グリム童話
グリム童話は、ヤーコプとヴィルヘルム・グリムによって編纂された、時代を超えた民話のコレクションです。これらの物語は、勇気、魔法、道徳をテーマにした話が世代を超えて共鳴し続ける、民俗の宝庫です。「シンデレラ」や「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」などの古典から、「漁師とその妻」や「ルンペルシュティルツキン」といったあまり知られていない珠玉の話まで、それぞれの物語がヨーロッパの口承伝承の豊かな織物を垣間見せてくれます。 グリム童話は、その鮮やかなキャラクター、道徳的教訓、そしてしばしば暗いトーンが特徴で、歴史的文脈の厳しい現実と幻想的な要素を反映しています。その永続的な魅力は、楽しませ、教え、驚きをもたらす能力にあり、これが子ども文学の礎となり、民俗学や物語の研究者たちにとっての魅力的な源となっています。
Episodes
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、粉屋がいました。この粉屋に美しい娘がいて、大人になったので、娘に準備してやり、よい結婚をさせたいと願いました。(もし良い人が来て娘を望んだら、その人に娘をやろう)と考えました。それからまもなく、娘を妻に欲しいという人がやってきて、とても金持ちのように見え、粉屋はその人に悪いところが見つからなかったので、娘を嫁にやると約束しました。しかしこの乙女は、一般の娘が婚約した男を好きなようには、この人を好きでなく、全く信頼しませんでした。この人を見たり考えたりするときはいつも虫唾が走りました。あるとき、男が娘に、「あなたは僕のいいなずけなのに、一度も家へきたことがありませんね。」と言いました。娘は、「あなたの家がどこかわかりませんもの。」と答えました。するといいなずけは、「僕の家はそこの暗い森にあります。」と言いました。娘は行かなくてすむような言い逃れをして、「そこの道がわかりませんわ。」と言いました。いいなずけは「次の日曜日にそこに僕を訪ねてきてください。もうお客たちを呼んでありますから。森の道がわかるように灰をまいておきますよ。」と言いました。
日曜になり、娘が行かなければならなくなると、自分でもどうしてなのかはっきりわかりませんでしたが、とても不安になり、道に印をつけるため、両方のポケットにエンドウ豆とレンズ豆を詰めました。森の入口に灰がまかれていて、これをたどっていきましたが、一歩ごとに地面に2,3のエンドウ豆を落としていきました。ほぼ一日じゅう歩いて、とうとう森の真ん中に着きました。そこは最も暗い所で、たった一軒の家がぽつんとあり、娘はその家が好きではありませんでした。というのはとても暗く陰気に見えたからです。中に入りましたが、誰も家の中にいなくて、シーンとした静けさが支配していました。
突然、「戻れ、戻れ、若い乙女、あなたが入ってるのは人殺しの家だよ」と叫ぶ声が聞こえ、娘は見上げて、その声が壁にかかっている鳥から出ているのがわかりました。その鳥は、「戻れ、戻れ、若い乙女、あなたが入ってるのは人殺しの家だよ」とまた叫びました。
それから、若い乙女はさらに進んで部屋から部屋へ行き、家じゅうを歩きましたが、家は全く空っぽで、人は一人も見られませんでした。とうとう穴倉に来てみると、頭が絶えず揺れているとても年とった老婆がいました。「私のいいなずけがここに住んでいるかどうか、わかりませんか?」と娘は言いました。
「ああ、可哀そうに」と老婆は答えました。「まったくあんた、どこへ来るんだよ。あんたは強盗の巣にいるんだよ。あんたはじき結婚する嫁だと思ってるんだろうが、死んで結婚式をすることになるよ。ほら、水が入っているそこの大釜を、わたしゃ、火にかけさせられてるんじゃが、やつらはあんたをつかまえると、情け容赦なく細切れにして、煮て、食べてしまうよ。あいつらは人食いだからね。あんたを可哀そうに思って助けてやらなんだら、あんたはお終いだねえ。」
そう言って老婆は、娘がみつからない大樽のかげに連れて行き、「ねずみみたいにじっとしてるんだよ、音を立てたり、動いたりしてはだめだ。そうしないとあんたはお終いだからね。夜に強盗たちが眠ったら逃げるよ。わたしゃ、ずっとその機会を待っていたんじゃ。」と言いました。娘が隠れるとすぐに、罪深い連中が帰ってきました。強盗たちは別の若い娘を引きずって一緒に連れてきました。みんな酔っぱらっていて、その娘が泣き喚いても全く注意を払いませんでした。
強盗たちは娘に、グラスになみなみと注いだワインを3杯、一杯は白、一杯は赤、一杯は黄色のワインを飲ませました。このため娘の心臓は二つに破裂しました。そうして、娘の優美な衣服をはぎとり、テーブルに娘を載せ、美しい体を細切れにし、それに塩を振りかけました。樽のかげの可哀そうな花嫁はぶるぶる震えていました。というのは強盗たちが自分をどんな目にあわせようとしていたかとてもよくわかったからです。強盗の一人が殺された娘の指にはまっている金の指輪に気がつき、その指輪がすぐに外れなかったので、斧をとって指を切りとりました。しかし、指は空に跳ね上がって樽を越え、まっすぐ花嫁の胸の中に落ちました。その強盗はろうそくを持ち、指を捜そうとしましたが見つけられませんでした。それで、別の強盗が、「お前、大樽の後ろを捜したかい?」と言いました。しかし、老婆が「さあ、お食べな。捜すのは明日までおいときな。指はあんたから逃げないさね。」と言いました。
すると強盗たちは、「お婆のいう通りだ。」と言って、捜すのを止め、座って食べました。老婆がワインに眠り薬を入れておいたので、強盗たちはまもなく穴倉で寝そべって眠りいびきをかきました。花嫁はそれを聞くと、大樽の後ろから出てきて、下に列になって寝転んで眠っている強盗たちをまたがなければならず、一人でも目覚めさせやしないかと恐怖でいっぱいでした。しかし、神様が助けてくださり、娘は無事に乗り切りました。老婆が娘と一緒に上へあがり、戸をあけ、二人はありったけの速さで人殺しの巣から逃げました。風がまかれた灰を飛ばしてしまっていましたが、エンドウ豆とレンズ豆が芽を出し育っていて、月の明かりで道がわかりました。二人は一晩じゅう歩き、やがて朝に水車小屋に着きました。それから娘は父親に出来事を全くありのままに話してきかせました。
結婚式が祝われる日が来ると、花婿が現れ、粉屋は親戚や友達をみんな招いていました。みんなが食卓についたとき、一人一人が何か話をするように言われました。花嫁はじっと座って何も言いませんでした。すると、花婿が花嫁に、「さあ、君、何も知らないのかい?他の人たちのように何か僕たちに話しなさいよ。」と言いました。花嫁は答えました。「では私は夢の話をします。私は一人で森を歩いていました。そして最後に一軒の家に着きました。そこには誰もいませんでしたが、壁にかごに入っている鳥がいて、、『戻れ、戻れ、若い乙女、あなたが入ってるのは人殺しの家だよ』と叫びました。これを鳥はもう一回叫びました。あなた、これはただ夢に見たことですよ。」
「それから私は全部の部屋に行きました。みんな空っぽでした。そして何かとても恐ろしい感じがしました。とうとう私は穴倉に下りて行きました。そこに、頭がゆらゆらしているとてもとても年とったおばあさんがいました。私は『この家に私の花婿が住んでいますか?』とおばあさんに尋ねました。おばあさんは『ああ、可哀そうに。あんたは強盗の巣に入ったんだよ。確かにあんたの婿はここに住んでるけど、あんたを細切れにして殺し、煮て食べるんだよ。』と答えました。あなた、これはただ夢に見たんですよ。だけど、おばあさんは私を大樽の後ろに隠しました。それで隠れるとすぐ、強盗たちが帰ってきて、一人の娘を一緒に引っ張って来ました。その娘に白と赤と黄色の三種類のワインを飲ませて、娘の心臓は二つに破れました。あなた、これはただ夢に見たことですよ。そうして強盗たちは娘のきれいなドレスをひきはがし、テーブルの上で娘のきれいな体を切り刻んで、塩をかけました。あなた、これはただ夢に見たことですよ。強盗の一人が娘の小さな指にまだ指輪があるとわかって、指輪が抜きにくかったので、斧をとって指を切り離しました。だけど指は跳ね上がって大樽の後ろに跳び、私の胸に落ちました。それで指輪のついた指がありますわ。」こう言って娘は指をとりだし、そこにいる人たちにみせました。
強盗は、この話の間に灰のように青ざめ、跳びあがって逃げようとしましたが、お客たちがきつくおさえつけ、警察にひきわたしました。それから花婿とその仲間の強盗たちはみんなその忌まわしい行いで死刑にされました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
第1話
靴屋が自分のせいではないのですが、とても貧しくなってとうとう一足の靴分の皮以外何も残らなくなりました。それで夜に、次の朝作りはじめるようと思った靴を切り取りました。気がとがめていないのでベッドに静かに横になり、神様にお祈りし、眠りました。朝に、お祈りをした後仕事を始めようとしたら、仕事台のうえに2つの靴が出来上がってあったので、ビックリし、どう考えたらよいのかわかりませんでした。靴を手にとってもっとよく見てみたら、1つも悪い縫い目がなく、とてもきれいに作られているので、腕試しをしようと作られたかのようでした。まもなくお客が入ってきて、その靴をとても気に入り、普通よりもっと多く支払いました。それで、そのお金で靴屋は2足分の皮を買うことができました。その皮を夜に切り抜いておき、朝に新鮮な気分で仕事に取りかかろうとしましたが、そうする必要がありませんでした。というのは起きたとき、靴はもう作られていて、買い手たちは文句のつけようがない出来なので、4足分の靴の皮を買うのに十分なお金を払いました。再び次の朝も靴ができていて、それがずっと続きました。靴屋が夜に切り取ったものが朝までに仕上がっていたので、まもなくまともな収入をもち、とうとう金持ちになりました。
さて、クリスマスに遠くないある夜、もう切り取ってしまい、寝る前に、靴屋は妻に、「今夜起きていて、こういうふうに手伝ってくれるのは誰か確かめるってのはどうだい?」と言いました。妻はその考えが気に入り、ろうそくに火をつけました。それから二人で部屋の隅に、そこにぶら下がっていた服のかげにかくれ、見張りました。真夜中になると二人のかわいい裸の小人がやって来て、靴屋の作業台に座り、目の前に切り取られてある皮すべてを取り、小さな指でとても上手にとても速く、かがって縫って叩きはじめたので、靴屋は仰天して目をそらすことができませんでした。小人たちは、休まずに全部の靴を作り終え、作業台に並べると、素早く走り去りました。
次の朝、妻は「あの小人さんたちは私たちを金持ちにしてくれたわ。私たちは感謝していることを示さなければいけないわ。二人はあちこち走り、何も着ていないし、寒いに違いないわ。こうしたらどうかしら。私は、小さなシャツとコート、ベスト、ズボンを作って、それから二人に長靴下を編んであげるの。そしてあなたは2足の小さな靴を作ってあげるのよ。」と言いました。夫は「喜んでそうするよ。」と言いました。
そしてある夜、全部準備が出来たとき、作業台の上に切り取った皮ではなく贈り物をまとめておきました。それから小人たちがどうするか見るために隠れました。真夜中に小人たちは飛び跳ねながら入ってきて早速仕事にとりかかろうとしました。しかし、切った皮は見つからずかわいい服があるだけなので、初めはびっくりしていました。それから猛烈な喜びを示し、すごい速さで服を着始めました。そして美しい服を着て、「さあ、僕らは見て立派な男だぞ。なんでこれ以上靴屋でいるんだろう?」と歌いました。そして踊って飛び跳ねて、椅子やベンチを飛び越えて、最後にドアから出ていきました。そのときから小人たちはもう来なくなりました。しかし、靴屋は生きてる間、万事順調でやること全てが成功しました。
第2話
昔、よく働ききれい好きで、毎日家の掃除をし、ゴミを玄関の前に山にして捨てていた貧しい下女がいました。或る朝、丁度仕事に戻ろうとしていたときこの山に手紙を見つけました。字が読めなかったのでほうきを隅において、主人のところに手紙を持って行きました。そしてなんと、それは妖精たちからの招待状でした。子供の命名にたちあうように娘に頼んできたのです。娘はどうしたらよいかわかりませんでしたが、たくさん説得されて、この種の招待を断るのは正しくないと言われて、承諾しました。
すると3人の妖精がきて、娘を小渓谷に連れて行きました。そこには小人が住んでいて、そこのあらゆるものが小さかったけれど、描写できないほど優雅で美しかった。赤ちゃんのお母さんは真珠の飾りがついた黒檀のベッドにねていました。カバーは金の刺繍がしてあり、揺りかごは象牙でできており、お風呂は金でできていました。娘は名付け親として立ち、その後帰宅しようとしましたが、小さな妖精たちは3日とまるように熱心に頼んだので、娘はとまり、楽しく陽気に過ごしました。そして小人たちは娘を楽しくさせるため、できることを何でもしました。とうとう娘は帰ることにしましたが、先に彼らはポケットをお金でいっぱいにしました。それから山からでる道を案内しました。家に着いて、仕事を始めようと、まだ隅にたっていたほうきを手にとり、掃き始めました。すると家から知らない人たちが何人か出てきて、「あなたは誰?ここで何をしているの?」と尋ねました。そして、山の小人たちといたのは、自分が思っていた3日ではなく、7年だったのでした。そしてその間に前の主人は亡くなっていました。
第3話
ある母親が妖精たちに子供を揺りかごから連れて行かれ、代わりに、大きな頭とギョロ目をし、食べて飲む以外何もしない取替えっ子がおいてありました。それで、困って隣の人のところに行き、アドバイスをお願いしました。隣の人は、「取替えっ子を台所に運び、暖炉の上に置き、火をつけ、二つの卵の殻でお湯を沸かすんだ。すると取替えっ子は笑うだろうから、もし笑えばその子はおしまいになるさ。」と言いました。女は隣の人が言ったことを全部やりました。そして、水の入った卵の殻を火にかけると、ギョロ目は「私は、今、西の森と同じ年齢だが、人が卵の殻で何かを煮るのは見たことがない。」と言ってそれを笑いました。笑っている間に、突然仮親の小さな妖精たちが来て、本当の子供を連れてきて暖炉の上におくと、取替えっ子を連れて去りました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
1
昔、九本の尻尾がある古狐がいました。古狐は妻が自分に忠実でないと思い、妻を試してみようと思いました。長椅子の下に長々とねて、手足を動かさず、まるで死んだようにしていました。狐奥様は自分の部屋に上がって行き、ひきこもり、お手伝いさんの猫嬢がかまどのそばに座り、料理をしていました。古狐が死んだと知れると、大勢の求婚者たちが現れました。
お手伝いさんは誰かが玄関の戸をたたいているのを聞いて、でかけて戸を開けました。それは若い狐で、「何をしているんだい?猫さん。眠っているかい?起きているかい?」と言いました。「眠っていないわ。起きてるわよ。何を作っているか知りたい?バターでビールを煮ているの。夕食のお客さんになりません?」「いや、結構です、猫さん。狐奥様は何してますか?」と狐は言いました。
お手伝いさんは、「奥様は部屋にいて、ふさぎこんで嘆いています。だんなさまが亡くなったので泣いて目が真っ赤です。」と答えました。「では、是非伝えてください。お嬢さん。若い狐がここにいて、奥様に妻になって欲しがってると。」「わかりました。若いお方。」猫は階段を昇ります。タン、トン。猫は戸を叩きます。トン、トン、トン。「狐奥様、おいでですか?」「ああ、いますよ。猫さん。」と狐奥様は叫びました。「玄関の外に妻になってほしいという方がいます。」「どんな方?その方、亡くなっただんなさまと同じ9本の美しい尻尾があって?」「とんでもない、尻尾は一本だけです。」と猫は答えました。「それじゃ結婚しないわ。」猫嬢は下におりていき、求婚者を追い返しました。
そのあとまもなく、また戸をたたく音がして、別の狐が玄関にいて狐奥様を妻にしたいと言いました。この狐には尻尾が2本ありましたが、最初の狐と同じ結果になりました。このあと、さらにもっと来て、前の狐より尻尾が一本ずつ多かったのですが、みんな追い返されました。そしてとうとう、古狐のだんな様のように九本の尻尾がある狐がきました。狐奥様はそれを聞くと、嬉しそうに猫に言いました。「門と戸を全部開けて、古狐のだんなを外に運び出しておくれ。」
しかし、結婚式が行われようというちょうどその時、古狐のだんなは長椅子の下で動き出し、式に来たお客をみんなこん棒でたたき、みんなと狐奥様を家から追い出してしまいました。
2
古狐のだんなが死んだとき、狼が結婚を申し込みに来て、戸をたたき、奥様狐のお手伝いさんをしている猫が戸を開けました。狼は猫に挨拶して、「こんにちは、ケーレビットの猫さん、どうして一人でいるのですか?どんなご馳走を作っているのですか?」と言いました。猫は、「とても甘いパンをくだいてミルクに入れています。お客さんになって食べませんか?」「いいえ、結構です、猫さん。」と狼は答えました。「狐奥様はお留守ですか?」「奥様は悲しい運命を嘆きながら、とても困って嘆きながら、二階の部屋にいらっしゃいます。だんな様の古狐がもうこの世にいないので。」と猫は言いました。狼は「もし奥様が今夫が欲しいなら、下に降りてくるように」と答えました。
猫は素早く階段を駆け上がり、尻尾をあちこちに揺らして、居間の入口にやってきます。五本の金の指輪で、戸をたたきます。「おいでですか?奥様、もし夫が欲しいなら、下まで降りてきてください。」狐奥様は「その方は赤い靴下をはいてるの?とがった口をしているの?」と尋ねました。「いいえ」と猫は答えました。「それじゃあ、私の役にたたないわ。」
狼が行ってしまうと、犬、鹿、うさぎ、熊、ライオン、など森のけものが次々とみんな来ました。しかし、古狐のだんなが持っていた良い性質のうち一つがどの相手にもいつも欠けていて、猫は求婚者たちを追い返し続けました。とうとう若い狐がやってきました。すると、狐奥様は、「その方は赤い靴下をはいているの?小さなとがった口をしているの?」と言い、猫は「はい、そうですよ。」と言いました。「それじゃ、二階へお連れしておくれ。」と狐奥様は言い、お手伝いさんに結婚式の準備をするよう命じました。「できるだけきれいに部屋を掃いて、窓を開けて、夫のじいさんを投げだしておくれ。じいさん、すてきな太ったねずみをもってきて、妻のことは考えちゃいなかったわ、つかまえたのはみんなたべちゃったもの。」それから若い狐と結婚式をあげて、たくさん喜びと踊りがありました。もし止めていなければ、ふたりはまだ踊っています。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、貧しいお百姓がいました。夜にお百姓がかまどのそばに座って火をかきおこし、おかみさんは座って糸を紡いでいました。その時、お百姓は、「子供がいないのはわびしいなあ。おれんちではとても静かで、よそんちでは賑やかでわいわいしてるもんなあ。」と言いました。「そうねぇ」とおかみさんは言ってため息をつきました。「たった一人でもいたら、その子がとても小さく親指くらいしかなくても、とても嬉しいし、それでも私たちはその子を心から可愛がるんだけどねぇ。」さて、おかみさんは具合が悪くなり、七か月経つと、子供を生みました。その子には手足はきちんとあったものの、親指くらいしか大きくありませんでした。それで二人は「おれらが望んだようになったんだ。これはおれたちの可愛い子供だよ。」と言いました。そしてその大きさから二人はその子を親指太郎と呼びました。二人は十分食べさせていましたが、子供は大きくならず最初のときのままでした。それでも利口そうにものを見て、まもなく賢く素早い子供だとわかりました。というのは親指太郎がやることは何でもうまくいったからです。
