に踊りました。しかし、踊りが終わると、娘はまたしてもとても素早く消えたので、王様は娘がどこへ行ったのか見ることができませんでした。ところが、娘は自分の小部屋に跳びこんで、もう一度千匹皮になり、パンスープを用意するため台所に入りました。コックが上に行ってしまったとき、娘は小さな金の紡ぎ車をとってきて、スープで見えなくなるように深皿に入れました。それからスープは王様に運ばれ、王様はスープを飲むと、前と同じくおいしかったので、コックを呼ばせました。コックは今度も同じように千匹皮がスープを作ったと白状させられました。千匹皮はまたしても王様の前に来ましたが、自分は長靴を頭に投げられるくらいで何の役にもたたない、小さな金の紡ぎ車のことは全く何も知りません、と答えました。
王様が三度目に宴会を開いたとき、前と同じことになりました。コックは、「千匹皮、お前は魔女だ。王様がおれの作ったものよりお気に召すようにいつもスープになにか入れて、うまいスープにするんだからな。」と言いました。しかし、娘が必死に頼むので、コックは決めた時間に上に行かせてくれました。そうして娘は星のように輝くドレスを着て、広間へ入って行きました。またしても王様は美しい乙女と踊り、(この娘がこれほど美しいことは今までなかったなあ)と思いました。
そして娘が踊っている間に、王様は娘に気付かれないで、娘の指に金の指輪をすっとはめました。そして踊りがとても長い時間つづくようにと命令をだしておいたのです。踊りが終わると、王様は娘の手をしっかり握っていようとしましたが、娘はふりほどいて、人混みの中にとても素早く駆け去ったので王様から見えなくなってしまいました。娘はできるだけ速く走って階段の下の小部屋に入りましたが、あまり長くかかり、30分以上広間にいたので、きれいなドレスを脱ぐ時間がなくなって、ドレスの上に毛皮のマントをかけだだけでした。また急いでいるのですっかり黒く塗らなくて指が1本白いままになりました。それから千匹皮は台所に駆け込んで、王様のためにパンスープを作り、コックがいなかったので、その中に金の糸巻きを入れました。
王様はスープの底に糸巻きを見つけると、千匹皮を呼ばせました。そのとき、白い指が見えて、踊っている間にその指にはめた指輪が見えました。それで王様が娘の手をつかみしっかりおさえると、娘は引き離して逃げようとしたので、毛皮のマントが少し開き、星のドレスが輝いて見えました。王様はマントを握ってひきはがしました。それで娘が顔からすすと灰を洗い落とすと、この世で見た誰よりも美しくなりました。王様は「お前は私の花嫁だ。私たちはこれから決して離れ離れになるまい。」と言いました。そうして結婚式が行われ、二人は死ぬまで幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

黄金のがちょう

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

三人の息子がいる男がいました。末っ子はアホッコと呼ばれて、事あるごとにさげすまれ、からかわれ、あざ笑われました。
さて、一番上の息子が森へ木を切りにいこうとして、出かける前におなかがすいたり喉がかわいたりしないようにと母親がきれいな甘いケーキと葡萄酒をひと瓶持たせました。
森へ入ると、白髪の年とった小人に会いました。小人は「こんにちは、ポケットからケーキをひとつくれませんか?それから葡萄酒を一口飲ませてください。私はとてもおなかがすいて喉が渇いているのです。」と言いました。しかし、賢い息子は「もしお前にケーキと葡萄酒をあげたら、私のがなくなるじゃないか、あっちへ行けよ」と答えて、小人を残して、行ってしまいました。
しかし、木を切り倒し始めるとまもなく手元が狂って、腕が斧で切れ、家へ帰って包帯をしなければいけなくなりました。これは白髪の小人がやったことでした。
このあと、二番目の息子が森へ入りました。そして、母親は一番上の息子と同じように、ケーキと葡萄酒をあげました。白髪の小人が同じように息子に会い、ケーキを一切れと葡萄酒を一口頼みました。しかし二番目の息子も十分賢く、「お前にあげたら自分のがなくなるよ。あっちへ行け。」と言って、小人をおいて行ってしまいました。ところが罰が遅れないでくだって、木を2,3回打つと、斧は脚にあたり、家に連れ帰ってもらわなければなりませんでした。
