グリム童話

グリム童話は、ヤーコプとヴィルヘルム・グリムによって編纂された、時代を超えた民話のコレクションです。これらの物語は、勇気、魔法、道徳をテーマにした話が世代を超えて共鳴し続ける、民俗の宝庫です。「シンデレラ」や「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」などの古典から、「漁師とその妻」や「ルンペルシュティルツキン」といったあまり知られていない珠玉の話まで、それぞれの物語がヨーロッパの口承伝承の豊かな織物を垣間見せてくれます。 グリム童話は、その鮮やかなキャラクター、道徳的教訓、そしてしばしば暗いトーンが特徴で、歴史的文脈の厳しい現実と幻想的な要素を反映しています。その永続的な魅力は、楽しませ、教え、驚きをもたらす能力にあり、これが子ども文学の礎となり、民俗学や物語の研究者たちにとっての魅力的な源となっています。

Listen on:

  • Podbean App

Episodes

二人兄弟

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、二人の兄弟がいて、一人は金持ちで、もう一人は貧乏でした。金持ちは金細工師で心の悪い人でした。貧しい方はほうき作りをして生計をたてていて、善良で心の清い人でした。この男には子供が二人いて、双子の兄弟で水の2滴のようにお互いにそっくりでした。二人の男の子は金持ちの家に出たり入ったりして、よく残り物をもらって食べていました。あるとき貧しい男がほうきの木をとりに森へ入って行こうとしていたとき、すっかり金色でこれまで出くわしたどの鳥より美しい鳥を見ました。小さな石を拾って投げて、うまく鳥に当たりましたが、1枚の金の羽根だけが落ちてきて、鳥は逃げてしまいました。男は羽根をとって兄のところへもっていきました。兄はそれを見て、「純金だ。」と言って、羽根と交換してたくさんのお金をくれました。次の日、男は樺の木に登り2,3本枝を切り取ろうとしたとき、同じ鳥が飛んで出てきました。それで男が探すと巣があり、中に1個の金でできた卵がありました。男は卵を持ち帰り、兄のところへ持っていきました。兄は今度も「純金だ。」と言って、その卵に相当する金額をくれました。最後に金細工師は「本当に、鳥そのものが欲しいなあ。」と言いました。貧しい男は3回目に森へ入って行き、また金の鳥が木に止まっているのを見ました。それで石をとって鳥を打ち落として、兄のところへ持って行きました。兄はそれと交換に山盛りの金をくれました。男は、「これでやっていけるな。」と思い、満足して家へ帰りました。
男はおかみさんを呼ぶと、「私に金の鳥を焼いてくれ。それで鳥の何もなくさないように気をつけてくれよ。全部自分で食べてみたいんだ。」と言いました。ところで、その鳥は普通の鳥ではなく、それの心臓と肝臓を食べた人はだれでも毎朝枕の下に一枚の金貨があるというとても不思議な種類なのです。
女は鳥を支度して、串に刺し、焼きました。ところがそれが火にかかっている間に、女が他の仕事のため台所から出なくてはいけなくなり、貧しいほうき作りの二人の子供たちが走って入ってきて、串のそばに座り、1,2回串を回しました。その瞬間に鳥の小さなかけらが2つ鍋に落ちて、男の子の一人が「この2つを食べようよ。僕はとてもおなかがすいてるし、だれもこれが惜しいと思わないよ。」と言いました。それで二人はそのかけらを食べましたが、女が台所へ入ってきて、二人が何か食べているのを見て、「何をたべているの?」と言いました。「鳥から落ちたかけら2つだよ。」と二人は答えました。「それは心臓と肝臓だったにちがいないわ」とすっかりびくついて女は言いました。そして夫がそれらがないことに気づき起こらないように、急いで若い雄鶏を殺し、心臓と肝臓を取り出し、金の鳥のそばにおきました。用意ができると、おかみさんは金細工師のところに持って行き、男は全部一人で食べてしまい、何も残しませんでした。ところが、次の朝、男が枕の下をさぐって金貨を取り出そうと期待しましたが、いつもと同じように金貨はありませんでした。
二人の子供たちは自分たちの運命にどんな幸運が下ったのかわかりませんでした。次の朝起きると、何か床にチャリンと鳴って落ちたので、拾ってみると2枚の金貨でした。二人が父親のところに持っていくと父親は驚いて「どうしてこんなことが起きるんだ?」と言いました。次の朝も2枚見つけ、毎日続くので、男は兄のところへ行き、不思議な話をしました。金細工師は、どうしてそれが起こったか、また、子供たちが金の鳥の心臓と肝臓を食べたということをすぐにわかりました。そして仕返しをするため、また、嫉妬心が強く心が冷たいので、父親に、「お前の子供たちは魔物と仲間になっているぞ。金をもらうな。子供たちをもう家においてはだめだ。魔物が子供たちを支配しているし、お前も破滅させるだろうからな。」と言いました。父親は魔物を恐れたので、辛いことでしたが、双子を森へ連れていき、悲しみながら、そこへ置き去りにしました。
そうして二人の子供たちは森を走り回って、また家へ帰る道を探しましたが見つけられなくて、ますます迷ってしまいました。とうとう二人は猟師と出会い、猟師は「お前たちはどこの子だね?」と尋ねました。「僕たちは貧しいほうき作りの子です。」と二人は答え、毎朝枕の下に金貨があるから父親はもう自分たちを家に置かないんだ、と話しました。「さあ、お前たちが正直で怠けるのでなければ、それはそんなに悪いことではないよ。」と猟師は言いました。親切な男は子供たちを好きになり、自分の子供がいないので、自分の家へ連れて帰り、「私がお前たちの父親になって大きくなるまで育てるよ。」と言いました。二人は猟師から狩猟を習い、目覚めたとき見つかる金貨は将来必要になる場合に備えて二人のためにしまっておかれました。
二人が大きくなったある日、育ての父親は二人を森の中へ連れて行き、「今日はお前たちに試し撃ちをしてもらおう。それでお前たちを見習いから解放して、猟師にするからな。」と言いました。二人は猟師と一緒に獲物を待ち伏せに行き、そこにしばらくいましたが、獲物は現れませんでした。しかし、猟師は見上げて、雁の群れが三角形の形になって飛んでいるのを見、一人に「それぞれの角から1羽撃ち落としてごらん。」と言いました。その子はそれをやり、試し打ちを成し遂げました。
それからまもなく別の群れが数字の2の形で飛んできて、猟師はもう一人の子にそれぞれの角から1羽撃ち落とすように言い、その子の試し打ちも同じように成功しました。養父は、「さあ、これで見習いは終わりだ。お前たちは技術のある猟師だ。」と言いました。それで二人の兄弟は一緒に森へ入って行き、お互いに相談してあることを計画しました。夜に夕食の席に着くと、二人は養父に、「お父さんが私たちの要求を認めてくれるまでは、食べ物に触れないし、一口も食べません。」と言いました。養父は、「じゃあ、要求って何だ?」と言いました。二人は、「私たちはもう修練を終えました。それで世間で自分を試さなくちゃいけないと思うんです。私たちが旅に出ることを許してください。」と答えました。すると年とった男は嬉しそうに、「お前たちは勇敢な猟師のように話すな。お前たちの望んでいることはずっと私の望みだった。でかけな。お前たちには万事うまくゆくさ。」と言いました。それからみんなで一緒に楽しく飲み食べました。
約束の日がくると、養父は一人一人に良い鉄砲と犬をくれて、蓄えておいた金貨を好きなだけ持たせました。それから道の途中までついてきて、別れるとき、ピカピカのナイフをあげて、「もしお前たちが分かれるなら、分かれる場所の木にこのナイフを刺しなさい。一人が戻った時、離れている兄弟がどうなっているかわかる。もし死ねば行った方向に向けられるナイフの面が錆びるが、生きている限り光ったままだ。」と言いました。二人の兄弟はさらに進んで行き、森に着きましたが、とても大きい森なので一日で抜け出ることができませんでした。それで森の中で夜を過ごし、狩猟袋に入れておいたものを食べました。しかし二日目も同じように歩いて、やはり森を出られませんでした。何も食べるものがないので、一人が、「何か撃ち殺さなくちゃ。そうしないと腹がへっちゃうよ。」と言って鉄砲に弾を詰め、あたりを見回しました。年とったウサギが走って近づいてきたので、肩に銃をかけねらいましたが、ウサギは「猟師さん、お願いだから殺さないで。子供を二匹さしあげます。」と叫び、すぐやぶに飛び込み、二匹の子ウサギを連れてきました。しかし二匹の子ウサギはとても楽しそうに遊び、とてもかわいいので、猟師たちは殺す気になれませんでした。それで一緒においておくと、子ウサギは歩いてついてきました。このあとまもなくキツネがそろそろ歩いて通りすぎました。二人が撃とうとしたとき、キツネが「猟師さん、お願いだから殺さないで。子供を二匹さしあげます。」と叫びました。
キツネも二匹の子ギツネを連れてきました。猟師たちは子ギツネも殺したくなくて、ウサギの仲間にすると、子ギツネはあとからついてきました。まもなく狼がやぶから出てきました。猟師たちが撃つ準備をすると狼は「猟師さん、お願いだから殺さないで。子供を二匹さしあげます。」と叫びました。
猟師たちは二匹の狼を他の動物たちのそばに置き、狼は二人のあとについてきました。それから熊が来て、もう少し長く歩きたいと思って、「猟師さん、お願いだから殺さないで。子供を二匹さしあげます。」と叫びました。
二匹の子熊が他の動物に加わえられて、もう八頭になっていました。それから誰が来たか?ライオンがきて、たてがみをふりました。しかし猟師たちは恐れず、前と同じようにねらいをつけました。しかしらいおんもまた「猟師さん、お願いだから殺さないで。子供を二匹さしあげます。」と言いました。
ライオンは二頭の子供を連れてきて、これで猟師たちには、二頭のライオン、二頭の熊、二匹の狼、二匹のキツネ、二匹のウサギがいることになりましたが、二人のあとについてきて、仕えました。その間、これで二人の空腹はおさまらなかったので、二人は、キツネに「なあ、忍び歩きクン、何か食べるものを手にいれてこいよ。お前たちは抜け目がなくずる賢いからね。」と言いました。二匹は「ここから遠くないところに村があります。そこからもうたくさんトリをもってきましたよ。そこへいく道を案内しましょう。」と答えました。そこでその村へ入って行き、食べ物を買い、獣たちにも食べ物をあげ、旅を続けました。キツネたちはこの土地についてとてもよく道やトリ小屋がどこにあるかを知っていて、猟師たちを案内できました。
さて二人はしばらく旅をしましたが、二人一緒にいられる職を見つけられませんでした。それで、「こいしていても他になにもないよ。分かれなくちゃいけないな。」と言って、動物たちを分けました。それで二人のそれぞれがライオン、熊、狼、キツネ、ウサギを一頭ずつ持ち、お互いに別れを告げ、死ぬまでお互いを兄弟として愛し合うことを約束し、養父がくれたナイフを木に刺し、そのあと一人は東へもう一人は西へ行きました。
弟は動物たちと一緒に黒いちりめんが一面に下がっている町に着きました。宿屋へ入り、主人に動物たちが泊れるかと尋ねると宿の主人は家畜小屋を貸してくれました。その小屋には、壁に穴があり、ウサギは這い出て、キャベツをとって食べ、キツネはめんどりをとって食べ、食べてしまうとおんどりも食べましたが、狼と熊とライオンは大きすぎるのででられませんでした。それで宿の主人がたまたま草の上にいる牛のところへ連れて行かせたので、満足に食べることができました。猟師は動物たちの世話が終わった時、町はどうしてこのように黒いちりめんがさがっているのか?と宿の主人に尋ねました。「明日王様の一人娘が死ぬことになっているからです。」と主人は言いました。猟師は「死ぬ病なのか?」と尋ね、「いいえ、元気で健康ですよ。それでも死ななければならないんです。」と主人は答えました。「どういうことだ?」と猟師は尋ねました。
「町の外に高い山があり、そこに竜が住んでいて、毎年清らかな乙女を食べなくてはいけないのです。そうしないと竜は国全体を荒らすのです。乙女が全員竜にもうあげられてしまい、もう王様の娘の他はいません。だけど慈悲はありません。娘は竜にあげなくてはいけないのです。それが明日行われます。」「どうして竜を殺さないのだ?」と猟師は言いました。「ああ、たくさんの騎士がやってみましたよ。だけど、みんな命を落としました。王様は竜を退治した人には娘を妻に与え、自分が亡くなったあと王国を治めさせると約束しています。」と主人は答えました。
猟師はこれに対してもう何も言いませんでしたが、次の朝、動物たちを連れていき、一緒に竜の山を登りました。山のてっぺんに小さな教会があり、祭壇になみなみと注がれている杯が三つあり、「杯を飲み干す者は地上で最も強い男になり、戸口の前に埋められている刀を使うことができる」と書いてありました。猟師は飲まないで外に出て地面の刀を探しましたが、その場所から動かすことができませんでした。それで中に入り、杯を飲み干しました、今度は猟師は強くなり刀を取り上げることができ、手が全く簡単に刀を扱うことができました。
乙女が竜に渡される時がくると、王様、長官、宮廷の人たちが王女に付き添ってきました。王女は遠くから竜の山にいる猟師が見えて、自分を待ってそこに立っている竜だと思い、そこに登っていきたくありませんでしたが、そうしなければ町中が滅ぼされるので、仕方なく死への旅をしなければなりませんでした。王様と宮廷の人たちは悲しみでいっぱいになりながら帰りました。しかし、王様の長官はじっとして遠くから全てを見ることになっていました。
王様の娘が山の頂上に着くと、そこに立っていたのは竜ではなく若い猟師でした。猟師は、王女を慰め、自分が救ってあげると言い、教会の中に入れて、錠をかけました。まもなく、7つの頭をもった竜が大きく吠えてそちらへやってきました。竜は猟師に気付くと驚いて、「ここの山に何の用だ?」と訊きました。猟師は「お前と戦いたいのだ」と答え、竜は「大勢の騎士がここに命を捨てたぞ。すぐお前もお終いにしてくれるぞ。」と言って、7つのあごから火を吐きました。
火は乾いた草を燃やし、猟師は熱と煙で窒息してしまいそうでしたが、動物たちが走ってきて、踏んで火を消しました。それから竜は猟師に襲いかかってきましたが、猟師はピュッと音がでるほど速く刀を振り回し、竜の頭を三つ切り落としました。それで竜は本当に怒り狂って空中に昇ると猟師に炎を吐き、猟師の上から襲いかかろうとしましたが、猟師はもう一度刀を抜き、再び三つの頭を切り落としました。怪物は弱り、下へ落ちました。
それにもかかわらず、竜は猟師に襲いかかることはでき、猟師は最後の力を振り絞って尻尾を切り落としたときはもうこれ以上戦えなくなったので、動物たちを呼びよせました。すると動物たちは竜をずたずたに引き裂きました。戦いが終わった時、猟師が教会の鍵を外すと、王様の娘が床に倒れていました。戦いの間に苦痛と恐怖で気を失っていたのです。猟師は王女を抱えて外に出し、王女がもう一度正気に返って目をあけると、ずたずたに切られた竜を見せて、もう大丈夫だ、と言いました。王女は喜んで「それではあなたは私の大切な夫になります。父が竜を殺す人を夫にすると約束しているのですから。」と言いました。そうして王女はサンゴの首飾りをはずしてごほうびにするため動物たちに分け与えました。ライオンは金の留め金を受け取りました。しかし、自分の名前があるハンカチは猟師にあげました。猟師は行って竜の7つの頭から舌を切り、ハンカチに包むと注意深くしまいました。
それが終わると、猟師は炎や戦いでとても弱って疲れていたので、乙女に「僕たちは二人とも弱って疲れている。少し眠ろう。」と言い、王女が、はい、と言ったので、二人で地面に横になりました。そして猟師はライオンに「見張りをしてろ、寝ている間にだれもおどかさないように。」と言って二人とも眠りました。ライオンは二人の横に見張りをして横になりましたが、自分も戦いでとても疲れていたので熊を呼び、「おれの近くに寝てくれ、おれは少し眠らなくちゃいけない。なにか来たら起こしてくれ」と言いました。それで熊はそばに寝ていましたが、自分も疲れていたので狼を呼び、「おれの近くに寝てくれ、おれは少し眠らなくちゃいけない。なにか来たら起こしてくれ」と言いました。それで狼はそばに寝ていましたが、自分も疲れていたのでキツネを呼び、「おれの近くに寝てくれ、おれは少し眠らなくちゃいけない。なにか来たら起こしてくれ」と言いました。それでキツネはそばに寝ていましたが、自分も疲れていたのでウサギを呼び、「おれの近くに寝てくれ、おれは少し眠らなくちゃいけない。なにか来たら起こしてくれ」と言いました。それでウサギはそばに寝ていましたが、自分も疲れていて、見張りを頼む誰もいなかったので眠ってしまいました。それで、王様の娘、猟師、ライオン、熊、狼、キツネ、ウサギのみんながぐっすり眠っていました。
しかし、長官は、遠くから見ていることになっていたのですが、竜が乙女と一緒に飛び去って行くのがみえなかったし、山全体が静かになってしまったのがわかって、勇気を出して登ってきました。竜が地面にずたずたに切り刻まれ倒されていて、そこから遠くないところに王様の娘と猟師が動物たちと一緒にいて、みんなぐっすり眠っていました。長官は神をおそれない悪い人間だったので、刀を抜き、猟師の頭を切り落とし、腕に王女を抱えて山を降りました。それで王女が目を覚ましびっくりしましたが長官は「姫は私の手の中だ、竜を殺したのは私だと言え。」と言いました。
「そんなことできません。やったのは動物と一緒の猟師ですもの。」と王女が答えました。すると長官は刀を抜いて、従わなければ殺すと脅し、強いて約束させました。それから長官は王女を王様のところに連れて行きました。王様は、怪物に引き裂かれてしまったと信じていた愛する娘に生きて再び会えたとき、喜びをどう抑えたらよいのかわかりませんでした。長官は、「私が竜を殺し、乙女とまた国全体を救いました。従って、約束通り、姫を妻に迎えたい。」と王様に言いました。王様は娘に「言ってることは本当か?」と言いました。「あ、はい。本当に違いありません。だけど、1年と1日経つまで結婚式を行うのは認めません。」と娘はいいました。その間に愛する猟師について何か聞くこともあるだろうと思ったからです。
ところで、動物たちは竜の山で死んだ主人のそばでまだ寝て眠っていました。そして大きなブンブン蜂が来て、ウサギの鼻にとまりましたが、ウサギは手で払いのけて眠り続けました。ブンブン蜂が2回目にやってきましたがウサギはまたしても払いのけ眠り続けました。3回目に来て鼻をさしたので、ウサギは目を覚ましました。
目が覚めるとすぐキツネを起こし、キツネは狼を、狼は熊を、熊はライオンを起こしました。ライオンが目覚めて、乙女がいなくなって主人が死んでるのを見ると、恐ろしい吠え声をあげ始め、「誰がやった?熊や、お前はどうしておれを起こさなかった?」と叫びました。熊は狼に「お前はどうしておれを起こさなかった?」と尋ね、狼はキツネに「お前はどうしておれを起こさなかった?」、キツネはウサギに「お前はどうしておれを起こさなかった?」と尋ねました。かわいそうなうさぎだけはどう答えたらよいかわからなくて、ウサギのせいになりました。それで他の動物たちはウサギに襲いかかろうとしましたが、ウサギはみんなに命乞いして、「殺さないでください。また主人を生き返らせますから。口に入れると病気やどんな傷も治す根が生えている山を知っています。でもその山はここから200時間旅をしたところにあるのです。」と言いました。
ライオンは、「24時間でそこへ行って戻ってきて根をもってこなくてはならない。」と言いました。それでウサギは跳んで出かけ、24時間で戻り、根を持ってきました。ライオンは猟師の頭をまたくっつけウサギが根を口に入れると、すぐに全部つながって猟師の心臓が脈打ち、命が戻りました。それから猟師が目覚め、乙女が見えないので驚いて、「私と別れたくて眠っている間に行ってしまったにちがいない」と考えました。ライオンは大慌てで主人の頭の向きを間違ってつけてしまいましたが、猟師は王様の娘のことを考えて気持ちが沈んでいたので気がつきませんでした。
しかし、昼に何か食べようとして、頭が後ろ向きになっているのがわかり、わけがわからなくて、眠っている間に何があった?と動物たちに尋ねました。それでライオンは、疲れから自分たちも眠ってしまい、目が覚めたら主人が頭を切りとられて死んでいました、、ウサギが命をよみがえらす根をもってきて、自分が急いだため向きを間違えて頭をささえていたんです、でも間違いを直しますから、と言いました。それからライオンは猟師の頭をまた切りとって向きを変え、ウサギが根で治しました。
しかし、猟師は悲しくて、世界を旅してまわり、動物たちを人々の前で踊らせました。そうしてちょうど1年の終わりに、たまたま王様の娘を竜から救った同じ町に戻ってきました。今度は町に赤い布が賑やかにたれていました。それで猟師は宿の主人に「これはどういう意味だ?去年は町には黒いちりめんが一面にかかっていた。今日の赤い布は何を意味してるのだ?」と言いました。主人は「去年は王様の娘を竜に渡さなければならないことになっていました。だが、長官が竜と戦い殺したので、明日二人の結婚式が行われるのです。それで今日お祝いのために赤い布でおおわれているのです。」と主人は答えました。
次の日、結婚式が行われようというとき、猟師は昼に宿の主人に「ご主人、今日私はここにいる間に王様のテーブルのパンを食べてみせようというのを信じるかね?」と言いました。「いや、そうならないほうに金貨100枚かけますよ。」と主人は言いました。猟師は賭けを受け入れ、ちょうど同じ数の金貨が入っている財布を置きました。それからウサギを呼び、「ウサギよ、行って王様が食べているパンをもってきてくれ。」ウサギは動物たちの中で一番低い地位だったので、この命令を他のだれかにひきつぐことができなくて自分の足に頼るしかありませんでした。「ああ、こんなふうに一人で道を通っていたら、殺し屋の犬はみんな追いかけてくるだろうなあ」とウサギは考えました。予想があたり、犬たちが追いかけてきて、ウサギの上等な皮に穴を開けようとしました。しかし、ウサギは、あんなのはみたことがないくらいに、ぴょ~んと跳んで逃げ、兵士が知らないうちに歩哨の小屋に隠れました。それから犬たちがきて、ウサギをだそうとしましたが、兵士はいたずらを理解せず、銃の台尻で犬たちをなぐりました。それでとうとう犬たちはキャンキャン啼いて逃げていきました。ウサギは道に邪魔ものがいなくなるとすぐ宮殿の中へ走って、まっすぐ王様の娘のところへ行き、椅子の下に座ると、王女の足をひっかきました。すると王女は、「あっちへ行って」と言い、自分の犬だと思っていました。ウサギは足を二回目にひっかきました。王女はまた「あっちへ行ってよ」と言い自分の犬だと思っていました。しかしウサギは目的からそれることはできなかったので、3回目にひっかきました。すると王女は下を覗いて、首輪であのウサギだとわかりました。
王女はウサギを膝に抱きあげ、自分の部屋に運び、「ウサギさん、ご用は何?」と言いました。ウサギは「竜を殺した私の主人がここに来ていて、王様が食べるようなパンを貰ってくるようにと私を送ってよこしました。」と答えました。それで王女はとても喜び、パン職人を呼んでこさせ、王様が食べるのと同じパンをもってくるようにと命じました。ウサギは「だけど、殺し屋の犬たちが私に何もしないように、パン職人はそこへも運ばなくちゃなりません。」と言いました。パン職人が宿の戸口まで運ぶと、ウサギは後ろ足で立って、前足でパンを受け取り、主人のところへ持って行きました。すると猟師は、「見てごらん、ご主人、100枚の金貨は私のものだ。」と言いました。主人は驚きましたが、猟師は続けて、「そうさ、ご主人、パンはあるが、今度は王様の焼き肉も欲しいな。」と言いました。「確かにそれを見てみたいものですな。」と主人は言いましたが、もう賭けはしませんでした。猟師はキツネを呼び、「かわいい狐クン、行って王様が食べるのと同じ焼き肉を持って来てくれ。」と言いました。
赤ギツネは脇道をよく知っていて、犬に見られないで、穴や角を通って行き、王様の娘の椅子の下に座り、足をひっかきました。すると王女は下を見て、首輪であのキツネだとわかりこのエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