ある日、お百姓は森へ木を切りにいく支度をしていました。独り言のように「誰か荷馬車を連れてきてくれたらいいのになあ」と言うと、「ああ、お父さん」と親指太郎が叫びました。「僕がすぐ荷馬車をつれていくよ。任せてくれ。決められた時間に森に着けるからさ。」お百姓はにこにこして言いました。「どうやってできるんだい?。お前は手綱をとって馬を御すには小さすぎるよ。」「そんなのはいいよ、お父さん。お母さんが車に馬をつないでくれさえすれば、僕は馬の耳に入ってどう行くか指令するよ」「そうだな」と父親は答えました。「一度やってみるか。」
時間になると母親は馬を車につなぎ、親指太郎を馬の耳に入れると、親指太郎は、「はいし、はいし」と叫びました。すると馬は主人と一緒にいるようにきちんと進んで、荷馬車は森へ行く正しい道を進みました。ちょうど角を曲がっていて親指太郎が「はいしはいし」と叫んでいるとき、たまたま二人の男がやってきました。「うわっ」と一人が言いました。「こりゃ何だ?荷馬車が来るけど、御者が馬に話してるのに姿が見えないぞ。」「あれはおかしいな。」ともう一人が言いました。「荷馬車のあとをつけてどこに止まるか見てみよう。」
ところで荷馬車はまっすぐ森へ入り、まさに木が切られていた場所へ行きました。親指太郎は父親を見ると、「ほらね、お父さん、荷馬車を連れてきたよ。さあ僕を下ろして。」と叫びました。父親は左手で馬をおさえ、右手で耳から小さい息子をとり出しました。親指太郎はすっかりご機嫌で一本のわらの上に座りました。しかし二人のよそ者は親指太郎を見て、呆気にとられあいた口がふさがりませんでした。しばらくして一人がもう一人を脇へ連れて行き、「おい、あのチビを大きな町で見世物にしたら一財産稼げるぞ。あのチビを買おう。」と言いました。二人はお百姓のところへ行き、「私たちにその小さい子を売ってください。よく面倒をみますから。」と言いました。「とんでもない!」と父親は答えました。「この子は目の中に入れても痛くないほどかわいがっているんです。世界中のお金を集めたってわしから買えませんよ。」
ところが、親指太郎はその取引を聞いて父親の上着のひだを這い上り、肩に来て耳にささやきました。「お父さん、僕を売って。すぐにまた戻ってくるから。」それで父親はかなりたくさんのお金を貰い、息子を二人の男にゆずりました。「どこに座る?」と二人は親指太郎に言いました。「ああ、帽子のつばに僕をのせてください。そうしたら僕は前へ行ったり後ろへ行ったりして、辺りを見れますから。それでも落ちませんよ。」二人は親指太郎の望む通りにしました。
親指太郎が父親に別れを告げた後、二人は親指太郎と出かけていきました。夕暮れになるまで歩くと、親指太郎が、「下ろして。用を足すから。」と言いました。「いいからそこにいろよ。」と親指太郎がのっている帽子の男が言いました。「おれにはどっちでもいいんだ。鳥だって時々おれの上にふんを落とすし。」「だめだよ」と親指太郎は言いました。「僕は礼儀作法を知ってるよ。早く下ろして。」男は帽子を脱ぎ、親指太郎を道端の地面に置きました。親指太郎は芝土の間を少し跳んだり這ったりしていましたが、突然、見つけておいたネズミ穴にスッと入ってしまいました。「さよなら、だんなさん、僕抜きで帰ってね。」と親指太郎は言って嘲りました。二人はそちらへ走っていき、ネズミの穴へ杖を差し込みましたが無駄でした。親指太郎はもっとずっと奥へ這っていき、すぐすっかり暗くなってしまったので、二人は怒りながら空っぽの財布をかかえて家に帰るしかありませんでした。
親指太郎は二人が行ってしまったとわかると、地中の通路から這い戻りました。「暗い時に地面を歩くのはとても危ない。」と言いました。「首や足が簡単に折れるからね。」幸いにも空っぽのカタツムリの殻につまずきました。「ありがたい」と言いました。「この中で無事に泊れるよ。」そして中に入りました。それからまもなく、ちょうど眠りかけた時、二人の男が通りかかるのが聞こえ、一人が「あの金持ちの牧師からどうやって金や銀をとろうか?」と言っていました。「僕が教えてやるよ」と親指太郎は二人の話しに割りこんで、叫びました。「ありゃ何だ?」とギョッとして泥棒の一人が言いました。「誰か話してるのが聞こえたぞ。」二人は耳をすまして立ち止まりました。親指太郎はまた「一緒に連れていってくれ。手伝ってやるよ。」と言いました。「だけどどこにいるんだ?」「地面を見てごらんよ、僕の声がきこえるところを見て。」と太郎は答えました。
そこで泥棒たちはとうとう太郎を見つけ、持ち上げました。「この小鬼、どうやっておれたちを手伝うんだ?」と二人は言いました。「いいかい」と太郎は言いました。「僕が鉄の棒のあいだから忍び込んで、あんたたちが欲しいものを何でも手渡すんだ。」「じゃあ来いよ。」と二人は言いました。「腕のほどをみようじゃないか。」
牧師の家に着くと、親指太郎は部屋に忍び込みましたが、すぐにありったけの大声で「ここにあるものみんな欲しいかい?」と叫びました。泥棒たちはびっくりして、「だけど、小さい声で言えよ、誰も目を覚まさないようにな。」と言いました。しかし、親指太郎はこれがわからない振りをして、もう一度「何が欲しいんだ?」と叫びました。「ここにあるものみんな欲しいのかい?」
隣の部屋で眠っていた料理人に、これが聞こえ、ベッドで起きあがり耳をすましました。一方泥棒たちはギョギョッとして少し離れたところまで逃げてしまいましたが、そのうちまた勇気を出して、「チビのいたずらめ、おれたちをからかってやがるんだ」と考えました。二人は戻ってきて、太郎にささやきました。「おい、まじめにやれ。何かとってよこせ。」すると太郎はまたありったけの大声で叫びました。「本当に何でも渡すよ。手を中に入れてよ。」耳をすましていた女中にこれがとてもはっきり聞こえたので、ベッドから跳び下り、戸に走って行きました。泥棒たちは恐れをなして亡霊の軍勢が追いかけてきてるかのように逃げましたが、女中には何も見えなくて、明かりをつけに行きました。
ろうそくをもって女中が戻って来たとき、親指太郎はみつからないで納屋に行きました。女中はすみずみを調べて何も見つからなかったので、(結局寝ぼけていただけだったんだわ)と思ってまたベッドに戻って寝ました。親指太郎は干し草の間に登り眠るのに最高の場所を見つけました。そこで夜明けまで休み、それから両親のところへ帰ろうと思いました。
しかし、他の災難が太郎を待ちうけていました。本当に、この世には心配事や難儀がたくさんあるものです。夜が明けると、女中は雌牛にえさをやるためにベッドから起きました。そのまま歩いて納屋に入り、腕いっぱいに干し草をかかえましたが、それは可哀そうにもちょうど親指太郎が中で眠っていた干し草でした。ところが、太郎はぐっすり眠っていたので何も知らず、干し草と一緒に牛の口に入ってしまってからはじめて目が覚めました。
「わあ、大変!」と太郎は叫びました。「どうして布叩き機に入ったんだ?」しかし、すぐに自分がどこにいるかわかりました。それで、牛の歯につぶされてばらばらにならないように気をつけなければなりませんでしたが、次は干し草と一緒に胃に滑り落とされました。「この小さな部屋に窓は忘れられてるよ。」と親指太郎は言いました。「陽がささないし、ろうそくも持ってこないしな。」太郎がいるところはとくに気持ち悪く、最悪なのは戸口からどんどん干し草が入り続けて、空いてる場所がどんどんすくなくなってくることでした。とうとう苦しくなって太郎は、「もう飼葉を入れるな!もう飼葉を入れるな!」と大声で叫びました。ちょうどそのとき女中がその牛の乳しぼりをしていて、だれか話すのが聞こえたのに誰も見えなくて、それが夜に聞こえた声と同じ声だとわかりました。それで仰天して椅子から滑り落ち、ミルクがこぼれてしまいました。
大急ぎで主人のところに走って行き、「大変です、だんなさま、牛が喋っています。」と言いました。「お前は気が狂ってるんだ。」と牧師は答えましたが、どうなっているのか確かめに自分でも牛小屋に行きました。ところが、牧師が足を中に踏み入れるか踏み入れないうちに、太郎は「飼葉をもう入れるな、飼葉をもう入れるな!」と叫びました。それで牧師自身も驚いて、(悪魔が牛にのり移ったんだ)と思って、牛を殺すよう命じました。
牛は殺されましたが、太郎が入っていた胃袋は堆肥の山に放り投げられました。親指太郎は胃袋から抜け出ようととても苦労してもがいていました。ところが、自分のまわりにやっといくらか空きを作って、ちょうど頭を出そうとした時に、新しい災難がおこりました。腹をすかした狼がそこへ走ってきて、胃袋をまるごと一飲みにしてしまったのです。親指太郎はくじけませんでした。(ひょっとすると狼は僕の話をきいてくれるかもしれないぞ)と考えました。それで狼のお腹から呼びかけました。「狼くん、すばらしい御馳走のあるところを知ってるよ」
「どこだい?」と狼は言いました。「これこれ、こういう家だよ。台所の流しから入りこまなくちゃいけないんだ。ケーキやベーコン、ソーセージをたらふく食べられるよ。」それで太郎は正確に父親の家を説明しました。狼は二回言われるまでもなく、夜になると流しから体を押し込み、食料品置き場で思う存分食べました。お腹がいっぱいになると狼はまた出ようとしましたが、あまりにふくれていたので同じところから出れませんでした。親指太郎はこれを計算に入れておいたので、狼の体の中で大騒ぎをはじめ、暴れまくり大声で喚き散らしました。「静かにしてくれ。」と狼は言いました。「人を起こしちゃうじゃないか。」「かまうもんか。」と親指太郎は答えました。「お前はたっぷり食べた、僕も楽しくするんだ」そしてまた力いっぱい叫び始めました。
それでとうとう父親と母親が目を覚まし、その部屋へ駆けていって戸の隙間から中を覗きました。狼が中にいるのがわかると二人は逃げて、父親は斧をもち、母親は草刈りがまを持って戻りました。部屋に入る時、「後ろにいろよ。」と男は言いました。「おれが殴ってそれでやつが死ななかったら、お前が鎌で切り倒してやつの体をばらばらに切るんだ。」すると親指太郎に両親の声が聞こえたので、「お父さん、僕ここだよ。狼の体の中なんだ」と叫びました。父親は大喜びで「有り難い、かわいい子がまた戻ったよ」と言って、子供が怪我をしないように鎌をしまえ、とおかみさんに告げました。そのあと、父親は腕を振り上げ、狼の頭を力いっぱい殴ったので、狼は死んで倒れました。それから二人はナイフや鋏をもってきて狼の体を切り開き、おちびちゃんをとり出しました。
「ああ」と父親は言いました。「お前のためにどんなに悲しかったことか。」「うん、おとうさん。僕ずいぶん世間を歩き回ったよ。ふうっ、僕はまた新鮮な空気を吸えるよ。」「じゃあ、どこへ行ってたんだ?」「あのね、おとうさん。ネズミの穴にいたり、牛のお腹にいたりして、それから狼のたいこ腹にいたんだ。もうこれからはお父さんたちといるよ。」「そうだね。おれたちも二度とお前を売らないよ。世界中の金を積まれたってごめんだね。」と両親は言って、かわいい息子を抱きしめキスしました。二人は親指太郎に飲み物と食べ物を与え、新しい服を作らせました。というのは旅をしているあいだに服はぼろぼろになってしまったからです。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、一人の仕立て屋がいました。その男には息子が三人と、たった一匹のヤギがいました。しかし、そのヤギはミルクを出し、みんなを養ったので、良い物を食べさせるため、毎日牧草地へ連れて行かれました。息子たちが順番にそれをしました。あるとき、一番上の息子が、墓地へ連れて行きました。そこでは一番いい草がみつかり、やぎを食べさせ、そこで走り回らせました。夜に家に帰る時間になると、息子は、「ヤギや、十分食べたかい?」と尋ねました。ヤギは、「たくさん食べたよ、あと一枚の葉っぱもいらないよ、メエメエ。」と答えました。
「じゃあ、家に帰ろう。」と若者は言って、首の綱を握り、小屋へ連れて行き、しっかりつなぎました。「なあ」と年とった仕立て屋は言いました。「ヤギはえさをちゃんとたくさん食べたかい?」「ああ、たくさん食べたよ。もう葉っぱ一枚いらないよ。」と息子は答えました。しかし父親は自分で納得したくて小屋に行き、かわいいヤギをなでて、「ヤギや、満足してるか?」と尋ねました。ヤギは、「どうして満足できるんだい?溝の間を跳び回っていて、葉っぱは何もなかったよ。だから何も食べないで帰ったよ。メエメエ。」と答えました。「何だと!」と仕立て屋は叫び、二階に走っていき、若者に言いました。「おい、この嘘つき野郎!ヤギはたらふく食ったと言って腹ペコにさせときやがって。」そして怒って壁からものさしをとると若者をなぐりまくって家から追い出しました。
次の日は二番目の息子の番でした。息子は良い草しか生えない庭の生け垣の場所を選びました。ヤギはそれをすっかり貪り食いました。夜に家に帰ろうと思い、息子はヤギに、「満腹になったかい?」と尋ねました。ヤギは、「たくさん食べたよ、あと一枚の葉っぱもいらないよ、メエメエ。」と答えました。
「じゃあ、家に帰ろう。」と若者は言って、小屋へ連れて行き、つなぎました。「なあ」と年とった仕立て屋は言いました。「ヤギはえさをちゃんとたくさん食べたかい?」「ああ、たくさん食べたよ。もう葉っぱ一枚いらないよ。」と息子は答えました。仕立て屋はこの言葉を信用しないで小屋に行き、「ヤギや、十分食べたかい?」と尋ねました。ヤギは、「どうして満足できるんだい?溝の間を跳び回っていて、葉っぱは何もなかったよ。だから何も食べないで帰ったよ。メエメエ。」と答えました。
「罰当りの人でなしめ、こんなおとなしいどうぶつを腹ペコにさせておきやがって」と仕立て屋は叫び、駆け上がって、ものさしでこの若者を戸口から追い出してしまいました。
さあ今度は三番目の息子の番になりました。息子は務めをしっかり果たそうと思い、最高にすてきな葉っぱのある草むらを探しだし、ヤギに食べさせました。夜に家に帰る時間になると、息子は、「ヤギや、十分食べたかい?」と尋ねました。ヤギは、「たくさん食べたよ、あと一枚の葉っぱもいらないよ、メエメエ。」と答えました。
「じゃあ、家に帰ろう。」と若者は言って、小屋へ連れて行き、つなぎました。「なあ」と年とった仕立て屋は言いました。「ヤギはえさをたらふく食べたかい?」「ああ、たくさん食べたよ。もう葉っぱ一枚いらないよ。」と息子は答えました。仕立て屋はこの言葉を信用しないで下りて行き、「ヤギや、十分食べたかい?」と尋ねました。性悪なヤギは、「どうして満足できるんだい?溝の間を跳び回っていて、葉っぱは何もなかったよ。だから何も食べないで帰ったよ。メエメエ。」と答えました。
「なんと、嘘つき野郎だ、どいつもこいつも性悪で務めを忘れやがって。もうおれを馬鹿にさせないぞ。」と仕立て屋は叫び、怒りに我を忘れて、二階に駆けていき、可哀そうな若者をものさしで力いっぱいうちのめしたので、若者は家から飛び出て行きました。
もう年とった仕立て屋とヤギだけになりました。次の朝、仕立て屋は小屋に下りていき、ヤギをなで、「おいで、かわいいヤギや、わしが自分でお前を食べに連れていくよ。」と言いました。綱をひいて、緑の生け垣や、ノコギリソウの間やどこでもヤギが食べたいところに連れて行きました。「今度こそ、食べたいだけ食べろ。」とヤギに言って、日が暮れるまで食べさせておきました。それからヤギに、「ヤギや、腹いっぱい食べたかい?」と聞きました。ヤギは「たくさん食べたよ、あと一枚の葉っぱもいらないよ、メエメエ。」と答えました。
「じゃあ、家に帰ろう。」と仕立て屋は言って、小屋へ連れて行き、しっかりつなぎました。出て行くときにまた振り向いて、「なあ、今度は満足したかい?」と言いました。しかしヤギは相変わらず仕立て屋にも、「どうして満足できるんだい?溝の間を跳び回っていて、葉っぱは何もなかったよ。だから何も食べないで帰ったよ。メエメエ。」と叫びました。
それを聞いたとき仕立て屋は呆れて、理由もなく三人の息子を追いだしたんだとはっきりわかりました。「待ってろ、この恩知らずめ、お前を追い出すだけではまだおさまらない。お前に印をつけてちゃんとした仕立て屋の間にもう顔出しできなくさせてやる。」と叫びました。大急ぎで二階へ駆けて行き、かみそりをとって、ヤギの頭に泡をつけ、手のひらのようにつるつるに剃りました。ものさしは勿体なさすぎたので、馬のムチをもってきて、たくさん打ちすえたのでヤギは何度も大きく跳びはねて逃げて行きました。
こうしてすっかり一人になって家にいると、仕立て屋はとても悲しくなり、息子たちに帰ってほしいと思いましたが、どこへ行ったのか誰も知りませんでした。一番上の息子は指物師のところに見習いに入って、熱心に根気よく習っていました。旅に出るときがくると、親方が小さなテーブルをくれました。そのテーブルは特に美しいわけでもなく、普通の木でできていましたが、一つ良いところがありました。誰でもテーブルをたて、「支度しろ」と言うと、お見事な小さいテーブルはすぐにきれいな布でおおわれ、皿がのり、そのそばにナイフとフォークがあり、煮た肉や焼き肉ののった皿が所狭しと並び、大きなグラスの赤ワインがかがやいているので嬉しくなるというものです。若い旅人は(これがあれば、これから生きていくのに十分だ)と思い、楽しく世間を歩き回り、宿屋が良かろうが悪かろうが、またそこで食べ物が見つかろうが見つかるまいが、まるで気にしませんでした。気分次第では宿に全く入らないで野原や森や草地やどこでも気に入ったところで小さなテーブルを背中から降ろし、自分の前に立て、「支度しろ」と言いました。すると自分の望む何でも出てきました。
とうとう父親のところへ戻ろうと思い立ちました。もう怒りもおさまっているだろうし、今は魔法のテーブルを持ってるから喜んで迎えてくれるだろうと思ったのです。帰る途中で、ある晩、お客でいっぱいの宿屋に来ました。お客たちは指物師を歓迎し、一緒に座って食べるように、そうしないと何か食べるのは難しいだろうから、と言いました。「いや」と若者は答えました。「みなさんの口から少ない食べ物をとろうとは思いません。それよりも、私のお客になってもらいましょう。」お客たちは若者が冗談を言っているのだと思い、笑いました。しかし、指物師は部屋の真ん中に木のテーブルを置き、「テーブルよ、支度しろ」と言いました。たちまちテーブルは食べ物でいっぱいになり、宿の主人が手にいれられなかったようなごちそうで、においがお客たちの鼻においしそうにたちのぼりました。「さあ、みなさん、食べましょう」と指物師は言い、お客たちは指物師が本気だとわかると、二回言われるまでもなくテーブルに寄り、ナイフをとって猛烈に食べ始めました。お客たちが一番驚いたのは皿がからになると、たちまちごちそういっぱいの皿とひとりでに入れ換わることでした。
宿の主人は片隅に立って、この有様を見ていて、何と言ったらいいのか全くわかりませんでしたが、(こういう料理人が自分の家にいたら使い道が簡単だな)と思いました。指物師とその仲間たちは夜遅くまで楽しくやっていました。とうとうみんな横になって眠り、若い職人も寝ましたが、魔法のテーブルは壁に立てかけておきました。しかし、宿の主人はしきりに思いをめぐらし、物置部屋に職人のテーブルとそっくりな小さい古いテーブルがあるなと頭に浮かび、それを持ち出して、音をたてないようにして魔法のテーブルと取り替えました。次の朝、指物師は宿賃を払い、偽物だとは考えないでテーブルをもち、出かけて行きました。