それでアホッコは、「お父さん、木を切りに僕を行かせて。」と言いました。父親は「お前の兄たちはそれで怪我をしたんだぞ。お前は手をだすな。お前は木こりのことを何も知らないんだよ。」と答えました。しかし、アホッコがいつまでも頼むので、とうとう「じゃあ行きな。怪我をしたらもう少し賢くなるだろうよ。」と父親は言いました。母親は水で作り灰で焼いたケーキと、酸っぱいビールをひと瓶もたせました。
森へ着くと、白髪の年とった小人が同じように会って、挨拶すると、「ケーキを一切れと瓶から一口ください。私はとてもおなかがすいて喉が渇いているのです。」と言いました。
アホッコは、「灰のケーキと酸っぱいビールしかないが、それでよかったら、一緒に座って食べましょう。」と答えました。それで二人は座り、アホッコが灰のケーキを引っ張りだすとそれは素敵な甘いケーキになり、酸っぱいビールは上等の葡萄酒になっていました。それで二人は飲んで食べました。そのあと、小人は、「お前はやさしい心をもっていて、持っているものを喜んで分けるから、幸運をあげよう。あそこに古い木があるが、それを切ってごらん。そうすれば根のところに何か見つかるよ。」と言いました。それから小人は別れていきました。
アホッコは、行ってその木を切りました。そして木が倒れると、純金の羽をしたがちょうが根の中に座っていました。アホッコは、がちょうを持ち上げ、一緒に持って行き、その晩泊ろうと思った宿屋に行きました。さて、宿の主人には三人の娘がいましたが、そのがちょうを見てそんな素晴らしい鳥は何だろうと知りたく、また金の羽根の一枚を欲しいと思いました。
一番上の娘は「すぐ羽根を一枚引き抜く機会が見つかるわ」と思い、アホッコが外出するとすぐがちょうの翼を掴みました。しかし、指と手ががちょうにぴったりくっついたままになりました。
二番目の娘がすぐ後で来て、どのようにして自分の羽根を手に入れるかばかり考えていましたが、姉に触れた途端、ぴったりくっついてしまいました。
とうとう三番目の娘も同じ目的でやってくると、他の二人が「離れていて、お願いだから、離れて!」と叫びましたが、なぜ離れていなければいけないのかわかりませんでした。
「他の二人がそこにいるんだから、私もいた方がいいわ。」と考え、二人に駆け寄りました。しかし姉にふれるとすぐ、しっかりくっついたままになりました。それで、三人はがちょうと一緒に夜を過ごさなければなりませんでした。
次の朝、アホッコはがちょうを脇の下に抱え、がちょうにぶら下がっている三人の娘のことは気にしないで、出発しました。それで、娘たちは、アホッコの脚が向くまま、はい左、はい右、とずっとアホッコを追いかけるしかありませんでした。
野原の真ん中で牧師と会いました。牧師はこの行列を見ると、「恥知らずな、このろくでなし娘たちめ、どうしてお前たちはこの若い男を追いかけて野原を走り回っているんだ?礼儀にかなったことか?」と言い、同時に引き離すために手で一番下の娘を掴みました。しかし、牧師は娘に触れるとすぐ、これもまたぴったりくっついてしまい、自分も後ろから走るしかありませんでした。
まもなく寺男が通りがかり、主人の牧師が三人の娘のあとを走っているのを見ました。これを見て驚いて、「ねえ、牧師さん、そんなに急いでどこへ行くんですか―?今日は洗礼があるのを忘れないでくださいよ。」と叫びました。そしてあとを追いかけて、牧師の袖をとりましたが、寺男もまたしっかりくっついてしまいました。五人がこんなふうに次々とつながってとことこ走っている間に、二人の農夫がくわをもって畑からきました。牧師は農夫に叫んで、自分と寺男を離してくれと頼みました。しかし、農夫たちが寺男に触れた途端、ぴったりくっつき、今度はアホッコとがちょうのうしろを走るのが七人になりました。
その後まもなく、アホッコはある町にやってきました。そこでは、あまりにきまじめで誰も笑わせることができない娘がいる王様が治めていました。それで王様は娘を笑わせることができた者は娘と結婚してよいというおふれを出していました。アホッコがこれを聞いて、がちょうとがちょうにつながった行列と一緒に王様の娘の前に行きました。王女さまは、七人が次々とつながってどんどん走っているのを見ると、すっかり大きな声で笑い始め、笑い止まないのではないかと思うくらい笑い続けました。