昔、フレデリックという男とキャサリンという女がいました。二人は結婚して間もない若い夫婦でした。ある日、フレデリックは、「キャサリン、今日は畑を耕しにいくよ。戻ってきたら、腹が減ってるからなにか焼いた食べ物と喉の渇きをうるおすさわやかな飲み物を食卓に用意しておいてくれ。」と言いました。「いってらっしゃい、あなた、行っていいわ、ちゃんと用意しとくから。」とキャサリンは答えました。
それで食事時が近づいてきたとき、キャサリンは煙突から一本のソーセージをとってフライパンに入れ、バターを塗って火にかけました。ソーセージが焼けてジュージューいい出し、キャサリンはそのそばに立ってフライパンの柄を握っていましたが、そうしながら考え事をしていました。すると、(ソーセージをやっている間に地下室に行ってビールを注いで来れるわ)と思いつきました。そこでフライパンをしっかり火にかけると、ジョッキを持ってビールをとりに地下室に下りていきました。ビールがジョッキに入っていき、キャサリンはそれを見ていました。すると、(あれ、上の犬をつないでなかったわ。ソーセージをフライパンからとっていくかもしれない、よかった、思いついて。)と思いました。
たちまち地下室の階段を駆け上がりましたが、スピッツはもうソーセージを口にくわえ、床を引きずって逃げていました。しかしキャサリンは、ぐずぐずしないで、すぐにあとをつけ、はるか畑の中まで追いかけました。ところが犬はキャサリンより素早く、ソーセージを放さないで畝をぽんぽん越えて走って行きました。
「無くなったものは無くなったものだわ。」とキャサリンは言って、向きを変え帰り始めましたが、走って疲れたので、のろのろと気楽に歩いて体を冷ましました。この間、ビールはまだ樽から流れ出ていました。というのはキャサリンは栓を閉めてなかったからです。そうしてジョッキがいっぱいになるともちろん地下室内にあふれ出て、樽が空っぽになるまで止まりませんでした。キャサリンは階段に足をかけるとすぐにこの出来事が目に入りました。「わっ、大変!」とキャサリンは叫びました。
(フレデリックにわからないようにするにはどうしたらいいかしら?)しばらく考えていましたが、最後に思い出しました。(この前の市で買った小麦粉が一袋まだ上の物置にあったわ。それをとってきてビールの上に撒きましょう)「そうよ」とキャサリンは言いました。「できるときに物をとっとけば、あとで必要になったときあるもんだわ。」それで物置に上がって行き、袋をおろしてきてビールのジョッキにまっすぐ投げおろしたので、ジョッキはひっくり返り、フレデリックの飲み物も地下室に流れました。
「いいのよ」とキャサリンは言いました。「片方があるところにもう片方もなくちゃね。」そして粉を地下室じゅうにまき散らしました。それが終わると、キャサリンは自分のやったことに心から満足し、「ここはみるからにきれいになったわ」と言いました。昼にフレデリックが帰ってきました。「さてと、昼食は何かな?」「あのね、あなた」とキャサリンは答えました。「ソーセージを焼いていたの、だけど一緒に飲むビールを注いでいたら、犬がフライパンからソーセージをとっていったのよ、それで犬を追いかけている間にビールが全部出てしまってね、小麦粉でビールを乾かしている間にジョッキもひっくり返してしまったの、でも安心して、地下室はまたすっかり乾いてるわ。」フレデリックは言いました。「ねぇ、いいかい、お前、そんなことをしちゃいけなかったんだぞ。ソーセージはとられる、ビールは樽からすっかり空けちゃう、おまけに小麦粉を全部まいちゃうなんて。」「そうなの、フレデリック、知らなかったわ、教えてくれればよかったのに。」
男は考えました。(こういうかみさんだと、僕はもっとものに気をつけた方がいいな)さてフレデリックはかなりのターラー銀貨を貯め、それを金貨に変えました。そしてキャサリンに「ごらん、これはゲームに使う黄色のチップだよ。つぼに入れて牛小屋の牛の飼葉桶の下に埋めておくけど、近づかないようにしてくれよ。さもないとひどい目にあうからね。」と言いました。「そう!わかったわ、あなた、絶対近づかないわ。」とキャサリンは言いました。
フレデリックがいないときに、行商人たちが安い陶器の鉢やつぼをもって村にやってきて、この若い妻に、何か買いたい物はありませんか、と尋ねました。「そうねぇ、みなさん」とキャサリンは言いました。「お金がないから何も買えないわ。でも黄色いチップでよければ、買うけど。」「黄色いチップ、いいですとも。だけどそれを見せてくださいな。」「それじゃあ、牛小屋に行って牛の飼葉桶の下を掘ってください。そうすれば黄色のチップが見つかりますわ。私はそこへ行ってはいけないのよ。」悪党どもはそこへ行き掘って本物の金貨を見つけました。そうしてそれを握ると逃げていき、家には鉢やつぼを残したままでした。キャサリンは新しい物を使わなければいけないと思いましたが、台所にはこれらを使わなくてももう足りていたので全部のつぼの底をくり抜いて、家の周りを囲んでいた柵の杭の上に飾りにしてのせました。
フレデリックは帰ってきて新しい飾りを見ると、「お前、あれはどうしたんだい?」と言いました。「買ったのよ、あなた、飼葉桶の下にあったチップでね。私は自分ではそこに行かなかったわよ。行商人たちに自分で掘らせたの。」「ああ!お前ね」とフレデリックは言いました。「何てことを...あれはチップじゃなかったんだ。本物の金貨だったんだよ。僕らの全財産だったんだ。そんなことをしちゃいけなかったのに。」「そうなのね、あなた」とキャサリンは言いました。「でも私知らなかったわ。前に注意してくれればよかったのに。」
キャサリンはしばらく立って考えていましたが、「ねぇ、あなた、すぐに金貨を取り戻そうよ。泥棒を追いかけよう。」と言いました。「じゃあ、来いよ」とフレデリックは言いました。「やってみよう。だけど、途中で食べ物が要るからバターとチーズを持ってこいよ。」「わかった、あなた、持って行く。」二人は出かけました。フレデリックの方が歩くのが速いのでキャサリンはあとからついていきました。「私の方が得ね、」とキャサリンは考えました。「帰りには私の方が少し前に行ってることになるもんね。」
それから、キャサリンは道の両側に深いわだちがある上り坂にさしかかりました。「ほら、見てよ。」とキャサリンは言いました。「かわいそうに、地面が引き裂かれ、皮がはげて擦りむかれているわ。これじゃ死ぬまで元通りにならないわ。」あわれに思って、車であまり傷つかないように、バターをとりだし左右のわだちに塗りつけてやりました。こうして思いやりを示してかがんでいるときに、チーズが一個ポケットから落ちて坂を転がっていきました。キャサリンは言いました。「私は一度ここまで登ったのよ、また下りるのはごめんだわ。別のチーズが走って行って連れ戻せばいいのよ。」それで別のチーズをとり出し、坂を転がしました。しかし二個のチーズは戻って来ませんでした。それで、(ひょっとして一人で歩きたくないから連れを待っているのかもしれないわ)と考えて三個目のチーズを転がしました。三個とも帰ってこないので、「いったいどういうことかしら、三個目のチーズは道がわからなくて迷子になったのかも。四個目のチーズに呼びに行かそうっと。」と言いました。
しかし、四個目も三個目と同じことでした。それでキャサリンは怒って、五個目も六個目も投げ落としました。もうこれで最後のチーズでした。キャサリンはチーズが戻ってくる方を見つめながら、しばらく立っていましたが、やはり帰ってこないので、「フン、死神をさがしにやるにふさわしい連中だよ、いつまでも帰ってこないんだからね。まだお前たちを待ってると思うかい?私は先に行くわよ、お前たちは追いかけておいで。私より若くて足が速いだろうから。」
キャサリンが先へ進むと、フレデリックがいました。フレデリックは食べ物が欲しかったのでそこで立って待っていたのです。「さあ、持ってきた物を食べよう。」とフレデリックは言いました。キャサリンは乾パンを渡しました。「バターとチーズはどこだ?」と男は尋ねました。「あのね、あなた」とキャサリンは言いました。「バターは車のわだちに塗ったの、チーズはすぐやってくるわ。一個が逃げて行ったから、ほかのチーズに呼びに行かせたの。」「お前、そんなことしちゃいけなかったのに。バターを道に塗って、チーズを坂に転がすなんて。」とフレデリックは言いました。「そうなの?、あなた、言ってくれればよかったのに。」
それから二人は乾パンを一緒に食べました。するとフレデリックは言いました。「お前、出てくるとき家の戸締りをしたか?」「いいえ、あなた、前に言ってくれればよかったのに。」「じゃあ、家に戻って、もっと先へ行く前に戸締りをしてこいよ。それで他の食べ物をもってきてくれ。僕はここで待ってるから。」キャサリンは戻って行き、考えました。(フレデリックはもっと食べたがっているけど、バターとチーズは好きじゃないんだわ。だから干し梨をハンカチにいっぱい入れて、飲み物は水さしに酢を入れて持って行こう。)それから戸の上半分にしっかりかんぬきをしましたが、下の戸をはずし、背中にかつぎました。その戸を安全なところにおけば家は守られるにちがいない、と考えたのです。キャサリンは道々時間をかけ、(私が遅い分だけフレデリックは長く休めるわよね。)と考えました。
フレデリックのところに着くとキャサリンは言いました。「ほら、あなた、家の戸をもってきてあげたわ。これであなたが自分で家を守れるでしょ。」「わっ!なんてこった!」とフレデリックは言いました。「なんて賢いかみさんだ、誰もかも入れるように下の戸をはずし、上の戸にかんぬきをかけるなんて。もう家に戻っても遅すぎるよ。だけどお前が戸をここにもってきたんだから、これから先も持っていてくれよ。」「戸は私が運ぶわ、あなた、だけど干し梨と酢は重すぎるわよ。だから戸にぶら下げて、戸に運んでもらうわ。」
さて、二人は森へ入っていき、悪党どもを探しましたがみつかりませんでした。とうとう暗くなってしまったので、二人は木に登りそこで夜を過ごすことに決めました。ところが二人が木の上におさまった途端に、悪党どもがそこへやってきました。盗られたくないものを持っていき、物がまだあるうちに探しだす連中でした。連中はまさにフレデリックとキャサリンがいる木の下に座り、火をたき、獲物を分けようとしました。フレデリックは反対側に下りて、石を集め、それをもってまた木に登りました。それを泥棒たちに投げつけて殺そうと思ったのです。ところが石は泥棒たちに当たらず、悪党どもは大声で言いました。「じきに朝になるぜ。風でもみの木の実が揺れ落ちてきたよ。」キャサリンはまだ背中に戸を担いでいました。とても重くのしかかるので、干し梨のせいだと思い、言いました。「あなた、梨を落とすわ」「だめだ、お前、今はだめ、僕たちがいるのがばれちゃうよ」 フレデリックは答えました。「ああ、でも、あなた、我慢できないの、重くて重くて」「じゃ、やれよ、そんで首をくくられちまえ」そうして枝の間を干し梨が転がり落ちて行きました。すると下にいた悪党たちは「鳥のふんが落ちてきた」と言いました。それからまもなく、戸がやはり重いので、キャサリンは言いました。「ねえ、あなた、酢を空けるわ。」「だめだよ、お前、だめ、僕たちがいるのがばれちゃう。」「ああぁ、でも、あなた、我慢できないの、重くて重くて」「じゃ、やれよ、そんで首をくくられちまえ」それでキャサリンは酢を空けてしまい、酢は強盗たちにかかりました。すると強盗たちは「もう露がおり出してるな。」と言いました。とうとうキャサリンは、(もしかしてこんなに重いのは戸なの?)と思い、言いました。「ねぇ、戸を落とすわ。」「だめだ、お前、だめ、僕たちがいるのがばれちゃう。」「ああぁ、でも、あなた、我慢できないの、重くて重くて」「ええっ!やめろっ、お前、しっかり持ってるんだ」「あ、あ、あぁ、もうだめ、落ちていっちゃう」「ええいもう、落とせよ、じゃ」
そうして戸はガラガラドスンとものすごい音をたてて落ちました。下の悪党どもは、「悪魔が木から下りてきた。」と叫んで、みんな残したまま逃げて行きました。次の朝早く、二人が木から下りてみると自分たちの金貨がみんな見つかり、家に持って帰りました。
二人が家に戻ると、フレデリックは、「さあ、お前、お前も精を出して働かなくちゃな。」と言いました。「ええ、あなた、すぐやるわ。畑へ行って麦を刈るわ。」キャサリンは畑に入ると、独り言を言いました。「刈る前に食べようかな?刈る前に眠ろうかな?うん、先に食べよう。」そうしてキャサリンは食べましたが、お腹がいっぱいになり眠くなりました。麦を刈りはじめましたが、半分夢見心地で、服をみんな、エプロンや上着や胴着も、切り裂いてしまいました。長い眠りから覚めてみると、半裸でそこに立っていました。それで、「これは私?それとも違うの?ああ、私じゃないわ。」と独り言を言いました。そのうちに夜になったのでキャサリンは村に走って行き、夫の家の窓をたたき、叫びました。「フレデリック!」「何だい?」「キャサリンが中にいるか知りたいの。」「いるよ、いるとも」とフレデリックは答えました。「中で眠っているよ。」「いいのよ、じゃあ私はもう確かに家にいるんだわ。」とキャサリンは言って、走り去りました。
外でキャサリンは泥棒に入ろうとしてうろついている連中に会いました。そこで近づいていって、「盗みを手伝ってあげる」と言いました。悪党どもは、この女はその場所にあるめぼしい物を知ってるんだ、と考え、承知しました。キャサリンは家々の前に行くと、「みなさん、物がありますか?私たちは盗みたいんです。」と叫びました。泥棒たちは(全くなあ、良いやり方だぜ)と考えてキャサリンを厄介払いしようと思いました。そこでキャサリンに「村の外の畑に牧師がかぶを植えてある。そこへ行って何本か抜いて来てくれ。」と言いました。
キャサリンは畑へ行ってかぶを抜き始めましたが、とても怠け者なのでまっすぐ立ちませんでした。それで男が通りがかり、キャサリンを見て立ち止まり、こんなふうにかぶの間で抜いているのは悪魔だと思いました。男は村の牧師のところに走って行き、「牧師様、悪魔があなたのかぶ畑でかぶを抜いています。」と言いました。「ああ、なんてことだ!」と牧師は答えました。「わしは足が悪いから、行って悪魔を追い払えないよ。」すると男は「じゃあおぶっていってあげますよ。」と言って、おぶって連れて行きました。畑へ着くと、キャサリンは起きあがってう~んと伸びをしました。「わあ、悪魔だ」と牧師は叫び、二人とも急いで逃げました。そうしてあまりに恐れおののいて牧師は、おぶって行った男がまともな足で走るよりも、なえた足でとっとと速く走ることができました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

犬と雀

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

牧羊犬は、良い主人どころかろくにえさをくれない主人をもっていました。それで、もうそこにはいられなくなって、とてもしょんぼりと出ていきました。道ですずめに出会うと、すずめは、「犬の兄さん、どうしてそんなにしょげているんだい?」と言いました。犬は、「お腹がすいているに食べ物がなにもないんだ。」と答えました。するとすずめが、「兄さん、一緒に町においで。お腹をいっぱいにしてあげる。」と言いました。それで二人は連れ立って町に入って行きました。肉屋の前に来ると、すずめが犬に、「そこにいて。あんたに肉を一切れつついて落とすから。」と言いました。そうして売り台にとまり、誰も見ていないか確かめるために周りを見回し、端にある一切れを、しばらくつついたり引っ張ったりちぎったりして、とうとう滑り落としました。
すると、犬はそれをくわえてすみに走っていき食べました。すずめは、「さあ、一緒に別の店へ行こう、そうしたらお腹がいっぱいになるようにもう一切れとってあげるよ。」と言いました。犬が二切れ目も食べると、すずめは、「犬の兄さん、もうお腹いっぱいになった?」と尋ねました。「うん、肉はもう十分食べた。」と犬は答えました。「だけどパンはまだ食べてないよ。」すずめは、「それも食べさせてやるよ、おいで。」と言いました。それからすずめは犬をパン屋に連れていき、小さな丸パンを二、三個つついて転がりおとしました。犬がもっと欲しがったので、別の売り台に連れていき、またパンを手に入れてあげました。犬がそれを食べてしまうと、すずめは「犬の兄さん、今度はお腹いっぱいになった?」と言いました。「うん」と犬は答えました。「今度はもう町の外をしばらく歩こうよ。」
それから二人は街道へ出ていきました。ところが、陽気が暖かいので、少し歩くと犬は、「僕は疲れたから、眠りたい」と言いました。「そうか、じゃあ眠って。」とすずめは答えました。「その間私は枝にとまっているよ。」そこで犬は道に横になり、ぐっすり眠りました。そうして眠っている間に馬方が走ってやってきました。荷馬車は三頭の馬でひかれ、二樽のワインが積んでありました。ところで、すずめは馬方が脇へ寄らないで犬が寝ているわだちをそのまま進んでくるのを見て、「馬方、やめろ、さもないとお前をみじめにしてやるぞ。」と叫びました。
しかし、馬方は、「お前にみじめにされてたまるか」ともごもご呟いて、鞭を鳴らし、犬の上に馬車を走らせ、車輪が犬をひき殺しました。それですずめは、「よくも犬の兄さんをひき殺したな。荷馬車と馬で仕返ししてやる。」と叫びました。「荷馬車と馬ねぇ」と馬方は言いました。「ふん、お前がおれに何ができるんだい?」そしてどんどん走りました。そこですずめは荷車のおおいの下にもぐりこみ、同じ栓の穴を長いことつついて、栓を抜いてしまいました。それで馬方が気づかないうちにワインが全部流れ出てしまいました。
しかし、あるとき馬方が後ろを見ると荷車からたれているのが見え、樽を見ると片方が空っぽになっていました。「ああ、なんて不幸だ」と馬方は叫びました。「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは言って、馬の一頭の頭に飛んで行き、両目をつついてえぐりだしました。馬方はそれを見ると斧を取り出し、すずめを打とうとしましたが、すずめが空中に飛び、馬方は馬の頭を打ったので馬は死んで倒れました。「ああ、なんて不幸だ」と馬方は叫びました。「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは言って、馬方が二頭の馬で走り続けていると、すずめはまたおおいの下にもぐりこんで二番目の樽の栓をつついて抜きました。それでワインは全部こぼれてしまいました。馬方はそれに気づいた時、また「ああ、なんて不幸だ」と叫びました。
「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは答えて、二頭目の馬の頭に飛んで行き、両目をつついてえぐりだしました。馬方はそこに走り寄り、打とうと斧を振りあげましたが、すずめは空中に飛び、斧は馬に当たって、馬が倒れました。「ああ、なんて不幸だ」と馬方は叫びました。「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは言って、三頭目の馬の頭に飛んで行き、両目をつついてえぐりだしました。馬方は、かんかんになって、見回しもしないですずめに打ちかかりましたが、すずめに当たらないで、三頭目の馬も殺してしまいました。「ああ、なんて不幸だ」と馬方は叫びました。「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは答えました。「今度はお前の家で不幸にしてやる」そして飛んでいきました。馬方は荷車をそこにおいていくしかなく、ぷんぷん怒っていらいらしながら家に帰りました。
そしておかみさんに、「ああ、ひどいめにあったよ」と言いました。「ワインは流れ出てしまい、馬は三頭とも死んでしまった」「ああ、あなた」とおかみさんは答えました。「とても悪い鳥が家に入ってしまった。世界中の鳥を集めて、上にある小麦にとりついて、今食べているんだよ。」そこで馬方は上へ上がって行きました。すると何千何万という鳥が屋根裏部屋にいて、小麦を食べてしまっていました。そしてすずめがその真ん中にいました。すると馬方は「ああ、なんて不幸だ」と馬方は叫びました。「まだ十分不幸じゃないぞ」とすずめは答えました。
「馬方、お前の命もとってやる」と言って外へ飛びだしました。そうして馬方は財産を全部なくしてしまいました。そして下へ降りて部屋に入り、すっかり頭にきてストーブの後ろに座りました。しかし、すずめは窓の前のそとにとまって、叫びました。「馬方、お前の命をとってやる」すると馬方は斧をつかみ、すずめめがけて投げました。しかしただ窓を壊しただけで鳥にはあたりませんでした。すずめは今度はちょんちょん跳ねて部屋に入ってくるとストーブの上にとまり、「馬方、お前の命をとってやる」と叫びました。
馬方はすっかり怒り狂って、怒りのためにやみくもになってストーブを二つに打ち壊しました。すずめがあちこちとびまわるので、馬方は、家の家具や、鏡、ベンチ、テーブル、とうとう家の壁まで同じようにすっかり壊してしまいました。それでもまだ鳥にはあたりませんでした。ところが、とうとう馬方は鳥を手でつかまえました。
するとおかみさんが、「私が殺しましょうか」と言いました。「いいや」と亭主はどなりました。「それだと、優し過ぎる。もっとひどい死に方をさせてやるんだ。」そうしてすずめを手にとって丸呑みしました。ところが、すずめは体の中でぱたぱた動き回り、亭主の喉まで上がってきました。そうして頭を出して、叫びました。「馬方、まだお前の命をとってやるぞ。」馬方は斧をおかみさんに渡し、「お前、口の中の鳥を殺してくれ。」おかみさんは打ちましたが、打ち損じて馬方の頭を真正面に打ちました。それで馬方は死んで倒れました。しかしすずめは飛びあがって去っていきました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