昼に父親のところに着き、父親は大喜びで息子を迎えました。「それで、お前は何を習ったんだい?」と父親は息子に言いました。「お父さん、僕は指物師になりましたよ。」「良い仕事だ」と父親は答えました。「だけど修業から何を持って帰ったんだい?」「お父さん、持ち帰った一番いいものはこの小さいテーブルですよ。」仕立て屋はテーブルをぐるりとみまわして、「それを作ったときは腕が悪かったな。質の悪い古いテーブルだ。」と言いました。「だけど、自分で料理を出すテーブルなんですよ。」と息子は答えました。「それを立てて、『支度しろ』と言うと、素晴らしい御馳走が上に並ぶんですよ。それにワインもね。それはもう嬉しくなりますよ。親戚の人たちや友達を呼んでみてください。一度みんなに元気になって楽しんでもらいましょう。テーブルは欲しいものを何でも出してくれますから。」みんなが集められると、息子は部屋の真ん中にテーブルをおき、「テーブルや、支度しろ」と言いました。しかし、小さなテーブルは、何も働かないで、言葉がわからない他のテーブルとまったく同じで、上には何もないままでした。それで可哀そうな職人は、テーブルが取り替えられたと知り、そこに嘘つきのように立っていなければいけないことを恥ずかしく思いました。ところで、親戚の人たちは職人を嘲って、何も食べたり飲んだりしないで帰るしかありませんでした。父親はまた布切れを取り出して仕立ての仕事を続けましたが、息子は指物師の親方のところに仕事に行きました。
二番目の息子は粉屋に行き、そこで見習いになりました。年季が明けると、親方は「お前はとてもよくやってくれたから、変わったロバをお前にやろう。このロバは荷車をひいたり、袋を運んだりしないんだ。」と言いました。「では、何の役に立つんです?」と若い職人は尋ねました。「金を吐きだすのさ。」と親方は答えました。「お前がこのロバを布の上において、ブリックルブリットと言えば、この立派な動物は前と後ろから金貨を吐きだすんだ。」「それはすばらしい。」と職人は言って、親方にお礼を言い、世間に出て行きました。職人は金が必要になると、ロバにブリックルブリットと言うだけでロバは金貨の雨を降らせるので、下から金貨を拾うだけで何もしなくてすみました。どこへ行っても、何でも一番上等なものが間にあい、高ければ高いほどよかったのでした。というのはいつも財布にいっぱい入っていたからです。職人はしばらく世間を見て回って、「お父さんに会わなくては。金のロバをつれて行けば、怒りを忘れてやさしく迎えてくれるだろう」と思いました。
さて、この職人はたまたま、兄のテーブルが取り替えられた同じ宿屋にやってきました。職人が手綱をひいてロバを連れて行くと、宿の主人はロバを受け取ってつなごうとしましたが、若い職人は「いや結構です。私がロバを小屋に連れて行き、自分でつなぎます。ロバがどこにいるか知っていないといけませんから。」と言いました。これを聞いて主人は変な気がしましたが、自分のロバを自分で世話しなければいけない人は大して使う金を持っているはずがないな、と思いました。しかし、そのよそ者がポケットに手を入れ、二枚の金貨を出し、何かうまいものを出してくれ、と言ったとき、主人は目を見開き、走って行って、一番いいものを探し集めました。
食事の後、そのお客はあといくら足りないかと聞きました。主人は勘定を倍にしてやろうじゃないかと思い、金貨をあと二枚ください、と言いました。職人はポケットの中をさぐりましたが、ちょうど金貨が切れていました。「ご主人、ちょっと待ってください。行ってお金をとってきますから。」と職人は言いました。しかし、職人がテーブル掛けを持っていったので、主人はどういう意味なのかわけがわからず、知りたいと思って、こっそりあとをつけました。お客が家畜小屋の戸にかんぬきをかけたので、主人は木のつなぎ目の穴から覗きました。そのよそ者は、ロバの下に布を広げると、「ブリックルブリット」と叫びました。すると途端にロバが前と後ろから金貨を落とし始め、それで地面にお金が雨あられと降り注ぎました。「わあ、これは驚いた!」と主人は言いました。「ダカット金貨があっという間にできてる。あんな財布は馬鹿にできないぞ。」お客は勘定を払い、寝ました。しかし、夜に主人は家畜小屋へ忍び込み、金作りの親方を連れ出し、その代わりに別のロバをつないでおきました。
次の朝早く、職人はロバと一緒に旅立ち、自分の金のロバを連れていると思っていました。昼に父親のところに着き、父親はまた息子に会えて喜び、嬉しそうに迎え入れました。「お前は何になったのだい?」と年寄りが尋ねました。「粉屋だよ、お父さん。」と息子は答えました。「旅から何を持ち帰ったんだい?」「ロバだけだよ。」「ここにはロバが十分たくさんいるじゃないか。」と父親が言いました。「いいヤギの方が欲しかったなあ。」「ええ」と息子は答えました。「でもね、普通のロバではなくて、金のロバなんです。ブリックルブリットと言えば、この素晴らしいロバは敷物いっぱい金貨を吐きだすんですよ。ここへ親戚みんなを呼んでください。みんなを金持ちにしますよ。」「それはいいな。」と仕立て屋は言いました。「それじゃあ、もう針仕事をして苦しまなくていいんだからな。」それから仕立て屋は自分で走って行き、親戚の人たちを呼び集めました。
みんなが集まると早速、粉屋は場所をあけてもらい、布を広げて、部屋にロバを連れてきました。「さあ、見ていてくださいよ。」と言って「ブリックルブリット」と叫びました。しかし、落ちたのは金貨ではありませんでした。ロバがそのわざを何も知らないのは明らかでした。というのはどのロバもそんなすごいことができるわけではないですから。それで可哀そうな粉屋は渋い顔をして、だまされたことがわかり、親戚の人たちに謝りました。その人たちは来た時と同じく貧しいままで帰りました。しかたなく、年寄りはもう一度針仕事をはじめ、若者は粉屋に雇われました。
三番目の息子はろくろ師の見習いになっていました。それは技術の要る仕事なので、習うのに一番時間がかかりました。しかし、兄たちは手紙で、うまくいかなかったこと、家に着く前の最後の晩に宿の主人が自分たちの素晴らしい魔法の贈り物をだましとったことを伝えていました。このろくろ師が年季を終えて旅に出発しなければならなくなったとき、とてもよくがんばったので、親方はひとつの袋をくれて、「その中にはこん棒が入っている。」と言いました。「袋を身につけることができます。よく役に立つでしょう。でもどうして中にこん棒があるんですか?ただ重くなるだけです。」と若者は言いました。「そのわけを教えよう。」と親方は答えました。「誰かお前に悪いことをしたら、ただ「こん棒、袋の外へ」と言えばいい。そうすればこん棒がその人たちの中へとび出て、その背なかでたくさん踊るから、その連中は一週間身動きできなくなるってことさ。それで、お前が『こん棒、袋の中へ』と言うまで、止めないよ。」
職人は親方にお礼を言い、背中に袋を背負いました。誰かがあまりに近く寄ってきて、襲おうとすると、「こん棒、袋の外へ」と言いました。途端にこん棒がパッと出てきて、上着のほこりはらいでもするようにその連中の背中を次から次へたたき、いつまでも止まらないので、しまいには上着が切れて脱げてしまいました。しかも棒がとても速いので、誰も前に気づかないうちにもう自分の番になってやられました。夕方に若いろくろ師は兄たちがだまされた宿に着きました。
ろくろ師は前のテーブルの上に袋を置き、世間で見てきた素晴らしいもののことを話し始めました。「そうだ」と職人は言いました。「自分で支度するテーブルとか、金のロバとか、そういうものなんて簡単に見つかるだろうね。確かにすごくいいものでけっして馬鹿にするわけじゃないですがね。だけど、そんなものは僕が手に入れた宝に比べたら何でもないですよ。そこの袋に入って持ってきてるんですよ。」宿の主人は聞き耳をそばだてていました。「いったいそれは何だろう?」と主人は考えました。「あの袋には宝石がいっぱいつまっているに違いない。それも安く手に入れようじゃないか。良いことは三度、というからな。」寝る時間になると、その客はベンチの上に長々と伸び、枕代わりに頭の下に袋を入れました。
宿の主人は客がぐっすり眠っていると思ったとき、客のところに行き、その袋をとり他の袋を代わりに置けないものかと、とてもそっと用心して袋を押したり引いたりしました。ところが、ろくろ師はずっとこれを待ち構えていました。それで主人が思い切りグイッと引っ張ろうとしたちょうどそのときに、「こん棒、袋の外へ」と叫びました。たちまち小さなこん棒が出てきて、宿の主人に襲いかかり、したたかになぐりました。主人は助けてくれと喚きましたが、大声で喚けば喚くほど激しくこん棒は背中を打ち、とうとう主人はへとへとになって地面に倒れました。それでろくろ師は「自分で支度するテーブルと金のロバを返さなければ、また踊りを始めさせるぞ。」と言いました。「ああ、止めてください。」と主人はすっかり恐れ入って叫びました。「喜んで何でも差し出します。あのいまいましい小鬼だけは袋に戻してください。」それで職人は言いました。「それじゃ今回は許してやろう。だが、二度とふざけた真似をしないよう注意しろよ。」それで、「こん棒、袋の中へ」と叫び、棒を止めさせました。
次の朝ろくろ師は、魔法のテーブルと金のロバを持って父親のところに帰りました。仕立て屋は息子にまた会えて喜び、この息子にも、よそで何を習ってきたか、と尋ねました。「お父さん」と息子が言いました。「僕はろくろ師になりました。」「技術の要る仕事だな」と父親は言いました。「旅から何を持ち帰ったのだ?」「すごくいいものですよ。お父さん」と息子は答えました。「袋に入ったこん棒です。」
「何だって?」と父親は叫びました。「そいつぁ、確かに苦労しただけあるだろうよ。どの木からだってこん棒を切ることができらあな。」「でもこのこん棒みたいなのはできないですよ、お父さん。『こん棒、袋の外へ』と言うと、こん棒がとび出て、僕を悪く思っている奴をうんざりするほど踊らせるんです。それで、そいつが地面に転がって許してくれというまでは止めないんですよ。見て。このこん棒を使って泥棒の宿の主人が兄さんたちからとった魔法のテーブルと金のロバを取り戻しましたよ。さあ、兄さんたちを呼びにやって、親戚の人たちみんなも呼びましょう。食べたり飲んだりさせてあげ、おまけにポケットを金貨でいっぱいにしてやります。」
年とった仕立て屋はあまり信頼をおきませんでしたが、親戚の人たちを呼び集めました。それでろくろ師は部屋に布を広げ、金のロバを連れてきて、兄に言いました。「さあ、兄さん、ロバに言って。」粉屋は、「ブリックルブリット」と言いました。たちまち金貨が布の上に雷雨のように降り注ぎ、ロバはみんながもう持てなくなるまでたくさん金貨を出し続けました。あなたの顔つきであなたもそこにいたかったというのがわかりますよ。
それから、ろくろ師は小さなテーブルを持って来て、言いました。「さあ、兄さん、テーブルに言って。」それで指物師が「テーブル、支度しろ」と言うか言わないうちに、布がかぶさり、素晴らしい御馳走が並びました。それで、仕立て屋が自分の家で一度も知らなかった食事が行われ、親戚のみんなは夜遅くまで一緒にとどまって、みんな明るく楽しく過ごしました。仕立て屋は針と糸と物差しとアイロンを戸棚にしまいこみ、三人の息子と一緒に楽しく素晴らしく暮らしました。
ところで、仕立て屋が三人の息子を追い出す元になったヤギはどうなったでしょうか?その話をしましょう。ヤギはつるつる頭を恥ずかしく思い、狐の穴に走っていき、その中に入りました。狐は帰って来たとき、暗闇から二つの大きな目が輝いているのに出くわし、ギョッとして逃げて行きました。熊が狐に会いましたが、狐がすっかり動転していたので、熊は言いました。「狐あにぃ、どうしたんだい?どうしてそんな顔をしてるんだ?」「ああ」と狐は答えました。「おれの穴に恐ろしいけものがいて、火のような目でおれを見やがった。」「すぐにそいつを追い出そうぜ。」と熊は言って、狐と一緒に穴に行き、覗きこみました。しかし、火のような目を見ると、熊も恐ろしくなり、たけり狂ったけものとは関わりたくないと思って、さっさと逃げました。蜂が熊に出会い、熊が落ち着かない様子なので、「熊さん、ずいぶん哀れな顔をしているね。いつもの元気はどうなったの?」と言いました。「口で言うのは結構さ。」と熊は答えました。「ギョロ目の恐ろしいけものが狐の家にいてね。追い出せないんだ。」「熊さん、可哀そうに。私は、誰も目を合わすのを避けないあわれな弱い生き物だけど、それでもあんたたちを助けてあげられると思うわ。」と蜂は言いました。それで、狐の穴に飛んでいき、ヤギのつるつるに剃られた頭にとまり、すごい力で刺したので、ヤギは跳びあがって、メエメエと鳴き、気違いのように世の中へ走り出ました。そして、今までヤギがどこへ行ったのか誰もわかりません。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
あるとても晴れた日に、神様は天の庭で楽しもうと思い、一緒に使徒と聖者みんなを連れていきました。それで天国には聖ペテロしかいませんでした。神様は聖ペテロに、留守中誰も入れないように、と命じてあったので、ペテロは入口に立ち、番をしていました。まもなく誰か戸をたたきました。ペテロは、「そこにいるのは誰だ?何の用だ?」と尋ねました。「私は貧しい正直な仕立て屋です。どうか中へ入れてください。」とよどみなく返事がありました。「正直だとな」とペテロは言いました。「首つり台の泥棒のようにか。お前は手くせが悪く、人の服を切りとってきただろう。お前は天国に入れないよ。神様は留守中誰も入れるなと私に命じられたのだ。」「お願いです。ひとりでにテーブルから落ちる小さな布切れは盗みじゃありませんし、いちいち話をするほどのことでもありませんよ。ごらんください。足が悪いのです。ここまで歩いて足に豆ができています。もう戻ることはできないのです。お願いですから入れてください。汚れる仕事を何でもやります。子供たちをおんぶしたり、服を洗ったり、遊んでいるベンチをこすってきれいにします。子供たちの破れた服につぎ当てもします。」と仕立て屋は叫びました。聖ペテロは可哀そうになり、足の悪い仕立て屋がやせた体を入れられる分だけ天国の戸を開きました。仕立て屋は戸の後ろのすみに座らされ、神様が戻ったとき仕立て屋を見て怒らないように、そこで静かにしているように言われました。
仕立て屋は従いましたが、いったん聖ペテロが戸の外側に行ってしまうと、立ちあがって、物珍しく、天国のすみずみを覗きこんでいろいろなものを調べてまわりました。 仕立て屋はとうとう、きれいで貴重な椅子がたくさんあり、真ん中には、全部金でできていて輝く宝石がちりばめられている椅子が一つある場所にきました。またその椅子は他の椅子よりずっと高く、金の足台がその前にありました。ところで、それは神様がいるときに座り、そこから下界の出来事を見ることができる椅子でした。仕立て屋は立ち止まり、しばらくその椅子をみていました。というのはその椅子が他の椅子より気にいったからです。とうとう好奇心に勝てなくなり、その椅子に這いあがり座りました。すると、地上で起こっていることが全部見え、小川のそばで洗濯をして立っている醜いおばあさんがベールを二枚自分のためにこっそり片側にのけているのを見ました。これを見ると、仕立て屋は怒って、金の足台をつかむと年寄りの泥棒めがけて天国から地上へ投げ落としました。しかし、足台を取り戻せなくなったので、仕立て屋は椅子からそっと下りて、戸の後ろの自分の場所に戻って座り、そこから少しも動かなかったふりをしていました。
主なる神様が天国のお伴と一緒にまた戻ったとき、神様は戸の後ろにいる仕立て屋が見えませんでしたが、自分の椅子に腰かけたとき足台がなくなっていました。聖ペテロに、足台はどうなったのだ?と尋ねましたが、聖ペテロは知りませんでした。それで、誰か入れたのか?と尋ねました。「戸のかげにまだ座っている足の悪い仕立て屋のほかは誰がここにいたのかわかりません。」と聖ペテロは答えました。
それで主は自分の前に仕立て屋を連れて来させ、足台を持って行ったか、どこにおいたかと尋ねました。「ああ、神様」と仕立て屋は楽しそうに答えました。「腹が立って地上のおばあさんに投げつけたんです。洗濯の時ベールを二枚盗んでいるのを見たものですからね。」「この悪党め」と神様は言いました。「わたしがお前のように裁いていたら、どうしてお前がそんなに長く罪を免れていられたか考えてみよ。罪人に何でも投げていたら、わたしにはとっくに椅子もベンチも、暖炉の火かき棒すらなくなっていただろう。これからもう、お前は天国にいることはできないから、また戸口の外へでていかなければならない。どこでも好きなところへいくがよい。ここでは神であるわたしの他は誰も罰を与えてはならない。」
ペテロは仕立て屋を天国から連れ出すしかありませんでした。仕立て屋は破れた靴をはき、足は豆だらけなので手に杖を持ち、"ちょい待ち"に行きました。そこでは善良な兵隊たちがいて楽しくやっています。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、"賢いエルシー"と呼ばれた娘がいる男がいました。娘が大人になったとき、父親が「娘を結婚させよう」と言い、母親は「ええ、もらってくれるだれか来てくれるといいんですが」といいました。とうとう一人の男が遠くからやってきて、妻にほしいと申し込みましたが、男はハンスと言い、賢いエルシーが本当に頭がよくなければいけないという条件をつけました。「ああ」と父親は言いました。「娘にはたくさん分別がありますよ。」そして母親は、「まあ、あの子は風が通りを吹いてくるのが見えるし、ハエが咳き込んでいるのがきこえますよ。」と言いました。
「なるほど」とハンスは言いました。「もし本当に頭がよくなければ、もらいませんよ。」みんなが夕食の席について食べ終わったとき、母親が、「エルシー、地下室へ行ってビールをとっておいで」と言いました。すると、賢いエルシーは壁からジョッキをとり、地下室へ入って、退屈しのぎにふたをパパパッとたたきながら歩いていきました。下に下りると、椅子をもってきて、かがんで腰が痛くなったり思わぬ怪我をしないために、樽の前に置きました。それから自分の前にジョッキを置き、樽の栓を回しました。ビールが樽から出ている間、エルシーは目を遊ばせておかないで壁を見上げました。あちらこちら眺めまわした後、ちょうど自分の頭の上に、職人がうっかり置き忘れたつるはしが見えました。
すると賢いエルシーは泣きだして、「ハンスと結婚して、子供が生まれ、その子が大きくなって、ここの地下室へビールをとりに行かせる、するとあのつるはしが子供の頭に落ちて、子供は死ぬわ。」と言いました。それから、目前にある災難を嘆いて、座ったままわんわん泣き叫びました。
上にいる人たちは飲み物を待っていましたが賢いエルシーはまだ来ませんでした。それで母親が女中に、「ちょっと地下室へ下りて行ってエルシーがどこにいるか見ておくれ。」と言いました。女中が行ってみるとエルシーは樽の前に座り大声で泣き叫んでいました。「エルシー、どうして泣いてるの?」と女中は聞きました。「ああ」とエルシーは答えました。「泣かないでいられないわ。ハンスと結婚して、子供が生まれ、その子が大きくなって、ここでビールをとる、たぶんあのつるはしが子供の頭に落ちて、子供は死ぬわ。」すると女中は「なんて賢いエルシーでしょう。」と言って、エルシーのそばに座り、その災難を嘆いて大声で泣き始めました。しばらくして、女中が戻ってこないので、上の人たちはビールが早く欲しくて、父親が下男に「地下室に下りていって、エルシーと女中がどこにいるか見てきてくれ。」と言いました。