それでアホッコは娘を妻に欲しいと申し出ましたが、王様はこの婿が気にいらず、さまざまな言い訳をして、「お前はまず地下貯蔵庫いっぱいの葡萄酒を飲める男を出してこなければならない。」と言いました。
アホッコは、きっと自分を助けることができる白髪の小人のことを思い、森へ入って行きました。すると自分が木を切り倒した同じ場所に、一人の男が座っているのが見えましたが、とても悲しい顔をしていました。アホッコが「何をそんなにひどく考えているんだい?」と尋ねると、男は「とても喉が渇いてたまらないんだ。冷たい水は我慢できないし、一樽の葡萄酒はいま飲んでしまったばかりで、それも私には焼け石に水でしかないよ。」と答えました。
「それそれ!手伝えるよ。僕と一緒にきてくれ、そうしたら満足するよ。」とアホッコは言いました。アホッコが男を王様の地下貯蔵庫に連れていくと、男はとても大きな樽の上にかがみ、わき腹が痛くなるほど飲みに飲んで、その日が終わらないうちに樽全部をカラにしてしまいました。それで、アホッコはもう一度花嫁を欲しいと求めましたが、王様は、みんながアホッコと呼ぶこんなみっともないやつが、娘をさらっていくとは悔しくて、新しい条件を出しました。つまり、パンをひと山まるまる食べることのできる男を見つけなければいけない、というのでした。アホッコは長く考えていないで、まっすぐ森へ入って行きました。森の同じ場所に、体を革紐で縛り上げて、すさまじい顔をしている男がいて、「ひと釜分まるまるロールパンを食べたんだが、おれみたいに腹が減っていてはそれが何の役に立つんだ。腹はからっぽのままだ。それで飢え死にしたくないなら自分を縛りあげなくてはならん。」と言いました。
これを聞いてアホッコは喜び、「立って一緒に来てくれ。腹いっぱい食わしてやるよ。」と言いました。アホッコは男を王様の宮殿に連れていくと、王国中の小麦粉がみんな集められ、大きなパンの山が焼かれました。森から来た男はその前に立ち、食べ始め、一日の終わりまでには山がまるまる消えてしまいました。それでアホッコは花嫁が欲しいと3回目求めました。しかし王様はまた逃げ道を探し、陸の上と水の上を航海できる船を注文しました。そして「その船でもどってきたらすぐ、娘を妻にあげよう。」と言いました。
アホッコはまっすぐ森へ入って行くと、前にケーキをあげた白髪の小人が座っていました。アホッコの欲しいものを聞くと、小人は「お前が食べ物と飲み物をくれたから、その船をやろう。こうするのはおまえがかつて私に親切だったからだよ。」と言いました。それから小人は陸と水を航海できる船をくれました。王様はそれを見たとき、もう娘をやらないわけにはいきませんでした。結婚式が行われ、王様が死んだあと、アホッコは王国を受け継いで長い間妻と一緒に幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

三枚の鳥の羽

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔息子が三人いる王様がいました。息子の二人は利口で賢かったのですが、三番目の息子はあまり喋らず、間が抜けていたので抜け作と呼ばれていました。王様は年とって体が弱くなり、死ぬ時のことを考えていると、どの息子にあとを継がせたらよいのかわかりませんでした。それで、三人に、「出かけていって、一番美しいじゅうたんを持ち帰った者をわしが死んだあと王様とするぞ。」と言いました。
そして三人の間で争いがあってはいけないので、王様は城の外に三人を連れていき、三枚の羽根を空中に吹き飛ばして、「飛んでいく方に行け。」と言いました。一枚の羽根は東に、もう一枚は西に飛んでいきましたが、三枚目はまっすぐ上に飛んで遠くへ行かず、まもなく地面に落ちました。
そうして一人の兄は右へ、もう一人の兄は左へ行き、二人は、三番目の羽根が落ちたところにいるしかなくなった抜け作をあざ笑いました。抜け作は座りこんでしょげていました。するとふいに、羽根のすぐそばに揚げ戸があるのに気づきました。その戸を上げると、階段がいくつかあり、抜け作は降りていきました。するとまた戸があったので、それをたたくと、中で誰かが呼んでるのが聞こえました。「小さな緑の女中や、跳ね脚の女中や、跳ね脚の小犬や、ぴょんぴょん跳ねて、誰がいるか見ておいで」