黄金の鳥

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、王様がいて、宮殿の裏に、金のリンゴが実る木がある美しい庭をもっていました。リンゴが熟してくると数がかぞえられましたが、その次の朝、1個がなくなっていました。このことが王様に報告され、王様は、毎晩木の下で見張りをするように、と命令しました。王様には三人の息子がいて、夜がくると長男を庭に送りましたが、真夜中になると、眠気を抑えられず、次の朝またりんごが1個なくなりました。 次の夜、次男が見張りをすることになりましたが、結果は兄と同じく、12時になると眠ってしまい、朝にはりんごが1個なくなっていました。いよいよ3男が見張りをする順番がきて、すっかりその気になっていましたが、王様はこの息子にあまり期待を持たないで、兄たちよりさらに役に立たないだろうと考えましたが、とうとう行かせました。若者は木の下に横になりましたが、目を覚まして、眠気に負けないようにしていました。12時を打つと、何か空をバサバサという音をさせ、月の明かりで羽が金で輝いている鳥が来るのが見えました。
鳥は木に止まると、リンゴを1つとりました。そのとき若者は鳥めがけて矢を射ました。鳥は飛んで去りましたが、矢は羽にあたり、金の羽の一枚が落ちてきました。若者はそれを拾い、次の朝王様のところに持って行って、夜に見たことを話しました。王様が相談役たちを呼び集めると、みんなが、このような羽は王国全部以上に価値がある、と言いました。もし羽がそんなに貴重なら、1枚だけでは十分ではない、必ず鳥をまるまる手に入れよう、と王様は言いました。
長男が出発しました。自分の賢さを当てにしていたので、金の鳥を簡単に見つけられると思いました。しばらく行くと、1匹のキツネが森のはずれに座っているのが見えたので、銃をかまえ、キツネにねらいをつけました。キツネは「撃たないで」と叫び、「そうすれば、代わりにいい助言をしてあげます。あなたは金の鳥のところへ行く途中ですよね。今晩、お互いに向き合って立っている2軒の宿屋がある村に着きます。1軒は明りがこうこうとついていて、中では何でも賑やかに行われますが、そこに入らないでください。むしろたとえ悪い宿のように見えてももう1軒の方に入るのです。」と言いました。そんな馬鹿な動物が賢い助言をできるものか、と王様の息子は考え、引き金を引きました。が、弾は外れて、キツネは尻尾を伸ばし、森の中へすばやく走って行ってしまいました。
そうして道中を続けると、夜には二軒の宿屋がある村に着きました。一軒では人々が歌ったり踊ったりしていましたが、もう一軒は貧しくみすぼらしく見えました。「このボロボロの宿に入っていい方の宿を通り過ぎるとすれば、おれはバカだよな、全く。」と考えて、陽気な宿屋へ入って行きました。そこで、どんちゃん騒ぎをして享楽にふけって生活し、鳥や父親や、あらゆる良い助言を忘れてしまいました。 何カ月もたち、長男が戻ってこないので、金の鳥を見つけたいと二男が出発しました。キツネが長男に会ったように次男に会い、良い助言をしましたが、二男は注意を払いませんでした。二軒の宿屋に着くと、兄が音楽の聞こえてくる宿の窓に立っていて、二男に呼びかけました。二男は断れなくて、中に入り、楽しさのためだけに暮らしました。
またしばらく時が過ぎ、それで王様の一番下の息子が出かけて運を試したがりましたが、父親は許そうとしませんでした。「無駄だよ、兄たちよりもっと金の鳥を探せないだろうよ。それで災難が降りかかりでもすれば、どうしたらいいかわからない。良く言ってもあの子はあまり賢くないからね。」と王様は言いました。しかし、とうとう、息子があまりせがむので、行くのを許しました。
またしてもキツネは森の外に座っていて、命乞いをし、良い助言をすると申し出ました。若者は性格が良く、「安心して、キツネさん、君を傷つけたりしないよ。」と言いました。「後悔はさせませんから。もっと速く進めるように、尻尾の後ろに乗っかってください。」とキツネは答え、王子が座るとすぐにキツネは走り始め、ビュンビュン切り株や石を越えて行き、王子の髪が風でピューピューなりました。村に着くと若者は降りて、良い助言に従い、周りを見回さないで小さな宿屋に向いて入り、そこで静かに夜を過ごしました。
次の朝、若者が外に出るとすぐ、もうキツネはそこに座っていて、「どうしたらよいかもっと教えましょう。まっすぐ進んでください。、すると、とうとうお城に着きます。そのお城の前に1連隊の兵隊が寝ていますが、気にかけないでください。というのはみんな眠っていびきをかいていますから。兵隊たちの真ん中を通ってまっすぐお城に入り、全部の部屋を通りぬけると、しまいに金の鳥が木のかごに入ってぶらさがっている部屋にきます。近くに飾りに空っぽの金のかごがありますが、鳥を粗末なかごから出してりっぱなかごにいれないよう注意してください。さもないと、まずいことになりますよ。」と言いました。これらのことを言い終えると、キツネはまた尻尾を伸ばし、王様の息子はそれにすわると、キツネはビュンビュン切り株や石を越えて行き、王子の髪が風でピューピューなりました。
金のお城に着くとすべてがキツネの言った通りでした。王様の息子は金の鳥が木のかごに閉じ込められている部屋に入って行きました。一方で金のかごがそばにあり、3個の金のりんごが部屋に散らばって落ちていました。「だけど、美しい鳥を粗末なみっともないかごに入れておくのはばかげているよ。」と考え、かごの戸をあけ、鳥をつかみ、金のかごに入れました。しかし、同時に鳥がけたたましい泣き声をあげ、兵隊たちが目覚め、なだれ込んできて王子を牢屋に連れて行きました。次の朝、王子は法廷の前に連れて行かれ、すべて白状したので、死刑を言い渡されました。 ところが、王様は、一つの条件で、つまり、もし王子が風より速く走る金の馬をつれてくれば、命を救ってやってよい、と言いました。また、その場合は、命を助ける上に、ほうびとして金の鳥をうけとるがよい、というのでした。
王様の息子は出発しましたが、ため息をつき、悲しんでいました。というのは、どのようにして金の馬を探すのか、と悩んでいたからです。しかし、突然、古なじみのキツネが道に座っているのが見えました。「ほらね、僕のいうことに注意しなかったから、こうなったんだよ。だけど、元気を出しな。手伝ってやるよ。金の馬にたどりつく方法を教えてやるよ。君はまっすぐ進まなくてはならない、そうすればお城に着く。そこの馬小屋に馬がいるよ。馬丁たちが馬小屋のまえにねているけれど、眠っていびきをかいている。それで静かに金の馬を連れだせるよ。だけど、1つ注意しなくてはいけないよ。馬に木と皮の粗末な鞍をつけるんだ、金の鞍じゃないよ。それが近くに下がっているけどね。さもないと、まずいことになるからね。」とキツネは言いました。それからキツネは尻尾を伸ばし、王様の息子はそれにすわると、キツネはビュンビュン切り株や石を越えて行き、王子の髪が風でピューピューなりました。
すべてがキツネの言った通りに起こり、王子は金の馬が立っている馬小屋に着きました。しかし、馬に粗末な鞍をつけようとした丁度そのとき、王子は「こんな美しい動物なんだから、当然合っている金の鞍をつけなければ、馬も恥ずかしいだろう」と思いました。しかし、金の鞍が馬に触れるや否や、馬は大声でいななき始めました。馬丁が目覚め、若者をつかまえると、牢屋にほうり込みました。
次の朝、、王子は裁判で死刑を言い渡されました。しかし、王様は、もし金のお城から美しい王女を連れ戻すことができたら、命を助けてまた金の馬をくれると約束しました。
重い心を抱えて若者は出発しました。しかし運よくまもなく信頼できるキツネを見つけました。「私はただ悪い運のままあなたを放っておくべきなんでしょうね。でも可哀そうだから、もう一度困難を抜けるお手伝いをしましょう。この道はまっすぐ金のお城に続いています。夕方までにはつくでしょう。夜にみんな静かなとき、美しい王女が入浴するため浴室に行きます。浴室に入ったら、走って近づき、キスをするのです。そうすれば王女はあなたについてきます。それで一緒に王女を連れ去ることができます。ただ、先に両親に別れを告げさせてはだめですよ。さもないと、まずいことになりますからね。」とキツネは言いました。それからキツネは尻尾を伸ばし、王様の息子がそれにすわると、キツネはビュンビュン切り株や石を越えて行き、王子の髪が風でピューピューなりました。
王子が金のお城に着くと、キツネが言った通りでした。真夜中まで待つと、すべてが深い眠りに入っていたとき、美しい王女が浴室に行こうとしていました。そのとき、王子は跳び出て、王女にキスしました。王女は一緒に行きたいと言いましたが、さきに両親に別れをいうのを許してほしいと、哀れっぽく、涙ながらに王子に頼みました。最初は、王女の頼みに抵抗していましたが、王女がますます泣いて、王子の足元に泣き崩れたので、王子はとうとう負けてしまいました。しかし、乙女が父親のベッドのわきに着いた途端、王様と城の残りの人たちが目覚め、若者はつかまり、牢屋に入れられました。
次の朝、王様は、「お前の命はないものと思え。ただし、私の窓の前にたっていて、向こうをみる邪魔をしている山をとりされば、慈悲もあるぞ。それを8日以内に終わらせることだ。そうすればほうびとして娘をやろう。」と王子に言いました。
王様の息子は始めました、休まないで掘ってシャベルですくいましたが、7日経ったとき自分がやったのがどれだけ少ないか、これだけやって何もやっていないのと同じだと、わかりました。とても悲しくなってすっかり希望を失くしました。しかし7日目の夜、キツネが現れ、「あなたは手数をかけてやっても甲斐がないですね。だけど、まあ、行って寝なさい。私が代わりに仕事をやっておきますから。」といいました。
次の朝、王子が目覚め窓から外を見ると、山は消えていました。若者は大喜びで王様のところへ行き、仕事を終えたと言いました。嫌でもなんでも、王様は約束を守らなければならず、娘をくれました。
それで二人は一緒に出発しました。まもなく信頼のおけるキツネが二人に追いついてきました。「一番いいものを確かに手に入れましたね。だけど金の馬も金のお城の乙女に似合いますね。」とキツネは言いました。「どうして馬を手に入れるんだ?」と若者は尋ねました。「それを教えましょう。まず、金のお城にあなたを送った王様のところに美しい乙女を連れていくんです。聞いたことのないような喜びに包まれて、喜んであなたに金の馬をくれて連れてくるでしょう。できるだけ早くその馬に乗り、みんなにお別れの手をのべなさい。最後に美しい乙女にするのですよ。そして乙女の手をとったらすぐ、 馬の上にさっとあげ、走り去るのです。だれもあなたを連れ戻せないでしょう、だって馬は風より速く走るのだから。」
すべてうまくいって、王様の息子は金の馬に美しい王女をのせて連れ去りました。キツネはあとに残っていなくて、「さあ、今度は金の鳥を手に入れる手伝いをしましょう。金の鳥が見つけられる城の近くにきたら、乙女を降ろしなさい。乙女のことは私に任せてください。それから金の馬に乗り城の庭へ入りなさい。それを見て、大喜びするでしょう。そして金の鳥をあなたにもってくるでしょう。かごを手にしたら、私たちのところへ走って戻り、また乙女を連れていきなさい。」と若者に言いました。
その計画がうまくいき、王様の息子が宝物と一緒に家へ帰ろうとしたとき、キツネが「では、お手伝いのご褒美をください。」と言いました。「何が望みだ?」と若者が尋ねると、「向こうの森へ入ったら、私を撃ち殺し頭と足を切り落としてください。」とキツネは言いました。「それはすごい感謝のしかただね。そんなことはできそうもないよ。」と王様の息子は言いました。
キツネは「そうしてくれないなら、お別れしなくてはならない。だけど、いなくなる前にいい助言をしよう。二つのことを注意して。首つり台の肉を買うな。井戸のふちに腰掛けるな。」そうしてキツネは森へ走って行ってしまいました。
若者は「あれは不思議なけものだなあ。変な思いつきをしてるよ、いったい誰が首つり台の肉を買うっていうんだ?井戸のふちに腰掛けたいってのは、一度も思ったことがないよ。」と思いました。
王子は美しい乙女と一緒に馬に乗って行きました。そしてその道を進むと二人の兄が残っていた村へまた着きました。大騒ぎで物音がするので、「何事なんだい?」と尋ねると、二人の男が縛り首にあうところだと言われました。その場所へ近づくと、それは兄たちだとわかりました。さまざまな悪さをし、財産を全部使ってしまっていました。王子は二人を自由にできないかと尋ねると、「代わりにあんたが払えばね、だけど、どうして悪者たちに金を無駄遣いして、二人の自由を買うのかね?」と答えました。王子は考えなおしたりしないでお金を払いました。そして二人が釈放されると、みんな一緒に道を進みました。
そうして、キツネに最初に会った森に着きました。暑い日でしたが、森の中では涼しくて気持ちいいので、二人の兄は「井戸のそばで少し休んで、飲んで食べよう。」と言いました。王子は賛成しました。そして話をしているうちに、われ知らず、悪いことを考えもしないで井戸のふちに座りました。しかし、二人の兄は王子を後ろに押して井戸へ放り込み、乙女と馬と鳥を奪い、父親の元へ戻りました。「私たちはここに金の鳥をもってきただけでなく金の馬も手に入れました。それから金のお城の乙女も。」と二人は言いました。それでみんな大喜びしましたが、馬は食べようとしないし、鳥は歌おうとせず、乙女は座って泣いていました。
しかし、末の弟は死んでいませんでした。幸運にも井戸は乾いていて、怪我をしないで柔らかい苔の上に落ちたのですが、また井戸の外へでられませんでした。この困難のときでさえ、忠実なキツネは王子を放っておかず、やって来て、跳びおりると、忠告を忘れたことを非難しました。「だけどあきらめられないんだ。もう一度日のあたるところへ出してあげましょう。」と言って、尻尾をつかみ、しっかり握っているように告げると、王子を引っ張り上げました。「あなたはまだ危険からすっかりは出ていないんですよ。あなたのお兄さんたちはあなたが死んだとはっきりはわからないので、森を見張りで囲んでいるんです。だから見られれば殺されますよ。」とキツネは言いました。しかし、貧しい男が道に座っていて、その人と若者は服を取り替え、こうして王様の宮殿へ行きました。
だれも王子がわかりませんでしたが、鳥は歌い始め、馬は食べ始め、美しい乙女は泣きやみました。王様は驚き、「これはどうしたことだ?」と尋ねました。すると、乙女は「わかりません。だけどずっと哀しかったのが、今はとても嬉しいのです。まるで本当の花婿が来たように感じます。」と言い、もしなにかもらすことがあれば殺すと他の兄たちが脅していたのだけれども、起こったことをすべて王様に話しました。
王様は、城にいる全員を自分の前に連れてくるようにと命令し、その中にぼろを着た若者も混じってきていましたが、乙女はすぐ若者をわかり、首に抱きついてきました。悪い兄たちは捕まえられ、殺されました。しかし王子は美しい乙女と結婚し王位の跡継ぎを宣言しました。しかし、可哀そうなキツネはどうなったでしょう?ずっとあとになって、王様の息子がもう一度森で歩いているとキツネが出てきて、「今あなたには望めるものが全部あります。でもわたしの惨めさに終わりはありません。しかも私を救うのはあなたにできることです。」と言って、また自分を撃ち殺して頭と足を切り落とすようにと涙ながらに頼むのでした。それで王子はそうしました。すると途端に、キツネは人間に変わり、他ならぬ美しい王女の兄でした。かけられていた魔法からとうとう自由になったのです。それで、王子たちは生きてる間ずっと望み通り幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

恋人ローランド

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、本物の魔女がいて、娘が二人ありました。一人は醜く意地悪でしたが、この娘は実の娘なので可愛がっていました。もう一人は美しく善良でしたが、継娘なので嫌っていました。あるとき継娘がきれいなエプロンをもっていたところ、もう一人の娘がとても欲しかったので、妬ましくなり、母親にそのエプロンを絶対欲しいと言いました。「お前、静かにおし。お前に持たせてやるとも。お前の姉さんはとっくに死んで当然だったのだよ。今夜眠っている時、行ってあの子の頭を切り落としてやるさ。お前は気をつけてベッドの向こう側にいるようにして、前の方にあの子を押すんだよ。」と老婆は言いました。可哀そうな娘は、ちょうどその時隅にいて全部聞かなかったなら、お終いだったでしょう。
一日中、娘はあえて外出しませんでした。そして寝る時間がくると、魔女の娘は遠い側に寝るため先にベッドに入りました。しかし、寝入るともう一人の娘は魔女の娘を前にやさしく押して、自分は壁に近く、後ろの位置に寝ました。夜中に、老婆は忍び入って来て、右手に斧を持ち、左手で外側に誰か寝ているか確かめ、それから両手で斧を握ると、実の子供の頭を切り落としました。
老婆が行ってしまうと、娘は起きて、ローランドという名の恋人のところに行き、ドアをたたきました。ローランドが出てくると、娘は、「ねぇ、いとしいローランド、私たちは大急ぎで逃げなくちゃ。私の継母が私を殺そうとしたの。だけど、自分の娘を殺しちゃったのよ。朝が来て自分がやったことを母がわかったら、私たちおしまいよ。」と言いました。「だけど、まずお母さんの魔法の杖を持っていく方がいいよ。そうしないと追いかけてきたら逃げられないよ。」とローランドは言いました。娘は魔法の杖をとってきて、死んだ娘の頭をとり、下に3滴の血を、1つはベッドのまえに、1つは台所に、1つは階段に、たらしました。それから、恋人と急いで逃げました。
年とった魔女が次の朝起きて、娘を呼び、エプロンをあげようとしましたが、娘は来ませんでした。それで魔女は「どこにいるんだい?」と叫びました。「ここよ、階段の上、掃いてるの。」と最初の血の一滴が答えました。老婆は出て行きましたが、階段の上にだれも見えないので、もう一度「どこにいるんだい?」と叫びました。「ここよ、台所よ、体を暖めているの。」と2滴目の血が叫びました。老婆は台所に入りましたが、誰も見つけませんでした。それでまた「どこにいるんだい?」と叫びました。「ああ、ここベッドの中よ、眠っているの。」と3滴目の血が叫びました。老婆はその部屋のベッドに行きました。そこで何を見たでしょう?実の娘でした、自分が頭を切り落として、血にまみれていました。
魔女はカーっとなって窓に跳びあがり、世界をはるか遠くまで見ることができたので、継娘が恋人のローランドと急いで逃げていくのを見つけました。「そうはなるか!お前がずっと遠くに行ったって、にがさないぞ。」と叫びました。長距離長靴を履き、1時間で歩く距離を1歩で歩いて、魔女はほどなく二人に追いつきました。しかし、娘は老婆が大股で近づいてくるのを見て、魔法の杖で、恋人のローランドを湖に、自分をその真ん中で泳いでいるカモに変えました。
魔女は岸にいて、パン屑を投げ入れ、カモをおびきよせようと際限なくやっていましたが、カモは誘いに乗りませんでした。それで老婆は来たように夜家に帰らなければなりませんでした。これを見て、娘と恋人のローランドはまた元の人間の形に戻り、夜明けまで一晩中歩き続けました。それから娘はイバラの垣の真ん中に立つ美しい花に、恋人のローランドをバイオリン弾きに変えました。まもなく、魔女が大股で近づいてきて、「音楽家さん、あの美しい花を折りとっていいですか?」と音楽家に言いました。
「いいですとも、その間私はあなたに演奏してさしあげましょう。」とバイオリン弾きは答えました。魔女がせかせかとイバラの中に這っていき、花が誰か全くよく知っていて、まさに花を折り取ろうとしたとき、バイオリン弾きは演奏を始め、好きだろうと嫌いだろうと、魔女は踊らされました。というのはそれは魔法の踊りだったからです。速く弾けば弾くほど荒々しく跳ね上がらなければならなかったので、トゲで服は破れて脱げて、魔女は体にトゲが刺さり、傷ついてどうとう血が出ました。それでも弾くのを止めなかったので、魔女は踊り続け、ついに死んで地面の上に動かなくなりました。
もう解放されたので、ローランドは「じゃあ、お父さんのところへ行って結婚式の準備をするよ。」と言い、娘は「その間、ここにいてあなたを待っているわ。だれも私だとわからないと思うから、赤い石の目印に変身してるわね。」と言いました。
それから、ローランドは去り、娘は野原の赤い目印のように立って、愛する人を待っていました。しかし、ローランドは家に着くと、別の女の罠にはまり、その女がとても強く魅惑したのでローランドは娘を忘れてしまいました。可哀そうな娘は長い間そこにいましたが、ローランドが全く戻ってこないので、悲しくなり、とうとう自分を花に変え、「誰かがきっとこの道を通り、私を踏みつけるでしょう。」と考えました。
ところが、羊飼いが野原で羊を放していて、花を見つけ、とてもきれいだったので、摘み取って持ち帰り、引出しにしまいました。そのときから、羊飼いの家では奇妙なことが起こりました。朝起きると、すでに仕事は全部終わっていて、部屋は掃除され、テーブルとベンチは拭かれ、暖炉の火は点けられ、水が汲まれていました。昼には、家へ帰ると、食卓が整えられ、おいしい御馳走が出されていました。羊飼いはどうしてこうなるのかわかりませんでした。というのは家の中で人間を一度も見なかったし、誰も家の中で隠れていられなかったからです。
羊飼いはこうした上手なお勤めは確かに気に入りましたが、それでもやはり最後にはこわくなって、賢い女の人(注)のところへいき、相談しました。賢い女の人は「この陰にはなにか魔法があるわね。朝とても早く、何か部屋で動いているとか何か見たら、それが何でも、その上に白い布をかぶせなさい、そうすれば魔法が解けますよ、わかったわね。」と言いました。
羊飼いはお告げの通りにしました。次の朝ちょうど夜があけるとき、引出しが開き、花がでてくるのが見えました。羊飼いはすばやくそちらに跳んで、白い布をかぶせました。その瞬間、変身は終わって、美しい娘が前に立ち、自分は花だった、そして今まで家事にいそしんでいた、と認めました。娘は自分のこれまでのことを話し、羊飼いは娘が気に入ったので、結婚を申し込みました。しかし、娘は断りました。というのは恋人ローランドに捨てられたにしても忠実なままでいようと思ったからです。「それでも、出て行かないで、あなたのために家事をし続けます。」と娘は羊飼いに約束しました。
さてローランドの結婚式が祝われる日が近づいてきました。そしてその国の古い習慣に従って娘はみんな式に出席し、結婚する二人のために歌うことになっていると告げられました。忠実な娘はこれを聞いてとても悲しくなったので、心臓が破れそうで、そこへ行かないと思いましたが、他の娘たちが来て連れて行きました。自分が歌う順番になると、後ろに下がり、とうとう自分だけが残ったので断ることができませんでした。
しかし、娘が歌い始め、その歌がローランドの耳に届くと、ローランドは跳びあがり、「この声を知っている。あれが本当の花嫁だ。僕は他の誰とも結婚しない。」と叫びました。忘れていたこと、心から消えたことすべてが突然心に戻ってきたのでした。それから忠実な娘は恋人のローランドと結婚式を挙げ、悲しみは終わり、喜びが始まりました。
(注)「賢い女の人」・・・巫女とかイタコとか今では透視能力者みたいな人をいうらしい。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