下男が下りて行くと、賢いエルシーと女中の二人とも座って一緒に泣いていました。それで下男は聞きました。「どうして泣いているんだい?」「ああ」とエルシーは答えました。「泣かないでいられないわ。ハンスと結婚して、子供が生まれ、その子が大きくなって、ここでビールをとる、あのつるはしが子供の頭に落ちて、子供は死ぬわ。」すると下男は「なんて賢いエルシーなんだろう。」と言って、エルシーのそばに座り、これも大声で泣き始めました。上では下男を待ちましたがまだ戻って来なかったので、父親は母親に、「地下室へ下りて行ってエルシーがどこにいるか見てきてくれ。」と言いました。
母親が下りて行くと、三人とも大泣きの真っ最中だったので、どうしたのか尋ねました。するとエルシーは母親にもまた、将来生まれてくる子供が、大きくなってビールを汲むことになりつるはしが落ちて死ぬだろう、と話しました。すると母親もまた「なんて賢いエルシーなんでしょう。」と言って、座り、一緒に泣きました。
上にいる父親は少し待っていましたが、妻が戻らなくてますます喉が渇いてきたので、「おれが自分で地下室へ入ってエルシーがどこにいるか見るしかないな」と言いました。しかし、地下室に入るとみんな一緒に座って泣いていたので、理由をきいて、エルシーの子供が理由だ、エルシーがたぶんいつか子供を生み、その子がつるはしが落ちるときたまたまその下にいてビールを汲んでいれば、つるはしに殺されてしまう、と聞くと、父親は「ああ、なんて賢いエルシーだ」と叫び、座って、これもまたみんなと一緒に泣きました。
花婿は長い間一人で上にいましたが、誰も戻って来ないので、「きっと下で僕をまっているんだ。僕もそこに行ってみんなどうしているか見て来なくては」と思いました。花婿が下りて行くと、五人みんなが座ってとても悲しそうに、どの人も他に負けないくらい大声で泣き叫んでいました。「どんな不幸があったんですか?」と花婿は尋ねました。エルシーは「ああ、ハンスさん、私たちが結婚し、子供が生まれ、大きくなって、たぶんここへ飲み物をとりにやらせ、するとあそこの上に置き忘れているつるはしがひょっとして落ちてこどもの頭を打ち砕くでしょう。泣かずにいられませんわ。」と言いました。「それじゃあ」とハンスは言いました。「これでうちの所帯には十分だとわかったよ。あんたはそんなに賢いエルシーだから、嫁にもらおう。」ハンスはエルシーの手をとり、一緒に上へ連れて行き、結婚しました。
結婚した後しばらくしてハンスは「エルシー、おれは働きに出て、おれたちの金を稼いでくるよ。パンが食べれるように、畑へ行って麦を刈ってくれ。」と言いました。「いいわよ、あなた、やっとくわ。」ハンスが行ってしまうと、エルシーはおいしいおかゆを作り、それを畑へ持って行きました。畑へ着くと、心の中で「どうしようか、先に麦を刈ろうか、先に食べようか、うん、先に食べようっと。」とかんがえました。それからおかゆを食べ、お腹がいっぱいになると、もう一度、「どうしようか、先に麦を刈ろうか、先に眠ろうか、先に眠ることにするわ。」と言いました。それから麦の間に寝転がり、眠りました。
ハンスはもうとっくに家に帰っていましたが、エルシーがこなかったので、「なんて賢いエルシーを嫁にしたんだろう。とても一生懸命働いて飯を食いに帰ってもこないや。」と言いました。しかし、夕方になってもまだ帰って来ないので、ハンスはエルシーがどれだけ刈ったか見に出かけていきました。しかし、何も刈られていなくてエルシーは麦の間で眠りこけていました。
するとハンスは急いで家に帰り、小さな鈴がたくさんついている鳥網をもっていき、エルシーのまわりに吊るしました。エルシーはそれでも眠り続けました。それからハンスは走って家に帰り、戸締りをして、椅子に腰かけて仕事をしました。とうとう、真っ暗になってから賢いエルシーは目を覚まし、起きあがると自分のまわりでチリンチリンと鈴の音が聞こえ、一歩歩くたびに鳴りました。するとエルシーは驚いて、自分が本当に賢いエルシーなのかわからなくなり、「私なの?私じゃないの?」と言いました。しかし、これに何と答えるかわからなくて、しばらく考えて立っていましたが、とうとう、「家へ帰って私か私じゃないかきいてみよう。きっとみんなは知ってるわ。」と思いました。エルシーは走って自分の家の戸口へ行きましたが閉まっていました。それで窓をたたいて、「ハンス、エルシーは中にいるの?」と叫びました。「ああ、中にいるよ。」とハンスは答えました。これをきいてエルシーはぎょっとして、「ああ、どうしよう、じゃあ私じゃないんだわ」と言いました。それから別の家に行きましたが、鈴がチリンチリン鳴る音を聞くと戸を開けようとしませんでした。それでエルシーはどこにも入れませんでした。それからエルシーは村から走って出て行き、そのあとは誰もエルシーを見た人はいません。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、年老いた伯爵がスイスに住んでいました。息子が一人いましたが間抜けで何も覚えられませんでした。それで父親は「よく聞け、どんなに努力してもわしはお前の頭の中に何もいれられない。お前は今から行かなくてはならない、名高い先生の世話にあずける。その先生がお前に何ができるか見よう。若者は見知らぬ町に送られ、丸1年その先生と一緒にいました。この期間の終わりにまた帰宅したので、父親は「さあ、息子よ、何を覚えた?」と聞きました。「お父さん、犬が吠えるとき何というか覚えました。
「主よ、哀れみたまえ!」と父親は叫びました。「お前が覚えたのはそれだけか?お前を別の町の別の先生のところへ送ろう。」若者はそこへ連れて行かれました。そしてこの先生とも同じように1年過ごしました。帰宅すると、父親は再び「息子よ、何を覚えた?」と聞きました。「おとうさん、小鳥がなんというか学びました。」と若者は答えました。すると父親は怒り狂って「このふつつか者め!お前は貴重な時間を使い何も覚えなかった。わしの前にでてくるのが恥ずかしいと思わんか?お前を3番目の先生に送ろう。しかし今度もまた、何も覚えなければわしはもうお前の父ではないからな。」と言いました。若者は3番目の先生と1年過ごしました。帰宅すると、父親は再び尋ねました。「息子よ、何を覚えた?」若者は「おとうさん、今年は蛙が何と鳴くか覚えました。」と答えました。すると、父親は激怒して跳び上がり、家人を呼ぶと、「この男はもう息子ではない。家から追い出す。森へ連れて行き殺すことを命じる。」と言いました。家人は若者を連れ出しましたが、殺すべきでしたが、可哀そうでできませんでした。それで、若者を放してやり、形見として老人に持っていくためシカから舌と目を切り取りました。
若者はさまよい続け、しばらくして要塞につき、一晩の宿をお願いしました。「いいとも、もしお前があそこの古い塔で夜を過ごすなら。しかし、忠告しておくが、命を危険にさらすことになるぞ。というのは、野犬がいっぱいで止むこと無しに吠えたり遠吠えしたりするんだ。そしてきまった時間に人間をあたえなければならない。それで、その人間をすぐガツガツたべてしまう。そのためそのあたり全体が悲しみと不安の中にある。それでもこれをとめるため誰も何もできないんだよ。」と城主は言いました。しかし若者は怖がらず「吠えている犬のところへ行かせてください。そして犬たちに投げてやるものをなにかください。僕に何も危害を加えないでしょう。」と言いました。
若者自身がそういうので、野性の動物に与える食べ物を持たせ、塔に案内しました。中に入ると、犬たちは吠えないで若者の周りで愛想良く尻尾を振り、目の前に置いたものを食べ、頭の一本の髪も傷つけませんでした。次の朝、皆が驚いたことに、若者は無事で無傷にまた出てきました。そして、城主に「犬たちは自分の言葉で、どうしてそこに住み、その土地で悪さをするのか、うちあけてくれました。彼らは魔法にかけられていて、塔の下にある宝を見張らされているのです。宝がもちさられるまで休めないのです。また、彼らの話から、どうやってそれをやるかも私はわかりましたよ。」と言いました。それでこれを聞いた人は皆喜び、城主は無事にやり遂げたら息子として養子にしよう。と言いました。若者はしなければいけないことを知っていたので、徹底的にやり、金でいっぱいの箱を出してもってきました。
野犬の遠吠えはそれ以来もう聞こえませんでした。彼らは消えてしまったのです。国は悩みから解放されました。しばらくして、若者はローマへ旅しようと思いました。途中で沼地を通り過ぎると、たくさんの蛙が座って鳴いていました。彼らのいうことをよく聴いて、言っていることを知ると、とても物思いに沈み哀しくなりました。とうとうローマに着きました。そこでは法王が今死んだばかりで、枢機卿のあいだで、後継者として誰を指名するかという大きな問題がありました。そしてとうとう、何か神聖で奇跡的な印できわだつ人が法王に選ばれるべきだということに意見が一致しました。そしてそれが決められた丁度そのときに、その若い伯爵が教会に入ると、突然雪のように白い鳩が肩に飛んで来て、そこに残って座っていました。牧師は上からの印とわかり、その場で法王になるかと尋ねました。若者は決められず、自分がそれにふさわしいのかわかりませんでしたが、鳩がそうするように助言したので、とうとう「はい」と答えました。それから油を注いで清められ、聖職に任命されました。こうして、途中で蛙から聴いたこと、自分が法王になる運命だということ、そしてとても自分に影響を与えたこと、が実現されました。それからミサをうたわねばなりませんでした。そしてその1語もわからなかったのですが、2羽の鳩が. 常に肩にとまって全部耳にささやきました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
ハンスの母が、「ハンスや、どごさ 行ぐの?」と尋ねました。「グレーテルの どごさ」とハンスは答えました。「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「え日だねぇ、グレーテル」「よぐ 来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスに針を一本やります。「せばな、グレーテル」「せば、ハンス」ハンスはもらった針を干し草車に刺し、車のあとについて家に帰ってきます。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、いんままで どごに いだだ?」「グレーテルどごに いだや」「おめ、グレーテルさ なに 持て いて けだの?」「なも 持て いがねよ、もらて きたよ。」「グレーテルは 何 くれだ?」「針だよ」「針 どごさ やた?ハンス」「干し草車さ 刺したや」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、針だば 袖さ 刺して おぐもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
「ハンスや、どごさ 行ぐの?」「グレーテルのどごさ」「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「いい日だねぇ、グレーテル」「よぐ来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持てきた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスにナイフをやります。「せばな、グレーテル」「せば、ハンス」ハンスはもらったナイフを袖に刺して家に帰ってきます。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、どごに いだだ?」「グレーテルどごに いだや」「おめ、グレーテルさ なに 持て 行て けだの?」「なも 持て 行がねよ、もらて 来たや。」「グレーテルは 何 くれだ?」「ナイフだや」「ナイフ どごさ やた?ハンス」「袖さ 刺したや」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、ナイフだば 袋さ 入れで おぐもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
「ハンスや、どごさ 行ぐの?」「グレーテルの どごさ」「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「いい日だねぇ、グレーテル」「よぐ来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスに子ヤギを一匹やります。「せばな、グレーテル」「せば、ハンス」ハンスは、もらった子ヤギの足を縛って袋に入れて持っていきます。家に帰ってみたら、子ヤギは息がつまって死んでいます。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、どごに いだだ?」「グレーテルどごに いだや」「おめ、グレーテルに なに 持て いて けだの?」「なも 持て いがねよ、もらて 来たや。」「グレーテルは 何 くれだ?」「ヤギだや」「ヤギ どごさ やた?ハンス」「袋の中さ 入れだや」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、子ヤギだば 首さ 綱こ つけで くるもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
「ハンスや、どごさ 行ぐの?」「グレーテルの どごさ」「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「いい日だねぇ、グレーテル」「よぐ来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持てきた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスにベーコンを一切れやります。「せばな、グレーテル」「せば、ハンス」ハンスは、もらったベーコンに綱をつけて、ひきずっていきます。すると犬が出てきて、ベーコンをがつがつ食べてしまいます。ハンスが家に帰りついたときには綱だけ握っています。綱の先にはもう何もついていません。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、どごさ 行て きた?」「グレーテルどごさ 行て きたや」「おめ、グレーテルに なに 持て いて けだの?」「なも 持て いがねよ、もらて 来たや。」「グレーテルは 何 くれだ?」「ベーコンだや」「ベーコン どごさ やた?ハンス」「綱 つげで ひぱって きたばて、とぢゅうで 犬さ くゎいで また」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、ベーコンだば あだまの 上さ 載せで くるもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
「ハンスや、どごさ 行ぐの?」「グレーテルの どごさ」「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「いい日だねぇ、グレーテル」「よぐ来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスに子牛を一頭やります。「せばな、グレーテル」「せば、ハンス」ハンスは、子牛をもらって、頭の上にのせます。子牛は足でハンスの顔を蹴ります。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、どごに いだだ?」「グレーテルどごに いだや」「おめ、グレーテルに なに 持て いて けだの?」「なも 持て いがねよ、もらて 来たや。」「グレーテルは 何 くれだ?」「子牛だや」「子牛 どごさ やた?ハンス」「あだまの 上さ のせだばて、わの つらとば 蹴たや」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、子牛だば 連れで きて 干し草掛げの どごさ つないで おぐもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
「ハンスや、どごさ 行ぐの?」「グレーテルの どごさ」「じょずに やるんだよ」「うん、じょずに やるよ、せばな、おかさん」「行て こへ、ハンス」ハンスはグレーテルの家に行きます。「いい日だねぇ、グレーテル」「よぐ来たねぇ、ハンス。あんた、どした ええもの 持て きた?」「なも 持て こねよ。何が もらて行きて。」グレーテルは、ハンスに言います。「わも ついで 行ぐじゃ」ハンスは、グレーテルを綱につないで連れて帰ると、干し草かけのところに連れて行って、しっかりつなぎます。「たんだいま、おかさん」「ハンス、帰たが、おめ、どごに いだだ?」「グレーテルどごに いだや」「おめ、グレーテルに なに 持て いて けだの?」「なも 持て いがねよ」「グレーテルは 何 くれだ?」「何も けねや。いしょに ついで 来た」「グレーテルば どごさ おいで きた?ハンス」「綱で、干し草かげの 前さ つないで、草 投げで おいだ」「ばがだごと、さねでよ、ハンスや、グレーテルだば、やさし 目を かげで やるもんだね」「どでも いでばな、おかさん、こんだだば、もと じょずに やるね」
ハンスは家畜小屋に入って行きました。そして全部の子牛と羊の目玉を切りぬいて、それらをグレーテルにかけてやりました。するとグレーテルは怒って、綱を切り体を放して、逃げていきました。それでもうハンスの花嫁にはなりませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、ある粉屋が住んでいましたが、だんだん貧しくなっていき、とうとう風車小屋とその後ろにある大きなりんごの木以外何もなくなりました。あるとき、森へ木を取りに行くと、会ったことのない老人が近づいてきました。「どうして苦しんで木を切るんだい?お前を金持ちにしてやろう、風車小屋の後ろに立っているものをくれると約束してくれたらね。」と言いました。 粉屋は「それっていったい何だろう?ーああ、りんごの木か」と思い、「いいよ」と答え、その見知らぬ人に約束を書いて渡しました。しかし、その男はニヤニヤしながら、「3年経ったら、自分のものをとりにくるから」と言うと行ってしまいました。粉屋がうちに帰ると、妻が出迎えて「ねえ、あなた、このお金は急にどこから家の中に入ったのかしら?あっという間にどの箱も引き出しもいっぱいなのよ。誰も運んでこなかったし。どうしてこうなったかわからないわ。」と言いました。「森で会った知らない人が、大きな財産をくれると約束してくれたんだよ。おれは、お返しに、風車小屋の後ろに立っているものをあげると約束したんだよ。-大きなりんごの木をあげても全然構わないもんな。」と粉屋は言いました。妻は怯えて「まあ、あなた、それは悪魔だったにちがいありませんよ。りんごの木のことじゃなくて、娘のことを言ってたんですよ、娘は庭を掃いて風車小屋の後ろに立っていたんです。」と言いました。