戸が開くと、大きな太ったヒキガエルが座っていて、周りに小さなひきがえるがたくさんいるのが見えました。太ったひきがえるが、何が欲しいの?と聞きました。抜け作は、「世界で一番きれいで一番上等なじゅうたんが欲しいんだ」と答えました。すると、そのひきがえるが、若いひきがえるを呼んで、「小さな緑の女中や、跳ね脚の女中や、跳ね脚の小犬や、ぴょんぴょん跳ねて、大きな箱をもっといで」と言いました。
若いひきがえるが箱を持って来て、太ったひきがえるが開け、そこからじゅうたんを出して抜け作に渡しました。そのじゅうたんはとても美しくとても上等で地上でそのように織られたものは他にありませんでした。そこで抜け作は礼を言ってまた階段を登って外へ出ました。
ところが、二人の兄たちは末の弟を、あんな間抜けがじゅうたんを探してもってくるわけがない、と思っていました。それで、「骨折って探しまわるなんて必要ないよ」と二人は言って、出会った最初の羊飼いのおかみさんから目の粗いハンカチをとって、それを王様のところへ持って帰りました。
同じ時期に抜け作も戻ってきて、美しいじゅうたんを持って行きました。王様はそれを見て驚き、「決定を言うと、国は末の息子のものだ。」と言いました。しかし、二人の兄たちは王様に、抜け作は何にしてもよくわからないんだから王様になるのは無理だよ、とうるさく言って、どうか新しい取り決めをしてください、と願いました。
そこで王様は、「一番美しい指輪を持ってきた者に王国を継がせよう」と言って、三人の兄弟を外に出し、三枚の羽根を空中に吹いて、三人に羽根のあとを追わせました。二人の兄たちの羽根はまた東と西に行きましたが、抜け作の羽根はまっすぐ上に飛んで地中へ行く戸の近くに落ちました。
それで抜け作はまた階段を降りて太ったひきがえるのところに行き、一番美しい指輪が欲しいんだ、と言いました。ひきがえるはすぐに大きな箱を持ってくるように命じて、そこから指輪をとって抜け作に渡しました。その指輪は宝石できらきら光り、この世の金細工師が作れないほど美しいものでした。
二人の兄たちは、抜け作が金の指輪を探しに行くんだとよ、と言って笑いました。二人は全然手間をかけないで、古い馬車の輪から釘を抜いたものを王様に持って行きました。しかし、抜け作が金の指輪を差し出すと、父親は今度も、「王国は末の息子のものだ。」と言いました。二人の兄たちが王様をうるさくせっついてやまないので、王様はとうとう三つ目の条件を出し、「一番美しい娘を連れてきたものに国をやることにする」と言いました。そうしてまた三枚の羽根を空中に吹き、羽根は前と同じように飛びました。
それで抜け作は考え込むことなく太ったひきがえるのところに下りていき、「一番きれいな娘を連れて行かなくちゃならないんだ」と言いました。「なんと」とひきがえるは答えました。「一番きれいな娘ねぇ。今すぐには無いんだけど、でも手に入れてあげましょう。」ひきがえるは、くりぬいてある黄色のかぶに六匹のねずみをとりつけ、抜け作に渡しました。
それで抜け作はすっかり情けなくなって「これをどうしたらいいんだ?」と言いました。ヒキガエルは「いいから、私の小さなひきがえるをその中に入れるのよ。」と答えました。それで抜け作は群れの中から適当に一匹つかんで黄色の馬車に入れました。ところがそのひきがえるが中で座った途端に驚くほどに美しい乙女に変わり、かぶは馬車に、六匹のねずみは馬に変わりました。それで抜け作は乙女にキスをし、馬で速く走って王様のところへ娘を連れていきました。
兄たちはあとからやってきましたが、骨を折って美しい娘をさがしまわったりしないで、たまたま出会った最初のお百姓の娘を連れてきました。王様はその娘たちを見て、「わしが死んだあとは国は末の息子のものだ」と言いました。しかし、二人の兄たちは、王様が耳をふさぎたいくらいまたまた騒ぎ立て、「抜け作が王様になるのは納得できません、広間の真ん中にかかっている輪を跳ねて通り抜けた娘の夫を跡継ぎにしてください」と言いました。二人は、(百姓娘は簡単にできるさ、なんせ丈夫だからな、だけどかぼそい乙女は死ぬために跳ぶようなもんだ)と思ったのです。