昔、貧しいけれど、美しい娘がいる粉屋がいました。さて、この粉屋がたまたま王様のところに行き、話すことになりましたが、自分を重要にみせるために、「私にはわらを紡いで金にできる娘がいます。」と王様に言いました。王様は「それは、とても気にいる技だな。もし娘がお前が言うように賢いなら、明日宮殿に連れて来い。テストしてみよう。」と粉屋に言いました。
そして、娘が連れて来られると、王様はわらがまったくいっぱいある部屋に連れて行き、糸車と巻き枠を渡し、「さあ、仕事にかかれ、もし夜の間にこのわらを紡いで明日早朝までに金にしなければ、お前は死ななければならん。」と言いました。そうして自分で部屋に錠をかけ、娘をひとり部屋に残しました。それでそこで可哀そうな粉屋の娘は座り、どうしたら命が助かるか判らなく、またわらを紡いで金にする方法も見当がつかないので、だんだん恐くなり、とうとう泣き出しました。
しかし、突然ドアが開き、1人の小人が入ってきて、「今晩は、粉屋の娘さん、どうしてそんなに泣いているの?」と言いました。「ああ、わらを紡いで金にしなければならないの。でもどうやるのかわからないのよ。」と娘は答えました。「何をくれる?」小人は言いました、「もしそれをやってあげたら?」「私の首飾りよ。」と娘は言いました。小人は首飾りを受け取り、糸車の前に座り、グル、グル、グルと3回転すると、巻き枠はいっぱいになりました。そして別の巻き枠をつけ、グル、グル、グルと3回転すると、2番目の巻き枠もいっぱいになりました。朝まで繰り返し続けて、わらが全部紡がれると巻き枠は全部金でいっぱいでした。
夜明けまでには王様はもうそこに来て、金を見ると、驚き喜びました。しかし心はもっと欲張りになりました。それで粉屋の娘を、前のよりはるかに大きくわらでいっぱいの別の部屋に連れていかせ、命が惜しければそれもまた一晩で紡ぐように命令しました。娘は助かる方法が判らず泣いていました。そのとき、ドアがまた開き、小人が現れて、「そのわらを金に紡いだら何をくれるかね?」と言いました。「指にはめてる指輪よ。」と娘は答えました。小人は指輪を受け取り、糸車を回し始めました、そして朝までにはわらを全部キラキラする金に紡いでしまいました。
王様はそれを見て、測り知れないほど喜びましたが、まだ十分金が無いと考え、粉屋の娘をわらでいっぱいのさらに大きい部屋に連れて行かせ、「これも夜のうちに紡がなければならない。だが、もし成功すれば妻にしてやろう。」と言いました。
「たとえ粉屋の娘でも、世界中でこれ以上金持ちの妻を見つけられないだろう。」と王様は考えたのです。
娘が1人になると、小人はまた3回目に来て、「今度もわらを紡いだら何をくれるかね?」と言いました。「あげるものは何も残ってないわ。」と娘は答えました。「じゃあ、もしお妃になったら、最初の子供をくれると約束してくれ。」(そんなことが起きるかどうかいったい誰がわかる?)と粉屋の娘は思い、また、この苦境にあって他に助かる方法も知らないので、小人に望むものをあげると約束しました。それで小人はもう一度わらを金に紡ぎました。
そして王様は朝に来て、全てが望んだようになっているのを見て、結婚し、かわいい粉屋の娘はお妃になりました。 。
1年後、お妃は美しい子供を産み、小人のことを考えもしませんでした。しかし突然小人は部屋に入ってきて、「さあ、私に約束したものをくれ。」と言いました。
お妃は恐怖に襲われ、子供を置いてくれれば王国の財産すべてをあげると小人に言いました。しかし、小人は、「いいや、生きているものが世界中の財宝すべてより私には価値がある。」と言いました。それで、お妃は嘆き、泣き始めました。それで小人は可哀そうになり、「3日間、待ってやるよ。もしその時までに私の名前をさがしあてたら、子供をもっていてもよい。」と言いました。
それで、お妃は、夜通し、これまで聞いたことのあるあらゆる名前を考え、また、使者を国中ではるか遠く送り、他にあるかもしれない名前を尋ねさせました。次の日小人が来ると、カスパー、メルヒオーレ、バルサザールから始め、知っている名前全部を次から次へと言いましたが、そのどれにも小人は「それは私の名前ではないよ。」と言いました。2日目は近所に住んでいる人々の名前を尋ねさせました。そして、小人に最も普通でない珍しい名前を繰り返しました。「もしかして、あなたの名前はショートリブズ、シープシャンクス、それともレースレッグ?」しかし小人は常に、「それは私の名前じゃないよ。」と答えるのでした。 。
3日目に使者は再び戻ってきて、「新しい名前は一つも見つけられませんでしたが、高い山の森のはずれに来たとき、狐とウサギがお互いにおやすみなさいと言っていたところですが、小さな家を見つけました。それで家の前で火が燃えていて、火の周りでとてもへんてこりんな小人が跳ねていました。1本足で跳ねて、『今日焼いて、明日は調合し、その次は若いお妃の子供をもらうんだ。はは、嬉しいな、おいらがルンベルシュティルツヒェンと呼ばれるとは誰も知らないんだ。』と叫んでいました。」
その名前を聞いてお妃がどんなに喜んだか想像してごらんなさい。その後まもなく小人が入ってきて、「さあ、お妃、私の名前は何?」と尋ねました。初めお妃は、「あなたの名前はコンラッド?」と言いました。「いいや。」「あなたの名前はハリー?」「いいや。」「もしかして、あなたの名前はルンベルシュティルツヒェン?」
「悪魔がお前に教えたな!悪魔がお前に教えたな!」と小人は叫び、怒って地団太をふみ、右足でとても深く地面に突いたので、脚全体がめり込んでしまいました。それで更に怒って両手でとても強く左足を引っ張ったので体が2つに千切れてしまいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

背嚢と帽子と角笛

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、3人の兄弟がいましたが、だんだん貧しくなり、とうとうあまりに貧しくて空腹を我慢しなくてはなりませんでした。何も食べたり飲んだりするものがなかったのです。それで「こんな風に続けていられない。世界に出て運を試してみたほうがいいよ。」と言いました。従って3人は出かけていき、すでに沢山の道と沢山の草の上を歩きましたが、幸運にはあっていませんでした。ある日、大きな森に着き、その真ん中に丘があり、近寄ってみるとその丘は全部銀でした。それで長男は「今おれは望んだ幸運を見つけたよ。もうこれ以上何も欲しくないよ。」と言って、運べるだけ多くの銀をとり、向きを変えるとまた家に帰りました。
しかし他の二人は「幸運からただの銀よりもっと多くの何かが欲しい。」と言って、銀には触れず、道を進みました。止まらずに2日長く歩いたあと、全部金の丘に着きました。2番目の兄は立ち止まり、心の中で考えましたが、決心できませんでした。「どうしようか。この金を沢山持っていって残りの人生は十分になるだろうか。それとももっと行こうか?」とうとう決心がついて、ポケットに入るだけ多く詰め込んで、弟にさよならを言うと家に帰りました。
しかし3番目は、「金銀は僕を感動させない。僕は運試しの機会を捨てないぞ。多分もっといいものがまだ与えられるだろう。」と言って旅を続けました。3日歩いたとき、前の森より更に大きく、決して果てに着きそうもない森に着きました。そして食べたり飲んだりするものが何も見つからなかったので、ほとんど精魂が尽きました。それで、上だと森の果てが見えるか確かめようと高い木に登りましたが、目の届くかぎりでは木のてっぺん以外何も見えませんでした。それで、木を下り始めましたが、空腹でたまらず、「もう一度お腹いっぱい食べれさえすればなあ」と心の中で思いました。
下に下りると、木の下にご馳走が広げられて、自分の方に湯気が立ちのぼってくる食卓があったのでびっくりしました。「今度は願いが適当な時期に本当になってている」と言いました。そして、誰がその食べ物を持ってきたか、誰が料理したかを尋ねずに、空腹がいやされるまで楽しんで食べました。食事が終わると、綺麗な小さいテーブル掛けがここの森に捨てられるのは結局は残念だと思い、きちんとたたんでポケットにしまいました。それからまた旅を続けました。そして夜になってまた空腹になると、小さい布を試してみようと思い、広げて、「またご馳走でいっぱいにして欲しい」と言いました。その願いが唇を通るとすぐに最も素晴らしい食べ物がのっている皿が置けるだけ沢山テーブルにのっていました。「今、どの台所で料理が作られるかわかった。 お前は金銀の山より僕にとって高価だ。」と彼は言いました。というのはそれが魔法の布だとはっきりわかったからです。しかし、布では、家で静かに座っていさせるにはまだ十分ではありませんでした。 それよりも世界を放浪し、さらに運を試したいと思いました。ある夜、寂しい森で、ほこりだらけの黒い炭焼きに会いました。そこで炭を焼いていたのですが、火のそばにジャガイモをおいて、食事をつくるところでした。「今晩は、クロウタドリさん、1人でどうだい?」と若者は言いました。
「来る日も来る日も同じだね。毎晩じゃがいもだよ。食べてみるかい?お客になりませんか?」と炭焼きは答えました。「どうもありがとう、君の夕食を盗む気はないよ、お客を予定に入れてなかったでしょ。だけど僕のもっているもので我慢してくれるなら、君を招待するよ。」と旅人は言いました。「誰が用意してくれるんだね?あなたは何ももっていないし、二時間歩く範囲ても何かくれそうな人はだれもいないよ。」と炭焼きは言いました。「それでも食事があるんだ。しかも今まで食べたどれよりもおいしいのがね。」と若者は答えて、背嚢から布を取り出し、地面に広げ、「小さな布よ、ご馳走を出せ」と言いました。するとすぐに、まるで今台所からでてきたばかりのように熱く煮た肉と焼いた肉がそこにありました。
炭焼きは目を見開いてそれを見つめましたが、急かすまでもなく、食べ始め、突っついて一口をだんだん大きくし黒い口に入れました。全部食べてしまうと、炭焼きは満足してにっこりし、「ねぇ、そのテーブル掛けはいいね。この森では私にとってすばらしいものになるよ。ここでは誰も僕に料理してくれる人がいないからね。取替えっこしてくれないか。そこの隅に兵隊の背嚢が下がっているだろ。 確かに古くてぼろっちいけど、中に隠れた素晴らしい力があるんだ。だけどもう使わないから、テーブル掛けと交換にあげるよ。」と言いました。「まずどんな素晴らしい力があるのか知らなくちゃ。」と若者は答えました。
「教えるよ、手でトントンたたくたび伍長と頭から足まで武装した6人が出てきて、命令した何でもやるんだ。」と炭焼きは答えました。「僕に関する限り、他に何もやれることがなければ交換しよう。」と若者は言い、炭焼きに布を渡し、フックから背嚢をとって背負い、別れを告げました。暫く歩いたとき、背嚢の魔法の力を試してみたくなり、トントンたたきました。すると途端に7人の兵士が歩いてきて、伍長が「ご主人様何をお望みでしょう?」と言いました。 「全速力で炭焼きのところへ行き、私の魔法の布を取り戻して来い」と若者がいうと、兵士たちは左を向き、間もなく要求したものを持ち帰りました。そして多くの質問をしないで、炭焼きからとってきたのでした。若者は背嚢に戻るよう命令して、旅を続け、幸運がもっと明るく照るよう望みました。日が暮れるまでに夕食を火のそばで準備している別の炭焼きのところにきました。「肉汁はないが塩でジャガイモを食べる気があれば、来て一緒に座れよ。」とクロウタドリが言いました。「いや、今回は君がお客になるんだ。」と若者は答え、布を広げると、あっという間に最も美しい料理でいっぱいになりました。二人は一緒に飲んで食べて心から楽しく過ごしました。食事が終わると、炭焼きは「棚の上に小さな古い擦り切れた帽子があるんだが、不思議な性質があるんだ。誰かかぶって頭の上でまわすと、12発一緒に発射されたみたいに大砲が出て、何でも全部目茶目茶にするから誰ももちこたえられないんだよ。その帽子は僕には役に立たないから、君のテーブル掛けと交換に喜んであげるよ。」と言いました。
「とても結構だ。」と若者は答え、帽子をとってかぶり、テーブル掛けをおいてきました。しかし、立ち去るとすぐ背嚢をトントンたたき、兵士たちは布を取り戻しに行かなければなりませんでした。「1つがもう1つに続いてくる。僕の運はまだ終わりにきていないようだ。」と思いました。その思いは若者をだましませんでした。丸1日歩いたあと、3番目の炭焼きのところに来ました。そして前の炭焼きと同じように肉汁のないジャガイモに招待しました。しかし、若者は魔法の布の食事を一緒にさせてあげました。そしてその炭焼きは布がとても気に入ったので、帽子とはとても違った性質の角笛と交換することを申し出ました。だれかそれを吹いた瞬間、城壁や要塞がすべて崩れ落ち、町や村が全部廃墟になるというのです。若者はこれを聞いてすぐ、炭焼きに布をあげました。しかし、後に、兵士たちを取り戻しにやりました。その結果、とうとう背嚢、帽子、角笛の3つが全部手に入りました。さあ、「これで僕はいっぱしの男だ。家に帰って兄たちの暮らしぶりを見るときだな」と若者は言いました。
家に着くと、兄たちは金銀で美しい家を建てて、裕福に暮らしていました。会いに行くと、ぼろぼろの上着を着て、頭にはみすぼらしい帽子をかぶり、古い背嚢を背負って入ってきたので、兄たちは弟だと認めようとはしませんでした。「お前は、金銀を見下し、自分にはもっといいものを望んだ私たちの弟だと言ってるよな。そういう人は強大な王様のように豪華な馬車に乗って到着するもんだ。乞食のようにではなく、な。」と嘲って言い、玄関から追い出しました。それで弟は激怒して背嚢をたたき、150人が頭から足まで武装して目の前に立ちました。それから、兵士たちに命令し、兄弟の家を囲ませ、、二人はハシバミ棒を持って傲慢な兄弟を自分が誰かわかるまで打ち据えさせました。
激しい騒動がおこり、人々が走ってきて、困っている二人に手を貸そうとしましたが、兵士たちにかないませんでした。このニュースがとうとう王様のところに届くと、とても怒り、指揮官に軍と一緒に行き、この平和を乱す者を町から追い出すよう命じました。しかし、背嚢もちの男はすぐにさらに大きい兵士の一群を出し、に反撃し、指揮官と部下たちは鼻血を出して退却させられました。王様は「このごろつきはまだ鎮圧されていない。」と言い、次の日、さらに大軍を送りましたが、前よりも更によくありませんでした。若者はさらに上回る兵士を出し、早く終わらせるため、帽子を頭の上で2度回したので、重砲が鳴り響き、王様の部下たちは破れ、逃げました。
「こうなったら、王様が娘を妻にくれるまで和解しないぞ。そして僕が代理で国全体を治めるんだ。」と若者は言い、それを王様に告げさせました。それで、王様は娘に「困ったことに解決の道が無い。私には、あの者が望むことをやる他に方法がない。私が平和を望み、頭に王冠を載せておくにはお前をあげなければならない。」と言いました。
それで結婚式が祝われましたが、王様の娘は、夫がみすぼらしい帽子をかぶり背嚢を背負っている平民なことに腹を立てていました。夫を厄介払いしたくて、日夜どうしたらこれを果たせるか研究しました。そして、「もしかして不思議な力は背嚢にあるのかしら」と思いました。それで愛を装って抱き、男の心が和らいだとき、「その嫌な背嚢を脇に置いておきさえすればいいのに。そのせいであなたはとても醜くみえるから恥ずかしいわ。」と言いました。「お前、この背嚢は一番の宝なんだよ。これをもっている限り、私が恐れる力がこの世にないのだ。」と言って、その背嚢に与えられている素晴らしい美点を娘に洩らしました。
すると娘はまるでキスしようとしているかのように若者の腕に身を投げ出しましたが、巧妙に肩から背嚢を外しそれを持って逃げました。そして一人になると早速背嚢をたたき、兵士たちに前の主人をつかまえ王宮から連れ出すように命令しました。兵士たちは従いました。すると偽りの妻は更に多くの兵を送り男を国から追い出すことにしました。若者はもし帽子をもっていなかったら殺されていたでしょう。それで両手が自由になるとすぐ2回まわしました。途端に大砲が鳴り響き、全てを破壊したので、王様の娘は出てきて許しを乞うしかありませんでした。とても心を動かされる言葉で願い、もっといい妻になるというので、男は納得し、和平を結びました。
王様の娘は、愛想良く振る舞いとても愛してるかのように演じたので暫くすると男をだませるようになりました。その結果、男は、だれかが背嚢を手に入れても、まだ帽子があるかぎり自分には何も手出しできないのだと打ち明けました。娘は、その秘密を聞くと男が眠るまで待ち、帽子を奪っていき、通りに投げました。しかし若者にはまだ角笛が残っていました。そして、とても怒って全力で吹きました。
そくざに城砦や要塞、町や村が崩壊し、王様や娘は下敷きになって死んでしまいました。若者が角笛を下に置かないでもう少し長く吹いていたら、全てが廃墟になり、石ですらなくなっていたでしょう。その後は誰も反対する者はなく、若者は国全体の王様になりました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