粉屋の娘は美しく信心深い子でした。それでその3年間を神を恐れ罪を犯さず暮らしました。 そのため期間が終わり悪魔が迎えにくる日になると、体をきれいに洗い、チョークで自分のまわりに円を描きました。悪魔は朝かなり早く現れたのですが、彼女に近寄れませんでした。それで悪魔は怒って「もう体を洗えないように水を全部娘から離せ。そうしないと娘を支配できないからな。」と粉屋に言いました。粉屋は恐れて言われたようにしました。次の朝、悪魔はまたやってきましたが、娘は両手で顔をおおって泣いていたので手はきれいでした。またしても娘に近づくことができなくて、悪魔は激怒し、「娘の手を切り落とせ。そうしないと支配できないんだ!」と粉屋に言いました。粉屋はショックを受け、「どうして自分の子の手を切り落とすことができよう?」と答えました。すると悪魔は脅して、「そうしないと、おまえが俺のものになるぞ。お前自身を連れていくぞ。」と言いました。
父親はびっくりしていうことに従うと約束しました。それで娘のところに行き、「娘よ、お前の両手を切り落とさないと、悪魔は私を連れて行くんだ。恐ろしくて、こうすると約束してしまったんだよ。困っているお父さんを助けておくれ。そしてお前を傷つけることを許しておくれ。」と言いました。娘は「おとうさん、好きなようにしてください、私はあなたの子供です。」と答えて、両手を下に置き切らせました。悪魔は3度目にやってきました。しかし、娘は手のない腕で顔を被いとても長くとてもたくさん泣いたので、結局そこはきれいでした。それで悪魔は降参して、娘への権利を全て無くしました。
粉屋は、「私はお前のおかげで大金持ちになれた。お前が生きてる限り楽な暮らしをさせてあげよう。」といいましたが、「ここにはいられません、出て行きます。思いやりのある人々が私に必要なだけ与えてくれるでしょう」と娘はいいました。
それから手の無い腕を背に縛らせて、日の出とともに出発し、夜になるまで一日いっぱい歩きました。王宮の庭に着き、美しい果物でおおわれている木々がはえているのが月の光で見えました。しかし、水で囲まれていたので庭に入れませんでした。まる一日歩いて一口も食べていなかったので、お腹がすいてとても苦しくなり、「中に入れさえすれば果物を食べれるでしょうに。そうしないと、飢え死にしそうだわ」と思いました。それで、膝まづき、「主なる神よ」と呼んで祈りました。すると突然天使が彼女のところにやってきて、水の中にダムをこしらえました。その結果堀が乾き、歩いて通れるようになりました。今娘は庭園に入っていき 天使も一緒でした。美しい梨でおおわれている木がみえましたが、全て数えられていたのです。 娘はそこへいき、空腹をいやすため口で木からとり1個食べましたがそれ以上は食べませんでした。庭師は見ていましたが、天使がそばに立っていたので娘は精霊だと思い恐れて、静かにしていました、またあえて大声を出したり精霊に話しかけもしませんでした。娘は梨を食べてしまうと満足し、去って藪の中に身を隠しました。
次の朝、その庭の持ち主の王様がやって来て、数え、梨が一個ないのがわかり、「梨は、下に落ちているのでなく消えたのだからどうなったのか?」と庭師に尋ねました。「ゆうべ精霊がやってきて、手が無かったので、梨を口でとって食べました」と庭師は答えました。王様は「精霊はどうやって水を超えてきたのか?梨を食べ終わった後どこへ行った?」と言いました。庭師は「雪のように白い服を着ただれかが天からやってきて、精霊が堀を歩いて渡れるように、ダムを作り、水を押し留めました。天使だったにちがいありません。私は、恐れて質問をしませんでした。叫びもしませんでした。精霊は食べ終わったら戻っていきました。」と庭師は答えました。「もしお前が言うとおりなら、今夜お前と一緒に見張りをしよう。」と王様は言いました。
暗くなると王様は庭に入り、精霊に話しかけることになっている牧師も連れてきて、三人全員が木の下ですわり見張りました。真夜中になると、娘は藪から這い出てきて、再び口で梨を一個取って食べました。そばには白い服を着て天使が立っていました。牧師は近づいていき「あなたは天国から来たのか地上から来たのか?精霊か人間か?」と尋ねました。「私は精霊ではありません、神さま以外みんなに見捨てられた不幸な人間です。」と答えると、王様は「全世界に見捨てられていても、私は見捨てない」と言い、宮殿に連れて行きました。そして娘はとても美しく立派なので心から愛し、銀の手を作ってあげ妻にしました。
一年経って、王様は旅に出なくてはならなくなりました。それで母親に若い妃の世話について話し、「もし子供を産むようになればよく世話し手紙ですぐ知らせるように」と言いました。その後、お妃様は、立派な男の子を産んだので、年とった母親は大急ぎで手紙を書き、嬉しいニュースを知らせました。しかし、使者は途中小川のそばで休み、遠い距離を疲れ果てていたので眠ってしまいました。すると善良な妃をいつも傷つけようとしていた悪魔がきて、手紙を別なものと交換しました。その手紙には、妃が怪物を産んだと書いてあったのです。王様はこれを読みショックをうけてとても心を痛めましたが、返事には自分が帰るまで十分よく妃の世話し看護するようにと書きました。
使者はその手紙を持って戻りましたが、途中同じ場所で休み、また眠ってしまいました。するとまたしても悪魔はやってきて使者のポケットに違う手紙を入れました。その手紙には、妃と子供を殺すようにと書かれていました。年とった母親はその手紙を受け取ったとき酷くショックを受け、信じられませんでした。それで王様にもう一度手紙を書きましたが、その都度悪魔が偽の手紙と差し替えていたので、他の返事が無く、しかも最後の手紙には命令に従った印として妃の舌と両目を保存して置くようにとも書かれていました。
しかし年とった母親は、そのような無垢の血を流すことを考えて嘆き、夜に雌鹿を連れてこさせ、その舌と両目を切り取らせてしまっておきました。それからお妃さまに「王様が命令したようにお前を殺させることができませんでした。しかしお前はここにはもういられません。子供と一緒に広い世界に行きなさい。二度とここに戻ってきてはいけません。」と言い、可哀そうなお妃さまは子供を背に結わえ、目に涙をいっぱい浮かべ出て行きました。大きな森にはいっていったとき、膝まづいて神に祈りました。すると、天使が現れ、小さな家に連れて行きました。その家には「ここではみんな無料で住む」という言葉が記してある表示がついていました。着、雪のように白い娘がそのちいさな家から出てきて、「ようこそ、お妃様」と言って、中へ招き入れました。背から小さな子を降ろし、胸に抱いて乳を飲ませた後、美しい小さなベッドに寝かせました。それから、かわいそうな女は「どうして私が妃だとわかったのですか」と尋ねました。
白い娘は「私はあなたとあなたの子供を見守るように神に遣わされた天使なのです。」と答えました。妃は7年そこに住んで、とても大事にされ、信心のため神の恩寵をうけ、切り取られた手が再び生えました。
とうとう王様は旅から戻り、まず妻と子供に会いたいと願いました。すると、年とった母親は泣きはじめ、「お前は酷い男だ。どうして二人の無垢な命をとるようにと手紙に書いたのです?」と言い、悪魔が偽造した二通の手紙をみせました。続けて「あなたが命じたとおりにやりました。」と印である舌と両目をみせました。すると、王様は妃と子供を思って母親よりはるかに激しく泣き始めたので、年老いた母親はかわいそうになり、「安心しておくれ、まだ生きてるよ。内緒で雌鹿を殺させてこの印を取ったのです。子供を背に縛ってやり広い世界に行くように妃に命じました。 お前が妃をとても怒っていたので、二度とここに戻らないように約束させましたよ。」と言いました。すると王様は「私は、空が青い限りどこまでも行き、その間に二人が殺されるとか飢え死にしていなかったら、愛する妻と子供を見つけるまで、飲みも食べもしない。」と言いました。
王様は7年の長さにわたって放浪し、どの岩の割れ目、どの洞穴も探したが、見つからず、困窮のため死んだのだろうと思いました。その間ずっと食べも飲みもしませんでしたが神様が養ってくれました。とうとう大きな森に着き、そこに「ここではみんな無料で住む」と表示のある小さな家をみつけました。すると、白い娘が出て来て、手をとり、中に案内しました。「ようこそ、王様」と娘は言い、どこから来たか尋ねました。「妻と子をさがしてまもなく7年がすぎようとしているが、見つけられないのだ。」と王様は言いました。天使は肉と飲み物をだしましたが、王様は何も取らず少し休みたいと言いました。そして、白いハンカチを顔にのせて横になり眠りました。
天使はお妃さまがいつもソロウフル(哀しい)と呼んでいる息子といる部屋へ入っていき、「子供と一緒にでてきてください。ご主人が来ていますよ。」と言いました。それでお妃さまは、ハンカチを顔にかけて寝ている場所へ行きましたが、ハンカチが顔から落ちました。それでお妃さまは「ソロウフル、お父様のハンカチを拾い、また顔にかけてあげなさい。」と言いました。子供はハンカチを拾いまた顔にかけました。王様は、眠っていてもこの経過が聞こえていて楽しく、もう一度ハンカチを落としました。しかし、子供はじれったくなり、「お母様、この世に父はいないのにどうしてハンカチを顔にかけれますか?私は『天にまします父よ』とお祈りを学びました。お母様は、『父は天にいる、神様だ』と教えました。どうしてこんなふうに野蛮な男がわかるのです?この人はお父様ではありません。」と言いました。これを聞くと王様は起き上がり、あなたたちは誰なのかと尋ねました。それでお妃さまは「私はあなたの妻で、これはあなたの子供のソロウフルです。」と言いましたが、本物の人間の手を見ると、「私の妻は銀の手をしています。」と言いました。それでお妃さまは「神様が私の生まれながらの手をもう一度生えさせてくれたのです。」と答え、天使は中の部屋に行き銀の手を持ってきて見せました。こうして、はっきり自分の妻と子供だとわかったので、王様はキスして喜び、「心から重い石が落ちました。」と言いました。それから天使はもう一度みんなと一緒になり食事しました。その後3人で王様の年とった母親のところへ帰りました。あらゆるところで大きな喜びがあり、王様とお妃様はもう一度結婚し、幸せに暮らしました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
シラミとノミが一緒に所帯をもち、卵の殻でビールを作っていました。するとシラミが中に落ちてやけどをしました。これを見てノミが大声で悲鳴をあげました。すると部屋の小さい戸が言いました、「ノミさん、どうしてわあわあ言ってるの?」「シラミがやけどしたから」それで小さな戸はギイギイきしみだしました。これですみの小さなほうきが言いました、「どうしてギイギイきしんでるの?」「ギイギイきしまないでいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。」それで小さなほうきは、やみくもに掃きだしました。すると小さな荷車が通りかかり、言いました。「ほうきさん、どうして掃いてるの?」「掃かずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。」すると小さな荷車は「それじゃ僕は走ろう。」と言って気が狂ったように走りだしました。それで荷車が走ったそばにいた燃えがらの山が言いました、「荷車さん、どうしてそんなに走ってるの?」「走らずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。小さなほうきが掃いている。」燃えがらの山は「そんじゃ私はぼうぼう燃えよう。」と言って明るい炎になって燃え始めました。燃えがらの山の近くの小さな木が言いました、「燃えがら山さん、どうして燃えてるの?」「燃えずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。小さなほうきが掃いている。小さな荷車が走っている。」小さな木は、「それじゃ私は揺れましょう。」と言って、揺れ出したので葉っぱがみんな落ちてしまいました。水がめを持って近づいてきた女の子がそれを見て言いました、「小さな木さん、どうして揺れてるの」「揺れずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。小さなほうきが掃いている。小さな荷車が走っている。燃えがら山が燃えている。」これを聞いて女の子は「それじゃ私は水がめを割ってやろう」と言って小さな水がめを割りました。すると、水がわき出る小さな泉が言いました。「お嬢さん、どうして水がめを割ってるの?」「水がめを割らずにいられない。シラミがやけどした。ノミが泣いている。小さな戸がギイギイきしんでいる。小さなほうきが掃いている。小さな荷車が走っている。燃えがら山が燃えている。小さな木が揺れている。」「あ、はは、それじゃ私は流れよう」と泉は言い、猛烈に流れ出しました。それでその水に溺れてみんな死にました、女の子も、小さな木も、燃えがらの山も、ほうきも、小さな戸も、シラミも、みんな一緒に。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、1人の貧しい女がいて、男の子を産みましたが、羊膜を付けて生まれたので14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言されました。その後まもなく、たまたま王様が村にやってきて何かニュースがあるかと尋ねると、誰も王様だと知らなかったので、人々は「羊膜をつけた子が生まれましたよ。そんなふうに生まれた子は何をしてもうまくいくんです。14歳になると王様の娘を妻にするだろうと予言もされています。」と答えました。
王様は、悪い心をもっていたので、その予言に怒って、両親のもとへ行くと、とても愛想良くし、「貧しい人達よ、子供を預からせてくれれば世話をするよ。」と言いました。初め両親は断りましたが、その見知らぬ人が沢山の金をくれると言うので、「幸運の子供なのだから、その方が万事うまくいくにちがいない」と考え、とうとう承諾し、子供をあげました。
王様は子供を箱に入れ、馬に乗っていきましたが、深い川のところまで来ると、箱を川に投げ入れ、「これで望ましくない求婚者から娘を自由にしたわい。」と考えました。
しかし、その箱は沈まず、船のように浮かんで、一滴の水もしみ込みませんでした。そして、王様の首都の2マイル内まで漂っていくと、水車があって水車ダムで止まりました。水車番が運良くそこに立っていて、箱に気づき、鉤で引っ張りあげました。大きな宝物を見つけたと思っていたのですが、開けてみると、中には元気で生き生きしたかわいい男の子がいました。それで粉屋夫婦に持っていくと、二人には子供がいなかったので喜んで、「神様がこの子を授けてくださった。」と言いました。二人は拾い子をとても大事に世話したので、とても立派に育ちました。
あるとき突然のこと、たまたま王様は水車小屋に入ってきて、粉屋に「あの背の高い若者はお前たちの息子か?」と尋ねました。「いいえ、拾った子なんです。14年前箱に入って水車ダムまで流れてきたんです。それでウチの若いのが水から引っ張りだしたんです。」と粉屋は答えました。 それで王様は、その若者は自分が川に捨てた幸運の子供に他ならないと知り、「私の善良な人々よ、妃への手紙を若者に頼めないか?ほうびとして2粒の金を与えよう。」と言いました。粉屋はすぐ返事をし、若者に準備をするよう言いました。それから王様はお妃様に手紙を書きましたが、そこには手紙を持って着いたらすぐ若者を殺して埋めるように、そして自分が帰るまでに全て終わっているように、と書いてあったのです。若者はこの手紙を持って出発しましたが、道に迷い、夜には大きな森に来ました。暗闇の中に小さな明かりが見えたのでそちらに行くと、小屋に着きました。中に入ると、老婆がたった一人で暖炉のそばに座っていました。若者を見ると、ハッとし、「どこから来たんだい?どこにいくんだい?」と訊きました。「水車小屋から来たんだ。お妃さまのところに行きたいんだが、手紙を持っていくんだけど、森で道に迷ってしまったので、ここで夜を過ごしたいんだ。」と若者は答えました。「可哀そうな子だよ。お前は泥棒の隠れ家に来てるんだよ、帰ってきたらお前を殺してしまうよ。」と老婆は言いました。「来たっていいさ。怖くないよ。だけど、とても疲れているからこれ以上どこにもいけないよ。」と若者は言って、ベンチの上に寝そべって眠ってしまいました。
その後まもなく、泥棒たちが帰ってくると、「そこで眠っているよそ者は誰だ?」と怒って尋ねました。「ああ、道で迷った無邪気な子供だよ。可哀そうだから入れてやったのさ。お妃に手紙を持っていかなくちゃいけないんだとよ。」と老婆は答えました。泥棒たちが手紙を開いて読むと、若者が着いたらすぐ殺すようにと書いてありました。すると冷酷な泥棒たちもさすがに可哀そうに思って、親分がその手紙を破り、別の手紙を書きました。若者が来たらすぐに王様の娘と結婚させるように、と書いたのです。それから、次の朝まで静かに眠らせておき、若者が目覚めると手紙を渡し、正しい道を教えてあげました。
そしてお妃さまは手紙を受け取って読むと、書かれた通りにやり、壮大な結婚式の宴を準備させました。そして、王様の娘は幸運の子供と結婚し、若者がハンサムでやさしいので、喜んで満足して暮らしました。 暫くして王様が宮殿に戻ると、予言が実現され、その子供が娘と結婚していました。それで「どうしてこうなったんだ?わしは手紙で全く別の命令を出したぞ。」と言いました。
お妃さまは、手紙を渡し、「書かれていることをご自分でご覧になってください。」と言いました。王様は手紙を読み、別の手紙とすりかえられたことが全く良くわかりました。それで若者に「あずけた手紙をどうした?なぜその代わりに別の手紙を持ってきた?」と尋ねました。「何もわかりません。森で眠ったとき、夜の間に変えられたにちがいありません。」と若者は答えました。王様はカッとなって「何でもお前の思い通りにはさせんぞ。娘と結婚する者は地獄の鬼の頭から3本の金髪をとってこなくてはならない。」と言いました。こうして王様は若者を永遠に除きたかったのです。しかし幸運の子供は「金の髪の毛をとってきます。私は鬼を恐れません。」と答えると、別れを告げ、旅に出発しました。
道を行くと大きな町に着きました。門番が「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると、「じゃあ、市場の泉が昔はワインを出したのに、乾いて、今は水すら出さないのはどうしてか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。
それから、さらに進んでいき、別の町に着くと、そこでも門番が「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると「じゃあ、町のりんごの木が昔は金のりんごを実らせたのに、今は葉っぱすらださないのはどうしてか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。
それから、また進んでいくと、渡らなければならない広い川に着きました。渡し守は「何の商売をしているか、何を知っているか?」と尋ねました。幸運の子供が「何でも知ってるよ。」と答えると「じゃあ、おれがどうしていつも行ったり来たり漕いでいなくてはいけなくて決して解放されないのか教えてくれれば助かるんだが。」と言いました。「教えてやろう。ただ帰りまで待ってくれ。」と若者は答えました。 川を渡ると、地獄の入口に着きましたが、そこは黒くて中は煤けていました。鬼は留守でしたが鬼のおばあさんが大きな肘掛け椅子に座っていました。「何の用だい?」とおばあさんは尋ねましたが、あまり意地悪そうではありませんでした。「鬼の頭から3本髪の毛をとりたいんだ。さもないと、妻といられないんだ。」と若者は答えました。「それは随分な要求だね。鬼が帰ってきてお前を見つけると、命にかかわるよ。まあ、でも可哀そうだから助けてやらんでもないがね。」とおばあさんは言いました。