年とった王様はこれをもまた承知しました。そこで二人の百姓娘は跳びはねました。そして輪は潜り抜けたものの不器用で転び、ごつごつした手足を折りました。そうして、抜け作が連れてきたかわいい乙女が跳ね、鹿のように軽やかに輪を潜り抜けました。それでもう兄たちの反対の声がすっかり止みました。こうして抜け作は王様の冠を受け取り、長い間賢く国を治めました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

蜜蜂の女王

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

二人の王様の息子が冒険を求めて出かけましたが、すさんだだらしのない生活にはまってしまったので戻って来ませんでした。末の息子は、抜け作と呼ばれていましたが、兄たちを探しにでかけました。しかしやっと見つけると、兄たちは、ずっと賢いおれたちでもやって行けないのに、このおめでたい弟が世の中を渡れると思ってるとはちゃんちゃらおかしい、とばかり嘲り笑いました。
三人は一緒に旅をしていくと、蟻の巣がありました。すると二人の兄は、これを壊そうぜ、小さなアリのやつら、慌てふためいてうろうろ卵を運んでいくだろうよ、と言いました。しかし抜け作は、「ほっといてやってくれよ、兄さんたちがありの邪魔をするのを黙ってみてられないよ。」と言いました。それから進んでいくと湖にでました。そこにはたくさんのカモが泳いでいました。二人の兄は二、三羽捕まえて焼き肉にしようとしました。しかし抜け作はそれを許そうとしないで、「ほっといてやってくれ。兄さんたちがカモを殺すのは我慢できないよ。」と言いました。
やがて蜂の巣のところにさしかかりました。そこではたくさん蜂蜜があって巣がついている木の幹から垂れていました。二人の兄は、木の下で火を燃やし蜂の息をとめよう、そうして蜂蜜をとろうぜ、と言いました。しかし抜け作はまた二人を止め、「ほっといてやれよ、兄さんたちが蜂を焼くのは黙って見てられないよ」と言いました。
とうとう三人の兄弟は、城にたどりつきました。その城はどの馬小屋にも石の馬が立っていて人が一人も見えませんでした。広間を全部通り抜けていくとやがて端のところで一つの戸のところにきました。その戸には3つの錠がかかっていましたが、戸の真ん中に小さな窓があり、部屋の中を覗き込むことができました。そこには白髪の小人が見え、食卓についていました。三人はその小人を、一回、二回と呼びましたが、男には聞こえませんでした。三回目に呼んだときとうとう、小人は立ち上がり、錠をはずして出てきました。ところが小人は何も言わず、たくさんご馳走が並んだ食卓に案内し、三人が飲んで食べてしまうと、それぞれを寝室に連れて行きました。
次の朝、白髪の小人は一番上の兄のところに来て手招きし、石のテーブルに案内しました。そのテーブルの上に、三つの課題が書いてあり、それを成し遂げると城の魔法が解けるとありました。
最初の課題は、森の苔の下に王女の真珠が数にして千個あるが、それを拾わなくてはならない、日が沈むまでに一個でも足りなければ探しに行った者は石に変えられる、というものでした。一番上の兄はそこへ行って一日中探しましたが、その日の終わりには百個しか見つけられず、テーブルに書かれてあったことが現実になり石に変えられました。次の日、二番目の兄がその冒険に取り組みましたが、上の兄と同じことになりました。二百個以上見つけられず石に変えられてしまいました。 とうとう苔の中を探すのが抜け作の番になりました。しかし真珠を探すのはとても難しく、まるではかどりませんでした。それで抜け作は石に座り泣きだしました。こうして座っていると、抜け作が前に助けた蟻たちの王さまが五千匹の蟻をひきつれてやってきました。そしてまもなくこの小さな生き物たちは真珠を全部集めて山にしました。
ところが二番目の課題は湖から王さまの娘の寝室の鍵をとってくることでした。抜け作が湖にくると、助けてやったカモたちが抜け作のところに泳いできて、下にもぐると水から鍵をもってきました。