白雪姫

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、真冬に、雪が羽のようにチラチラと空から降っているとき、窓のところでお后が縫物をしていました。窓枠は黒檀でできており、縫物をして窓から雪を見ている間に、お后は針で指を刺してしまい、3滴の血が雪の上に落ちました。その赤は白い雪の上できれいに見え、お后は「雪のように白く、血のように赤く、窓枠の木のように黒い子供が欲しいわ…」と思いました。
その後まもなくお后は女の子を産みました。その子は雪のように白く、血のように赤く、髪は黒檀のように黒かったので、白雪姫と呼ばれました。子供が生まれたとき、お后は亡くなりました。
1年過ぎて王様は新しい妻を迎えました。このお后は美しい人でしたが、高慢で気位が高く、他のだれかが自分より美しいのは我慢できませんでした。お后は不思議な鏡を持っていて、その鏡の前に立ち、映っている自分を見て、「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」と言いました。
鏡は答えました。「お后さま、あなたが一番美しい。」
するとお后は満足しました、鏡は真実を言うと知っていたからです。
しかし白雪姫が成長していって、だんだん美しくなり、7歳のときは昼と同じくらい美しく、お后自身より美しくなりました。そしてあるときお后が「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」と尋ねると、
鏡は、答えました。「お后さま、あなたはここの誰よりも美しい。だが、白雪姫はもっと美しい。」
それでお后はショックをうけ、顔色を黄や緑に変えて妬みました。そのときから白雪姫を見るたびに、心臓が胸で盛り上がるように吐き気がし、娘をとても憎みました。妬みと自尊心が心の中で雑草のようにだんだん高くはびこって、昼も夜も気が休まりませんでした。お后は猟師を呼び、「あの子を森に連れていきなさい。もう見るのは嫌だ。殺して証拠に肺と肝臓を持ってきなさい。」と言いました。猟師は命令に従い、娘を連れ去り、ナイフを引き抜いて白雪姫の無垢な心臓を刺し貫こうとしたとき、娘は泣きだして、「猟師さん、殺さないで。森へ逃げて二度と家へ帰らないわ。」と言いました。
娘がとても美しいので猟師は可哀そうになって、「じゃあ、逃げろ、可哀そうな子。」と言いましたが、(獣だちがすぐお前を食べてしまうだろう)と思いました。それでももう娘を殺さなくてもよくなったので心から石が転がり出たように思えました。そしてちょうどそのとき子熊が走ってきたので、それを刺して肺と肝臓を切りとり、子供が死んだ証拠としてお后に持っていきました。そして意地悪なお后はそれを食べ、白雪姫の肺と肝臓を食べたと思いこみました。
しかし今や可哀そうな子供は大きな森にただ一人で、とても怖くて木々の葉っぱを眺めてどうしたらよいかわかりませんでした。それから走り始め、尖った石を越えイバラを通りぬけ走りました。獣は姫を通りこして走りましたが、危害を加えませんでした。
足が行く限り走って、ほぼ夕方になり、小さな小屋がみえ、姫は休もうとして中へ入りました。小屋のなかのあらゆるものが小さいのですが、話せないほどきちんとしてきれいでした。食卓があり、その上には白いカバーがかかっていて、7枚の小さな皿がのっていました。それぞれの皿には小さなスプーンがあり、さらに7個のナイフやフォークや7個のカップがありました。壁際に7つの小さなベッドがあり、雪のように白いベッドカバーでおおってありました。
白雪姫はとてもおなかがすいて喉が渇いていたので、それぞれの皿から野菜やパンをいくらか食べ、それぞれのカップから1滴ずつ飲みました。1つのものだけから全部とってしまいたくなかったからです。それから、とても疲れていたので、小さなベッドの一つに横になりましたが、どれも合いませんでした。長すぎたり短すぎたりしましたが、ついに7番目のベッドがいいとわかり、そのベッドに残り、お祈りをして眠りました。
すっかり暗くなって、小屋の持ち主たちが戻ってきました。この人たちは山を掘って鉱石を探していた小人でした。小人たちは7つのろうそくを灯し、小屋の中が明るくなって誰かがそこにいたことにきづきました。というのは、あらゆるものが置いておいたのと同じように並んでいなかったからです。
最初の小人が「誰が私の椅子に座っていたんだ?」2人目の小人が「誰が私の皿から食べたんだ?」3人目が「誰が私のパンを食べたんだ?」4人目が「誰が私の野菜を食べたんだ?」5人目が「誰が私のフォークを使ったんだ?」6人目が「誰が私のナイフで切ったんだ?」7人目が「誰が私のカップから飲んだんだ?」と言いました。
それから最初の小人が周りを見回し、ベッドに小さなくぼみがあるのを見て、「誰が私のベッドに入ったんだ?」と言い、他の小人たちが近づいてきて、それぞれの小人が「誰かが私のベッドにも寝てたんだ。」と言いました。しかし7人目が自分のベッドを見たときそこで眠っている白雪姫を見ました。それで他の小人たちを呼んだので、みんな走って近づいてきて、驚いて叫び、7本の小さなろうそくをもってきて、白雪姫を照らしました。「うわあ!」「わあ!」「なんて可愛い子だ!」と小人たちは叫びました。そしてとても嬉しかったので、白雪姫を起こさないでそのままベッドに寝かせておきました。そして7人目の小人はひとり1時間ずつ仲間と一緒に眠り、そうしてその夜が過ぎました。
朝になり白雪姫は目覚めて7人の小人たちを見るとこわがりました。しかし小人たちはやさしく、「名前は何ていうの?」と尋ねました。「私の名前は白雪姫よ。」と姫は答えました。「どうしてこの家に来たんだね?」と小人たちは言いました。それで姫は継母が自分を殺させようとしたが、猟師が命を助けてくれ、一日中走って、最後に小人たちの家を見つけた、ということを話しました。
小人たちは、「家のことをやって、料理し、ベッドを整え、洗濯し、縫ったり編んだりして、全部きちんときれいにしてくれるなら、一緒にいてもいいよ。そうしたらあんたが何も不足ないようにしてあげる。」と小人たちは言いました。「ええ、喜んで。」と白雪姫は言いました。そして姫は小人たちと一緒にいました。姫は小人たちのために家をきちんとしておきました。朝に小人たちは山に行き、銅や金を探し、夜に戻ってきました。その時は夕食は準備ができていなければなりませんでした。姫は一日中一人でした。それでやさしい小人たちは姫に注意して、「継母に注意しなさいよ。あんたがここにいるのがまもなくわかるだろうから。ほんとに誰も家に入れないんだよ。」と言いました。
しかし、お后は白雪姫の肺と肝臓を食べたと信じていたので、自分がまた一番で最も美しいとしか考えられなくて、鏡のところに行き、言いました。「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」
鏡は、答えました。「お后さま、あなたは私に見えるうちで一番美しい。だが、山の向こうの、7人の小人が住むところに、白雪姫はまだ元気に生きている。誰も白雪姫ほど美しい人はいない。」
それでお后はびっくり仰天しました。というのは鏡は決して嘘を言わないと知っているので、猟師が自分を裏切って、白雪姫がまだ生きているとわかったからです。
それでお后はどうやって白雪姫を殺そうかと考えに考えました。というのは自分が国中で一番美しくない限り、妬ましさで心が休まらないからです。とうとうやることを思いつくと、お后は顔を塗り、行商の女の服装をし、誰もお后だとわからないようにしました。この変装で、7つの山を越えて7人の小人の家へ行き、戸をたたき、「きれいなものを売ってるよ、とても安い、とても安いよ。」と叫びました。白雪姫は窓から外を覗いて、「こんにちは、おばさん。何を売ってるの?」と叫びました。「いいもの。きれいなもの。いろいろな色のコルセットの紐。」と女は答え、鮮やかな色の絹で織られたものを引っ張りだしました。「きちんとわかる人を入れてもいいわ。」と白雪姫は思い、戸のかんぬきを外し、きれいな紐を買いました。「娘さん、なんてひどいかっこうなの?さあ、一度ちゃんとあなたに結んであげましょう。」とおばあさんは言いました。白雪姫はなにも疑わないでおばあさんの前に立ち、新しい紐で結ばせました。しかしおばあさんはとてもすばやくきつく結んだので、白雪姫は息ができなくなり死んだように倒れました。さあこれで私が一番美しいわ、とお后は心でつぶやき、逃げて行きました。
それからまもなくして、夜に7人の小人たちが家へ帰ってきました。しかし、愛する白雪姫が床に倒れていて、微かにもうごかず、死んでいるようなのを見て、どんなにショックをうけたことでしょう。小人たちは白雪姫を持ち上げて、とてもきつく締められているのをみたので紐を切りました。すると姫は少し息をし始め、しばらくして生き返りました。小人たちは何が起こったか聞くと、「その行商の女は性悪のお后に違いないよ。私たちがいないときは誰も家に入れないように注意しなさい。」と言いました。
しかし、性悪の女は家に着くと、鏡の前へいき、尋ねました。「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」
そして鏡は前と同じように答えました、「お后さま、あなたは私に見えるうちで一番美しい。だが、山の向こうの、7人の小人が住むところに、白雪姫はまだ元気に生きている。誰も白雪姫ほど美しい人はいない。」
これを聞くと、恐怖ですべての血が心臓に走りました。というのはお后は白雪姫がまた生きているとはっきりわかったからです。「だけど今度は、本当にお前をお終いにするものを考えてやる。」とお后は言いました。そして自分が知っている魔法の力で、毒の櫛を作りました。それから変装して別のおばあさんの姿になりました。そうして7つの山を越え、7人の小人の家に行き、戸をたたいて、「いいものを売ってるよ。安いよ。安いよ。」と叫びました。白雪姫は外を覗いて、「あっちへ行って。だれも入れられないのよ。」と言いました。「見ることはできるよ。」とおばあさんは言って、毒の櫛を引っ張りだし、持ち上げてみせました。姫はその櫛がとても気に入ったので、自分をごまかして戸を開けました。買い物が終わると、おばあさんは、「さあ一度あんたの髪をちゃんととかしてあげましょう。」と言いました。白雪姫は何も疑わないで、おばあさんに好きなようにさせました。しかし髪に櫛を入れた途端、櫛の中の毒が効いて姫は意識を失って倒れました。「絶世の美女のおまえも今はおしまいさ。」と性悪女は言って逃げて行きました。
しかし幸いにもほぼ夜になっていtので7人の小人たちが家へ帰ってきました。白雪姫が死んだように床に倒れているのを見たとき、小人たちはすぐに継母のことを疑い、見回して毒の櫛を見つけました。その櫛をはずしたとたん白雪姫は息を吹き返し、起こったことを話しました。すると小人たちはもう一度、用心するように、だれにも戸をあけないように、と注意しました。
お后は家で鏡の前へいき、尋ねました。「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」
そして鏡は前と同じように答えました、「お后さま、あなたは私に見えるうちで一番美しい。だが、山の向こうの、7人の小人が住むところに、白雪姫はまだ元気に生きている。誰も白雪姫ほど美しい人はいない。」
お后は鏡が話すのを聞いて、怒りでぶるぶる震えました。「私の命にかけても白雪姫を殺してやる。」とお后は叫びました。
そうしてお后は、誰もこれまで来なかった全く秘密の寂しい部屋に入っていき、そこでとても毒のあるリンゴを作りました。外側は赤い頬がついた白でおいしそうに見え、それを見た誰でも欲しくなるけれど、一口食べたら必ず死ぬことになるのです。
リンゴが準備できるとお后は顔を塗り、農家のおかみさんの扮装をしました。そうして7つの山を越え、7人の小人の家へ行きました。おかみさんは戸をたたきました。白雪姫は頭を窓から出し、「誰も中へ入れられないの。7人の小人さんたちが禁じたのよ。」と言いました。「どっちでもいいよ。まもなくりんごをおしまいにするからさ。ほら、一つあげるよ。」と女は言いました。「だめよ。私は何ももらっちゃいけないのよ。」と白雪姫は言いました。「毒があると思うのかい?ほら、りんごを半分に割るよ。あんたは赤い方を食べな。私は白い方をたべるからさ。」とおばあさんはいいました。りんごはとても上手に作られていて、赤い方だけに毒が入っていたのです。白雪姫は立派なリンゴが食べたかったのですが、おばあさんがその一部分を食べるのを見たとき、もう我慢ができなくなり、手を伸ばして毒の入った半分を貰いました。しかし、一口口に入れた途端、倒れて死んでしまいました。それからお后は恐ろしい顔で姫を見て、大声で笑い、「雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い人、今度は小人たちはお前を二度と目覚めさせられないよ。」と言いました。
お后は家で鏡の前へいき、「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」と尋ねると、鏡はついに「お后さま、あなたがこの国で一番美しい。」と答えました。するとお后の妬み深い心が休まりました。妬み深いこころが休むことができる限りにおいてですが。
小人たちは夜家へ帰ってきて、白雪姫が床に倒れているのをみつけました。姫はもう息をしていなくて死んでいました。小人たちは姫を持ち上げて、どくのある何かを見つけられないかとみて調べ、紐をほどき、髪をとかし、水や葡萄酒で姫を洗いましたが、全て無駄で、可哀そうな娘は死んでしまい、死んだままでした。小人たちは棺台に姫をのせ、7人全員がその周りに座り、3日間泣き続けました。
それから小人たちは姫を埋めようとしましたが、姫はまだ生きているように見え、まだ可愛い赤い頬をしていました。小人たちは、「この子を暗い土に埋められないよ。」と言って、周りから見えるように、透明なガラスの棺を作らせ、その中に姫をねかし、棺に金の文字で名前を書き、王様の娘と記しました。それから棺を山の上に置いて、一人がいつもそのそばにいて、番をしました。鳥たちも来て、白雪姫を悼んで泣きました。最初にふくろうが、それからカラスが、最後に鳩が来ました。
そして白雪姫は長い、長い間棺のなかに横たわっていましたが、変わらないで、眠っているかのように見えました。というのは、姫は雪のように白く、血のように赤く、髪は黒檀のように黒かったからです。
ところが、あるとき、王様の息子が山に入ってきて、一晩泊めてもらうため小人たちの家にいきました。王子は山の上の棺とその中の美しい白雪姫を見て、金の文字で書かれているものを読みました。それで、王子は「棺を貰い受けたい、望みのものを何でも与えよう。」と小人たちに言いました。しかし小人たちは、「世界中の金をもらってもそれと分かれません。」と答えました。それで王子は、「贈り物として貰えないか。というのは白雪姫を見ないでは生きられないからだ。私は最も大切なものとして姫を崇め大切にするつもりだ。」と言いました。こういう風に言うので小人たちは王子が可哀そうになり、棺をあげました。
そうして王様の息子は、家来の肩に担がせて棺を運んで行きました。するとたまたま家来が木の切り株につまづいて、その衝撃で白雪姫が食べたりんごの毒のかけらが喉から出ました。そしてまもなく姫は目を開け、棺のふたをあけて、起きあがり、もう一度生き返りました。「まあ、ここはどこ?」と姫は叫びました。王子はすっかり嬉しくなって、「私と一緒にいますよ。」と言って、起こったことを話し、「私は世界中の何よりもあなたを愛しています。私の父の宮殿へ一緒に来て、私の妻になってください。」と言いました。
そして白雪姫は喜んで申し出を受け、王子と一緒に行きました。二人の結婚式はとても見事で豪華に行われました。しかし、白雪姫の性悪な継母も宴に呼ばれました。それで美しい服を着て身支度を整えたとき、鏡の前に行き、「鏡よ、壁の鏡よ、この国で一番美しいのは誰?」と言いました。
鏡は答えました。「お后さま、あなたはここで一番美しい。しかし若いお妃ははるかにもっと美しい。」
すると性悪な女は呪いの言葉を言って、とても気分が悪くなり、すっかりくさりましたがどうしたらよいかわかりませんでした。はじめは結婚式に行くのはやめようと思いましたが、落ち着かないので、行って若いお妃に会うしかありませんでした。そして入っていくと、白雪姫だとわかり、怒りと恐れで立ちすくみ、動けませんでした。しかし、鉄の靴がすでに火にかけられ、はさみでつかんで運び込まれ、お后の前におかれました。それから真っ赤な熱い靴を履いて踊らされ、とうとう倒れて死にました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

つぐみの髭の王さま

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

ある王様に、はかり知れないほど美しい娘がいました。けれどとても高慢でその上横柄なので、どの求婚者も娘の気にいらなくて、求婚者を次々と追い返し、意地悪く笑い者にもしました。
あるとき、王様は大宴会を開き、そこへ遠近から結婚の相手となりそうな若者を招きました。若者たちは身分と地位に従って全員一列に整列させられました。最初は王様で、次は公爵、次は王子、伯爵、男爵、紳士階級がきました。それから王様の娘はそれぞれの身分の人の間を案内されましたが、どの人にもなにか異議を唱えました。一人は太りすぎていて、「酒樽ね」、背が高すぎると「やせでのっぽ、まるで役立たずね。」3人目は背が低すぎて「ちびのでぶはのろまよ。」、4人目は顔色が悪過ぎて「死神みたいね。」、5人目は顔が赤過ぎて、「見事なおんどりね。」、6人目は体が真直ぐでないので、「ストーブの後ろの乾かされた生木。」と言いました。
そんなふうに娘は一人ひとりに何か文句をつけましたが、列のかなり高い地位にいたりっぱな王様には特にはしゃいで、あごがすこし曲がっていたので、「ほら見て、つぐみのくちばしみたいなあごをしているわ。」と叫んで笑いました。その時からこの人はつぐみひげの王様の名前をもらいました。
しかし年とった王様は、娘が人々をあざ笑う以外何もしないで、そこに集まった求婚者みんなをばかにしたのを見ると、とても怒って、戸口に来た最初の乞食を娘の夫にすると誓いました。
2,3日後、バイオリン弾きが来て、少しのお金を稼ごうとして、窓の下で歌いました。王様はその歌をきくと、「あの男を上に来させろ。」と言いました。それでバイオリン弾きは、汚いぼろの服を着て入って来て、王様と娘の前で歌い、歌い終わると、施しを求めました。王様は、「お前の歌がとても気に入ったから、そこの娘を妻にやろう。」と言いました。
娘はぞっとしましたが、王様は「お前を最初の乞食にくれてやると誓いを立てた、そしてわしは誓いを守る。」と言いました。娘が何と言っても無駄で、牧師がよばれ、その場でバイオリン弾きと結婚させられてしまいました。式が終わると、王様は、「乞食女のお前がこれ以上宮殿にいるのはおかしいから、夫と一緒に立ち去れ。」といいました。乞食は娘の手をとって連れ出し、娘は一緒に歩いていかねばなりませんでした。二人が大きな森に来ると、娘は尋ねました、「この美しい森はだれのものなの?」「つぐみひげの王様のものさ。お前がその人を選んだら、この森はお前のものだった。」「ああ、私はなんて不幸なの。つぐみひげの王様にすればよかったのに。」
そのあと、二人は草原に来て、娘はまた「この美しい緑の草原は誰のものなの?」と尋ねました。「つぐみひげの王様のものさ。お前がその人を選んだら、この森はお前のものだった。」「ああ、私はなんて不幸なの。つぐみひげの王様にすればよかったのに。」
それから二人は大きな町に来て、娘はまた「この大きな町は誰のものなの?」と尋ねました。「つぐみひげの王様のものさ。お前がその人を選んだら、この町はお前のものだった。」「ああ、私はなんて不幸なの。つぐみひげの王様にすればよかったのに。」「お前がいつも別の夫を望んでいるのを聞くのは気に入らないね。おれはお前に十分じゃないのか?」とバイオリン弾きは言いました。
とうとう二人は小さな小屋に着きました。それで、娘は「まあ、なんて小さな家なの。このみすぼらしいあばら家は誰のものなの?」と言いました。バイオリン弾きは「おれとお前の家さ。ここで一緒に暮らすんだ。」と答えました。
娘は戸口が低くて身をかがめて入らなくてはなりませんでした。「召使たちはどこ?」と王様の娘はいいましたが、「何の召使だ?」と乞食は答えました。「お前はやってもらいたいことは自分でやらなくてはいけないのだ。すぐに火をおこして、水を火にかけ、おれの夕飯を作ってくれ。おれはすっかり疲れたよ。」しかし、王様の娘は火をつけたり料理したりは何も知らなくて、何かうまくやるには乞食が手を貸さないといけませんでした。乏しい食事を終えると寝ましたが、乞食は朝とても早く妻を起こして家事をやらせました。
2,3日こんなふうにまあなんとか暮らしましたが、蓄えが底をつきました。それで男は、「なあ、ここで食べたり飲んだりして何も稼がないではもうやっていけないよ。お前はかごを作れ。」と言いました。男は出かけて行って、柳を切り、家へ持って帰りました。それで妻はかごを作り始めましたが、かたい柳でかぼそい手を怪我してしまいました。
「これはだめだね。お前は糸を紡いだ方がいい。たぶんそれならもっとうまくできるだろう。」と男は言いました。妻は座って糸を紡ごうとしましたが、まもなく固い糸で柔らかい指を切ってしまい、血が出ました。「ほらね、お前は何の仕事にも向かないな。お前を嫁にして損したよ。さておれはつぼや土器の商売をしようと思うんだ。お前は市場に座って売ってくれよ。」と男は言いました。(ああ、もしお父様の国の人たちの誰かが市場に来て、私がそこに座って売っているのをみたら、どんなに笑うかしら?)と妻は思いましたが、そんなことは無駄で、飢え死にしたくなければ従うしかありませんでした。
初めて、妻はうまくできました。というのは妻がきれいだったので人々は喜んで買い、言い値でお金を払ったからです。お金を渡してつぼを置いていく人すらたくさんいました。それで、妻が稼いだお金が続く限り二人は暮らしました。それから夫は新しい瀬戸物をたくさん買いました。これをもって妻は市場の角に座り、売る準備をして自分の周りに瀬戸物を置いていました。しかし、突然酔っ払いの軽騎兵が馬で走って来て、ちょうど壺の間に乗り入れたので、壺はこなごなに壊れてしまいました。妻は泣きだして、こわくてどうしたらよいかわかりませんでした。「ああ、どうなるのかしら?これを知ったら、夫は何と言うだろう?」と叫びました。家へ走って帰り、夫にこの不運な出来事を話しました。「瀬戸物をもって市場の角にすわるやつがあるか?泣くのはやめろ。お前が普通の仕事ができないのはよくわかったよ。だから、王様の宮殿へ行って、台所女中の仕事はないかと聞いてきたんだ。お前を使ってくれると約束してくれたよ。そうすればただで食べ物を貰えるよ。」と男は言いました。
今度は王様の娘は台所女中になり、コックが手招きしたり呼んだりする元で働き、一番汚い仕事をしなければなりませんでした。ポケットの両方に小さなつぼをつけておき、残り物をそれに入れて家へ持って帰り、これを食べて二人は暮らしました。
王様の一番上の息子の結婚式が行われることになり、可哀そうな女は上に行って、広間の戸口のそばに行き、見ていました。すべてのろうそくがともされ、あとからあとからだんだん美しくなっていく人々が入っていき、すべてが華麗で豪華になり、女は悲しい心で自分の運命を考えました。そして、卑しい身分になりひどく貧しくなったのも元はといえば自分の高慢と横柄さにあったと呪いました。
運び込まれていったり、運び出されていくおいしい料理の匂いが女のところに届き、時々召使たちが少しばかり投げ与えてくれて、女は家へ持って帰るため壺に入れました。
突然王様の息子が、びろうどと絹の服を着て首に金のくさりをかけて、入ってきました。美しい女が戸のそばに立っているのを見ると、手をつかみ、踊ろうとしました。しかし、女は断り、恐怖で縮みあがりました。というのはそれが嘲って追い払った求婚者のつぐみひげの王様だとわかったからです。女はもがいて逃げようとしましたが役に立たなくて王子は広間へ引っ張って行きました。しかし女のポケットをぶら下げていた紐が切れて、壺が落ち、スープが流れ出して、中身があたり一面に散らばりました。人々がこれをみると、みんなの嘲り笑いが起こりました。女はとても恥ずかしくて穴があったら深く深く入りたいと思いました。女は戸口へ走って逃げてしまうところでしたが、階段で男がつかまえ、また連れ戻しました。その男をみると、またしてもつぐみひげの王様でした。王様はやさしく、「こわがらないで、私と、お前があのひどいあばら家で一緒に暮らしているバイオリン弾きとは、同じなんだ。お前を愛してるので、変装したのだよ。馬で瀬戸物に乗り入れた軽騎兵も私だよ。それもこれもお前の高慢ちきな心を謙虚にさせ、私を嘲った横柄さを罰するためだったんだ。」と言いました。
すると女は激しく泣いて、「私は大きな間違いをしました。あなたの妻になる価値がありません。」と言いました。しかし、つぐみひげの王様は、「安心して。悪い日々は過ぎたよ。さあ、私たちの結婚式を祝おう。」と言いました。それから侍女たちがやってきて、王様の娘に素晴らしい服を着せ、娘の父親と家来たちもみんな来て、つぐみひげの王様との結婚を祝福し、本当の喜びが始まりました。あなたもわたしもそこに行っていたらよかったねえ。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

めっけ鳥

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、森の監督官がいて、狩りをするため森に入っていくと、まるで小さな子供のように、泣き声が聞こえてきました。その音をたどっていくと、とうとう高い木のところに来て、一番上に小さい子供が座っていました。というのは、子供と一緒の母親が木の下で眠ってしまい、母親の腕にだかれているのを捕食する鳥がみて、舞い降り、わしづかみにして高い木の上に置いたからです。
森の監督官は木に登り、子供を降ろし、(この子を家に連れて帰り、うちのリナと一緒に育てよう)と思いました。それで、子供を連れて帰り、二人の子供たちは一緒に育ちました。それで、木の上でみつけた子は、鳥がさらったので、みつけ鳥と呼ばれました。みつけ鳥とリナはお互いをとても好きだったので、お互いが見えなくなると悲しくなりました。
さて、森の監督官には年とった料理人がいましたが、ある晩、桶を2つ持って水を汲み始め、1回だけでなく何度も泉にでかけました。リナはこれを見て、「ねえ、ザンナばあや、どうしてそんなにたくさんの水を汲んでいるの?」と言いました。「誰にも言わないなら、どうしてか教えてあげるよ。」それでリナは、ええ、誰にも言わないわ、と言いました。「明日の朝早く、だんなが狩りにでかけたら、お湯を沸かし、釜で沸騰したら、みつけ鳥を投げ入れて煮るのさ。」と料理人は言いました。
次の朝早く、森の監督官は起きると狩りにでかけ、いなくなったとき、子供たちはまだベッドの中にいました。それで、リナはみつけ鳥に、「あなたが私を見捨てないなら、私もあなたを見捨てないわ。」と言いました。みつけ鳥は、「今も、これからも決してあなたを見捨てないよ。」と言いました。それでリナは「じゃあ、言うわね。夕べ、ザンナばあやがすごくたくさん水を運んでいたから、どうしてか聞いたの。そしたら、ばあやが言うことを誰にも言わないと約束するなら教えてくれるって言ったのよ。私が絶対誰にも言わないって言ったら、明日朝早く、お父さんが狩りに出かけたら釜に水をいっぱい入れてあなたを投げ入れて煮るんだと言ったの。だけど、早く起きて服を着て一緒に逃げましょう。」と言いました。
それで、二人の子供たちは起きて、急いで服を着ると逃げました。釜の湯が沸騰してきたとき、料理人はみつけ鳥をつかまえてお湯に放り込むため寝室に入って行きました。しかし、中へ入ってベッドに行ってみると二人ともいませんでした。それでとても驚いて、「だんなが帰ってきて子供たちがいないとわかったら、なんと言おうか。すぐに連れ戻しにおいかけなくちゃ」と独り言を言いました。
そこで料理人は、3人の下男を送り、走って子供たちにおいつかなくてはいけないと言いました。しかし、子供たちは森の外側で座っていて、遠くから3人の下男が走ってくるのを見たとき、リナは、「私を見捨てないで、そしたら私もあなたを見捨てないわ。」とみつけ鳥に言いました。みつけ鳥は「いまもこれからも絶対見捨てないよ。」と言いました。するとリナは、「あなたはバラの木になって。わたしはその上のバラの花になる。」と言いました。3人の下男が森に来てみると、バラの木と1輪のバラの他は何もなく、子供たちはどこにもいませんでした。
それで、「ここでは何もすることがないよ。」と言って帰り、料理人に、森では1輪のバラがついたバラの木の他は何も見なかった、と話しました。すると、年とった料理人は叱って、「馬鹿、馬鹿、お前たちはそのバラの木を2つに切って、バラを切り落とし、家に持って帰らなくちゃいけなかったんだよ。行ってすぐやりな!」と言いました。そういうわけで、下男たちは2回目にでかけ探しました。しかし、子供たちは遠くから下男たちがくるのが見えて、リナは、「みつけ鳥、私を見捨てないで、私もあなたを見捨てないわ。」といいました。みつけ鳥は「今もこれからも絶対に見捨てないよ。」と言いました。リナは「じゃあ、教会になって。私はシャンデリアになる。」と言いました。それで下男たちが来たときは、教会とシャンデリア以外は何もありませんでした。それで、お互いに「ここで何ができるんだい?帰ろう。」と言いました。
下男たちが帰ってくると、料理人は子供たちをみつけなかったのかいと尋ねました。それで下男たちは、「ああ、教会以外は何もみつけなかったよ。教会の中にシャンデリアがあったけど。」と言いました。それで、料理人は叱って、「馬鹿だね、どうして教会を引き倒してこなごなにし、シャンデリアをうちに持ってこなかったんだよ?」と言いました。そして今度は自分でも歩いて3人の下男と子供たちを追っていきました。しかし、子供たちは遠くから3人の下男がやってきて、料理人がそのあとをとことこくるのを見ました。それで、リナは、「みつけ鳥、私を見捨てないで、私もあなたを見捨てないわ。」といいました。みつけ鳥は「今もこれからも絶対に見捨てないよ。」と言いました。リナは「じゃあ、池になって。私はアヒルになる。」と言いました。しかし、料理人は近づいてきて、池を見るとそのそばに腹ばいになり、水を飲み干そうとしました。しかしアヒルが料理人のところにすばやく泳いでいき、くちばしで頭をつかむと水の中に引き込みました。それで料理人は溺れてしまいました。それから子供たちは一緒に家へ帰り、心から喜びました。もし二人が死んでいないなら、今でもまだ生きています。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