おばあさんは若者をアリに変え、「私の服の折り目に這って入りなさい。そこにいれば無事だろう」と言いました。「わかりました。そこまではいいんですが、そのほかに知りたいことが3つあるんです。― 市場の泉が昔はワインを出したのに、乾いて、今は水すら出さないのはどうしてか、りんごの木が昔は金のりんごを実らせたのに、今は葉っぱすらださないのはどうしてか、渡し守はどうしていつも行ったり来たり漕いでいなくてはいけなくて決して解放されないのか。」
「そりゃあ難しい質問だね。だけど、静かにして私が3本の髪の毛を引き抜くとき鬼が言うことをよく注意して聴きなさい。」とおばあさんは答えました。
夜になると鬼が帰ってきて、入るなり空気が澄んでいないと気づきました。「人間の肉の匂いがする。ここは異常なしというわけではないな。」と言い、あらゆる隅に首を突っ込み捜しましたが、何もみつかりませんでした。おばあさんは孫を叱り、「掃除したばかりだよ。全部かたづけておいたのに、お前はまたひっくり返してるじゃないか。お前はいつも鼻の中に人間の肉の匂いを入れっぱなしなんだよ。座って夕食を食べなさい。」とおばあさんは言いました。
鬼は食べて飲むのが終わると、疲れて頭をおばあさんの膝にのせ、少しシラミをとってくれるよう言いました。それからまもなくいびきをかき、重そうに呼吸をしてぐっすり眠りこみました。するとおばあさんは1本の金の髪の毛をつかんで抜き、自分のそばにおきました。「わあ、何をやってるんだ?」と鬼は叫びました。「悪い夢をみてたよ、それでお前の髪をつかんだんだ。」とおばあさんが言うと、「じゃあ。どんな夢だ?」と鬼が訊きました。「市場の泉が昔はワインを出したのに、乾いて、今は水すら出さないという夢をみたのさ。何が原因なのかね?」「あ、は、知ってさえいればねえ、泉の石の下にヒキガエルがいるのさ、その蛙を殺せばまたワインがでてくるのさ。」
おばあさんはまたシラミ取りをして、とうとう鬼は眠って窓がゆれるほどいびきをかいたので、2本目の髪の毛をひきぬきました。「何をしてるんだ?」鬼は怒って言いました。「悪く取らないでおくれ。夢の中でやったのだから。」とおばあさんは言い、「今度は何の夢だよ?」と鬼は尋ねました。「ある王国でりんごの木が昔は金のりんごを実らせたのに、今は葉っぱすらださないという夢を見たんだよ。どうしてだろうね?」とおばあさんが訊き、「あ、は、知ってさえいればねえ、ネズミが根をかじっているからさ。それを殺せばまた金のりんごを実らせるだろうよ。だけどこれからもっとずっと長くかじれば枯れてしまうさ。だけどお前の夢はもう沢山だよ。また眠っているのを邪魔したら、耳をなぐるからな。」と鬼は答えました。
おばあさんはやさしく話しかけ、もう一度シラミ取りをしたので、鬼はとうとう眠っていびきをかきました。それで3本目の金髪をつかんで引き抜きました。鬼は跳び上がって唸り声をあげ、おばあさんがまたなだめなかったなら、酷いことをしたでしょう。「悪い夢は仕方ないじゃないか。」とおばあさんは言い、「じゃあ、どんな夢だよ?」と鬼は興味をもって言いました。「渡し守が一方からもう一方へいつも漕いでいるのに解放されることはないと愚痴を言ってる夢をみたのさ。どうしてなんだい?」「間抜けだな。誰か来て渡りたがったら、渡し守は竿をそいつの手に渡さなくちゃな。そしたら、そいつが渡さなければならなくなるさ。それで渡し守は自由になれるよ。」おばあさんは3本の金髪を抜いてしまい、3つの質問に答が出たので、鬼をほうっておき、鬼は朝まで眠りました。鬼がまたでかけてしまうと、おばあさんは服の折り目からアリを取り出して、幸運の子供をまた人間の形にしました。「さあ、3本の金髪をあげるよ。鬼が3つの質問に答えたとき、お前は聞いてたよね。」と言いました。「はい、聞きました。注意して覚えておきます。」と若者は答えました。「お前は望みのものをもう手に入れたよ。だからもう帰れるね。」とおばあさんが言ったので、若者は困っているときに助けてくれた礼を言い、万事とてもうまく運んだことに十分満足して、地獄を去りました。
渡し守のところにくると、渡し守は約束の答を待っていました。「先に川を渡してくれ。そうしたら、どうやって自由になれるか教えてやるよ。」と幸運の子供は言いました。そして反対側の海岸に着くと、鬼のアドバイスを教えました。「次に誰かが川を渡してもらうためにきたら、棹をその人の手に渡せばいいんだ。」と。
歩き続けて、実らない木が立っている町に着きました。そこでもまた門番が答を待っていました。それで鬼から聞いたことを話しました。「木の根をかじっているネズミを殺せば、再び金のりんごが実るよ。」と。すると門番は感謝し、お礼に金を積んだ2頭のロバをくれて、ロバはついて来ました。
最後に泉が渇く町にやってきました。門番に鬼が言ったことを話しました。「ヒキガエルが泉の中の石の下にいるんだ。それを探して殺さなくてはいけない。そうしたら泉はまたたくさんワインをわかすだろう。」と。すると門番は感謝し、お礼に金を積んだ2頭のロバをくれました。
とうとう幸運の子供は妻のもとへ帰りました。妻は再び夫に会い、また全てにおいてどんなに首尾よくやれたか聞いて、心から嬉しく思いました。王様には、求めたものである3本の金髪を持っていきました。金を積んだ4頭のロバを見るととても満足し、「全ての条件を満たしたからには娘を妻としておいてよい。しかし、婿よ、教えてくれ、あの金すべてはどこから来てるのだ?これは莫大な富だ。」と言いました。「船を漕いでもらい川を渡り、そこに着きました。浜辺には砂の代わりに金があったのです。」と幸運の子供は答えました。王様は、「わしもとれるかな?」とそのことにとても熱心で、訊きました。「好きなだけ沢山とれます。川に渡し守がいますから、川を渡らせてもらってください。そうすれば向こう岸で袋につめられます。」と答えると、欲張りな王様は大急ぎで出発しました。川に来ると、渡し守を手招きし、向こう岸に渡すように言いました。渡し守が来て、乗るように言いました。ところが、反対岸につくと渡し守は王様の手に棹を渡し、跳んで行ってしまいました。このときから、王様は、自分の罪の罰として、渡し守をしなければいけなくなりました。たぶん今もまだやっています。もしそうなら、誰も王様から棹をうけとっていないからです。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、ある国で、農地を荒らし、家畜を殺し、牙で人の体を引き裂くイノシシがいて、人々は大いに嘆いておりました。王様は、この悩みの種を国からなくしてくれる者に沢山のほうびをとらすと約束しました。しかし、その獣はとても大きくて強いので、誰もあえてそれが住んでいる森に近づこうとはしませんでした。とうとう王様は、そのイノシシをつかまえるか殺した誰でも自分の一人娘を妻にできるとお触れを出しました。
さて、その国に、貧しい男の息子の二人兄弟が住んでいました。兄はずる賢く抜け目がないのでうぬぼれから、弟は素朴で真面目なので親切心から、この危険な仕事を喜んでひきうけると名乗りを上げました。王様は「もっと確実に獣を見つけるためには、二人は森へ反対側からはいらねばならない。」と言いました。それで兄は西側から、弟は東側から入りました。弟が少し行くと、小人が彼に近づいてきました。彼は手に黒いヤリを持ち、「お前の心は純粋でよいからこのヤリをあげよう。このヤリでお前は堂々とイノシシを攻撃できる、そしてそれはお前に危害を加えないのだ。」と言いました。弟はその小人に礼を言い、ヤリを肩にかけると、恐れることなく進んでいきました。
まもなく、その獣がみえました。弟をめがけて突進してきましたが、しかし、ヤリをそちらにむけて構えていて、イノシシはやみくもな激しさでヤリに突進したので心臓が二つに割れてしまいました。それからその怪物を背にかつぎ、王様のところへ向かいました。森の反対側に出てきたとき、人々が酒や踊りで楽しんでいる家が入口にありました。兄はここに入っていました。イノシシは自分から逃げやしないと考え、勇気がわくまで飲もうとしていたのです。しかし、弟が戦利品を背負って森から出てくるのを見たとき、妬んで、悪い心がおこり、落ち着きませんでした。それで弟に「来いよ、お前。休んで一杯酒を飲んで一息つきなよ。」と呼びかけました。その若者は、邪心を疑わず、入っていき、イノシシを殺したヤリをくれた親切な小人について兄に話しました。
兄は夜までそこに弟をとどめ、それから二人で一緒に帰りました。そして暗闇で小川にかかっている橋にくると、兄は弟を先に行かせました。そして半分ほど渡ったとき、背後から強い一撃を加えたので弟は死んで倒れました。彼は橋の下に弟を埋め、イノシシをとり、自分で殺したふりをして王様のところへ持って行きました。そしてまもなく結婚して王様の娘を得ました。弟が戻ってこなかったので、「イノシシが彼の体を引きちぎったにちがいない」と言い、みんなはそれを信じました。しかし、何も神の目から隠せないように、この腹黒い行いも白日の下にさらされる運命にありました。
何年ものち、一人の羊飼いが羊の群れを追い立てて橋を渡っていたとき、下の砂にはいっている小さな雪白の骨が見えました。いいマウスピースになるだろうと思い、降りていって、それを拾い、切って角笛用のマウスピースを作りました。しかし、最初にそれを吹くと、とても驚いたことに、骨はひとりでに歌い出したのです。「ああ、友よ、君はわが骨を吹いた、我は長い間川のそばに臥せり、兄はイノシシのため我を殺し、王の娘を妻とした」
「なんと素晴らしい角笛なんだ!ひとりでに歌うんだ。王様のところへ持っていかなくちゃ。」と羊飼いは言いました。そしてそれを持って王様のところへ来ると、その角笛はまたその小さな歌を歌い出しました。王様はそれを全て理解し、橋の下の地面を掘り返させました。すると殺された人の骸骨がまるまる出てきました。悪い兄はやったことを否定できなく、袋につめられおぼれさせられましたが、殺された男の骨は教会の美しい墓に葬られました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
ある男がロバを飼っていました。このロバは何年も疲れ知らずに麦の袋を風車小屋まで運びましたが、力がなくなってきて、だんだん仕事に適さなくなってきました。それで主人はえさをやらないのが一番いいと考え始めました。しかし、ロバは風向きが悪いとわかって逃げ、ブレーメンへ行く道を出発しました。そこできっと町の音楽家になれるぞ、とロバは考えました。
しばらく歩くと、猟犬が道に寝て、疲れるまで走ったようにハアハアあえいでいるのに気がつきました。「犬くん、どうしてそんなにあえいでいるんだね?」とロバは尋ねました。「ああ」と猟犬は答えました。「僕は年寄りで、毎日弱くなってきて、もう猟ができないんだよ。主人は僕を殺そうとしたんだ。だから逃げて来たのさ。だけど、どうやって食っていったらいいんだろう?」「いいこと教えようか」とロバは言いました。「僕はブレーメンへ行って、そこで町の音楽家になるんだ。僕と一緒に行って君も音楽家の仕事をしないか。僕はリュートを弾く、きみはティンパニをたたくんだ。」
猟犬は賛成しました。それで二匹で進んで行きました。まもなく、猫に出会いました。猫は三日続きの雨のような顔をして道に座っていました。「これこれ、ひげそりくん、浮かない顔してるね、どうしたんだい?」とロバは尋ねました。「首が危ないというのに楽しい人がいるかい?」と猫は答えました。「寄る年並みで、歯はすりへって平たくなってるし、暖炉のそばに座って糸を紡いでいる方が好きなの、ネズミを追い回すよりもね。うちのおかみさんは私を溺れさそうとしたのよ。だから逃げてきたわ。だけど、今はいい考えが浮かばなくてね。どこへ行ったらいいのかしら?」「一緒にブレーメンへ行こう。君は夜想曲がわかるじゃないか。町の音楽家になれるよ。」
猫はそれがいいと思い、一緒に行きました。この後、三匹の逃亡者たちは農家の庭に来ました。そこでは雄鶏が門の上にとまって、声をかぎりに鳴いていました。「君の鳴き声はどこまでもどこまでもしみ通るね。どうしたの?」とロバは言いました。「天気がよくなるって予報しているんだよ。マリア様が幼子キリストの小さなシャツを洗ってかわかそうとなさる日だからね。」と雄鶏は言いました。「だけど、日曜にはお客がくることになっているもんだから、うちの奥さんは無慈悲にも、明日スープに入れて僕を食べるつもりだとコックに言ったんだよ。それで今晩僕は頭を切られるんだ。だから、まだできる間に、肺を最大限に使って鳴いているのさ。」「ああ、だけどトサカくん、」とロバは言いました。「僕たちと一緒に来た方がいいよ。僕たちはブレーメンへ行くんだ。どこへ行ったって死ぬよりましなことを見つけられるよ。君は良い声をしてる。僕たちが一緒に音楽をやれば、きっと素晴らしくなるよ。」
雄鶏はこの計画に賛成しました。こうして4匹は一緒に進んで行きました。ところが一日でブレーメンの町に行きつくことができませんでした。夕方に森に着いたので、そこで夜を明かすことにしました。ロバと猟犬は大きな木の下にねて、猫と雄鶏は枝に上りましたが、雄鶏は一番安全なてっぺんまで飛び上がりました。雄鶏が眠る前に四方を見まわすと、遠くに小さな火花が燃えているのが見えたように思いました。それで、「遠くないところに家があるに違いないよ、だって明かりが見えたんだ」と仲間に呼びかけました。「それなら、起きて行った方がいいな。ここの宿はひどいからね。」とロバは言いました。猟犬も、肉がついた骨2,3本にありつけたらいいな、と思いました。
それで明かりがある場所を目指して進み、まもなくその明かりがだんだん明るく輝き、大きくなって、こうこうと明かりのついた強盗の家に着きました。ロバが、一番大きいので、窓に行って中をのぞきました。「何が見える?芦毛の馬さん」と雄鶏が尋ねました。「何が見えるか?」とロバは答えました。「おいしそうな食べ物と飲み物が載ってるテーブル、それと、そこに座って楽しくやってる強盗たち。」「それはうってつけね。」と雄鶏は言いました。それから動物たちは、強盗たちを追い払う方法を相談し、とうとうある計画を思いつきました。ロバが前足を窓枠にかけ、猟犬がロバの背に飛び乗り、猫が犬の上によじ登り、最後に雄鶏が飛び上がって猫の頭にとまることにしました。これが終わると、合図に従って、四匹が一緒に音楽を演奏し始めました。ロバがいななき、猟犬は吠え、猫はニャーオといい、雄鶏は時をつくりました。それからガラスをこなごなに割って、窓から部屋にどっとなだれ込みました。このおそろしい騒ぎに、強盗たちはてっきり幽霊がはいってきたと思い、跳びあがり、びっくり仰天して、森へ逃げていきました。
4人の仲間はテーブルに座り、残り物で十分満足して、これから1か月絶食するかのように食べました。4人の音楽家は食べ終わると、明かりを消し、めいめいが自分の性質とお気に入りに従って寝場所を探しました。ロバは庭のわらの上に、猟犬はドアの後ろに、猫は暖炉の暖かい灰の近くに寝て、雄鶏は屋根のはりの上にとまりました。そして長い旅をして疲れていたので、すぐに眠りこみました。
真夜中を過ぎたころ、強盗たちは遠くから、家の明かりがもうついていなくて、まったくひっそりしているのがわかり、親分は「おれたちはあんなに取り乱してこわがることはなかったんじゃないか。」と言って、子分の一人に、行って家を調べて来い、と命令しました。
使いにたった子分は、ひっそりしているので、ろうそくに火をつけようと台所に入り、猫のギラギラ光る炎のような目を燃えている炭火と勘違いしたので、火をつけようとマッチを目に持っていきました。しかし、ねこはその冗談がわからず、子分の顔に飛びかかり、フーッと唸ったりひっかいたりしました。子分はとても驚いて、裏口に走りました。しかし、そこに寝ていた犬が飛びかかって脚を噛みました。そして、子分が中庭を横切り、肥やしのわらのそばを走って行くと、ロバが後ろ足で猛烈な蹴りをいれました。雄鶏も、物音で目が覚め元気を回復して、はりから「コケコッコー」と叫びました。
それで強盗はできるだけ早く親分のところに走っていき、「ああ、あの家には恐ろしい魔女がいますよ。おれにフーッと息を吹きかけ、長いかぎづめでおれの顔をひっかきやがった。それでドアのそばにナイフをもった男がいやした。そいつがおれの脚を刺したんです。中庭には黒い怪物もいましたよ。そいつはおれをこん棒でなぐりやがったんで。上には、屋根には、裁判官がいて、『悪者をここに連れて来い!』と怒鳴っていました。だから、おれは逃げてきましたよ。」と言いました。
このあと、強盗たちは二度と家に入ろうとしませんでした。しかし4人のブレーメンの音楽家たちはここがとても気に入ったので、もう出ていきたいとは思いませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、かわいい小さな女の子がいました。誰でもその子を見ると可愛がりましたが、特におばあさんが一番で、子供にあげないものは何もないほどの可愛がりようでした。あるときおばあさんは赤いビロードの頭巾をあげました。その頭巾は子供にとてもよく似合ったので子供は他のものをかぶろうとしなくなり、それでいつも赤頭巾ちゃんと呼ばれました。
ある日、おかあさんが赤頭巾に言いました。「おいで、赤頭巾、ここにケーキが一つとワインが一本あるわ。おばあさんのところへ持って行ってちょうだい。おばあさんは病気で弱っているの。これを食べると体にいいのよ。暑くならないうちにでかけなさい。行くとき、ちゃんと静かに歩いて、道をそれないのよ。そうしないと転んでビンを割って、おばあさんは何ももらえなくなるからね。部屋に入ったら、お早うございます、と言うのを忘れちゃだめよ。ご挨拶の前にあちこち覗き込んだりしないでね。」「よく気をつけるわ。」と赤頭巾はお母さんに言って、約束の握手をしました。
おばあさんは村から1.5キロ離れた森に住んでいて、赤頭巾が森に入ったちょうどそのとき、狼に会いました。赤頭巾は狼が悪いけものだと知らなくて、まったくこわがりませんでした。狼は言いました。「こんにちは、赤頭巾ちゃん。」「ご親切にありがとう、狼さん」「こんなに早くどこへ行くんだい、赤頭巾ちゃん?」「おばあさんのところよ。」「エプロンには何が入ってるの?」「ケーキとワインよ。昨日が焼いた日よ。可哀そうな病気のおばあさんにおいしいものを食べてもらって丈夫になってもらうのよ。」「赤頭巾ちゃん、おばあさんはどこに住んでいるの?」「森をあとたっぷり700メートルいったところ。おばあさんのお家は3本の大きな樫の木の下にあるの。はしばみの木がすぐ下にあるから、きっとわかるわ。」と赤頭巾は答えました。
狼は、「なんて柔らかそうで若いんだ。なんておいしそうに太ってるんだろう。ばあさんよりうまそうだ。おれはうまくやって両方つかまえなくちゃならん。」と心の中で考えました。それで狼はしばらく赤頭巾のそばを歩いて、それから言いました。「赤頭巾ちゃん、見てごらん、このあたりの花はなんてきれいなんだろうね。周りを見回してごらん。小鳥たちもとてもきれいにさえずっているのに君はきいてないみたいじゃないか。君は学校へ行くみたいに真面目くさって歩いてるんだね 森の中のここではほかは何でも楽しいのに。」
赤頭巾は目をあげました。太陽の光が木の間からあちこちにおどっていて、きれいな花が一面に生えているのを見ると、赤頭巾は、「おばあさんに摘んだばかりの花束を持って行けば、それも喜んでくれるわ。まだ早いからちゃんとそこに着くわ。」と考えました。それで花をさがしに道から森の中へ走って行きました。一本摘むと、もっと向こうにもっときれいな花を花があるように見えてそのあとを追いかけ、だんだん森の奥へ入って行きました。