しかし、三番目の課題は一番難しいものでした。王様の眠っている三人の王女の中から一番末の、一番かわいい王女を探しだすことでした。ところが、三人は全くそっくりで、違いと言えば、眠る前に食べた三種類の甘いものでしかなく、一番上の王女は砂糖をひとかけら、二番目はシロップを少し、一番下は蜂蜜をひとさじ、口にしたということでした。
すると、抜け作が火から守ってやった蜂たちの女王がやってきて、三人の王女の唇を舐め、最後に、蜂蜜を食べた口にとまりました。こうして王さまの息子は、その王女当人を見分けることができました。すると魔法がとけ、あらゆるものが眠りから覚めて、石に変えられていた人たちがまた元通りの姿に戻りました。
抜け作は末の一番かわいい王女と結婚し、王女の父親が死んだあと、王様になりました。二人の兄たちは二人の姉たちと結婚しました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

水呑百姓

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

ある村に、本当に金持ちのお百姓だけが住んでいて、ただ一人だけ貧しいお百姓が住んでいました。このお百姓をみんなは小百姓と呼びました。小百姓には雌牛が一頭もいなくて、雌牛を買うお金はなおさらありませんでしたが、小百姓とおかみさんはとても欲しがっていました。ある日、小百姓はおかみさんに言いました。「なあ、いい考えがあるんだ。おれたちの名付け親の指物師がいるだろ。あの人に木の子牛を作ってもらい、他の牛と同じにみえるように茶色に塗ってもらうんだ。そのうちきっと大きくなって雌牛になるよ。」おかみさんもその考えが気に入りました。それで名付け親の指物師は子牛の形に切ってかんなをかけ茶色に塗り、草を食べているように頭を垂れて作りました。
次の朝、雌牛が連れ出されているとき、小百姓は牛飼いを呼びとめて、「なあ、おれにも小さい子牛が一頭あるんだが、まだ小さくて抱いていかなくちゃならないんだ。」と言いました。牛飼いは「いいですよ」と言って子牛を両腕にかかえ、牧草地へ運び、草の中におきました。小さな子牛は食べている牛のようにずっと立ったままでした。それで牛飼いは、「あいつはすぐに自分で走るぞ。見ろよ、もうあんなに食べるんだからな。」と言いました。夜に群れを帰らせるとき、牛飼いは子牛に「そこに立って腹いっぱい食えるんだから、自分の四本足で歩けるよな。おれはまたお前を抱えて帰りたくないよ。」と言いました。
しかし、小百姓は戸口に立って小さな子牛を待っていました。牛飼いが牛たちを追って村を通り抜けたとき、子牛が見当たらないので、小百姓は、うちの子牛はどこだい?と尋ねました。牛飼いは、「まだあそこで食いながら立っていますよ。食うのを止めて帰ろうとしないんです。」と言いました。しかし小百姓は言いました。「なんとまあ、だが、おれの子牛は戻してもらわなくちゃだめだ」そこで二人は牧草地に一緒に出かけましたが、誰かが子牛を盗んでしまっていて、子牛はいませんでした。牛飼いは、「逃げてしまったに違いない」と言いました。しかし小百姓は、「そうは言わせないぞ」と言って、牛飼いを村長の前へ連れていきました。村長は、牛飼いが不注意で子牛を失くしたのだから、逃げた子牛の代わりに雌牛を小百姓にやりなさい、と言いました。
そうして小百姓とおかみさんはずうっと欲しがっていた雌牛を手に入れ、心から喜びました。ところが二人にはえさがなくて雌牛に何も食わせることができませんでした。それでじきに雌牛を殺さなくてはなりませんでした。二人はその肉を塩漬けにし、小百姓は町へ行って皮を売ろうとしました。その受取金で新しい子牛を買おうとしたのです。
途中で水車小屋のそばを通りかかると、翼の折れたカラスがいました。かわいそうに思って、小百姓はそのカラスを拾って皮に包みました。ところが、天気が悪くなり雨風の嵐になったのでもう先へ進めなくなり、水車小屋まで戻って、泊めてくれないかと頼みました。家には粉屋のおかみさんが一人でいて、小百姓に、「そこのわらに寝なさい」と言って、一切れのパンとチーズを渡しました。小百姓はそれを食べ、皮をそはにおいて横になりました。おかみさんは、(あの人、疲れて眠っちゃったわ)と思いました。そのうちに牧師がやってきました。粉屋のおかみさんは喜んで迎えて、「うちの亭主はでかけているわ。だから私たちでご馳走を食べましょう。」と言いました。小百姓は耳をそばだてました。そして二人がご馳走の話をしているのを聞くと、自分は一切れのパンとチーズで間に合わせられたことに腹を立てました。