いばら姫

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、子供ができなくて、毎日「ああ、子供がいればなあ」と言っていた王様とお后さまがいました。しかしあるときお妃さまが水浴びしていると、蛙が水から陸にあがり、「あなたの望みはかなえられますよ。1年経たないうちに娘が産まれます。」と言いました。
蛙の言ったことが本当になり、お后さまはとても可愛い女の子を産みました。王様は喜びを抑えられなくて、大宴会を開くことを命じました。そして親戚や友達や知人だけでなく、やさしく子供によい運をつけるようにと賢い女の人たちも招きました。この王国には13人の賢い女の人たちがいましたが、食事を出す金のお皿が12人分しかなかったので一人は家に残さなければなりませんでした。
宴会はとても豪華に開かれ、終わりになったとき、賢い女たちが赤ちゃんに魔法の贈り物を授けました。一人は美徳を、別の人は美しさを、3人目は富を、等々、人がこの世で望むあらゆるものを授けていきました。
11人の賢い女が約束を言い終えたとき、突然13人目の賢い女が入ってきました。招待されなかったので仕返ししようと思ったのです。挨拶もしないで、誰も見もしないで、大声で「王様の娘は15歳のとき紡錘に刺され、倒れて死ぬのだ。」と叫びました。それから、もう一言も言わないで、向きを変えると、部屋を出て行きました。
みんながショックを受けましたが、12人目の賢い女の人は、まだ願掛けを言わないで残っていたので、前に出てきて、呪いの言葉を取り消すことはできず、和らげることだけができるので、「死ぬのではなく、王女様は100年の深い眠りに入ります。」と言いました。
王様は愛する子供を不運から守りたくて、国中の紡錘を燃やすようにと命令を出しました。一方で賢い女の人たちの贈り物は若い娘に対して豊かに実りました。娘はとても美しく、慎ましく、性格がよく、賢いので、娘を見た誰でも愛さずにはいられませんでした。
娘が15歳になったちょうどその日に、王様とお后さまは家にいなくて、娘は全く一人で宮殿に残されました。それで、あちこち歩き回り、気の向くままに部屋や寝室を覗きこんでいました。そして最後に古い塔にきました。狭い曲がりくねった階段を上ると、小さなドアに着きました。錆びた鍵が錠前の中にあり、娘が鍵を回すとドアがぱっと開き、小さな部屋に紡錘をもったおばあさんがいて忙しそうに亜麻を紡いでいました。
「こんにちは、おばあさん。そこで何をしているの?」と王様の娘は言いました。「糸を紡いでいるんだよ。」とおばあさんは言って、頷きました。「それってどういうものなの?とても愉快にカタカタ回るわね。」と娘は言って、紡錘を手に取り、自分でも糸を紡ごうとしました。しかし、紡錘に触れた途端、魔法の宣告が果たされ、娘は紡錘で指を刺してしまいました。
そしてチクっと感じたその瞬間に、娘はそこにあったベッドに倒れこみ、深い眠りに落ちました。そしてこの眠りは宮殿中に広がり、ちょうど家へ帰り大広間に入ってきた王様とお后さまが眠りにつき始め、宮廷全体も一緒に眠り始めました。馬たちも馬小屋で、犬たちは中庭で、鳩たちは屋根の上で、ハエは壁にとまって、眠りに入りました。暖炉で燃えている火でさえ、静かになり眠りました。焼き肉はジュージューいうのをやめ、コックは、食器洗いの子が何か忘れたのでの髪を引っ張ろうとしていたのですが、手を離し、眠りに入りました。風がやみ、お城の前の木では葉っぱ一枚も二度と動きませんでした。
しかし、お城の周りには茨の垣ができはじめ、年ごとに高くなり、とうとう城の周りを囲いこみ、上におおいかぶさりました。それでお城の何も見えなくなり、屋根の上の旗ですらも見えませんでした。しかし、みんなは王女様を茨姫と呼んだのですが、美しい眠っている茨姫の話は国中に行きわたり、その結果、ときどき王様の息子たちがきて、茨の垣を通り抜けて城に入ろうと試みました。
しかし、入ることはできませんでした。というのは、イバラがまるで手があるかのように固くくっついて、若者たちはイバラに引っ掛かり二度とほどくことができないで、惨めに死んでしまったからです。
長い、長い年月のあと、また一人の王様の息子がその国にやってきて、老人がイバラの垣について話していて、「その後ろにお城があり、中に茨姫という名の素晴らしく美しい王女様が100年間ねむっているんだそうだ。しかも、王様やお后さまも宮廷中が同じように眠っているんだとよ。」というのを聞きました。「これもうちのじいさんから聞いたんだが、もうたくさんの王様の息子が来て、イバラの垣を通り抜けようとしたんだけど、イバラにしっかりくっついたまま可哀そうに死んでしまったそうだよ。」と老人は付け加えました。
すると若者は、「僕は怖くない。美しい茨姫に会いに行くよ。」と言いました。やさしい老人はできるだけやめさせようとしましたが、若者は老人の言葉に耳を貸しませんでした。
しかしこの時にはちょうど100年が経って、茨姫がまた目覚める日が来ていました。王様の息子がイバラの垣に近づくと、それは大きな美しい花々でしかなくなり、ひとりでにお互いから分かれて、王子を無傷で通させ、そのあと、垣根のように王子の後ろでまた閉じました。宮廷の中庭で、王子は馬やぶちの猟犬が横になって眠っているのを見ました。屋根には翼の下に頭をいれて鳩が座っていました。家に入ると、ハエが壁にとまって眠っていました。台所のコックは食器洗い番の子をつかまえようとまだ手を伸ばしていました。女中は毛をむしろうとして黒いめんどりのそばに座っていました。
王子はさらに進んで行きました。すると大広間では宮廷の全員が横になって眠っていて、王座の近くには王様とお后さまが寝ていました。
それからもっと進んでいくと、あたりは静まり返って息の音すら聞こえるくらいで、ついに塔に着き、茨姫が眠っている小さな部屋の戸を開けました。そこに茨姫は横たわっていて、とても美しいので王子は目をそらすことができませんでした。そしてかがみこむとキスしました。しかし、キスした途端、茨姫は目を開け目覚めて、とても可愛らしく王子をみつめました。
それから二人は一緒に塔を降りました。すると王様がめざめ、お后がめざめ、宮廷全体が目覚めて、とても驚いてお互いを見ました。そして中庭の馬たちは立ち上がって体を振り、犬たちは跳びあがって尻尾を振り、屋根の鳩たちは翼の下から頭を引き抜き周りを見て、外へ飛び立ちました。壁のハエはまた這い歩き、台所の火は燃え上がってちろちろして肉を焼きました。焼き肉はまた回ってジュージュー音を立て始め、コックは食器洗いの子の耳を殴ったのでその子は悲鳴をあげ、女中はとりの毛をむしり終えました。
それから、王様の息子と茨姫との結婚式がとても華やかにおこなわれ、二人は死ぬまで満足して暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

六羽の白鳥

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、ある王様が大きな森で狩りをしていて、野生の動物をとても熱心に追いかけたので従者のだれもあとについていけませんでした。夜が近づいてきて止まり、周りを見回すと道に迷ったことがわかりました。出口を探しましたが、まるで見つかりませんでした。それからしきりに頭を縦に振っている老婆が自分の方に来るのに気付きました。しかし、その老婆は魔女でした。「おばあさん、森を抜ける道を教えてもらえませんか?」と王様は老婆に言いました。「いいですよ、王様。」と老婆は答えました。「もちろんいいですよ。だけど、1つ条件があります。もしそれを果たさなければ絶対森からでられなくて森の中で餓死するでしょう。」と老婆は答えました。
「それはどんな条件だね?」と王様は尋ねました。「私には娘が一人いる。世界のだれよりも美しく、あなたの妃になる価値は十分あります。もし娘を妃にするなら、森から出る道を教えましょう。」と老婆は言いました。心苦しいままに王様は承知しました。そして老婆は王様を小さな小屋に連れて行き、娘は暖炉のそばに座っていて、まるで予期していたように王様を迎えました。王様は娘がとても美しいとわかりましたが、それでも気に入りませんでした。そして心ひそかにぞっとしないでは見られませんでした。王様が娘を馬に乗せ、老婆が道を案内して王様は再び王宮に着きました、そして結婚式が祝われました。
王様はすでに一度結婚したことがあり、最初の妻との間に7人の子どもがいて、6人が男の子で1人が女の子でしたが、世界の何物にも代えがたいほど子供たちを愛していました。いま継母が子供たちをやさしく接してくれないのではないか、いじめさえするのではないか、とおそれたので、子供たちを森の真ん中にあるさびしい城に連れて行きました。その城はとても隠されていて、見つけるのが難しいので、もし賢い女の人が不思議な性質のある糸の玉をくれなかったら王様自身もみつけられなかったでしょう。前にその玉を投げると、玉はひとりでにほどけていき、王様に道を教えました。
しかしながら、王様が愛する子供たちのところにあまりに何度もでかけるので、お妃は王様の留守に気付き、森でたった一人でいるとき何をしているのか興味を持ち、知りたいと思いました。それで王様の家来にたくさんのお金をあげると、家来は秘密をもらし、さらにただひとつ道を教えることのできる玉のことも話しました。さあ今度は、お妃は王様が糸玉をどこにしまってあるのか知るまで気持が休まりませんでした。それで白い絹の小さなシャツを作り、母親から魔法の技を習っていたので、シャツの中に魔力を縫いこみました。そして王様が狩りに馬ででかけたとき、シャツを取り出し、森へはいりました。玉が道を教えたのです。
子供たちは、遠くから誰か近づいてくるので、愛する父が自分たちのところに来るところだと思い、大喜びで走って迎えに行きました。すると、お妃は子供たちの一人一人に小さなシャツを投げて、子供たちはシャツが体に触れるとすぐ白鳥に変えられ、森を越えて飛んでいってしまいました。お妃はすっかり喜んで家へ帰り、継子たちを取り除いたと思いました。しかし、女の子は兄たちと一緒に走り出ていなかったのです。そしてお妃は女の子のことは何も知りませんでした。
次の日、王様は子供たちを訪ねていきましたが、小さな女の子のほかは誰も見つかりませんでした。「兄たちはどこだ?」と王様は尋ねました。「ああ、お父様、私一人を残してみんな行っちゃったの」と答え、兄たちが白鳥の形になって森を越え飛び去ったのを小さな窓からみていたことを話し、兄たちが庭に落とし自分が拾った羽を王様に見せました。
王様は嘆き悲しみましたが、お妃がこのひどいことをしたとは思わず、女の子も自分から盗まれることを恐れたので、自分と一緒に連れて行こうと思いました。しかし、女の子は継母をおそれ、森の城にこの一晩だけおいてくれるよう王様にお願いしました。
可哀そうな娘は、もうここにはいられない、お兄さんたちを探しに行こう、と思いました。それで夜が来ると、逃げ出し、まっすぐ森へ入りました。一晩中歩き、次の日も止まらないで歩き、とうとう疲れてそれ以上進めなくなりました。すると森の小屋が目に入り中に入ると、6つの小さなベッドのある部屋を見つけました。しかしその一つに入ろうとはしないでベッドの下にもぐり、固い地面によこになり、そこで夜を過ごそうとしました。ところが、日が沈む直前にバサバサいう音が聞こえ、6羽の白鳥が窓から飛んで入ってきました。そして地面に降りるとお互いを吹いて、羽を全部吹き落し、白鳥も皮もシャツのように脱げてとれました。それで、娘が見て兄たちだとわかり、喜んでベッドの下から這い出てきました。兄たちは妹を見て、妹に負けないくらいよろこびましたが、喜びは短い間だけでした。「お前はここにいられないよ。ここは強盗たちの棲家なんだ。彼らが帰ってきてお前を見つけたら、お前を殺してしまうよ。」と兄たちは言いました。「だけど、お兄さんたちは私を守れないの?」と妹は尋ねました。「だめなんだ。夜の15分だけ白鳥の皮から抜け、その間人間の形でいられるだけなんだ。そのあとはもう一度また白鳥に変えられてしまうよ。」と兄たちは答えました。
妹は泣いて、「お兄さんたちを自由にできないの?」と言いました。「ああ、できない。条件がきつ過ぎるんだよ。6年間お前は話すことも笑うこともしてはいけない。そしてその間にハコベの6枚のシャツを私たちに縫ってくれなくてはいけないのだよ。そしてお前の唇から一言でももれればお前のやったことは失敗に終わるんだ。」と兄たちは答えました。そしてこれを言い終わると、15分が終わり、白鳥としてまた窓から飛んで出て行きました。
しかし、娘はたとえ命にかけても兄たちを自由にすると固く決意していました。小屋を出て、森の真ん中へ入り、木の上に座るとそこで夜を過ごしました。次の朝でかけてハコベを集めると縫い始めました。誰とも話をしないで、また笑う気にもならないでそこに座り、仕事以外何も見ませんでした。
そこでもう長い間過ごしていましたが、あるとき、その国の王様が森で狩りをし、猟師たちが娘の座っている木のところに来ました。そして娘を呼んで「君は誰だ?」と言いましたが、返事をしませんでした。「こっちへ降りて来い。お前に危害を加えないよ。」と猟師たちは言いましたが、娘はただ首を振るだけでした。猟師たちがさらに質問責めにするので、娘は首飾りを下に投げ、それで猟師たちを満足させるだろうと思いました。ところが、猟師たちは止めませんでした。それで、ベルトを下に投げ落としましたが、これも役に立たなかったので、靴下止めを投げ捨て、だんだんと、身につけていたもので無くてもすむものを何でも投げ落としたので、とうとう肌着以外何も残らなくなりました。
猟師たちはそれでも逸らされないで木に登り、娘を下に降ろし、王様の前に連れて行きました。王様は「お前は誰だ?木の上で何をしているのだ?」と尋ねましたが、答えませんでした。また、王様は知っているすべての言葉で質問をしましたが、娘は魚のように無言のままでした。娘がとても美しいので、王様は心を動かされ、娘を愛する気持ちでいっぱいになりました。それで、娘にマントをかけ、馬の前にのせ、お城に連れて行きました。それから、娘に立派な衣装を着させると、娘は美しさでまばゆい日光のように輝きましたが、娘から一言も言葉を引き出せませんでした。王様は、娘を食卓で隣に座らせると、娘のつつましい物腰や礼儀正しさがとても気に入りました。それで、「世界で他でもないこの人こそ、私が結婚したい人だ。」と言いました。何日かして、王様は娘と結婚しました。
ところが、王様には、この結婚に不満な意地悪な母親がいて、若いお妃の悪口を言って、「口のきけないものがどこから来たのか得体が知れないではないか。あれは王様にふさわしくないよ。」と言いました。1年たってお妃が最初の子供を産んだとき、おばあさんは、お妃が眠っているとき子供を取り去り、お妃の口に血を塗っておきました。それから王様のところへ行き、お妃のことを人食いだと非難しました。王様はそれを信じようとしないで、だれにもお妃に害を加えさせませんでした。お妃は、しかしながら、座ってひたすらシャツを縫い、他のことは何も気にかけませんでした。
その次に、お妃がまた美しい男の子を産むと、嘘つきの姑は同じ裏切りの手口を使いましたが、王様はどうしても母親の言葉を信じる気になれませんでした。「妃はとても信心深く善良な人だから、そんなことをするはずがない。もし口がきけて弁明できるなら、無実が明らかになるだろう。」と言いました。
しかし、姑が3回目に新しく生まれた子供を盗み、妃を責めたとき、妃は一言も弁解の言葉を言わないので、王様はお妃を裁判にかけるしか方法がありませんでした。そして、お妃は火あぶりの刑を言い渡されました。
刑が執行される日が来たとき、それはお妃が話しても笑ってもいけない6年の最後の日でした。そして愛する兄たちを魔法の力から解放したのです。6枚のシャツは準備ができて、6枚目の左袖だけがありませんでした。それで、杭に連れて行かれたとき、腕にシャツをかけていました。お妃が高い所に立って、火が今にもつけられそうになったとき、周りを見回すと、6羽の白鳥が自分の方に向かって空を飛んでくるのが見えました。それで、お妃は解放が近いことを知り、心は喜びでとびあがらんばかりでした。白鳥たちはお妃の方にすうっと飛んできて降りたので、シャツに触れ、白鳥の皮が落ち、兄たちはお妃の前に力強く美しく元の体になって立ちました。一番年下の兄だけは左腕がなく、その代わりに肩に白鳥の翼がついていました。兄妹は抱き合いキスし合いました。それからお妃は、とても驚いて見ていた王様のところへ行き、話し始め、「あなた、今は口を言ってもよくなりました。私は無実です。不当に訴えられたのです。」と言いました。それから3人の子供たちをとって隠した姑の裏切りのことを王様に話しました。 それで、王様が大喜びしたことに子供たちが連れてこられました。意地悪な姑は罰として杭につながれ、燃やされて灰になりました。しかし、王様とお妃と6人の兄たちは何年も幸福で平和に暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

ズルタンじいさん

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、お百姓がズルタンという名前の忠実な犬を飼っていましたが、年をとって歯が全部なくなってしまったので、もうなにも咥えることができませんでした。ある日、お百姓は、おかみさんと戸口の前に立っていて、「明日、年寄りのズルタンを撃ち殺すつもりだ、もう役に立たないからな。」と言いました。おかみさんは、忠実な犬を哀れに思って、「ズルタンはわたしたちにとても長く仕えてくれて、とても忠実だったのだから、飼っていた方がいいわ。」と答えました。「何だって?お前はあまり頭がよくないな。あれには歯が一本もないんだぞ。一人の泥棒もあれをこわがらないよ。もういらないよ。おれたちに仕えたとすれば、その分たっぷりえさをもらったさ。」と男は言いました。
可哀そうな犬は、近くのひなたで体を伸ばしねていて、これが全部聞こえ、明日が自分の最後の日になるんだなと悲しくなりました。犬にはいい友達の狼がいて、夜にそっと出て森の狼のところへ行き、自分を待っている運命のことをこぼしました。「ね、元気を出せよ、お前を難儀から救ってやるからさ。いいことを思いついたよ。明日朝早く、お前の主人はおかみさんと一緒に干し草を作りに行くよな。それで子供も一緒に連れて行くだろ。だれも家に残ってないからね。仕事中、子供をやぶの日陰にいつもおいとくから、その子を守りたいみたいにしてお前もそこにねるんだ。それでおれが森から出てきて子供を連れ去るよ。お前は子供を取り返すふりですぐおれのあとを追って走ってこなくはいけない。おれは子供を落とすから、お前は両親のところへ子供を連れ帰るのさ。それで親たちはお前が子供を救ったと思って、すごく有り難がってお前に悪いことをしないよ。それどころかとても大事にしてくれて何も不足がないようにしてくれるさ。」と狼は言いました。
その計画は犬の気に入りました。そして手配したように実行されました。父親は、狼が子供をくわえて野原を走って行くのを見ると悲鳴をあげましたが、年寄りのズルタンが子供を連れ戻ると、大喜びし、犬を撫でて、「お前の毛一本だって傷つけないぞ。お前が生きてる間おれのパンをただで食わしてやる。」と言いました。そしておかみさんに向かって、「すぐに家へ帰って、噛まなくてもいいように年寄りのズルタンにパンがゆを作ってやれよ。それからおれのべっどから枕をもってこい、それを寝るのにやろう。」と言いました。
それ以来、年寄りのズルタンはこの上ないほど暮らしが楽になりました。その後まもなく狼が訪ねてきて、万事とてもうまくいったことに喜びました。「だけどなあ、機会があっておれがお前の主人の太った羊をさらっていったとしても、お前はちょっと片目をつむって見て見ぬふりをしてくれよ。」と狼は言いました。「そんなこと当てにしないでくれよ。おれは主人に忠実でいるよ。それを認められないよ。」と犬は答えました。狼は、犬がこれを真面目に言ったはずがないと思って、夜に忍んできて、羊をとっていこうとしました。しかし、お百姓は、忠実なズルタンが狼の計画を話しておいたので、狼を捕まえ、殻さおでこっぴどくたたきました。狼はそっと歩くしかありませんでしたが、犬に「待ってろよ、この悪党、仕返ししてやるからな。」と言いました。
次の朝狼は猪を使いにして、この事件に決着をつけるため犬に森へ来いと挑戦してきました。年寄りのズルタンは3本しか足のない猫以外は味方してくれる誰も見つけられませんでした。そして一緒に出かけたとき可哀そうな猫は足をひきずってると同時に痛さで尻尾を空中に伸ばしていました。
狼と友達はもう指定した場所に来ていましたが、敵が近づいてくるのを見たとき、犬が軍刀を持ってきていると思いました。というのは、猫の伸びている尻尾を軍刀と間違えたからです。そして可哀そうな猫が、3本足でぴょこたんすると、そのたびに自分たちに投げる石を拾っているのだとしか考えられませんでした。それで二人とも怖くなり、猪は木の下に這いこみ、狼は木の上に跳びあがりました。
犬と猫はやってくると誰も見えないので不思議に思いました。しかし、猪は隠れきれないで耳の片方がつき出ていました。注意深く見まわしている間に、猪が耳を動かしたので、猫はそこでネズミが動いているのだと思い、それに跳びついてがぶっと噛みつきました。猪は恐ろしい悲鳴をあげて、「悪いやつは、木の上だよ」と叫びながら逃げて行きました。犬と猫は見上げて狐を見ました。狐は自分がとても臆病なのを見せてしまったことを恥ずかしく思い、犬と仲直りしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