その間に狼はまっすぐおばあさんの家へ走って行き、戸をたたきました。「そこにいるのは誰?」「赤頭巾よ」と狼は答えました。「ケーキとワインをもってきてるの。戸を開けて。」「掛け金をあげて。私は弱って起きられないから」とおばあさんは叫びました。掛け金を上げると戸はパッと開き、狼は一言も言わないでまっすぐおばあさんのベッドに行くとおばあさんを食べてしまいました。それから狼はおばあさんの服を着て、帽子をかぶり、ベッドに寝てカーテンをひきました。
ところが、赤頭巾は花を摘んで走り回っていました。たくさん集めてもう持てなくなるとおばあさんのことを思い出し、道を進みました。赤頭巾は家の戸が開いたままになっているのに驚き、部屋に入ると、とても変な気分になったので、「まあ、今日はとても不安な気持ちだわ。いつもだとおばあさんといるのがすきなのに。」と思いました。「お早うございます。」と叫びましたが返事がありませんでした。それで赤頭巾はベッドに行き、カーテンを開けました。そこに顔まで深々と帽子をかぶったおばあさんがいて、とても奇妙に見えました。
「まあ、おばあさん、とても耳が大きいわ。」と赤頭巾は言いました。「お前の声がよく聞こえるようにだよ。」と返事。「だけど、おばあさん、とても目が大きいわ。」と赤頭巾は言いました。「お前がよく見えるようにだよ。」「だけど、おばあさん、とても手が大きいわ。」「お前をよく抱けるようにだよ。」「だけど、おばあさん、おそろしく大きな口よ。」「お前をよく食えるようにだよ。」狼はこう言うか言わないうちに一跳びでベッドから出ると赤頭巾を飲み込んでしまいました。
狼は食べ終わると、またベッドに寝て、眠りこみ、とても大きないびきをかき始めました。猟師がちょうど家をとおりがかり、「おばあさんはなんといういびきをかいているんだ。大丈夫かちょっと見てみなくては。」と思いました。
それで猟師は部屋に入り、ベッドに来てみると狼が寝ているのが見えました。「お前をここで見つけるとは。この罰当りめ。」と猟師は言いました。「お前をずいぶん探したぞ。」それから狼を狙って撃とうとしたとき、(狼はおばあさんを飲み込んだかもしれない、ひょっとしてまだ助かるかもしれないな。)という気がしてきました。それで撃つのをやめ鋏をもってきて眠っている狼の腹を切り開き始めました。チョキチョキと2回切ると、赤い頭巾が輝いているのが見え、またチョキチョキ2回切りました。すると小さな女の子が飛び出て、「ああ、とても怖かったわ。狼のお腹の中の暗かったこと!」と叫びました。そのあと、年とったおばあさんも生きて出てきましたが、息も絶え絶えでした。ところで、赤頭巾は急いで大きな石をとってきて、狼のお腹に詰めました。狼は目が覚めると逃げようとしましたが、石が重すぎてすぐにくず折れ死んで倒れました。
それで三人は喜びました。猟師は狼の皮をはぎ、家に持ち帰りました。おばあさんは赤頭巾がもってきたケーキを食べ、ワインを飲みましたが、赤頭巾は(これからは、おかあさんがそうしちゃいけないって言ってるとき、一人で道を出て、森へ走っていかないわ。)と思いました。
こういう話もありました。あるとき、赤頭巾はまたおばあさんにケーキをもっていったとき、別の狼が話しかけてきて、赤頭巾を道からはずそうと誘いました。しかし、赤頭巾は警戒して、まっすぐ道を進み、おばあさんに、狼に会ったの、狼が私にお早うと言ったけれど目つきがとても悪かったわ、みんなの歩く道にいなかったらきっと私を食べていたでしょうね、と話しました。「じゃあ」とおばあさんは言いました。「狼が入って来ないように戸を閉めましょう。」そのあとまもなく、狼が戸をたたき、「おばあさん、戸を開けて、赤頭巾よ、ケーキを持って来てるの。」と叫びました。しかし、二人は口を言わないし、戸も開けませんでした。それで灰色ひげの狼は家のまわりを2,3回忍び歩き、とうとう屋根に飛び乗りました。そこで待って、赤頭巾が夕方に家に帰るとき、こっそりあとをつけ、暗闇にまぎれてたべようと思ったのです。しかし、おばあさんは狼の心の中を知っていました。それで子供に言いました。「赤頭巾、家の前に大きな石のこね鉢がある。手おけをとってきて。昨日ソーセージを作ったんだ。私がソーセージをゆでたお湯をこね鉢に運んでおいで。」赤頭巾は大きなこね鉢がすっかりいっぱいになるまでお湯を運びました。するとソーセージの匂いが狼に届き、狼は鼻をヒクヒクさせ、下を覗き、首をあまりのばしすぎたので、もう足で支え切れなくなり、すべり出し、屋根からまっすぐ大きなこね鉢に滑り落ち、溺れてしまいました。一方赤頭巾は楽しく家に帰り、誰も二度と赤頭巾に悪さをするものはいませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、息子は7人いるのに、どんなに望んでも娘は1人も生まれない男がいました。とうとう再び妻のお腹が大きくなり、生まれてみると女の子でした。喜びは大きかったのですが、子供は病弱で小さかったので、その弱さのため個人で洗礼をうけさせねばなりませんでした。父親は息子の1人を大急ぎで洗礼の水を取りに泉に行かせました。他の6人も一緒に行き、それぞれが一番に水を入れたがったので、水入れが井戸に落ちました。みんなそこに立ち尽くし、どうしたらいいかわからなくて、誰もあえて家に帰りませんでした。なかなか帰ってこないので、父親は我慢できなくなり「悪い子たちだ、何か遊んでいるうちにきっと忘れてしまったに違いない」と言いました。女の子が洗礼を受けないで死ななければいけないだろうと恐れて、怒りにまかせて、「あの子たちがみんなカラスに変えられたらいいのに。」と叫びました。その言葉を言うやいなや、頭上で翼の羽ばたきが聞こえ、見上げると7羽の真っ黒なカラスが飛んで去っていくところでした。
両親はその呪いの言葉を取り返すことはできませんでした。七人の息子を失ってどんなに悲しくても、まだ幾分か小さな娘に慰められました。その娘はやがて健康になり日増しに美しくなっていきました。長い間、娘は自分に兄弟がいたとは知りませんでした。というのは両親は娘の前で息子たちのことを言わないよう注意していたからです。しかし、ある日、誰かが自分のことを話し、「あの子は確かに美しいね、でも本当はあの子のせいで七人の兄たちが災難にあったんだよね。」と言ってるのを聞いたのです。そのとき、娘はとても困惑し、父母のところへ行くと、「私に兄弟がいるって本当なの?兄たちはどうなったの?」と尋ねました。両親はもうあえて秘密を守ろうとしませんでしたが、「お前の兄たちに振りかかったことは天の思し召しだよ。お前が生まれたのが原因だというのはあてはまらないよ。」と言いました。しかし、娘は毎日そのことを心にとどめ、兄弟を救わなければいけないと考えました。心が休まらずじっとしていられなくて、どんな犠牲を払おうと兄弟を探し自由にしようと、とうとうこっそり家を出て、広い世界にでかけました。形見として両親のものである小さな指輪、空腹を避けるためのパンを一つ、喉が渇いたときのための水を水差し1杯分、疲れたときの準備としての椅子、だけ持っていきました。それで、どこまでも進み続けて、世界の果てまで行きました。太陽のところに着くと、あまりに熱くて恐ろしく、また子供をとって食べるので、大急ぎで逃げ、月まで走りました。しかし、あまりに寒くて怖く、悪意に満ちていて、娘を見ると、「匂うぞ、匂うぞ、人間の肉の匂いがするぞ」と言うので、素早く逃げました。そのあと、星たちのところにくると、親切でやさしくしてくれました。星の1人1人が自分の特別な小さな椅子に座っていたのですが、朝星は立ち上がって、鶏の脚をくれ、「その脚をもっていなければガラスの山を開けられない。ガラスの山にお前の兄弟はいますよ。」と言いました。
娘は脚を受け取り、布に注意深く包み、再び進み続け、ガラスの山に着きました。そして、扉が閉まっていたので脚をだそうと思いました。しかし、布をほどくと空っぽでした。親切な星の贈り物を失くしてしまったのです。さあどうしたらいいのでしょう。兄弟を救いたいのに、ガラスの山の鍵がないのです。やさしい妹はナイフをとって指の一本を切り落とし、ドアに差し込んで開けることに成功しました。中に入ると、小人が出迎えて、「子供よ、何を捜しているんだい?」と言いました。「私の兄弟の7羽のカラスを捜しているのです。」と娘はこたえました。「主人のカラスたちはいま留守です。戻るのを待つつもりなら、入ってください。」と小人は言うと、カラスの夕食を中に運び入れて、7つの小さな皿にのせ、7つの小さなグラスに入れました。そして、妹はめいめいの皿から1口ずつ食べ、めいめいのグラスから1口ずつすすりましたが、最後の小さなグラスに家から持ってきた指輪を落としました。
突然、翼の旋回する音や空気を切る音が聞こえてきました。すると小人が「主人のカラスたちが飛んで帰ってきます。」と言いました。それからカラスたちは帰ってきて、飲んで食べようと小さな皿とグラスを探しました。それから、次々と、「誰が私の皿からとって食べたんだ?誰が私のグラスから飲んだんだ?人間の口だぞ。」と言いました。そして7番目のカラスがグラスの底まで飲むと、指輪が転がって口にぶつかりました。それで、それを見ると、父母の指輪だとわかったので、「妹がここにきたら、そのとき私たちは自由になりますように。」と祈りました。娘は、様子を見ながら扉の陰に立っていたのですが、その願掛けを聞くと、前に出て行きました。そして、これによってカラスたちは皆、もとの人間の形に戻されました。そして、お互いに抱き合い、キスし、喜んで家に帰りました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、娘が二人いる後家が住んでいて、娘の1人はきれいで勤勉でしたが、もう1人は醜く怠け者でした。しかし、醜く怠け者の方を、自分の本当の娘なので、はるかにかわいがりました。もう1人は、継子なので、仕事を全部させられ、その家のシンデレラになるしかありませんでした。毎日、可哀そうな娘は道の井戸のそばに座り、指が出血するまで糸を紡ぎに紡いでいました。ある日のことでした。杼(ひ)に血がついたので、そのしみを洗い流そうと井戸の水に浸しました。ところが、手からすべって井戸の底に落ちてしまいました。泣き出して継母のところへ走り、不幸な出来事のことを話しました。
しかし、継母は厳しく叱り、「自分で杼を落としたのだから、自分でとりださなくちゃだめ。」と無慈悲に言うのでした。それで娘は井戸に戻りましたがどうしたらよいかわかりません。悲しい心で、杼を取りに井戸に飛び込み、気を失いました。そして、目を覚まし意識を取り戻すと、太陽が輝き何千もの花が生えているきれいな草原の中にいました。この草原を通っていって、とうとうパンがいっぱい入っているパン焼き釜に着きました。パンは「出して!ああ、出してよ!出して!こげちゃうよ。ずっと前にやけてるんだよ。」と叫んでいるので、近づいてパン用シャベルで次々とパンをとりだしました。
そのあと、また歩いていくと、りんごがいっぱい成っている木に着きました。りんごが「揺らして、揺らしてよ!みんな熟してるんだ」と叫ぶので、娘は、りんごが雨のように落ち、全部落ちてしまうまで揺らし続けました。そして、りんごを集めて山盛りにすると、また道を進みました。とうとう小さな家に着きました。その家から老婆が覗いていましたが、とても大きな歯をしていたので、怖くて逃げようとしました。
しかし老婆は大きな声で呼んで、「子供、何を怖がっているんだい?ここにとまりなさいな。家の仕事をちゃんとやれば、それだけいいことがあるよ。ただ注意して寝床を整え、よくふって、羽毛が飛ぶようにしなければいけないだけさ。-というのはそのとき地上には雪がふるんだからね。私はホレおばさんだよ。」と言いました。老婆がとてもやさしく話しかけたので、娘は勇気を奮ってその仕事をすることを承知しました。
主人の満足がいくようにあらゆることに注意し、寝床を力強く振ったので、羽毛は粉雪のように飛びました。それで一緒に楽しい生活をしました。怒った言葉は一度もありません。食べるために毎日肉を煮るか焼くかしました。しばらくホレおばさんのところにとまりましたが、やがて悲しくなりました。最初はどうしたのかわかりませんでしたが、それはホームシック(家が恋しい)とわかりました。家にいるよりも何千倍も暮らしが楽なのですが、やはりそこにいたいと思いました。とうとう娘はホレおばさんに「家にかえりたい、ここにいるとどんなに暮らしが楽でももういられません。私の人々のところに上がっていかなくてはなりません。」と言いました。ホレおばさんは「お前がまた自分の家に帰りたいと聞いて嬉しく思いますよ。お前はとても真面目に仕えてくれましたから、私が自分でお前を上に連れていってあげましょう、」と言って、手をとり、大きなドアのところに案内しました。ドアが開けられ、娘が丁度戸口の下に立っていたとき 金の雨の激しいシャワーが降り、金が全て娘にくっつきました。それですっかり金におおわれてしまいました。「お前はとても一生懸命働いたのでそれをあげよう」とホレおばさんは言いました。そして同時に井戸に落とした杼を戻して寄こしました。
そうしてドアが閉まり、娘は自分が地上に母の家から遠くないところにいるのに気づきました。そして庭に入ると、おんどりが井戸の上に座っていて「コケコっコー、金の娘のお帰りだよ。」と鳴きました。それで母のところに戻って行きました、このように金でおおわれているので、母と妹両方から歓迎されました。娘は自分に起こったことを全て話し、母はどうしてそのようなたくさんの財産を手に入れたか聞くと、醜く怠け者の娘も同じ幸運を得て貰いたいと切に願いました。
娘は井戸のそばにすわり糸を紡がねばなりませんでした。杼を血で汚すために手をイバラの薮にはさみ指を刺しました。それから井戸に杼を投げ入れ、飛び込みました。もう1人の娘と同じように、草原に来て、まさに同じ道を歩きました。焼き釜に着くと、パンは再び「出して!ああ、出してよ!出して!焦げちゃうよ。ずっと前に焼けてるんだよ。」と叫びましたが、怠け者の娘は「まるで私が汚れたいと思ってるとでも?」と答えました。そして道を続けました。間もなくりんごの木に着きました。「揺らして、揺らしてよ!みんな熟してるんだ」と叫びましたが、「そのままがいいよ。私の頭にあなたたちの1つが落ちるかもしれないでしょ。」と答えて、道を進んでいきました。ホレおばさんのところに来たとき、娘は怖くありませんでした。というのはもう大きな歯のことは聞いていたからです。それですぐ「いいよ」と雇われました。
最初の日は我慢して熱心に働きました。ホレおばさんが何かやるようにいうと従いました。というのは貰えるすべての金のことを考えていたからです。しかし2日目には怠け始め、三日目にはさらにひどくなり、それからは朝に全然起きなくなくなりました。また、やらなくてはならないホレおばさんの寝床も直さないし、羽毛を舞い上がらすために寝床を揺すりもしませんでした。ホレおばさんはこれにうんざりし、娘に帰るように言いました。怠け者の娘は十分喜んで帰る気になり、「さあ、金の雨が降るのよ。」と思いました。ホレおばさんはまた大きなドアに導きましたが、娘がその下に立っていると、金の代わりに大きなやかんいっぱいのコールタールが頭に降りかかりました。「それがお前の仕事のほうびだよ。」とホレおばさんは言ってドアを閉めました。それで怠け者の娘は家に帰りましたが、まったくコールタールでおおわれていました。そして井戸の上の雄鶏は、娘を見るとすぐ、「コケコッコー、汚い娘のお帰りだよ。」と鳴きました。しかし、コールタールは娘にぴったりくっついて生きてる間とれませんでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、ネズミと鳥とソーセージが仲間になり、一緒に所帯を持って、仲良く幸せに暮らし、財産も増えました。鳥の仕事は毎日森へ飛んで行き、木を持ち帰ることでした。ネズミは水を運び、火をたき、食卓を整えるのが仕事で、ソーセージは料理をしました。暮らしが豊か過ぎる人はとかく目新しいことをやってみたくなるものです。ある日、鳥は別の鳥に会い、自分の素晴らしい暮らしぶりを語り自慢しました。ところが、相手の鳥は言いました。「あんたはきつい仕事をうけもって、かわいそうなおばかさんね、家にいる二人は楽しいでしょうね、だってネズミは火をおこし、水を運んで、あとは食卓を整えるように呼ばれるまで自分の部屋に行って休んでいるわけよ。ソーセージは鍋のそばにいて食べ物がよく煮えるか見て、食事の時間に近くなったら、おかゆとか野菜の間を一、二回転げ回るだけでバターや塩味がついて、はい準備OK。あんたが家に帰り、重い荷物を下ろすと、三人は食卓に座り、食事が終わると次の朝までたっぷり眠る。それが素晴らしい暮らしってわけだ。」
次の日、鳥は、相手の鳥にそそのかされて、もう森にいく気がしなくなって、自分はもう長く召使の役をやって馬鹿にされてきた、一度役割を変えて、別のやり方をしなくてはいけない、と言いました。ネズミとソーセージはとても一生懸命頼みましたが、鳥は頑固に譲らず、そうしなくてはいけない、と言いました。
三人はくじ引きをし、木を運ぶのはソーセージに決まり、ネズミは料理人になり、鳥は水を汲むことになりました。どうなったでしょうか?ソーセージは森の方へでかけていき、鳥は火をおこし、ネズミは鍋のそばにいてソーセージが次の日に使う木を持って帰るのを一人で待ちました。しかし、ソーセージがいつまでもでかけたままなので、何か事故がおきたかと二人とも心配になり、鳥が迎えにちょっと飛んで行きました。ところがあまり行かないうちに道にいる犬に会いました。その犬は可哀そうなソーセージをかっこうの獲物だとして襲いかかり、つかまえ、食べていたのでした。
鳥は犬を盗人たけだけしいと責めましたが、何を言っても役にたちませんでした。というのは犬は、ソーセージに偽造の文字があった、それで命が没収されたのだ、と言ったからです。鳥は悲しく木をとって家に飛んで帰り、見て聞いたことを語りました。二人はとても悲しみましたが、できるだけのことをやって二人一緒にいようと決めました。
そこで、鳥が食卓を整えました。ネズミは食べ物を準備し、ソーセージがいつもやっていたように鍋に入って混ぜるために野菜の間を転がったり這い回ったりして味付けしようとしました。しかし、真ん中に入りこむことができませんでした。その前に皮も毛も命も失くしてしまったのです。鳥が食べ物を運び込もうとやってきたとき、料理人はいませんでした。困り果てて、鳥は木をあちこちに投げ、呼んだり探したりしましたが、料理人は見つかりませんでした。ばたばたして注意が足りなかったので、木に火が燃えうつり、大火事になりました。鳥は急いで水を汲みに行きましたが桶が井戸に落ち、鳥も一緒に落ちてしまい、抜け出すことができなくなって、そこで溺れて死んでしまいました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