おかみさんは、焼肉、サラダ、ケーキ、ワインの4つをテーブルに出しました。二人が座って、さあ食べようというときに、外で戸をたたく音がしました。おかみさんは、「あっ、どうしよう、うちの亭主だ。」と言って、焼肉をタイル張りの暖炉へ、ワインを枕の下へ、サラダをベッドの上へ、ケーキをベッドの下へ、牧師を玄関の戸棚へ、急いで隠しました。それから亭主に戸を開けてやり、「よかったわ、あなたが戻ってきて。ひどい嵐ね。まるで世界が終わりになるみたい。」と言いました。粉屋は小百姓がわらにねているのを見て、「あそこでやつは何をしてるんだ?」と尋ねました。「ああ」とおかみさんは言いました。「あの人は、かわいそうに、嵐と雨の中をやってきて、泊めてくれと言ったのよ。だからパンとチーズをあげて、わらがあるところを教えたの。」
亭主は、「おれは別に構わないよ。だけど早く何か食べ物をくれ。」と言いました。おかみさんは、「だけどパンとチーズしかないわ。」と言いました。「何だっていいよ」と亭主は答えました。「おれだったら、パンとチーズでいいよ。」それから小百姓を見て、「こっちへ来て、おれと一緒にもっと食わないか」と言いました。小百姓は二回言われるまでもなく起きあがって食べました。食べたあと、粉屋は、地面にカラスが入っている皮があるのに目をとめて、「あれには何が入ってるんだ?」と尋ねました。小百姓は、「その中に占い師がいるんだ。」と答えました。「何かおれに占ってもらえないか?」と粉屋は言いました。「いいとも」と小百姓は答えました。「だけど、四つのことしか言わなくて、五つ目は言わないんだ。」粉屋は知りたがって、「一度占わせてみてくれ」と言いました。
そこで小百姓がカラスの頭をつまむと、カラスはクルル、クルルというような鳴き声をあげました。「何て言った?」と粉屋が言いました。「先ずはじめに、枕の下にワインが隠されていると言ってるぞ。」と小百姓は言いました。「なんと!」と粉屋は叫び、そこへ行くとワインがありました。「さあ続けてくれ」と粉屋は言いました。小百姓はカラスをまた鳴かせて、「二番目には、タイル張りの暖炉の中に焼肉があるってさ。」と言いました。「これはこれは!」と粉屋は叫び、そこへ行って焼き肉を見つけました。
小百姓はカラスにまだもっと占わせて、「三番目に、ベッドの上にサラダがあるそうだ。」と言いました。「そうならいいんだがね」と粉屋は叫び、そこへ行くとサラダがありました。しまいに小百姓はカラスをもう一回つまんで鳴かせ、「四番目に、ベッドの下にケーキがあるって言ってるぞ。」と言いました。「そうならいいんだがね」と粉屋は叫び、そこを見るとケーキがありました。そうして二人は一緒にテーブルに座りましたが、粉屋のおかみさんは死ぬほどこわくなり、ベッドに行くと全部の鍵をとりました。
粉屋は五番目をとても知りたがりましたが、小百姓は、「まず先に早くこの四つを食べよう。五つ目は悪いものだからな。」と言いました。そこで二人は食べました。そのあと、二人は、五番目の占いに粉屋がいくら出せばよいか取引して、とうとう300ターラーで合意になりました。それから小百姓はカラスの頭をもう一回つまむと、カラスは大声で鳴きました。「何て言った?」と粉屋は尋ねました。「部屋の外の玄関の戸棚に悪魔が隠れているってことだぜ。」と小百姓は答えました。「悪魔は出て行かねばならん」と粉屋は言って、玄関の戸を開けました。
それでおかみさんは鍵束を渡すしかありませんでした。小百姓が戸棚の錠をはずしました。牧師は外へとび出て、一目散に走っていきました。粉屋は「本当だ。おれはこの目で黒いやつをみたぞ。」と言いました。ところで、小百姓は次の朝夜明け前に300ターラーを持ってこっそりずらかりました。家に着くと、小百姓はだんだん始め、きれいな家を建てました。するとお百姓たちは、「小百姓はきっと金の雪が降って、シャベルで何回もすくって金を持ち帰れるところに行ってきたにちがいないぞ。」と言いました。それで小百姓は村長の前に連れて行かれ、財産をどこから手に入れたのか言うように命じられました。小百姓は、「町で雌牛の皮を売ったんです、300ターラーでね。」と答えました。