ねずの木の話

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

今はもうずいぶん昔、二千年は前ですが、金持ちの男がいました。妻は美しく信心深い人で、二人は心から愛し合っていました。しかし、二人には、とても欲しいと望んだけれども、子供ができませんでした。妻は昼も夜も子供をお授けくださいとお祈りしましたがそれでもだめでした。二人の家の前に中庭があり、そこには一本のビャクシンの木がありました。冬のある日、妻はその木の下に立ち、リンゴの皮をむいていましたが、そうしているうちに指を切り、血が雪に落ちました。「ああ」と妻は言い、すぐため息をついて、目の前の血を見て、とても惨めに思いました。「ああ、血のように赤く、雪のように白い子供がいたらいいのに」こうして話している間にとてもしあわせな気分になり、本当に子供が生まれるような気がし、それから家に入りました。
一か月経つと雪が消え、二か月すると一面緑になり、三か月経つと花が咲き、四か月すると森の木々の緑が濃くなり緑の枝が密にからみあい、鳥たちがさえずりその声が森にこだまし、花が木から落ちました。五カ月経って、妻はビャクシンの木の下に立ちました。その木はとても甘い香りがして妻の心が躍りました。妻は膝まづき、喜びに我を忘れました。六ヶ月目が終わるころ、実が大きくりっぱになってその時は妻はとても静かになりました。7ヶ月目にビャクシンの実をとってがつがつ食べましたが、その後、病気になり悲しそうでした。8ヶ月目が過ぎて、妻は夫を呼ぶと、「私が死んだら、ビャクシンの木の下に埋めてください。」と言いました。それから次の月が終わるころまで妻はとても安心して嬉しそうでした。それから雪のように白く、血のように赤い子供を生みました。その子を見た時妻はとても喜んだので死んでしまいました。
それで夫は妻をビャクシンの木の下に埋め、悲しんで泣き始めました。しばらく経つと、もっと楽になり、やはり泣きましたががまんできるようになりました。それからまたしばらくして、夫はまた妻をもらいました。
二番目の妻との間に娘が生まれましたが、最初の妻の子供は息子で、血のように赤く、雪のように白い子供でした。妻は自分の娘を見るとかわいくてしかたがありませんでしたが、男の子を見ると、心臓が切り裂かれるようでした。というのは、この子がいつも邪魔になるという思いがしたからでした。妻はどうしたら全財産を娘にやれるかといつも考えていました。また悪魔が妻の心をこういう思いでいっぱいにしたので、男の子を怒り、あっちのすみからこっちのすみへ押しのけ、あっちこっちひっぱたきました。それでとうとう可哀そうな子供はいつもおびえていました。というのは学校から帰ってくると、どこにも落ち着く場所がなかったからです。
ある日、妻は二階の自分の部屋にいると、娘もあがってきて、「おかあさん、りんごをちょうだい」といいました。「いいよ」と妻は言って、箱から立派なりんごを一つ渡しました。しかしその箱には大きな鋭い鉄の錠がついたとても重いふたがついていました。「おかあさん、おにいちゃんにも一つもらえない?」と娘がいいました。これを聞くと妻は怒りましたが、「いいよ、学校から帰ってきたらね。」と言いました。それで窓から子供が帰ってくるのが見えた時、悪魔が妻に入りこんだようで、りんごをひったくって娘からまたとりあげ、「お兄ちゃんより先にはりんごをもらえないよ。」と言いました。
それから妻はりんごを箱に投げ入れ、閉めました。それから男の子が戸口から入って来ると、悪魔にふきこまれて妻はやさしく男の子に言いました。「ねぇお前、りんごを食べるかい?」そして意地悪く男の子を見ました。「おかあさん」と小さな男の子は言いました。「なんて怖い顔。うん、りんごをちょうだい。」すると妻は男の子に言わなくてはいけないように思われました。「一緒においで。」妻は箱のふたを開け、「自分でりんごをとりなさい。」と言いました。小さい男の子が箱の中にかがみこんでいる間に悪魔が妻をそそのかしました。バタン。妻はふたを閉めました。子供の頭がポーンと飛び、赤いリンゴの間に落ちました。すると妻はとても恐ろしくなり、「私のしわざだと思わせないようにしなくちゃ」と考えました。それで二階の自分の部屋に行き、箪笥の一番上の引出しから白いハンカチをとり、首に頭をのせ、何も見えないようにハンカチを巻きました。それから男の子を戸の前の椅子に座らせ、手にりんごを持たせました。
このあと、マルリンヒェンが台所の母親のところにきました。母親は自分の前のお湯を入れた鍋をずっとかきまわし火のそばに立っていました。「お母さん」とマルリンヒェンは言いました。「お兄ちゃんが戸口のところに座っていて、真っ青な顔で手にりんごを持ってるの。りんごをちょうだいと頼んでも返事をしなかったわ。とても怖かったわ。」「お兄ちゃんのところにお戻り。」と母親は言いました。「それで返事をしないんなら、横っ面をなぐってやりなさい。」それでマルリンヒェンは兄のところに行き、「お兄ちゃん、りんごをちょうだい」と言いました。しかし兄は何も言わないので、マルリンヒェンは横っ面をはたきました。すると兄の頭がとれて落ちました。マルリンヒェンはおびえて、泣きだしわあわあ泣きました。母親のところへ走っていき、「ああん、お母さん、わたし、お兄ちゃんの頭をたたき落しちゃた~」と言い、泣いて泣いて、泣き止みませんでした。「マルリンヒェン」と母親は言いました。「なんてことをしたの。だけど、泣くのはおやめ。誰にも知らせないんだよ。もうしかたがないよ。あの子を黒ソーセージにしよう。」それから母親は小さな男の子を持って来て、細かく切り、鍋に入れて黒ソーセージを作りました。しかし、マルリンヒェンはそばに立ってひたすら泣いていて、その涙がみんな鍋に入り、塩が必要ありませんでした。
そのあと、父親が帰ってきて、食卓につき、「だけど息子はどこだ?」と言いました。母親は大きな皿の黒ソーセージを食卓にだし、マルリンヒェンは泣いて泣き止むことができませんでした。それで父親はまた「だけど息子はどこなんだ?」と言いました。「ああ、それね」と母親は言いました。「向こうの、母親の大叔父さんのところにいったわよ。しばらくそこにいるって。」「そこで何をするつもりなんだ?おれに行ってきますとも言わなかったぞ。」
「あら、あの子は行きたかったのよ。私に6週間泊ってもいいかと聞いてたわ。あっちでよく世話してくれるわよ。」「ああ」と父親は言いました。「何か変な気がして、いい気分じゃないな。あの子はおれに当然行ってきますと言う筈なんだがな。」そう言って、父親は食べ出し、「マルリンヒェン、どうして泣いてるんだ?兄ちゃんはきっと帰ってくるさ。」と言いました。それから「なあ、お前、こいつはうまいな。もっとくれよ。」と言いました。それで食べれば食べるほど、もっと欲しくなり、「もっとくれよ。お前たちは食べるな。なんだか全部おれのもののような気がするんだ。」と言いました。そして、食べに食べて、骨を全部テーブルの下に投げ、とうとう全部食べてしまいました。
しかし、マルリンヒェンは自分の箪笥へ行って一番下の引出しから一番いい絹のハンカチをとってきて、テーブルの下から、骨を全部拾い集め、絹のハンカチに入れて、血が出るほど泣きながら戸口の外へ持って行きました。それからビャクシンの木の下の緑の草の上に骨を置きました。そこに骨を置いてしまったら、急に心が軽くなり、もう泣きませんでした。するとビャクシンの木が動き出し、まるで誰かが喜んで手をたたくように、枝が分かれ、また閉じました。同時に木から霧が上っているように見え、この霧の真ん中が火のように燃え、その火から素晴らしい声で鳴きながら美しい鳥が飛び立ちました。その鳥は空高く飛んで行き、行ってしまうとビャクシンの木は前と全く同じになり、骨の入ったハンカチはもうそこにありませんでした。しかし、マルリンヒェンは兄がまだ生きているかのように明るくうれしくなりました。そして楽しそうに家に入り、食卓に座って食べました。
しかし鳥は飛んでいって、金細工師の家にとまり、鳴きだしました。「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
金細工師は、金の鎖を作りながら作業場にいました。自分の家の屋根にとまってさえずっている鳥をきいたとき、その歌がとても美しく思われました。立ちあがりましたが、敷居をまたいだとき上履きが片方ぬげました。しかし片方の靴と片方の靴下のまま道の真ん中まででていきました。エプロンをつけたまま、片手に金の鎖を握りもう一方の手には鋏を持っていました。太陽がとても明るく通りに照っていました。それでまっすぐ進んで行って立ち止まり、鳥に言いました。「鳥よ」それから「なんてきれいな歌だ。もう一回歌ってくれないか。」と言いました。「だめだよ。」と鳥は言いました。「ただでは2回歌わないよ。金の鎖をおくれ。そうしたらもう一回歌ってあげる。」「ほら」と金細工師は言いました。「金の鎖をあげるよ。さあ、あの歌を歌ってくれ。」それで鳥はやってきて、右の爪で鎖をとり、金細工師の前に行ってとまり歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
それから鳥は靴屋に飛んで行き、その家の屋根にとまり歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
靴屋はそれを聞き、シャツを着たまま戸口の外へ走り出て、屋根を見上げ、太陽がまぶしいので目の上に手をかざさなければなりませんでした。「鳥よ」と靴屋は言いました。「なんてきれいな歌だ。」それから入り口から中へ叫びました。「お前、外へ出て来いよ。鳥がいるんだ。あの鳥を見てみろ。歌がうまいんだ。」それから娘や子供たち、職人、女中や下男、みんなが通りに来て、鳥を見て、その鳥が、なんと美しいか、なんと素晴らしい赤と緑の羽をしているか、首が本当の金のようで目が星のようにかがやいている、とわかりました。「鳥よ」と靴屋は言いました。「さあ、もう一回歌っておくれ」「いやだ」と鳥は言いました。「ただで2回うたわないよ。なにかくれなければいけないよ。」「お前」と靴屋はかみさんに言いました。「屋根裏部屋に行って、一番上の棚に赤い靴があるから、もってこいよ。」それでおかみさんが行って靴を持ってきました。「ほら、やるよ」と靴屋は言いました。「さあ、もう一回歌ってくれ。」それで鳥はやってきて、靴を左の爪でとり、屋根に飛んで戻り歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
歌い終わると鳥はとんでいきました。右の爪には鎖を持ち、左の爪には靴をもって、遠くの水車小屋まで飛んで行きました。水車がガッタン、ゴットン、ガッタン、ゴットンと回り、水車小屋の中に石をきりながら、粉屋の男たちが20人いました。石切りの音がヒク、ハク、ヒク、ハク、水車がガッタン、ゴットン、ガッタン、ゴットン。それから鳥は水車小屋の前にある菩提樹に行ってとまり、歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した」すると一人の男が仕事をやめました。「僕の父さん、僕を食べた」するともう二人が仕事をやめ、その歌に耳を傾けました。「僕の妹、マルリンヒェン」するともう四人がやめました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み」もう8人しか切っていなくなりました。「ビャクシンの木の下に」もうたった5人だけになりました。「置いた」もう一人だけになりました。「キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
それで最後の男も仕事をやめて、最後の言葉を聞きました。「鳥よ」と男は言いました。「何てきれいな歌だ。おれにも聞かせてくれ。もう一度おれに歌ってくれ。」「だめだよ」と鳥は言いました。「ただでは2回歌わないよ。その石うすをおくれ。そうしたらもう一回歌ってあげる。」「いいよ」と男は言いました。「おれだけのものなら、あげるんだがね」「いいよ」と他の男たちがいいました。「もう一回歌うなら、やれよ。」それで鳥は降りてきて、20人の男たちみんなが角材を使って石を立ち上げ、鳥は穴に首を入れて、服のえりのように石をのせて、また木に飛んで行って歌いました。
「ぼくのかあさん、僕を殺した、僕の父さん、僕を食べた、僕の妹、マルリンヒェン、僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
歌い終わると、鳥は翼を広げ、右の爪には鎖を持ち、左の爪には靴をもち、首のまわりに石うすをかけて、はるか遠く父親の家へ飛んで行きました。
部屋では、父親と母親とマルリンヒェンが食卓についていました。父親が、「なんて気が軽くて、楽しい気分なんだ。」と言いました。「いいえ」と母親は言いました。「とても不安な気分だわ。まるで嵐がくるみたい。」しかし、マルリンヒェンはただ泣いてばかりいました。そのとき鳥が飛んできました。屋根にとまったので父親が「ああ、本当に嬉しい気持ちだ。外では太陽がとても美しく照っているし、昔の友達にまた会うような気分だ。」と言いました。「いいえ」と母親は言いました。「私はとても心配。歯がガチガチするし、血管の中で火が燃えてるみたい。」母親は胴着をばっと広げました。しかしマルリンヒェンは泣きながらすみに座り、目の前に皿を置き、あまり泣いてその皿がすっかりぬれてしまいました。
それから鳥はビャクシンの木にとまり歌いました。「ぼくのかあさん、僕を殺した」すると母親は耳をふさぎ、目を閉じて見ようとも聞こうともしませんでしたが、暴風雨のように耳の中でごうごうとなり、目は燃えて稲妻のように光りました。「僕の父さん、僕を食べた」「なあ、母さん、あれはきれいな鳥だ。とても素晴らしく歌うよ。太陽がとても暖かく照って、シナモンのようなにおいがするよ。」と父親は言いました。「僕の妹、マルリンヒェン」するとマルリンヒェンは頭を膝にのせ泣き続けました。しかし父親は「外にでよう。もっと近くであの鳥を見なくては」と言いました。「ああ、行かないで。私は家が揺れて火事みたいに感じる。」と母親は言いました。しかし、父親は外に出て鳥を見ました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み、ビャクシンの木の下に置いた、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ」
こう歌って鳥は金の鎖を落とし、それはちょうど父親の首のまわりに落ち、全くちょうど首のまわりにきたので、よく似合いました。それで父親は中に入り、「どんなに素敵な鳥かちょっと見てごらん。それになんときれいな金の鎖をくれたんだ。とてもきれいな鳥だよ。」
しかし母親はこわがって、部屋の床に倒れ、帽子が頭から落ちました。すると鳥はもう一度歌いました。「ぼくのかあさん、僕を殺した」「それを聞かなくてすむように地中1000フィート下に行きたい」「僕の父さん、僕を食べた」すると母親は死んだようにまた倒れました。「僕の妹、マルリンヒェン」「ああ」とマルリンヒェンは言いました。「私も出て行って、鳥が何かくれるか見てみよう」そして出て行きました。「僕の骨を全部集め、絹のハンカチに包み」、そのとき鳥は妹に靴を落としました。すると、マルリンヒェンは気分が軽くなり嬉しくなりました。新しい赤い靴をはき、踊ったり跳ねたりして家に入りました。「あら」と妹は言いました。「外へ出るときはあんなに悲しかったのに、今はとても気が軽いわ。あれは素晴らしい鳥だわ。私に赤い靴をくれたの。」「えっ」と母親は言って立ち上がり、髪の毛が炎のように逆立っていました。「まるで世界が終わりになるように感じるわ。私も外に出て気分が軽くなるか見てみよう。」
それで戸口から出ると、ドスン、鳥が母親の頭に石うすを投げ落としました。それで母親はぺちゃんこにつぶれてしまいました。父親とマルリンヒェンがその音を聞いて、外へでてみました。その場所から、煙と炎と火があがっていました。それがおわると、そこに兄が立っていて、父親とマルリンヒェンの手をとりました。三人はみんな嬉しくて、家に入り食卓について食べました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

フィッチャーの鳥

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、貧しい男のなりをして物乞いをして家々を訪ね、きれいな娘をさらう魔法使いがいました。男がどこへ娘たちを連れて行ったのか誰もわかりませんでした。というのは娘たちは二度と見つからなかったからです。ある日、男はきれいな娘が三人いる男の家の前に現れました。男は貧しい体の弱そうな乞食のようにみせて、中に施しのものを集めているかのように背中にかごを背負っていました。男は、少し食べ物をください、と言い、一番上の娘が出てきて、パンを一切れ渡そうとしました。そのとき男はただ娘に触れただけで、娘はかごに跳びこまされました。すぐに男は大股で急いで去り、娘を暗い森の真ん中に立っている自分の家に運んで行きました。家の中の何でも豪華でした。男は娘に欲しいものは何でも与え、「ねえ、君、君は僕のところできっと幸せだろう。君が望むものを何でももらえるんだからね。」と言いました。こうして2,3日経つと、男は、「僕は旅にでかけなくてはならない。ちょっとの間君をひとりにしておく。さあ、家の鍵だよ。どこへ行ってもいいし、何でも見ていいよ。ただ一つの部屋はだめだ。そこはこの小さい鍵で開くんだが、そこにいくと君の命をとることにするからね。」と言いました。男は卵も一個渡して、「その卵を大事にとっておいて、いつも持って歩いてほしい。それを失くしたら、大きな災難がふりかかるんだから。」と言いました。
娘は鍵と卵を受け取り、何でも男のいうことに従うと約束しました。男がいなくなると、娘は下から上まで家をぐるっと回り何でも調べてみました。どの部屋も金銀で輝き、娘はこんなに華やかで美しいのは見たことがないと思いました。とうとう禁じられた部屋の戸に来て、娘は通りすぎようとしました。しかし、見たくて見たくてたまりませんでした。鍵をよく見ても他の鍵と同じように見えました。
娘が鍵穴に鍵を入れ、少し回すと戸はパッと開きました。しかし、部屋に入った時娘は何を見たでしょうか?部屋の真ん中に大きな血だらけの鉢があり、その中には死んでばらばらに切られた人間が何人も入っていました。すぐ近くには台木があり、その上に光っている斧が置いてありました。娘はひどく驚き、手に持っていた卵を鉢に落としてしまいました。卵を取り出し血を拭いとりましたが無駄で、血はすぐに出てきてしまいました。洗ってもこすってもとることができませんでした。
まもなく男が旅から戻り、早速鍵と卵を返せと言いました。娘は男に渡しましたが、渡しながら震えていました。男は、赤いしみを見てすぐに、娘が血の部屋に入ったことを知りました。「君はわたしの意思に背きあの部屋に入ったのだから、君の意思に背いてそこに戻ることになる。お前はおしまいだ。」と男は言いました。男は娘を投げ倒し、髪をつかんでひきずり、台木の上で頭を切り落とし、ばらばらに切ったので血が床に流れました。それから鉢に投げ入れて他の死体と一緒にしました。
「さあ今度は二番目の娘を連れてこよう。」と魔法使いは言いました。また貧しい男の姿をしてその家にいき、物乞いをしました。すると二番目の娘が一切れのパンを持ってきました。男は最初の娘のように、娘にただ触れてつかまえ、連れ去りました。二番目の娘も姉と同じ運命をたどりました。見たい気持ちに負けて、血の部屋の戸を開け、覗き込み、魔法使いが戻ったとき命で償いました。それから男は出かけて三番目の娘を連れてきました。しかし、娘は賢く抜け目がありませんでした。男が鍵と卵を渡し、行ってしまうと、娘はとても用心深く卵をしまって、それから家を見て回り、しまいに禁じられた部屋に入りました。ああ、娘は何を見たことか。姉たち二人が残酷に殺されバラバラに切られてそこの鉢に入っていました。しかし、娘は手足を集め始め、頭、胴体、腕、脚をきちんとそろえました。そしてあと何も足りないものがなくなると、手足が動き始め、一緒にくっついて、二人の娘は目を開き、もう一度生き返りました。それから三人は喜び、キスし、抱き合いました。
帰ってくるとすぐ、男は鍵と卵を寄こせと言い、血の跡が何もないのがわかると、「お前は試験に合格した。私の花嫁になってもらおう。」と言いました。今度は男はもう娘をどうすることもできなくなり、娘の望むことを何でもするしかなくなりました。「まあ、いいわ。」と娘は言いました。「まず私の父と母にかごいっぱいの金を持って自分で背中にかついで行ってね。その間に私は結婚式の支度をするわ。」それから娘は小さな部屋に隠しておいた姉たちのところに走って行き、「姉さんたちを助けられる時が来たわ。あいつにまた姉さんたちを連れて行かせるのよ。だけど家へ着いたらすぐ私に助けを寄こしてよ。」と言いました。娘は二人をかごに入れ、その上をすっかり金でおおいました。それで二人は何も見えませんでした。それから魔法使いを呼び入れ、「さあかごを持って行って。だけど私は小さな窓からあなたが途中で立ち止まったり休んだりしないか見ていますからね。」と言いました。
魔法使いはかごを背中にあげ、背負ってでかけましたが、とても重かったので汗が顔から流れました。それで男は座って少し休もうとしました。しかし、すぐにかごの中にいる娘の一人が、「窓からみているのよ。あなたが休んでいるのが見えるわ。すぐに歩いていってよ。」と叫びました。男は話しているのが花嫁だと思い、また立ちあがりました。もう一度男は座ろうとしましたが、すぐに娘は「窓からみているのよ。あなたが休んでいるのが見えるわ。すぐに歩いていってよ。」と叫びました。そして男が立ち止まるたびに、娘はこう叫び、男は歩き続けるしかなく、とうとう息を切らしてあえぎながら、金と二人の娘が入っているかごを両親の家に運び入れました。
ところで、家では花嫁が結婚式の支度をして、魔法使いの友達に招待状を送りました。それから歯をむきだしている頭蓋骨をとってきて、それに飾り付けをし花束をもたせ、二階の屋根裏部屋の窓に運び、そこから外を覗くようにさせました。全部の用意ができると、娘は蜂蜜の樽に入り、羽根布団を切り開いてその中で転がりました。それでとうとう娘は不思議な鳥のように見え、誰も娘だとわかりませんでした。それから娘は家から出ていきました。途中で結婚式のお客に何人か会い、その人たちは尋ねました。「ああ、フィッチャーの鳥さん、どこからここにきたんですか?」「すぐ近くのフィッチャーさんの家からきたのよ。」「若い花嫁は何をしているだろうか?」「地下室から屋根裏部屋まですっかりきれいに掃除して、今は窓から覗いていると思うわ。」
最後に娘はゆっくり戻ってくる花婿に会いました。花婿も、他の人たちのように尋ねました。「ああ、フィッチャーの鳥さん、どこからここにきたんですか?」「すぐ近くのフィッチャーさんの家からきたのよ。」「若い花嫁は何をしているだろうか?」「地下室から屋根裏部屋まですっかりきれいに掃除して、今は窓から覗いていると思うわ。」
花婿は上を見上げ、飾り立てた頭蓋骨を見て花嫁だと思い、やさしく挨拶を送って頭蓋骨に頷きました。しかし、花婿とお客たちが家の中へ入ってしまったとき、娘を助けに送られた花嫁の兄たちや親せきの人たちが着きました。みんなは、誰も逃げないように家の戸を全部閉め切って、火をつけました。それで魔法使いとその仲間はみんな焼け死んでしまいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Tuesday Aug 13, 2024