昔、王様の息子がいて、世界を旅してみたいという望みを抱き、一人の忠実な従者だけ連れてでかけました。ある日大きな森に着きましたが、すっかり暗くなってしまったのに、宿もみつからず、どこで夜を過ごしたらよいかわかりませんでした。すると、一人の娘が小さな家にむかっていて、近づいてみるとその娘は若く美しいのがわかりました。王子さまは、その娘に話しかけて、「娘さん、私と従者があの小さい家に泊まれないだろうか。」と言いました。すると娘は悲しげな声で「ええ、もちろんいいですよ。ただあまり勧めたくないのだけど。家に入らないで。」と答えました。王子さまが「どうして駄目なんだ?」と尋ねると、娘はため息をうき、「継母が魔法をするの。知らない人に意地悪いのよ。」と言いました。それで、王子さまは、魔女の家なんだなととてもよくわかったのですが、暗くなってこれ以上遠くへ行けないし怖れなかったので、その家に入りました。その老婆は暖炉のそばの安楽椅子に腰かけていましたが、赤い目で王子様を見て、愛想のいい振りをして、「今晩は。座って休んでください」と言いました。老婆は火を扇いで、小さな鍋で何かを煮ていました。それで、娘は二人に「用心するように。何も食べないで、何も飲まないで。」と警告しました。というのは老婆は、毒入りの飲み物を調合していたからでした。二人は早朝まで静かに眠りました。出発の用意をしていて、王様の息子がすでに馬の背に座っていた時に、老婆が「ちょっと待って。先にお別れの飲物を渡しますから。」と言いましたが、それをとりに行ってる間に、王様の息子は去ってしまいました。
それで、魔女が飲み物をもって戻って来たときは、サドルをしっかりはめなくてはいけなかった従者だけが残っていました。「これをご主人のところに持っていきなさい」と老婆は言いました。しかし、その瞬間にコップが割れ、毒は馬にはねて、とても強い毒だったので馬はあっという間に死んで倒れました。従者は主人を追いかけ、起こった出来事を話してきかせましたが、サドルを置いてきたくなかったのでとりに走って戻りました。ところが、死んだ馬のところまでくると、カラスがすでに上にのってむさぼり食っていました。「今日これ以上よい物をみつけるられかどうかわからないな」と従者は言いました。それでカラスを殺し持っていきました。
森の中をまる一日進んだけれども、森を抜けられませんでした。夜になると二人は宿屋を見つけ入りました。従者は、夕食の準備のため宿の主人にカラスをあげました。しかしながら、二人は、人殺しの巣に入り込んでいたのでした。闇夜にまぎれて12人の人殺しがやってきました。殺して金を奪うつもりだったのです。しかし、この仕事にとりかかる前に、宿の主人と魔女も一緒に夕食の席につき、カラスの肉が切って入れられていたスープを飲みました。そして2,3口のみ込むや否や、みんな死んで倒れてしまいました。というのは、カラスが馬の肉から毒を移したからでした。結局その家には宿屋の娘以外だれも残りませんでした。その娘は正直者で、この不届きな行いにかかわっていませんでした。そしてドアを全部開けて王様の息子にためてあった宝の山を見せましたが、王子さまは「全部あなたがとってください。私は何もいりません」と娘にいい、従者と一緒に旅を続けました。
それから長い間、旅した後、美しいけれど高慢な王女さまが住んでいる町に着きました。王女さまは、自分が解けない謎をかけた者を誰でも夫にするが、もし解いたらその者は首をはねられるという布告をだしていたのです。なぞを解くのに3日ありましたが、王女さまはとても賢いのでいつも約束の時間前に出題されたなぞの答を見つけてしまうのでした。それで、王子様が、町につき、王女様のあまりの美しさに目がくらみ、すすんで命を賭けようとしたときには、すでに9人の求婚者が命を落としていました。王子様は王女さまの前にすすみ、なぞをかけ、「ある人が1人も殺さずに12人殺した。これはなんだ?」と言いました。王女さまにはそれが何かわからず、考えに考えましたが、しかし解けませんでした。なぞなぞの本を開いてみましたが、そのなぞは本にありませんでした。-つまり知恵の限界にきていました。助かるにはどうしたらいいかわからず、もしかして眠っている間になぞの答を洩らすかもしれないと思い、侍女に王子様の寝室へ忍び込み夢を聴いてくるように命じました。
しかし、賢い従者は主人の代わりにベッドに寝ていて、侍女が来たとき、身を包んでいたマントをはぎとり、棒で追いかけ退散させました。二日目の夜には二番目の侍女を送り、今度こそ首尾よく聞いてくることを期待しましたが、従者はこれもまたマントをはぎとり棒で追い出しました。三日目の夜には、主人はもう大丈夫だと確信し、自分のベッドで眠りました。すると、もやがかった灰色のマントを着て、王女さまが自ら来ました。王子様が眠って夢をみていると考え、多くの人がやるように夢で答を言うだろうと望んだので、話しかけました。しかし実は王子様は目が覚めていて、何でもとてもよく聞こえ理解したのですがね。それで「1人が誰も殺さなかった、これは何?」とききました。王子様は「カラス。死んで毒のある馬から肉をとって食べ、それで死んだのだ」と答えました。王女さまはさらにたずねました。「それなのに12人殺した、これは何?」「それは12人の人殺しのことだ。そのカラスを食べて死んだのだ」と答えました。王女さまはなぞの答がわかったので、そっと帰ろうとしましたが、王子様がマントをとても固く握っていたので、おいていくしかありませんでした。次の朝、王女さまは、なぞの答がわかったと発表すると、12人の審判を呼びにやり、その前でなぞを解説しました。しかし王子様は聴聞会を開いてほしいと頼み、「王女さまは、夜に私の部屋に忍び込み質問しました。そうしなければ答が見つけられなかったはずです。」と言いました。審判が「その証拠を出しなさい」と言ったので、従者はそこへ3枚のマントをもっていきました。すると審判は、王様の娘がいつも着ていたもやがかった灰色のマントを見て、「金銀でそのマントを刺繍せよ、そうすれば婚礼衣装となるだろう」と決定を下しました。このエピソードはPodbean.comがお届けします。
Tuesday Aug 13, 2024
Tuesday Aug 13, 2024
金持ちの妻が病気になり、最期が近づいていると感じたので、たった一人の娘をベッドのそばに呼んで、「愛するわが子よ、良い子で神様を信じているんですよ。そうすれば神様がいつもお前を守ってくれます。私は天国からお前を見下ろしてお前の近くにいますからね。」と言いました。それで目を閉じ、亡くなりました。毎日娘は母親の墓に出かけては泣きましたが、信心深く善良なままでした。冬が来て雪が墓の上に白い覆いを広げ、春の太陽がまたその雪を溶かす頃には、男は別の妻をもらいました。
その女は家へ二人の娘を一緒に連れてきました。、娘たちは顔は美しくきれいでしたが、心は汚く真っ黒でした。それから可哀そうな継子の辛い時期が始まりました。「間抜けが私たちと一緒に居間に座っていていいの?パンを食べたい人は稼がなくちゃね。台所女中は外よ。」と二人は言いました。二人は娘からきれいな服をとりあげ、娘に古い灰色の上っ張りを着せ、木の靴をはかせました。「高慢な王女様をみてごらん。なんておめかししているの。」と叫んで笑い、娘を台所に連れて行きました。そこで娘は朝から晩まで、辛い仕事をしなければなりませんでした。日の出前に起き、水を汲み、火をおこし、料理洗濯をしました。
これに加えて二人は考えられるかぎりの意地悪をしました。娘を嘲り、灰の中にエンドウ豆やレンズ豆をまいたので、娘がもう一度座って豆を拾い上げねばなりませんでした。疲れるまで働いた夜には、寝るベッドがなくて、灰があるかまどのそばでねむらなければなりませんでした。そのため娘はいつもほこりがついて汚く見えたので、二人は娘を灰かぶりと呼びました。たまたまあるとき父親が市にいくところで、二人の継娘たちにお土産に何がほしいかと尋ねました。「美しいドレスよ」と一人が言いました。「真珠と宝石をお願い。」と2番目が言いました。「それで、お前は何がいい?シンデレラ。」と父親は言いました。
「お父さん、私には帰り道でお父さんの帽子にぶつかる最初の枝を折り取ってください。」それで父親は二人の継娘には美しいドレスと真珠と宝石を買い、帰り道で緑のやぶを馬で通っていたので、はしばみの枝があたり帽子を落としました。それで父親はその枝を折って持っていきました。家に着くと継娘に望んだ品を渡し、シンデレラにははしばみの木からとった枝を渡しました。シンデレラは父親にお礼を言い、母親の墓に行き、そこに枝を植え、とても泣いたので、涙がその枝に落ち、濡らしました。
そしてその枝は大きくなり、立派な木になりました。日に3度シンデレラはその下に行って座り、泣いて、お祈りしました。そして、一羽の小さい白い鳥がいつもその木にきて、シンデレラが望みを言うと、その鳥が娘の望んだものを落としてよこしました。ところで、王様が祝祭の命令を出し、その祝祭は3日続くものとし、王様の息子が花嫁を選ぶため国の美しい若い娘は全員招待されるというものでした。
二人の継娘は自分たちもその祝祭に出ることになると聞いたとき、喜んで、シンデレラを呼び、「わたしたちの髪をといて、靴を磨いて、ベルトを締めてね。私たちは王様の宮殿の結婚式にいくのだから。」と言いました。シンデレラは言うことに従いましたが、泣きました。というのは自分もまた一緒に踊りに行きたかったからです。そして継母にそうするのを許してくれるようお願いしました。「お前はほこりと泥まみれじゃないの。それで舞踏会に行くですって?」と継母は言いました。「お前には服も靴もないのに、踊る、ですって?」
しかし、シンデレラが頼み続けたので、継母はとうとう、「レンズ豆を一皿灰の中に空けておいたから、もしお前が2時間でそれを拾ったら、一緒に行かせてあげるよ。」と言いました。乙女は裏口から庭に出て、「お友達のハトさん、キジバトさん、空の下の小鳥さんたちみんな、良い豆をかめに、悪い豆をみなさんに、拾うのを手伝ってちょうだい。」と呼びました。すると2羽の白い鳩が台所の窓から入ってきました。そのあとで、キジバトが、最後に空の下の小鳥たちがみんな羽音を立てて集まってきて、灰の間に降りました。鳩たちが頭をひょこひょこさせ、コッコッコッコッとつつき始め、残りの鳥たちもコッコッコッコッと始め、皿に全部の良い豆を集めました。
一時間もたたないうちに小鳥たちは終わってみんなまた飛び去りました。それで娘は皿を継母のところへ持って行き、嬉しく思い、今度こそ舞踏会へ一緒に行かせてもらえると信じていました。しかし、継母は「だめよ、シンデレラ、お前には服がないじゃないの、それに踊れないわよ。ただ笑われるだけだよ。」と言いました。これを聞いてシンデレラが泣くと、継母は「もし一時間で灰から二皿のレンズ豆を拾ったら一緒に行かせてあげるよ。」と言いました。
それで継母は心の中で、今度はきっとやれないわよ、と思っていました。継母が灰の中に二皿のレンズ豆を空けたとき、乙女は裏口から庭に出て、「お友達のハトさん、キジバトさん、空の下の小鳥さんたちみんな、良い豆をかめに、悪い豆をみなさんに、拾うのを手伝ってちょうだい。」と呼びました。すると2羽の白い鳩が台所の窓から入ってきました。そのあとで、キジバトが、最後に空の下の小鳥たちがみんな羽音を立てて集まってきて、灰の間に降りました。
鳩たちが頭をひょこひょこさせ、コッコッコッコッとつつき、残りの鳥たちもコッコッコッコッと始め、皿に全部の良い豆を集めました。30分もたたないうちに小鳥たちは終わってみんなまた飛び去りました。それで娘は嬉しく思い、今度こそ結婚式へ一緒に行かせてもらえると信じていました。しかし、継母は、「こんなこといくらしてもだめよ。」と言いました。
「お前は一緒にいけないよ。だってお前には服がないし、踊れないじゃないか。私たちはお前が恥ずかしいよ。」こう言ってシンデレラに背をむけると、二人の高慢な娘と一緒に急いで行ってしまいました。もう誰も家にいないので、シンデレラははしばみの木の下にある母親の墓に行き、叫びました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」すると小鳥が娘に金銀のドレスと絹と銀で刺しゅうされた上靴を落としてよこしました。
娘は大急ぎでドレスを着て、結婚式に行きました。ところが二人の姉たちや継母は娘を分からず外国の王女様にちがいないと思っていました。というのは娘は金のドレスを着てとても美しかったからです。三人はシンデレラのことは一度として思い起こさず、家で汚れたものの中にいて、灰からレンズ豆を拾っていると信じていました。王子が娘に近づき、手をとって一緒に踊りました。他の乙女とは踊ろうとしないで娘の手を放さず、他のだれかが娘に申し込もうと来ると、王子は「こちらはぼくの相手です。」と言いました。娘は夕方まで踊り、それから家に帰ろうと思いました。
しかし、王様の息子は、「あなたと一緒に行き、お伴いたしましょう。」と言いました。というのは王子はこの美しい娘がだれの娘か知りたかったからです。しかし、娘は王子から逃げ、鳩小屋に跳び込みました。王様の息子が待っていると、娘の父が来たので、見知らぬ乙女が鳩小屋に跳び込んだと話しました。父親は、それはシンデレラかな?と思いました。それで、鳩小屋をこなごなに壊すためにみんなは父親に斧とつるはしをもってこなければなりませんでしたが、誰も中にいませんでした。
みんなが帰って来たときシンデレラは灰の中で汚い服を着ていて、薄暗いランプが暖炉の上で燃えていました。というのはシンデレラは鳩小屋の裏から急いで跳び下り、はしばみの若木まで走り、そこで美しい服を脱ぎ、墓の上に置いて、鳥たちがまた服を持っていき、それから灰色の上っ張りを着て台所の灰の中に座っていたからです。次の日、舞踏会がまた新しく始まり、両親と姉たちはまた出かけてしまうと、シンデレラははしばみの木に行き、言いました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」
すると小鳥は前の日よりさらに美しいドレスを娘に落としてよこしました。そしてシンデレラがこのドレスを着て、結婚式に現れると、みんながその美しさに驚きました。王様の息子は娘が来るまで待っていて、すぐに娘の手をとり、娘とだけ踊りました。他の人たちが娘に申し込もうと来ると、王子は「こちらはぼくの相手です。」と言いました。夕方になると、娘は家に帰ろうと思いました。それで王様の息子は娘のあとをつけてどの家へ行ったか確かめようとしました。しかし、娘は王子から跳んで逃げ、家の後ろの庭に入りました。
庭の中にすばらしい梨の実がついている美しい高い木が立っていました。娘はりすのようにすばしこく枝の間によじ登ったので、王様の息子は娘がどこに消えたのかわかりませんでした。王子が待っていると、娘の父親が来たので、「あの見知らぬ乙女が私から逃げてしまいました。梨の木に登ったと思います。」と言いました。父親は、シンデレラかな?と思い、斧を持ってこさせて、木を切り倒しましたが、誰も木の上にいませんでした。
みんなが台所に入ってくると、シンデレラはいつものように灰の中にいました。というのは娘は木の反対側に跳び下り、はしばみの若木の小鳥に美しいドレスを持って行き、灰色の上っ張りを着たのです。三日目に両親と姉たちはまた出かけてしまうと、シンデレラははしばみの木に行き、言いました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」そして今度小鳥は、娘がいままで着たどのドレスよりもすばらしく豪華なドレスを落としてよこしました。そして上靴は金でした。そのドレスで舞踏会に行くと、驚きのあまり誰もどう言っていいかわかりませんでした。王様の息子は娘とだけ踊り、誰かが娘をダンスにさそうと、「こちらは私の相手です。」と言いました。
夕方になると、シンデレラは帰ろうとしました。王様の息子は娘と一緒に行きたがりましたが、娘は王子から素早く逃げたので、王子は追いかけられませんでした。ところが王様の息子は、計略を練っていて、階段中にピッチを塗らせておいたのです。それで、娘が駆け下りると左の上靴がくっついたままになりました。王様の息子がそれを拾い上げてみると、それは小さくきゃしゃですっかり金でした。次の朝、王子は父親のところにそれを持って行き、「この金の上靴に合う足の人以外の誰も妻にしません。」と言いました。すると、二人の姉たちは喜びました。と言うのは二人は可愛い足をしていたからです。一番上の娘は靴を持って部屋へ入り、履いてみようとし、母親はそばに立って見ていました。
しかし、娘は親指を靴に入れられませんでした。靴は娘には小さすぎました。それで母親は娘に小刀を渡し、「親指を切りとりなさい。お后になったらもう歩かなくて済むだろうから。」と言いました。娘は親指を切り落とし、足をむりやり靴に入れ、痛みをこらえて王様の息子のところに出ていきました。それで王子は娘を花嫁として馬に乗せ、一緒に走っていきました。ところが、二人は墓のところを通りすぎなければいけませんでした。そこに、はしばみの木の上に、二羽の鳩がとまっていて、叫びました。「振り向いて覗いてごらん、振り向いて覗いてごらん、靴の中に血があるよ。その娘には靴が小さすぎる、本当の花嫁はあなたを待っているよ。」
それで王子は娘の足を見ると血が滴り落ちているのが見えました。王子は馬を回して、偽の花嫁をまた家に連れて行き、「この人は当人じゃありません。もう一人の妹に靴を履かせてください。」と言いました。それで妹が部屋に入り靴に無事に親指を入れましたが、かかとが大きすぎました。それで母親が小刀を渡し、「かかとを少し切りなさい。お后になったらもう歩かなくて済むんだから。」と言いました。
娘はかかとを少し切り落とし、足をむりやり靴に入れ、痛みをこらえて王様の息子のところに出ていきました。それで王子は娘を花嫁として馬に乗せ、一緒に走っていきました。しかしはしばみの木のそばを通ると、木の上に、二羽の鳩がとまっていて、叫びました。「振り向いて覗いてごらん、振り向いて覗いてごらん、靴の中に血があるよ。その娘には靴が小さすぎる、本当の花嫁はあなたを待っているよ。」王子が娘の足を見下ろすと、血が靴から流れていて、白い靴下が真っ赤に染まっているのが見えました。王子は馬を回して、偽の花嫁をまた家に連れて行き、「この人も当人じゃありません。もう他に娘はいないのですか?」と言いました。
「はい、おりませんです。まだ亡くなった妻が残していった少し風変わりな台所女中はいますが、花嫁とはとんでもございません。」と父親は言いました。王様の息子は、その娘を連れてくるようにと言いましたが、母親が、「とんでもございません。あまりにも汚くてお目にかかれませんよ。」と答えました。しかし、王子があくまでも言い張るので、シンデレラを呼ばなければなりませんでした。娘はさきに両手と顔を洗ってきれいにし、王様の息子の前に行ってお辞儀をしました。王子は娘に金の靴を渡しました。それで娘は足載せ台に座り、重い木の靴から足を出して上靴に入れました。それはぴったり合いました。
そして娘が立ちあがって、王様の息子がその顔を見ると、自分と踊った美しい乙女だとわかり、「この人が本当の花嫁だ」と叫びました。継母と二人の姉たちは恐ろしくなり、怒りで青ざめました。しかし王子はシンデレラを馬に乗せ、一緒に乗って去りました。
二人がはしばみの木のそばを通ると、二羽の白い鳩が叫びました。「振り向いて覗いてごらん。振り向いて覗いてごらん。靴に血がついていないよ。靴は娘には小さすぎない。本当の花嫁があなたと一緒だよ。」そう叫ぶと二羽は降りてきて、シンデレラの肩に、一羽が右に、もう一羽が左に、とまり、そこに座ったままになりました。王様の息子の結婚式が行われることになると、二人の不実な姉たちがやってきて、シンデレラのご機嫌をとり、幸運を分けてもらおうとしました。
結婚する二人が教会に行ったとき、姉は右側に妹は左側にいました。そして鳩たちがそれぞれから片目をつついて出し、戻りは姉が左で妹が右になったので、鳩たちはそれぞれからもう一つの目をつついて出しました。こうして意地悪と不誠実のために、二人は罰せられて生涯目が見えないままでした。このエピソードはPodbean.comがお届けします。