お百姓たちはそれを聞いて、自分もこの大もうけをしたいと思って、走って家に帰り、雌牛を全部殺して、町でうんと得をして売るために皮を剥ぎました。ところが、村長は、「だけど、うちの召使が先に行かなくちゃならん。」と言いました。召使が町の商人のところに来ると、皮一枚にニターラーより多くはくれませんでした。そして、他の人たちにはそれだけもくれないばかりか、「こんなにたくさんの皮をどうしろっていうんだ?」と言いました。
すると、百姓たちは、小百姓にしてやられたことに腹を立て、仕返しをしようと思い、村長にこのことを訴え出ました。無実の小百姓は全員一致で死刑を言い渡され、穴をいっぱい空けた樽にいれ、川に転がり落とされることになりました。小百姓は引き出され、牧師がつれてこられて小百姓に最期のミサを行うことになりました。他の人たちはみんな遠くにさがらなければなりませんでした。そして小百姓は牧師を見て、粉屋のおかみさんといっしょにいた男だとわかりました。小百姓は牧師に、「おれはお前を戸棚から救い出してやった。今度はおれを樽から救ってくれ」と言いました。
ちょうどこの時に、羊の群れと一緒に来たのは、ずっと前から村長になりたがっていると小百姓が知っている羊飼いでした。そこで小百姓は、ありったけの声を出して叫びました。「嫌だ、そんなことはしないぞ。全世界がやれと言っても絶対やらないぞ。」
羊飼いはそれを聞いて近づいてくると、「どうしようとしてるんだ?何をやらないって?」と尋ねました。小百姓は、「その樽に入りさえすればおれを村長にするってんだ。だけどおれはそんなことをしないぞ。」と言いました。羊飼いは、「村長になるのにたったそれだけでいいんなら、おれはすぐに樽に入るよ。」と言いました。小百姓は、「あんたが入る気なら、あんたが村長になる。」と言いました。羊飼いは承知して、入りました。そして小百姓は上からふたを打ちつけました。
そうして小百姓は羊飼いの羊の群れを自分のものにして追いたてて去りました。牧師は人々のところへいき、ミサは終わったと言いました。そこで人々がやってきて樽を川の方に転がして行きました。樽が転がり出すと、羊飼いは「おれは村長にとてもなりたいんだ」と叫びました。人々は、そう言っているのは小百姓に他ならないと思いこんで、答えました。「おれたちもそう思っているよ。だけどまず下の世界におりて少し見て回ってこさせるぜ。」そうして樽を川に転がして落としました。そのあと、お百姓たちは家に帰っていき村に入って行くと、小百姓も素知らぬ顔で入って来ました。羊の群れを追い立てて、すっかり満足気でした。
それでお百姓たちは驚いて、「小百姓、どこから来たんだ?川から出てきたのか?」と言いました。「そうさ」と小百姓は答えました。「深く、深く沈んでいって、とうとう底に着いたんだ。おれは樽の底を押して這い出たんだ。そうしたら羊がたくさん草を食っているきれいな草原があったよ。そこからこの群れを連れて来たんだ。」「もっといるのか?」とお百姓たちは言いました。「ああ、いるとも。」と小百姓は言いました。「飼いきれないほどたくさんいたよ。」
そこでお百姓たちは、自分たちも羊をとってこよう、一人一群れにしよう、と決めました。しかし、村長は、「おれが最初だ」と言いました。そうしてみんな一緒に川に行きました。ちょうどそのとき、青い空に羊雲と呼ばれている小さな綿雲が出ていて、水にうつっていました。そこでお百姓たちは、「もう下に羊が見えるぞ!」と叫びました。村長が前に進み出て、「おれが先に行くから、見ててくれ。うまくいく見込みがついたら、お前たちを呼ぶよ。」と言いました。そうして村長は飛びこみました。ザブン。水音がしました。それはまるで村長がみんなを呼んでいるように聞こえました。それでみんな一斉に飛び込みました。そうして村の人々はみんな死んでしまい、小百姓はただ一人の跡継ぎだったので金持ちになりました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

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