ある仕立て屋に息子が一人いました。この子はたまたま小さくて親指ほどしかなく、このためにいつも親指太郎と呼ばれました。しかし、なかなか勇気のある子で、父親に、「お父さん、僕はなんとしても世間に出ていくよ。」と言いました。「そうだ、息子よ。」と父親は言って、長いかがり針をとって、封蝋で針にこぶを作りました。「さあ、道中持って歩く刀をやるぞ。」それからチビの仕立て屋は一緒にもう一回食事をしようと、台所に跳ねていき、母親が最後にどんな料理を作るかみました。しかしもう出来上がっていて、皿がかまどの上にのっていました。それで、太郎が言いました。「おかあさん、今日の料理は何?」「自分で見てごらん」と母親は言いました。そこで太郎はかまどの上に飛び乗って、皿を覗きこみました。ところが首をあまり長く伸ばし過ぎたので、食べ物の湯気が太郎をつかまえて煙突から外へ運んで行きました。太郎はしばらく湯気にのって空中を漂っていましたが、しまいにまた地面に下りました。
もうチビの仕立て屋は外の広い世間にいて、あちこち旅をして、仕立て屋の親方のところへ行きました。しかし、食べ物がよくありませんでした。「おかみさん、もっと良い食べ物をくれないと」と太郎は言いました。「出ていきます。それで明日朝早くチョークで家の戸に"じゃがいもばかり、肉はほとんど無し、さよなら、じゃがいも王さん"と書きますよ。」
「やれるもんならやってみな、バッタめ」とおかみさんは言うと、怒って布巾をつかみ、太郎をたたこうとしました。しかしチビの仕立て屋は指抜きの下にすばしこく這って行き、その下から外を覗いておかみさんに舌をだしました。おかみさんは指抜きを持ち上げ、太郎を捕まえようとしましたが、太郎は布巾の中へピョンと跳ねて、おかみさんが布巾を開いて探しているうちにテーブルの割れ目に入りました。「やーい!やーい!おかみさん」と叫んで頭を突き出しました。それでおかみさんがたたきはじめると引出しの中へ飛び込みました。しかし、お終いにはおかみさんは太郎をつかまえ、家から追い出しました。
チビの仕立て屋は先へ歩いていき、大きな森にくると、そこで王様の宝物を盗もうともくろんでいた強盗の一団と出会いました。強盗たちはチビの仕立て屋を見ると、(こんな小さい奴は鍵穴にもぐりこめて錠前開けにつかえるな。)と思い、「おい、そこの」と一人が叫びました。「大男のゴリアテ、おれたちと一緒に宝物庫に行かないか。中へ忍び込んで金を投げてよこせよ。」親指太郎はしばらく考えていましたが、とうとう「いいよ」と言って、一緒に宝物庫にでかけました。
そこで太郎は戸に割れ目があるか調べるために戸の上と下を見てまわり、まもなく自分が入れるくらい幅がある割れ目を見つけました。それですぐに入って行こうとしましたが、戸の前に立っていた二人の番兵のうちの一人が太郎を見つけ、もう一人に「おい、嫌なクモがあそこを這ってるぞ。殺してやろう」と言いました。「かわいそうに、ほっとけよ。」ともう一人がいいました。「お前に何も悪いことをしていないじゃないか。」それから太郎は割れ目を通って宝物庫に無事に着き、下に強盗たちがいる窓を開けると、ターラー銀貨を次々と外へ投げました。
太郎が仕事の真っ最中のとき、王様が宝物庫を見まわりにくるのが聞こえて、急いで隠れました。王様はターラー銀貨がいくらか無くなっているのにきづきましたが、いったい誰が盗んだのかわかりませんでした。というのは錠前とかんぬきはしっかりされているし、よく見張られていたからです。そこで王様はまた出て行って番兵に、よく見張れ、誰か金をねらってるぞ、と言いました。
そこで太郎がまた仕事をはじめると、番兵にお金が動いてチャリンチャリンという音が聞こえました。二人は泥棒を捕まえようと素早く中へ駆けこみましたが、チビの仕立て屋は、二人がやってくるのが聞こえ、もっと素早く隅に跳んで、一枚のターラー銀貨を自分にかぶせたので、番兵からは何も見えませんでした。隠れると同時に、番兵をからかって「ここだよ」と叫びました。番兵はそっちへ走りましたが、そこへ着くと、太郎はもう別の隅へ跳んでターラー銀貨の下になり、「やーい、やーい、こっちだよー」と叫びました。こうして太郎は番兵を何度もからかい、宝物庫の中を駆けずりまわらせたので、二人は疲れて、行ってしまいました。それから太郎はだんだん投げてとうとうターラー銀貨を投げ尽くし、最後の一枚を力いっぱい放ってすばしこくその上に跳び、ターラー銀貨と一緒に窓から飛びでました。強盗たちは太郎を褒めそやしました。「お前は大した勇者だ」と強盗たちは言いました。「おれたちの頭にならないか」
しかし、親指太郎は断って、「僕はまず世の中を見てまわりたいと思うから」と言いました。それからみんなで盗んだお金を分けましたが、チビの仕立て屋はクロイツァ―銅貨一枚だけ貰いました。それ以上は持ち歩けなかったからです。それからもう一度剣をベルトにはさみ、強盗たちにさよならを言って、歩きだしました。
最初に太郎は何人か親方のところで働きに行きましたが、好きになれなくて、とうとう宿屋の下男に雇われました。ところが、女中たちは太郎にがまんできませんでした。というのは女中たちが密かにやっていることを、女中たちに見られないで自分はしっかり見ては、だれだれが皿をくすねたとか、だれだれが地下室からとっていった、と雇い主に教えたからです。それで、女中たちは、「待ってな、仕返しをしてやるからね」と言って、示し合わせて太郎にいたずらをすることにしました。そのあとまもなく、女中の一人が庭で草刈りをしていると、親指太郎が草のところを跳ねたりあちこち這いまわったりしているのが見えました。女中は草と一緒に太郎をすばやく刈り取り、全部を大きな布に入れて縛り、こっそり雌牛たちに放りました。今度は、牛たちの中に大きな黒い牛がいて、太郎を怪我はさせませんでしたが飲みこんでしまいました。しかし、下にいるのは太郎の気に入りませんでした。というのは真っ暗でもちろんろうそくも燃えていませんでしたから。その雌牛が乳搾りされているとき、太郎は「シュー、シュー、シュー、桶はいついっぱいになる?」と叫びました。
しかし、乳搾りの音で太郎が叫んでいるのはきこえませんでした。このあと、家の主人が小屋に入ってきて、「あの牛を明日殺そう」と言いました。それで親指太郎はとても怖くなって、はっきりした声で「先に僕を出してくれ、この牛の中にいるんだ。」と叫びました。主人にはそれがすっかりよく聞こえたのですが、声がどこから来てるのか分かりませんでした。「どこにいるんだ?」と主人はききました。「黒い牛の中だよ」と親指太郎は答えましたが、主人はどういう意味かわからず、出ていってしまいました。
次の朝牛は殺されました。幸いにも親指太郎は牛を切り刻んでいるときに包丁にあたりませんでしたが、ソーセージの肉の間に入ってしまいました。肉屋がやってきて仕事を始めた時、太郎はありったけの声で、「深く切り過ぎるな、深く切り過きないでよ、おれが中にいるんだぞう」と叫びました。しかし、包丁のトントンいう音でかき消され、誰にも聞こえませんでした。
さあ、可哀そうに親指太郎は困ってしまいました。しかし、困っていればこそ知恵も働き、太郎は包丁で切る間を巧みにすりぬけて、ひとつもあたらず無傷でなんとか逃れました。しかしそれでも抜け出ることができなかったので、ベーコンの細切れと一緒に黒ソーセージの中に投げ込まれるしかありませんでした。そこの場所はかなり狭く、おまけに燻製にするため煙突に吊るされ、そこでは時間のたつのがひどく遅くまいりました。黒ソーセージがお客に出されるので冬になってやっと下ろされました。おかみさんがソーセージを薄切りにしているとき、頭の一部が切り落とされないように太郎は頭をあまり伸ばさないように気をつけました。太郎はとうとうチャンスを見つけて通り道をあけると、とび出ました。
しかし、小さな仕立て屋はこんなにひどい目にあった家にもういる気はしませんでした。それですぐにまた旅に出ました。しかし、自由は長く続きませんでした。野原で狐と出会い、狐は考えもしないで太郎をパクリとやってしまいました。「ねぇ、狐くん」とチビの仕立て屋は叫びました。「君の喉に引っ掛かっているのは僕だよ、僕をまた自由にしてくれ」「そうだな」と狐は答えました。「お前は何もないのとほぼ同じだ。だけど、おまえんちの庭のにわとりたちをくれると約束するなら、お前を放してやろう」「いいとも」と親指太郎は言いました。「おんどりもめんどりもみんなやるよ、約束する」そこで狐は太郎をまた外に出してやり、自分で家に連れて行きました。父親は愛する息子にまた会えて、もっていた鳥全部を喜んで狐にやりました。「これの代わりに、僕もたくさんのお金を持って来たよ。」と親指太郎は言って、父親に旅で稼いだクロイツァ―銅貨を渡しました。「だけどどうして狐はかわいそうなニワトリを食べるのにもらったの?」「まあ、おバカね、お前のお父さんだってきっと庭で飼っているにわとりよりずっと子供をかわいがるでしょ。」このエピソードはPodbean.comがお届けします。

死神の名付け親

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

貧しい男に12人の子供がいて、その子供たちをただ養うだけで夜も昼も働かなければなりませんでした。それで13人目の子供が生まれたとき、困ってどうしたらよいかわかりませんでしたが、広い大通りに走り出て、出会った最初の人に名付け親になってもらおうと決心しました。最初に出会ったのは神様で、もう男の心をいっぱいにしているものを知っていました。そして、男に、「貧しい人よ、お前を哀れに思う。私が子供の洗礼をしよう。そしてその子を引き受け、この世で幸せにしよう。」と言いました。男は、「お前は誰だ?」と言いました。「私は神だ。」「じゃあ、お前さんには名付け親になってもらいたくないね。」と男は言いました。「お前さんは金持ちに与え、貧乏人は腹を減らしたままにしておくからね。」こう男は話しました。というのは神様が富と貧しさをどんなに賢く割り当てているか知らなかったからです。それで男は神様から向きを変えて、さらに進んで行きました。
すると悪魔がやってきて、「何をさがしてるんだね?おれを子供の名付け親にすれば、その子にたっぷり金をやり、また世界のあらゆる楽しさも与えてやるぜ。」と言いました。男は、「お前は誰だ?」と尋ねました。「おれは悪魔だ。」「じゃあ、お前さんには名付け親になってもらいたくないね。」と男は言いました。「お前さんは人をだまし、道を踏み外させるからね。」
男がさらに進んで行くと、死神が干からびた脚で歩いて男に近づいて来て、「わしを名付け親にしなさい。」と言いました。男は、「お前は誰だ?」と尋ねました。「わしは死神じゃよ。わしはみんなを平等にする。」すると男は、「お前さんが適当な人だ。お前さんは区別しないで貧乏人と同じに金持ちも連れていくからね。お前さんに名付け親を頼むよ。」と言いました。死神は、「わしはお前の子供を金持ちで有名にしてやる。わしを友だちにしたら、なにも足りないものはないからのう。」と答えました。男は、「今度の日曜が洗礼です。時間どおりに来てください。」と言いました。死神は約束通り現れて、全く普通どおりに名付け親を務めました。
男の子が大きくなったとき、ある日名付け親が現れて、その子に一緒に来るようにと言いました。死神は男の子を森へ連れて行き、そこに生えている薬草を見せ、「さあ、名付け親の贈り物を受け取るのだ。お前を有名な医者にしてやる。お前が病人のところに呼ばれたら、わしはいつもお前に姿を見せよう。もし、わしが病人の枕もとに立っていれば、お前は病人を治すと自信をもって言ってよい。それで病人にこの薬草を飲ませれば病人は回復する。だが、わしが病人の足元に立っていれば、病人はわしのものだ。お前は、どんなに手を尽くしても無駄で、世界中の医者の誰もその病人を救えない、と言わねばならぬ。だが、わしの意に背いて薬草を使わないよう注意するのだぞ。そうしないとお前がひどい目にあうのだ。」と言いました。」
まもなく、若者は世界中で最も有名な医者になりました。「あの医者はただ病人を見るだけで、病人がよくなるか死ななければいけないのか、すぐに容体がわかるんだよな。」人々は若者のことをそう言って、人々ははるばるやってきたり、病人がいるときに若者を呼びにやったりして、若者にとてもたくさんお金を出したので、若者はまもなくお金持ちになりました。さて、たまたま王様が病気になり、この医者が呼ばれ、治る見込みがあるかどうか言わなければなりませんでした。しかし、若者がベッドに近寄ると、死神が病人の足元に立っていて、病人を治せる薬草が生えませんでした。(死神を一回だませたらなあ。)と医者は考えました。(そうしたら死神はきっと悪く思うよな。だけど僕は名付け子だから、大目に見てくれるさ。やってみよう。)それで医者は病人を抱え、反対に寝かせました。それで今度は死神が枕もとに立っていました。それから医者は王様に薬草を飲ませ、王様はよくなって、また健康になりました。
しかし、死神がとても黒く怒った顔で医者のところに来て、指差しして脅し、「お前はわしを裏切ったな。今回は許してやろう。お前はわしの名付け子だからな。だが次にやるなら、お前の首がかかってくるぞ。わしはお前をわしと一緒に連れていくからな。」と言いました。
それからまもなく、王様の娘が重い病気にかかりました。娘は王様のただ一人の子供で、王様は昼も夜も泣いたので目が見えなくなり始めました。そして、娘を死から救い出した者は誰でも、娘の夫にし、自分の後を継がせるとお触れを出させました。その医者が病気の娘のベッドに来てみると、死神が病人の足元にいるのが見えました。医者は名付け親にされた警告を思い出すべきでしたが、王様の娘があまりに美しく、その夫になる幸せにのぼせあがって、すっかり何も考えませんでした。死神が怒った目で自分をにらみつけ、空中に手を振り上げて、干からびたこぶしでおどしているのを、医者は見ませんでした。医者は病気の娘を抱きあげて、足があったところに頭をおきました。それから娘に薬草を与えたので、すぐに娘の頬に赤みがさし、体の中で命が息づき始めました。
死神は二回目に自分のものが悪用されたのを見ると、医者に大股で近づいていき、「お前はお終いだ。今お前に命運が尽きたぞ。」と言って、氷のように冷たい手で医者をがっしりとつかんだので、医者はてむかえませんでした。それから死神は地の下にあるほら穴に医者を連れて行きました。そこで医者は、数えきれないほどの列になって大きいのや中くらいのや小さいろうそくが何千何万と燃えているのを見ました。どの瞬間にも、消えていくのもあればまた燃え上がるものもあり、そのため炎が絶え間なく変化してあちことに跳ねるようにみえました。「わかるか?」と死神が言いました。「これらは人間の命の光だ。大きいものは子供のだ。中くらいのは一番いい時の結婚している人たちのだ。小さいのは年寄りのだが、子供たちや若い人たちでも同じように小さいろうそくしかないことがある。」「私の命の光をみせてください。」と医者は言い、自分のはまだとても高く燃えているだろうと思っていました。死神は、今にも消えそうになっている小さな燃え差しを指差し、「見ろ、そこにあるぞ。」と言いました。「ああ、名付け親さん。」とおびえた医者は言いました。「僕に新しいのをつけてください。僕を愛してくれるならそうしてください。僕が人生を楽しみ、王様になり、王様の美しい娘の夫になれるように。」「わしはできん。」と死神は答えました。「新しいのがつけられる前に一つ消えねばならないからな。」「それじゃ、古いのが終わった時すぐに新しいのが燃え続けるように、古いのに新しいのをおいてください。」と医者は必死にお願いしました。死神は医者の望みを叶えるかのように振る舞い、長い新しいろうそくを手にとりましたが、仕返しをしようとしていたので、それをなおすときわざと間違え、小さなろうそくが落ち、消えてしまいました。途端に医者は下に倒れ、そうして自分で死神の手に入っていきました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

トゥルーデおばさん

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、分からず屋で詮索好きな女の子がいました。両親が何かするように言ってもいうことをききませんでした。ですから、どうやってうまくやれるでしょうか。
ある日、その子は両親に言いました。「トルーデおばさんの噂をたくさん聞いたことがあるわ。いつかその人のところへ行ってみよう。その人のいろんなことが変わってて、家の中にはとても変なものがあるっていうから、とても知りたくなったわ。」両親は断固として禁じて、「トルーデおばさんは悪い人だよ、わるいことをするんだ。もしお前が行くなら、もう家の子じゃないよ。」と言いました。
しかし娘は両親の禁止に耳をかさず、やはりトルーデおばさんのところに行きました。娘がやってくるとトルーデおばさんが聞きました。「おまえは、どうしてそんなに青い顏をしているんだい?」 娘はからだ全体をふるわせながら、答えました。「見たものがとてもこわくって。おばさんの家の階段で、まっ黒な人を見たのよ」「それは、炭を焼く男さ」「それから、緑の男も見たわ」「それは、狩人だよ」「そのあとに、血みたいにまっ赤な男に会ったわ」「それは、獣を殺す男だよ」「ああ、怖かったわ、トルーデおばさん。家のまどから見たら、あなたではなくって、本当にそう思うんだけど、頭が火で燃えている悪魔が見えたの」「ほおー!じゃあ、おまえはちゃんとした衣装の魔女を見たんだね。わたしはおまえをずっと待っていたんだ。もう長い間おまえが必要だったんだ。おまえに光をもらおう。」 そうしておばさんは、娘をひとかたまりの木材にかえてしまい、それを火に投げ入れました。そしてパアーと燃え上がると、そのそばに座って暖まり、「なんとも明るい光だわい。」と言いました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

名づけ親さん

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

貧しい男はとてもたくさん子供がいたのですでに世界のみんなに名付け親になってくれるよう頼んでいました。それでまた別の子供が生まれたとき、招待できるだれも他に残っていませんでした。どうしたらよいかわからず途方にくれて、横になると眠りました。すると、門の外に出て、出会った最初の人に名付け親になってもらえばよい、という夢をみました。目が覚めると、夢の通りにやるぞと心に決め、門の外に出、近づいてきた最初の人に名付け親になってくれるよう頼みました。その見知らぬ人は男に小さいコップの水をさし出し、「これは素晴らしい水だよ。この水で、病気の人を治せるんだ。ただ、死神がどこに立っているか気をつけないといけない。死神が病気の人の頭のそばに立っていれば、病気の人に水をあげれば治る。だが、死神が足のそばに立っていれば、どんな苦労も水の泡だ。というのは病気の人は死ななければいけないのだから。」と言いました。この時から、男はいつも病気の人が救われるかどうかあてることができ、その技で有名になり、たくさんのお金を稼ぎました。あるとき、王様の子供のところに呼びいれられ、入っていくと、死神が子供の頭のそばに立っているのを見て、水で治しました。そして2回目も同じことをしました。しかし3回目は死神が足のそばにたっていて、子供が死ななければならないと知りました。
あるとき、男は名付け親を訪ね、水で成功したことを話そうと思いました。しかし、家に入ると、中で変なことが起こっていました。階段の1段目でほうきとちりとりがけんかしていて、お互いを激しく殴っていました。男は「名付け親はどこにいるかね?」と二人に尋ねると、ほうきが「階段の1段上」と答えました。男が2段目にくると、死んだ指が山盛りになってありました。3段目には、死んだ頭が山となっていて、男にもっと上の段だと教えました。4段目には、火にかかっている魚たちがいて鍋の中でジュージューと自分を焼いていました。魚たちももう1段上だと言いました。5段目を上った時、部屋の入口に着き、鍵穴から覗くと一対の長い角を持っている名付け親が見えました。
ドアを開け、入っていくと、名付け親は大急ぎで、ベッドに入り、布団をかぶってしまいました。それから男は「名付け親のだんな、なんとも変な家にお住まいですね。階段の1段目にくるとちりとりとほうきが喧嘩してひどくお互いをぶっていましたよ。」と言いました。「おまえはなんという間抜けだ。それは男の子と女中がお互いに話していたんだ。」「だけど、2段目では死んだ指が落ちていましたよ。」「なんて馬鹿だ、そりゃ、フタナミソウの根だよ。」「3段目には死んだ人の頭が山になっていましたよ。」「愚か者め、それはキャベツだよ。」「4段目には、鍋に入った魚を見ましたが、シューシュー言って自分を焼いていました。」男がそう言ったとき魚たちがやってきて、自分を皿に載せました。「それで5段目に来て、ドアの鍵穴から覗いたら、そこに、旦那、あなたがいたんですよ。長い長い角が生えていました。」「いやあ、それは本当じゃないよ。」男はびっくりして、跳び出しました。もしそうしなかったら、名付け親が何をしたかわかりません。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

コルベスさま

Tuesday Aug 13, 2024

Tuesday Aug 13, 2024

昔、おんどりとめんどりがいて、一緒に旅をしようと思いました。それでおんどりは、四つの赤い車輪がついている美しい車を作り、それに四匹のネズミをつなぎました。めんどりがおんどりと一緒にその車に乗り、一緒に出かけました。まもなく猫に会い、猫は、「どこに行くの?」と言いました。おんどりが、「コルベスさまの家にいくところだ。」と答えました。「一緒に連れてってよ。」と猫が言いました。おんどりは、「いいとも。後ろに乗って。前だと落ちるかもしれないから。赤い車輪を汚さないように気をつけてね。車輪たちや、転がれ。ネズミたちや、チューチュー鳴け。僕たちはコルベスさまの家へいくところ。」
このあと、石臼が来て、それから卵が、それからあひるが、それから留針が、最後に針が来て、みんな車に乗り、一緒に行きました。ところが、コルベスさまの家に着くと、コルベスさまは留守でした。ネズミたちは車を納屋に入れ、めんどりはおんどりと一緒に止まり木に飛び、猫は暖炉のそばに座り、あひるは井戸の柱の上に座りました。卵はタオルの中へ転がって入り、留針は椅子のクッションに刺さり、針はベッドに飛び乗り枕の真ん中に刺さり、石臼は戸の上に寝ころびました。
それからコルベスさまが帰ってきて、暖炉のところに行き、火をつけようとしたら、猫がコルベスさまの顔に灰を投げつけました。コルベスさまはその灰を洗い落とそうと大急ぎで台所へ走っていきました。するとアヒルが顔に水をはねつけました。コルベスさまは水をタオルでふこうとしましたが、卵が転がってきてぶつかり、壊れて両目をのりづけしてしまいました。コルベスさまは休もうと思い、椅子に座りました。すると、留針が刺しました。コルベスさまはかんしゃくをおこして、ベッドに寝転がりましたが、枕に頭をのせた途端、針が突き刺しました。それでコルベスさまは大声で悲鳴を上げ、怒って広い世界へ走り出て行こうとしましたが、家の戸口に来ると、石臼が落ちてきて、コルベスさまをつぶし殺してしまいました。コルベスさまはきっととても悪いひとだったにちがいありません。このエピソードはPodbean.comがお届けします。

Copyright 2024 Podbean All rights reserved.

Podcast Powered By Podbean

Version: 20240731